高分子論文集
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47 巻, 8 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 星村 義一, 山本 滋
    1990 年 47 巻 8 号 p. 623-629
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンをフッ素ガス処理 (処理条件: ガス濃度10%, 10h, 室温) すると耐熱性, 耐酸化性のフッ素化ポリエチレンが作成される. このフッ素化ポリエチレンを部分放電し, 部分放電10時間までカルポニル基が生成せず, 重量の変化もなく, 耐放電性であることを明らかにした。カルボニル基が生成しても30時間放電の量は, 未処理の5時間に相当し, 6倍の放電時間まで耐放電性が改善されていることを見いだした. ESCAにて処理条件と結合エネルギーの関係について調べた. フッ素の結合量は, ガス濃度, 時間, 温度を調整することにより変化し, ポリエチレンの特性を持ったフッ素化ポリエチレンの作成が可能である. 微細ポリエチレンをフッ素処理し, この試料でケーブルなどを作成することにより, 耐放電性ケーブルができる. X線回折, 赤外分析による結晶化度を調べ部分放電との関係も詳細に検討した.
  • 長江 肇, 川瀬 薫, 坂見 宏, 飯田 昌造, 早川 浄
    1990 年 47 巻 8 号 p. 631-638
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    Na-モンモリロナイト (Mont) または, Na-フッ素四ケイ素雲母 (TSM) に水, アクリルアミド (AAm) を添加後, 乾燥して得た, 複合フィルムについて, AAmの吸着及び重合を検討した. 複合フィルムの層間距離は, X線回折測定からMont系では9.6Å及びTsM系は8.8Åであった. 複合フィルム中の結晶量は示差熱分析 (DSC) によりAAmの融解熱から算出した. 示差熱分析で得たAAmの結晶量は初めに添加したAAm量より著しく少ないことが分かった, 未結晶のAAmは, 層間距離から算出した層間容積に納まるAAm量 (1/K) にほぼ等しい. 結晶として存在するAAm量は, 層間以外の部分に吸着されている. 複合フィルム中のAAmはガンマ線照射により容易に重合することが分かった. 重合率は照射時間に対してほぼ直線的に増加した. 重合した複合フィルムの層間距離は未照射の複合フィルムと変わらなかった.
  • 尾形 正次, 金城 徳幸, 江口 州志, 河田 達男, 浦野 孝志
    1990 年 47 巻 8 号 p. 639-647
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    平均分子量が異なる4種類のo-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂に硬化剤としてフェノールノボラック樹脂を用い, 硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾール (EMI), N-メチルピペラジン (MP), トリフェニルホスフィン (TPP), テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート (TPP-TPB) を用いた場合の橋かけ密度と硬化物物性の関係を検討した. 橋かけ密度はエポキシ樹脂の平均分子量が大きいほど, また, 硬化促進剤はEMIを用いた場合に高い値を示した. 橋かけ密度 (ガラス転移温度) が高い硬化物はゴム領域では熱膨張係数が小さく, ガラス領域では大きな値を示した。また, 橋かけ密度が高い硬化物はガラス領域の弾性率が低く, 飽和吸湿率, 水の拡散係数, 透湿率, 比容積が大きな傾向が認められた. これらのことから高度に橋かけした樹脂は分子のパッキング状態が疎になっていることが推察されるが, このような橋かけ密度と硬化物物性の関係は, 橋かけ密度を原料エポキシ樹脂の分子量で変えた場合も硬化促進剤の種類で変えた場合も同様に観測された.
  • 浜谷 健生
    1990 年 47 巻 8 号 p. 649-653
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ガラスを含むいくつかの担体上に, ポリエチレンイミン (PEI) がよく結合することが予備実験的に確かめられた. そこで無電解めっきの前処理に用いられるアミノシランの代わりとしてPEIが使えるかどうかについて検討した. すなわち, PEIの種々の担体上への被覆率, 生成したPEI被覆担体へのパラジウムイオンの吸着量ならびに無電解ニッケルめっきの可能性などについて検討した. また, PEIの特異性を示すために二, 三のアミノ基を有する他の高分子を用いた場合の結果とも比較検討された. 結論として, PEIはガラスや種々の疎水性高分子担体上によく吸着し, 生成したPEI被覆担体はパラジウムイオンを吸着した後, 無電解的に金属を析出させうることが明らかとなった. すなわち, PEIは無電解めっき用担体の前処理剤 (被覆剤) としてアミノシランに代わりうる有効な物質であることが示唆された.
  • 山本 隆司, 石原 一彦, 中林 宣男
    1990 年 47 巻 8 号 p. 655-658
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    歯質と歯科用レンジを接着するために合成されたメタクリル酸メチル (MMA) -p-スチレンスルホン酸共重合体 (MS) が, 歯質と接着する機構をより詳細に調べた. MSとCa2+または歯質の主要構成成分であるハイドロキシアパタイト (HAP) を反応させて, その反応物の赤外線吸収スペクトルを測定し, MSがHAP由来のCa2+と反応していることを確認した. さらに, MS水溶液で処理した牛歯表面をX線光電子分光計にて元素分析を行い, 表面にMSの存在を確認した. これらの結果は, MSが歯質中のHAPと反応して, 歯質表面に沈着することを示唆し, これまで報告した歯科用レジンとの接着機構をより明らかにするものであった.
  • 池田 能幸, 川並 英彦
    1990 年 47 巻 8 号 p. 659-666
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アクリル酸ブチルマクロマー (McBA) とスチレン (St) を用いてイニファタ法によるリビングラジカル重合でSt・McBA・St・McBA・St型のブロック・グラフトポリマーを合成した. 得られたポリマーをホットプレスした試料について, 動的粘弾性, 電子顕微鏡, 及び引張試験にみられるミクロドメイン構造を検討した. St2・McBA・St1・McBA・St2型ブロック・グラフトポリマーのSt1とSt2の分子量, あるいは枝分子となるマクロマーの分子量を変えると, ミクロドメイン構造はSt, BAの両相が連続相から, Stが連続相でBAが分散相, さらにはStが分散相, BAが連続相などの状態を示し, かなりの変化が認められた. このドメイン構造の変化は動的粘弾性や引張試験に顕著に反映していることが確かめられた.
  • 枝 義人, 三谷 勝男
    1990 年 47 巻 8 号 p. 667-673
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    無乳化剤乳化重合条件下で疎水性のスチレンと親水性のメタクリル酸グリシジルをあらかじめ共重合してseed粒子を形成した後, 引き続きスチレンを滴下添加して重合を継続することにより, seed共重合ラテックス粒子を得た. Seed粒子形成時の連鎖移動剤の添加, 二段目に添加するスチレンへの油溶性染料の混合, 粒子断面の顕微鏡観察及び石けん滴定による表面親水性度の測定を行い, seed共重合の重合機構を検討した. 本seed共重合条件下では二段目に添加するスチレンが水媒体に可溶化した後seed粒子に浸透し, 粒子内におけるモノマーの拡散と親水性ドメインとの相分離の競争反応で粒子の成長をきたし, ランダム共重合粒子とは異なり, 粒子内部のみならず粒子表面においても相分離構造が形成され親水性ドメインが局在化した親水基局在化ラテックス粒子が得られたものと考えた.
  • 進藤 忠文, 瓜生 敏之
    1990 年 47 巻 8 号 p. 675-681
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    フェニルベンゾエート基をメソゲン基とする1官能液晶性アクリレートモノマーの電子線固相重合時の温度の影響について検討した. 液晶性モノマーの各相 (結晶, 液晶, 等方性液体) で重合させたところ, ポリマーの収率は反応温度よりも, 相状態に依存し, 等方性液体より液晶相の方が反応性が大きいことがわかった. これらは液晶相で形成される分子の配向に起因するアクリロィル基の立体的な影響であると考えられる. メソゲン基を有するが非液晶性のアクリレートモノマー及びメソゲン基を持たない結晶性メタクリレートモノマーに, フェニルベンゾエート誘導体の液晶性化合物を混入して重合したところ, メソゲン基を有する非液晶性モノマーは液晶性化合物の添加量に比例して反応率が増加した. しかしながら, メソゲン基を持たない結晶性モノマーの反応率は液晶性化合物の添加量に依存しなかった. メソゲン基を有するモノマーとの混合物は偏光顕微鏡観察で, モノマーと液晶化合物がそれぞれ局在化していること, また示差走差熱量計 (DSC) では液晶相を示す発熱ピークが観測された. このように液晶化合物を添加した重合系は, 固相重合における反応性制御の新しいマトリックスであると考えられる.
  • 高瀬 巖, 三田村 博, 久松 恵, 相田 博, 高亀 寿
    1990 年 47 巻 8 号 p. 683-689
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    α-メチルスチレン (MS) とアクリロニトリル (AN) のコポリマー鎖にN-フェニルマレイミド (PMI) またはN-P-クロロフェニルマレイミド (CPMI) を3~17mol%導入した5種のMS-AN-PMI及びMS-AN-CPMIターポリマーをそれぞれ合成した. 得られたターポリマーの熱的性質に及ぼすPMI及びCPMI組成の影響を検討した結果, PMI及びCPMI組成の増加に従ってガラス転移温度 (Tg), 軟化温度 (Tsoft), 及び熱分解開始温度 (Td) が著しく上昇することを認めた. これより耐熱性に優れる環構造のマレイミド単位をMS-ANコポリマー鎖に適量導入することによりコポリマーの熱的性質を必要に応じて改善できることが明らかとなった.
  • 松原 凱男, 田所 淳人, 角山 功, 吉原 正邦, 前嶋 俊壽
    1990 年 47 巻 8 号 p. 691-693
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリメチルメタクリレート (PMMA), ポリメチルビニルケトン (PMVK), イオン交換樹脂, 及びキレート樹脂をそれぞれ担体としてFe2+あるいはCu+を担持させ, このものとアスコルビン酸混合系を不均一系ヒドロキシラーゼモデルとし酸素雰囲気下ベンゼンの直接水酸化を検討した. この結果, 1回目のバッチ反応では, Fe2+及びCu+いずれの系においても高分子担体を用いた方が用いないブランク系よりもフェノールの収量は極めて良好な結果を与え, 特に, Fe2+-MMA及びFe2+-MVK系ではブランクよりもおおよそ20倍もの高収量を示した. 一方, 反応系の生成フェノール濃度を上昇させる目的で, 連続的にバッチ反応の繰り返しによる影響について検討を行った結果, 3回目のバッチ反応において, Fe2+-MMA及びFe2+-MVK系ではブランクの系よりもおおよそ20倍もの高収量を示した.
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