電解重合性を有する新しいコバルトポルフィリンとして, メソテトラ (3-チエニル) ポルフィリナトコバルト (II) を3-チエニルアルデヒドとピロールから合成した. グラッシーカーボン電極への電解重合により, コバルトポルフィリンがπ共役系の2,5-チエニレン連鎖で連結された導電性ポルフィリン薄膜を得た. これを介した溶存酸素の電解還元を行うと, サイクリックボルタンメトリーにおいて
Ep=0.2V
vs. SCE付近に酸素還元由来の電流ピークが観測された. この方法では, 従来の吸着によるポルフィリン修飾炭素電極に比べ, 重合膜を形成するため安定度の高い修飾電極が得られることが分かった. 触媒担体として比表面積の大きいカーボンブラックを択び, 電解液に分散させた条件下でコバルトポルフィリンの電解重合を行うと, 炭素粒子の表面にコバルトポルフィリンの重合膜を形成可能であることを見いだした. 得られた修飾炭素粒子をNafion溶液に分散させ, 基盤電極上にキャストすることにより擬似MEA (膜電極接合体) を作製した. これを用いた酸素還元反応では, 貴な電位 (
Ep=0.44V
vs. SCE) および反応選択度 (反応電子数
n =3.8) で酸素の四電子還元が進行することが明らかになった. また, 得られた触媒を不活性ガス雰囲気下で熱処理するとさらなる活性向上が認められ (
Ep=0.47V
vs. SCE,
n =3.8), 燃料電池における白金に拠らない新しいカソード触媒としての可能性が示された.
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