高分子論文集
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63 巻, 3 号
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総合論文
  • 宮代 一, 小林 陽, 関 志朗, 大野 泰孝
    2006 年 63 巻 3 号 p. 139-148
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    安全かつ大型化が容易で, 家庭への設置が可能なエネルギー貯蔵デバイスの実現を目的として, 全固体型リチウムポリマー二次電池についての検討を行った. 最初に, 薄膜正極を用いた検討により, 正極近傍へ耐酸化性に優れる無機電解質, 負極近傍へ耐還元性と柔軟性に優れる高分子電解質をそれぞれ配置すること (高分子/無機コンポジット) により, 従来より高い電圧での充放電作動が可能になることを確認した. 続いて, 電池の実用化を視野に入れ, 大容量化が可能な粉末正極を用いた電池系について検討を行い, 高電圧時の電池劣化が正極/高分子固体電解質界面で支配的に起こることをインピーダンス測定により明らかにした. 高分子/無機コンポジット化を粉末正極使用時にも適用するため, 正極粉末表面への無機電解質の機械的被覆について検討した. 無機電解質を被覆した (高分子/無機コンポジット化した) 正極を用いた電池は明らかに高電圧充放電時の可逆性が向上し, 高分子/無機コンポジットの蓋然性を示した.
  • 澤田 真一, 八巻 徹也, 浅野 雅春, 吉田 勝
    2006 年 63 巻 3 号 p. 149-159
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    γ線の照射による架橋・グラフト反応を利用して, 直接メタノール型燃料電池 (DMFC) 用のフッ素系高分子電解質膜を開発した. ポリテトラフルオロエチレン (PTFE) 膜に高温照射で架橋構造を付与し, 前照射法でスチレンをグラフト重合して得た電解質膜は, Nafionと比べて2倍のプロトン伝導性と5倍のメタノール透過抑制能を示すことがわかった. このような優れた特性は, 主として主鎖の架橋構造による膨潤抑制効果に起因すると考えられる. 次に, この電解質膜では十分でなかった耐酸化性を改善するとともに, メタノール透過抑制能をさらに向上させるため, 疎水性基が置換したスチレン誘導体とグラフト鎖間を架橋させる働きを担う多官能性分子とをエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体 (ETFE) 膜にグラフト共重合した後, 室温下で放射線架橋させて電解質膜を合成した. 得られた膜は従来のスチレングラフト電解質膜の6倍の耐酸化性と, Nafionの10倍のメタノール透過抑制能を示した. これらの結果から, γ線架橋・グラフト反応を組み合せた筆者らの手法は, 燃料電池用の電解質膜の開発において極めて有効であると結論できる.
一般論文
  • 堤 宏守, 北川 徹
    2006 年 63 巻 3 号 p. 160-165
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    シアノエチル化ポリビニルアルコール (CNPVA) とポリアクリロニトリル (PAN) をマトリックスに用いたポリマー電解質を調製し, その伝導度測定を行った. これらのポリマーを用いたポリマー電解質において, 30℃で1.46×10-2Scm-1のイオン伝導度を有するものを調製できた. 添加するリチウム塩の量やPANとCNPVAの混合比率を種々変化させ, ポリマー電解質を調製し伝導度測定を行ったところ, 添加する無機塩の量やポリマーの混合比率により伝導度が変化した. CNPVA側鎖のシアノエチル基が, 添加したリチウム塩の解離に大きく寄与しており, CNPVAマトリックス部分がイオン伝導経路を形成し, PANマトリックス部分がポリマー電解質の機械的強度を保つ役割を果たしていることが, これらのポリマー電解質のXRD, FT-IRおよび固体NMR測定の結果から推測された.
  • 橋本 康博, 坂本 直紀, 飯嶋 秀樹
    2006 年 63 巻 3 号 p. 166-173
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    固体高分子形燃料電池に広く用いられているpolyperfluorosulfonic acid (PFSA) 膜について, 湿度を変化させながら赤外 (IR) および小角X線散乱 (SAXS) 測定を行い, 含水状態およびクラスターサイズの変化がイオン伝導度に与える影響を調べた. その結果, 膜中の自由水は束縛水よりもイオン伝導度に対する寄与が大きく, 束縛水と自由水の存在比は膜が置かれた環境の相対湿度に依存して変化した. 30%RH以下では膜中の水はすべて束縛水であり, 60%RH以上で自由水が飛躍的に増加した. 湿度の増加とともにクラスターサイズは徐々に大きくなるが, 60%RHを境に高次構造変化がおき, それまで独立していたクラスターがネットワーク状の太いイオンチャンネルを形成すると考えられた. このような高次構造の変化や自由水の飛躍的な増加により, イオン伝導度が大きくなると考えられた.
  • 北村 幸太, 坂口 佳充, 高瀬 敏, 中尾 淳子
    2006 年 63 巻 3 号 p. 174-181
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    優れた耐熱性ポリマーとして知られているポリベンズオキサゾールにイオン性基を導入し, 高耐熱性の燃料電池用プロトン交換膜の素材として, その構造と特性の関係を検討した. ポリベンズオキサゾールに導入されたイオン性基は高い熱安定性を有し, ベンズオキサゾール環の電子吸引性が寄与していると考えられた. また, イオン性基を導入したポリベンズオキサゾール膜は高温でも高い耐クリープ性を示した. イオン性基がホスホン酸基であるよりもスルホン酸基である方が高いプロトン伝導性を示し, プロトン伝導性が酸性度の大きさに依存していると考えられた. 多量のスルホン酸を含有するポリベンズオキサゾール膜のプロトン伝導性は, 低湿度では低かったものの高湿度ではNafion®112を上回る値を示した. 多量のイオン性基に対してプロトン伝導に十分な水を保持しつつ, 骨格の剛直性によって膜形態を保つことで高いプロトン伝導性を示したと考えられた.
  • 湯浅 真, 小柳津 研一, 山口 有朋, 今井 卓也, 北尾 水希
    2006 年 63 巻 3 号 p. 182-188
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    電解重合性を有する新しいコバルトポルフィリンとして, メソテトラ (3-チエニル) ポルフィリナトコバルト (II) を3-チエニルアルデヒドとピロールから合成した. グラッシーカーボン電極への電解重合により, コバルトポルフィリンがπ共役系の2,5-チエニレン連鎖で連結された導電性ポルフィリン薄膜を得た. これを介した溶存酸素の電解還元を行うと, サイクリックボルタンメトリーにおいてEp=0.2V vs. SCE付近に酸素還元由来の電流ピークが観測された. この方法では, 従来の吸着によるポルフィリン修飾炭素電極に比べ, 重合膜を形成するため安定度の高い修飾電極が得られることが分かった. 触媒担体として比表面積の大きいカーボンブラックを択び, 電解液に分散させた条件下でコバルトポルフィリンの電解重合を行うと, 炭素粒子の表面にコバルトポルフィリンの重合膜を形成可能であることを見いだした. 得られた修飾炭素粒子をNafion溶液に分散させ, 基盤電極上にキャストすることにより擬似MEA (膜電極接合体) を作製した. これを用いた酸素還元反応では, 貴な電位 (Ep=0.44V vs. SCE) および反応選択度 (反応電子数n =3.8) で酸素の四電子還元が進行することが明らかになった. また, 得られた触媒を不活性ガス雰囲気下で熱処理するとさらなる活性向上が認められ (Ep=0.47V vs. SCE, n =3.8), 燃料電池における白金に拠らない新しいカソード触媒としての可能性が示された.
  • 小柳津 研一, 山口 有朋, 井合 雄一, 田中 健, 湯浅 真
    2006 年 63 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    電解重合性を有する新しい配位性モノマーとして, 2-(3-チエニル) ピリジンを用いた流動層電解重合により, 配位子としてピリジル基を有する導電性高分子膜で被覆された炭素粒子を調製した. これを有機溶媒中に分散させ, 酢酸コバルトを用いた錯形成を行うことにより, 炭素粒子の表面にコバルト錯体を分散度高く修飾できることを見出した. 得られた修飾炭素粒子をNafion溶液に分散させ, 基板電極上にキャストすることにより擬似MEAを作製し, 溶存酸素の電解還元反応について検討した. 触媒担体として比表面積の大きいカーボンブラックを択び, 補助的な配位子としてピロールを用いた場合に, 貴な電位 (Ep=0.37V vs. SCE) および比較的高い反応選択度 (反応電子数n =3.1) で酸素の四電子還元が進行することが明らかになった. この活性は, コバルトポリピロール錯体修飾炭素粒子よりも高く, 塩基性度の高いピリジル基が活性点であるコバルトイオンの集積に寄与していることが示された. さらに, 得られた触媒を不活性ガス雰囲気下で熱処理することにより活性が著しく向上することが分かり, 燃料電池の新しいカソード触媒としての可能性が明らかになった.
ノート
  • 吉本 信子, 荒木 正治, 森田 昌行
    2006 年 63 巻 3 号 p. 196-199
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    Composite electrodes made of poly (3-methoxythiophene) (pMeOT) and activated carbon fiber (ACF) were prepared by electro-oxidation of 3-methoxy-thiophene in acetonitrile (AN). The SEM observation of the composites revealed that thin nano-structured polymer films were deposited on the surface of ACF, whose morphologies depended on the polymerization conditions. The electrochemical activities of the composites as capacitor electrodes were examined by cyclic voltammetry and galvanostatic cycling in AN. Capacitance enhancement was observed for both types of composite electrodes prepared differently. “Electrolyte impregnation method” brought about the pseudocapacitance originated from the polymer on the ACF substrate. “Monomer impregnation method” increased the double-layer capacitance based on the porous structure of ACF.
  • 中野 隆彦, 長岡 昭二, 川上 浩良
    2006 年 63 巻 3 号 p. 200-204
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    We have synthesized a novel sulfonated block copolyimide with long block chains by chemical imidization using a two-pot procedure. The proton conductivity of a block copolyimide film, i.e., NTDA-BDSA-b-6FAP (140/60) was approximately 0.45 S cm-1, which is higher than that of Nafion 117®. Additionally, we demonstrated that the proton conductivity of the block copolyimide film strongly depends on the block chain lengths. The conductivities of the block copolyimide films increased with increasing block chain lengths. This may be due to the formation of ionic channels in the copolyimide films and its dependence on the block chain length. We are currently investigating the effects of the morphology and domain size of the block copolyimide film on the proton conductivity.
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