高分子論文集
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68 巻, 7 号
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総合論文
  • 永島 英夫
    2011 年 68 巻 7 号 p. 393-404
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)をルテニウムカルボニルクラスターに代表されるさまざまな遷移金属触媒存在下で α, ω-ジオールと反応させることにより,脱水素シリル化反応による架橋反応が起こりシリコーンゲルが得られる.白金触媒存在下で,PMHS を α, ω-ジエンで処理すると,ヒドロシリル化反応により架橋反応が起こり,シリコーンゲルが得られる.この際,生じたゲルのマトリクス中に,触媒的架橋反応に用いた金属種が内包される.溶媒で膨潤したゲル内外の溶媒や反応基質の物質移動はすみやかであり,一方,金属種のゲル外への流出は良好に抑制される.得られた金属内包ゲルは,アルケンの異性化,芳香族ニトロ化合物の水素化などの,さまざまな有機合成反応に触媒として働く.ヒドロシリル化反応を利用して,二座配位窒素配位子としての機能をもつ架橋構造を構築し,銅塩で処理することにより,原子移動型ラジカル環化反応や不斉シクロプロパン化反応に有効な触媒を構築できる.これらのゲル触媒は,繰返し再使用可能な触媒として機能する.
  • 劉 明哲, 阿部 洋, 伊藤 嘉浩
    2011 年 68 巻 7 号 p. 405-416
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    高分子触媒の一種として,DNAzyme,リボザイム,あるいはアプタザイムと呼ばれる核酸をベースとした触媒を合成した.それらは,ランダム配列の DNA や RNA の配列の中から進化分子工学でヘミン結合性を指標に選別された.ヘミンに結合するとともに,錯体を形成し,ペルオキシダーゼ活性を示した.さらにアゾベンゼンを含むオリゴ核酸の選別にも成功した.この結合性は光照射に依存し,触媒活性も同様に光照射によりコントロールできた.次に,生体触媒の合成高分子とのハイブリッド化も行った.ポリエチレングリコールと抗体や核酸との複合体を調製し,それらが有機溶媒中でも働くことを示した.また,光応答性高分子と酵素との複合体も調製し,光照射によって有機溶媒中で触媒活性が制御できることを示した.
  • 黒木 重樹, 畳開 真之, 呉 礼斌, 難波江 裕太, 柿本 雅明, 宮田 清蔵
    2011 年 68 巻 7 号 p. 417-426
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    固体高分子形燃料電池(PEFC)の実用化において,電極触媒に用いられている白金の希少性およびコストが,本格普及の大きな障壁となっている.白金使用量が極端に少ない電極はもとより,白金を全く使用しない電極触媒を開発することが,PEFC の本格普及に向けて極めて重要である.本研究では,非白金電極触媒として非常に有望な炭素材料をベースとした白金をまったく用いない触媒(カーボンアロイ触媒)の高活性化,高耐久化を行った.用いる高分子前駆体,調製条件の最適化などを検討し,MEA 発電実験の結果,高い酸素還元活性(0.56 Wcm−2)を有しながら,500 時間以上の連続運転にも耐えうる耐久性も高い触媒の開発に成功した.
  • 竹内 大介, 桑原 純平, 小坂田 耕太郎
    2011 年 68 巻 7 号 p. 427-435
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    オレフィン重合反応において複核金属錯体触媒には,単核金属錯体触媒とは異なる特性が期待される.複核金属錯体の重合触媒の例は少ない上,その大部分は同じ金属中心を複数有するものであった.本研究では,オレフィンメタセシスを利用して二つの金属錯体を結合する新しい方法により種々の複核金属錯体を設計し,それを用いたオレフィンの重合について検討を行った.アルケニル基を有するジルコノセンのメタセシスにより,さまざまな長さの架橋鎖を有する複核ジルコノセン錯体を合成した.単核金属錯体に比べて複核金属錯体はより高い活性を示し,さらに架橋鎖がより短い複核金属錯体のほうが活性が高いことが明らかとなった.ジルコノセン錯体と後期遷移金属錯体とのクロスメタセシスにより得られる異種複核金属錯体を用いたエチレンの重合では,用いる金属の種類に応じて異なる分岐構造をもつポリエチレンが得られること,長鎖分岐を有するポリエチレン生成が認められることを見いだした.後期遷移金属上で生成したエチレンオリゴマーが,前期遷移金属上でエチレンとともに共重合することで,そのような分岐ポリエチレンが生成したと考えられる.
  • 佐藤 浩太郎, 水谷 将人, 上垣外 正己
    2011 年 68 巻 7 号 p. 436-456
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    本報では,遷移金属錯体による炭素-ハロゲン結合の活性化に基づく開始剤系の探索を行い,適切なモノマー設計を行うことで,これまでに例のない重付加機構で進行する逐次ラジカル重合へと展開可能となったことについて述べる.モノマーとして分子内に非共役二重結合と活性化可能な炭素-ハロゲン結合を有する化合物を用い,適切な遷移金属触媒を選択して重合を行うと,逐次ラジカル重付加が進行することが明らかになった.この重合は連鎖重合であるリビングラジカル重合と同様の触媒系に基づいているため,連鎖重合と逐次重合が同時に進行するこれまでに例のない重合系の開発に成功した.また,種々の配列構造が組み込まれたモノマーの設計を行い逐次ラジカル重合を行うことで,従来の重合法では不可能であった配列の制御された構造を有するポリマーも合成可能となった.以上のように金属触媒による炭素-炭素結合形成反応を用いることで,まったく新しい概念のラジカル重合系が構築された.
一般論文
  • 中山 祐正, 谷本 匡哉, 蔡 正国, 塩野 毅
    2011 年 68 巻 7 号 p. 457-463
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    Cp*TiCl3(Cp*5-pentamethylcyclopentadienyl)と一または 2 当量の K(3-R-SPy)(3-R-SPy=3-R-2-pyridinethiolate)との反応により,ピリジンチオラート配位子を有するハーフメタロセン型 Ti 錯体,Cp*Ti(SPy)Cl2(1, SPy=2-pyridinethiolate),および Cp*Ti(3-R-SPy)2Cl・H(3-R-SPy)(R=H(2a), Me3Si(2b))を合成した.錯体 2a の分子構造を X 線結晶構造解析により明らかにした.助触媒として修飾メチルアルミノキサン(MMAO)を用いてエチレンおよびスチレンの重合を行い,それらの重合触媒作用を検討した.モノ(ピリジンチオラート)錯体 1 はエチレンの重合に対して中程度の活性を示し,分岐の少ない直鎖状の高分子量ポリエチレンを与えた.触媒活性は 1>2a>2b の順に低下した.スチレンの重合では,モノ(ピリジンチオラート)錯体 1 が高い活性を示し,高シンジオタクチックポリスチレンを与えた.ビス(ピリジンチオラート)錯体 2a および 2b はスチレン重合活性をほとんど示さなかった.
  • 中島 江梨香, 上野 智永, 行本 正雄, 武田 邦彦
    2011 年 68 巻 7 号 p. 464-472
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    ポリカーボネート(PC)にリン系化合物,超強酸触媒,酸化亜鉛を添加し,垂直燃焼試験を行った.リン系化合物においては,10 部程度の添加量で燃焼抑制効果があり,超強酸触媒と酸化亜鉛では,少量の添加で著しい燃焼抑制効果があり,燃焼後の試料表面に滑らかな薄い炭化膜が形成された.一般的に,リン系化合物を添加すると PC-neat よりも熱重量減少温度が上昇し,燃焼が抑制されるといわれている.しかし,熱重量減少試験において,超強酸触媒,酸化亜鉛を加えた試料は,PC-neat よりも熱重量減少温度が低下し,炭化物残渣の量が低下した.無機多孔性ガラスの分野では,温度上昇過程において,早い段階で分相する場合,スピノーダル的に分相することが知られており,本研究でも,超強酸触媒,酸化亜鉛が触媒的に作用し,溶融するポリマーが早い段階で分相するため,表面に滑らかな炭化薄膜を形成し燃焼を抑制した.以上のことからポリカーボネートに触媒を添加した場合,粒状に炭化物ができる場合と層状にできる場合があり,層状にできた場合は,熱分解温度が低くなり炭化物残渣の量が少なく,燃焼がより抑制されることがわかった.
  • 平岡 優一, 谷池 俊明, 草野 正浩, 生駒 嘉晴, 寺野 稔
    2011 年 68 巻 7 号 p. 473-478
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,MgCl2 担持型 Ziegler-Natta 触媒において典型的な共粉砕法による触媒と,高性能な化学反応法による触媒とを比較することで,触媒の調製方法が及ぼす,粒子モルフォロジー,Ti 種の粒子内空間分布,活性点構造などへの影響をミクロな活性点とマクロな粒子レベルを対象として検討した.触媒粒子からポリマーへの粒度分布の推移が活性 Ti 種の粒子内空間分布の状態の違いによって異なっており,重合初期の粒子の解離挙動の違いが重合反応挙動およびポリマーの粒子モルフォロジーに大きな影響を与えていることがわかった.またストップフロー重合法によって得られたポリマーの TREF 解析から,触媒粒子内に複数種存在する各活性 Ti 種の割合が触媒によってそれぞれ異なり,触媒調製方法が個々の活性点の分子レベルでの構造形成よりも活性点の存在割合の変化によって総合的な触媒性能に影響を与えていることが示された.
  • 高橋 彰吾, 和田 透, 谷池 俊明, 寺野 稔
    2011 年 68 巻 7 号 p. 479-483
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    Ziegler-Natta 触媒の活性種となる Ti 種の MgCl2 担体上での分散状態を制御可能な TiCl3 モデル触媒を用いてプロピレン単独重合および,エチレン・プロピレン共重合を行った.活性化された MgCl2 粉末に TiCl3・3Pyridine 錯体を添加した後にジエチルアルミニウムクロライドを導入することによって TiCl3/MgCl2 モデル触媒を得た.調製する触媒の Ti 担持率を変化させて,プロピレン単独重合を行ったところ,0.1 wt.-%以下の領域で立体特異性を含む諸性能が一定になることを見いだした.一方,高 Ti 担持率においては TiCl3 の凝集に起因する立体特性やポリマーの分子量の増大が起こった.さまざまな種類の外部ドナーを添加したプロピレン重合で得られたポリマーを分析したところ,外部ドナーは凝集した Ti 種よりも孤立した Ti 種に効率良く作用し,立体特異性の低い活性点を高立体特異的活性点に変換することがわかった.このモデル触媒を用いてエチレン・プロピレン共重合を行った場合,担持率,ドナー,有機アルミニウム処理などの条件の変化はコポリマーの組成を変化させたが,共重合収量に大きく依存した.
  • 日名子 栄人, 設楽 吉郎, 佐藤 崇, 山口 佳隆, 伊藤 卓
    2011 年 68 巻 7 号 p. 484-492
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    アセチルアセトンと第一級アミンである N, N-ジエチルエチレンジアミンの脱水反応により β-アミノケトン(1-H)を合成した.化合物 1-H を塩基で処理した後,塩化鉄(II)あるいは臭化鉄(II)と反応させることで,β-アミノケトナト配位子が三座で配位した鉄錯体(2-Cl および 2-Br)を黄色固体として得た.β-アミノケトナト配位子を有する鉄錯体の構造解析を行った結果,β-アミノケトナト配位子の三つの配位原子と鉄原子は同一平面上に存在する構造であった.鉄錯体 2 と有機ハロゲン化物を開始剤に用いたスチレンのラジカル重合反応を行った.反応における鉄錯体および開始剤に含まれるハロゲンの影響を検討した.その結果,臭素配位子を有する鉄錯体(2-Br)と臭素系の開始剤である(1-ブロモエチル)ベンゼン(1-PEBr)を用いた場合,転化率の向上に伴い分子量の増大が観測された.得られたポリスチレンの末端解析およびこのポリマーを開始剤として用いたスチレンの重合を検討したところ,分子量の制御されたラジカル重合が進行していることがわかった.
  • 貝塚 亙輔, 宮村 浩之, 小林 修
    2011 年 68 巻 7 号 p. 493-508
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    活性炭担持高分子カルセランド型二元金属ナノクラスター触媒(PI-CB/Au-Pt, PI-CB/Au-Pd)を開発し,アルコール類の酸素酸化反応および酸化的直接エステル合成へ適用した.PI-CB/Au-Pt は中性条件下でアルデヒドおよびケトンを,塩基性条件下でカルボン酸を選択的に与える一方,PI-CB/Au-Pd は酸化的直接エステル合成に高い活性を示した.二次担体の検討結果より,クラスターは一次担体である高分子中に固定化されており,その高分子自体が反応場となっていると考えられる.STEM および EDS による観察から,Au-Pt クラスターはおよそ 1:1 の金と白金から成ること,それに対して Au-Pd クラスターはおよそ 4:1-3:1 の金とパラジウムから成ることが明らかとなった.このクラスター構造の違いが,アルデヒドあるいはカルボン酸への反応経路とヘミアセタール化を経由するエステルへの反応経路を制御していると考えられる.このような金を主体とする二元金属ナノクラスター触媒によるアルコール類の酸素酸化反応において,金属の組合せによって反応経路の制御を実現した例は本報が初めてである.
ノート
  • 渕上 清実, 平田 俊輔, 澤田 悠希, 藤村 英史, 花崎 知則
    原稿種別: ノート
    2011 年 68 巻 7 号 p. 509-516
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    A living radical polymerization is well-known method and is extremely useful to synthesize functional polymers. Therefore, a large number of studies have been made hitherto in order to obtain useful materials and to improve the method. One of the most important factors that influence the reaction is temperature. Lower polymerization temperature will make it possible to introduce a biopolymer into a synthetic polymer. In this study, we focused on the evaluation of the catalytic activity of barbituric acid derivatives on radical polymerization. The role of the barbituric acid derivatives and the possible reaction mechanism of the living radical and the free radical polymerizations are discussed from 1H NMR spectroscopy results, the effectiveness of the derivatives for the polymerization has been confirmed.
  • 安岡 幸作, 金岡 鐘局, 青島 貞人
    原稿種別: ノート
    2011 年 68 巻 7 号 p. 517-519
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/27
    ジャーナル フリー
    EtAlCl2/SnCl4 is an initiating system for the living cationic polymerization of various p-substituted styrenes in the presence of added bases, but neither cis- nor trans-β-methylstyrene (βMeSt) can be polymerized by it. In contrast, after adding p-methylstyrene, the random copolymerization of trans-βMeSt proceeded, producing copolymers with up to 30% of βMeSt content as confirmed by 1H and 13C NMR spectroscopy. In addition, long-lived cationic species were observed at −78°C, which could not be observed in the polymerization of the cis-isomer. The copolymer of the trans-isomer had a higher stereoregularity compared to that of the cis-isomer. Copolymerization of trans-anethole, a more reactive βMeSt derivative having a p-methoxy group, with pMeSt proceeded in an alternating fashion. Thus, the successful copolymerization of βMeSts, generally considered difficult to polymerize, was achieved by the judicious choice of the comonomer with appropriate reactivity and a suitable initiating system.
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