高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
34 巻, 2 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 飯田 昌造, 坂見 宏
    1977 年 34 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 1977/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高密度ポリエチレンのネッキング応力σnに及ぼす延伸速度および温度の効果について研究した. 著しく低い延伸速度におけるσn, すなわち臨界ネッキング応力σcを結晶相と変形過程で結晶の破壤によって生ずる非晶相の間の相平衡の問題として検討した. σc=xΔGm/ (αn-1) という近似式が熱力学的に導かれた. ここでXは結晶化度, ΔGmは融解に関するギブスの自由エネルギー, αnはネック延伸比である. 実験により33~105℃において求めたσcはこの式で計算した値と一致した. ネッキング応力の延伸速度・温度効果を非晶相の粘性流動の観点から検討し, ネッキング粘度から導かれるシフト因子は1ないし5×105mm/minの延伸速度でWilliam-Landel-Perryの式に従った.
  • 川口 春馬, 大塚 保治
    1977 年 34 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 1977/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリオキシエチレン型アニオン乳化剤であるドデシルポリオキシエチレン硫酸ナトリウム (EA) とCeIVとのレドックス系で開始されるスチレン (St) の乳化重合に関する研究で次の知見を得た. (1) EA/CeIVのモル比によりEA-CeIV錯体の構造が変化し, その比が小さい時形成される錯体は, 重合開始に有効でない. 効果的な速度で重合を進行しうるEA/CeIV比の下限はEAのオキシエチレン付加モル数に依存する. (2) 重合速度Rpと重合度Pnは, 次のような [EA], [Ce] の関数で示される.
    EAKkdはオキシエチレン付加モル数とともに増大するが, 親水性が等しい非イオン乳化剤のKkdより小さい. これはEAの末端基どうしの斥力のためと考えられる.
  • 飯田 昌造, 坂見 宏
    1977 年 34 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 1977/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    前報において結晶性高分子のネッキング応力を熱力学的に導き, σcn=xΔSm (Tm-T) / (αn-1) と表した. ここでσcnは極めて遅い延伸速度における臨界ネッキング応力, xは結晶化度, ΔSmはΔHm/Tmで定義される融解のエントロピー, ΔHmは融解熱, Tmは融点, Tは延伸温度, αnはネック延伸比である. 高密度ポリエチレンのネッキング応力はこの式から計算したものとよく一致した. 本報では, PEと同様にPP, POM, PET, PCTFE, PTFE, Nylon 6, Nylon 66といった各種の結晶性高分子にこの式が適用できるかどうかを調べた. σcnとαnをネック延伸の実験から求め, xを密度から求めた. そしてこの式を用いて各種の高分子の融解のエントロピーΔSmを計算した. この方法で求めたΔSmは熱量測定から求まる値とほぼ一致した. その結果ネッキング応力に関する式は定重的に各種結晶性高分子に適用できることが結論された.
  • 野間 夬之, 丹羽 政三, 吉田 孝男, 根角 忍
    1977 年 34 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 1977/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ビネイソプロピルギサントゲシCH3CH (CH3) -OC (S) -SS-C (S) O-CH (CH3) CH3 (BX) の存在下でのスチレン (St) のラジカル重合をベンゼン中70℃で行った. ポリマー分子当たりの末端キサントゲン (X) 基数 (Na/2) は, 仕込みのモル比 [BX] 0/ [St] 0の高い場合を除けば, 重合率の増加とともに減少した. 数平均重合度および硫黄量の両方を重合率0に外挿して連鎖移動定数を決定し, 4.43を得た. 窒素気中で水酸化カリウムのエタノール溶液またはモルホリンによるポリマー末端のX基の加水分解は円滑に完全に進行した. しかしながら, 加水分解ポリマーは末端チオール基を理論量の約70%しか含有せず, 末端チオール基の消費量に相当する (高い) 分子量を示した. BX存在下におけるStとジビニルベンゼンの共重合は, 適当な条件のもとでは, ゲル化なしに高重合率まで進行した. コポリマーの (Na/2) 値はホモポリマーよりもかなり高く, 加水分解コポリマーは酸化によって不溶性のコポリマーに変わった.
  • 住田 雅夫, 日内地 芳和, 宮坂 啓象, 石川 欣造
    1977 年 34 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 1977/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高密度ポリエチレン (PE) に粒子径の異なる球状ガラス粒子 (平均粒子径=35, 65, 105μ) を混練し, 一軸延伸試料の分子配向に及ぼすfillerの充てん量, filler sizeの影響を, 主として, 偏光けい光法, Sonic modulusの測定から解析した. 延伸倍率の増大とともにけい光染料の配向度は増大し, 同一延伸倍率の試料では染料の配向度は, fillerの充てん量の増大, fillerの粒子径の減少 (したがってfillerの表面積の増大) によって減少する. 高分子の分子配向に強い感受性を示すSonic modulusの測定結果はけい光法での測定結果と同一の傾向を示した. これらの測定結果から, 充てん高分子の高延伸物では, fillerの充てんによって配向が全く影響を受けない部分 (完全配向) と配向が完全に妨げられる部分 (完全無配向) が形成されることを推定した. そしてこの配向が完全に妨げられる部分はfiller表面に形成される高分子相から成るものと考えられる. けい光法と音速法からこのようなモデルによって計算した無配向成分の分率の値は近似的に一致する.
  • 岩倉 賢次, 藤村 敏一
    1977 年 34 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 1977/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高密度ポリエチレン/パーライト充てん系の融液レオロジー特性に対する, 充てん剤の多孔構造および化学的カップリングの影響を, ワイセンベルグレオゴニオメーターと毛管粘度計により測定し, 界面相互作用や成形加工性について検討した. (1) ガラスビーズ充てん系と比べ, 粘度や降伏値が大きく, エチレンー酢酸ビニル共重合物やエチレン系イオノマーでの含浸処理によりさらに増大したことより, 多孔不規則構造による力学的投錨作用と化学的カップリング作用の総合効果によって, 界面相互作用が増大することが予測される. (2) これらの相互作用は, 高せん断速度で急速に弱まることから, 成形加工性低下への影響は少ないようである.
  • 江藤 昌平, 中島 博行, 西崎 俊一郎
    1977 年 34 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 1977/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ビス[4-(2-ヒドロキシエチルオキシカルボニル) フタルイミド]-4,4′-ジフェニルメタン, ビス[4-(2-ヒドロキシエチルオキシカルボニル) フタルイミド]-4,4′-ジフェニルェーテルとビス (2-ヒドロキシエチル) テレフタレートからポリエステルイミドを合成した. これらの単独重合体, 共重合体に関し, 溶液粘度, 溶解性, 熱安定性, 結晶性, 転移温度を調べた. これらのポリエステルイミドは, 極限粘度でm-クレゾール溶媒において0.32~0.70dl/gを示し, DMA, DMF, NMP, クロロホルム, m-クレゾールに可溶であった. また, イミドエステル成分の増加は熱安定性の向上をもたらしたが, 一方, 結晶性を低下させた. 共重合体において, イミドエステル成分の比率を変えて共重合体の融点曲線を形成し, Floryの無秩序共重合体の融解理論から繰り返し単位当たりの融解熱および融解エントロピーを算出した.
  • 篠田 清徳, 得猪 治輔
    1977 年 34 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 1977/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    いろいろな溶媒中で数平均分子重18700, タロロメチル化率66.6%のクロロメチル化ポリスチレン (CMPS) のトリエチルアミン (TEA) によるアミノ化反応を行い, 反応温度の効果を検討した. CMPSのアミノ化は求核置換反応でTEAとタロロメチル基の濃度に比例すると考えられる二次反応で進行した. 反応速度は溶媒の凝集エネルギー密度 (CED) およびET値が大きくなると増大する傾向が認められた. プロトン性溶媒を用いた場合, TEAと溶媒の水素結合のため大きな活性化エネルギー (EA) が得られ, 非プロトン性溶媒では活性化錯体は強く溶媒和を受けるため, 活性化エントロピー (ΔS≠) に大きく左右される結果が得られた. EAとΔS≠の間には補償効果を示す直線関係が確かめられ, 溶媒のCED値に対してEAおよびΔS≠の間にはいずれも130と150cal/mlの範囲にピーク値を示す山型関係が得られた.
  • 田中 良明, 松田 和夫
    1977 年 34 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 1977/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリテトラメチレンエーテルグリコールの合成を目的として, 開始剤に発煙硫酸およびフッ化カルシウム, フッ化ナトリウムなどの含フッ素化合物から成る系, または発煙硫酸および五酸化バナジウム, 三酸化クロムなどの金属酸化物から成る系を用いてテトラヒドロフランを重合した. その結果, 発煙硫酸単独開始剤ではみられなかった分子量の増大が認められた. これら二元系開始剤による重合での分子量増大現象は系中に生成するトリ硫酸アニオンが主に, 対アニオンとして生長末端の安定化, すなわち停止反応の抑制に大きく寄与しているためと推定した.
  • 田中 良明, 松田 和夫
    1977 年 34 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 1977/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリテトラメチレンエーテルグリコールを得る目的でテトラヒドロフランをトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム・過塩素酸ナトリウムなどの超強酸塩, 有機酸無水物および硫酸から成る3成分系開始剤により重合した. その結果, 比較的短時間に着色の少ない重合体が収率よく得られ, しかも超強酸塩の回収再使用が可能であった. 分子量は硫酸量で調節でき, 分子量分布はフルオロ硫酸や発煙硫酸を開始剤として得られるもの (狭い分布) と無水酢酸-過塩素酸系開始剤で得られるもの (広い分布) との中間であった. 酸無水物としてo-スルホ無永安息香酸を用いると, 生成ポリマーの末端基の加水分解が無永酢酸を用いて得られるポリマーと比べて極めて容易であった. また, phenoxyl end-capping法を用いで生長反応速度定数を求めた, kp=1.56×10-3l/ (mol・sec) (1℃).
  • 結城 康夫, 木之下 光男
    1977 年 34 巻 2 号 p. 143-150
    発行日: 1977/02/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    2-アミノ-4-アニリノ[1]および (N-メチルアニリノ) -6-イソプロペニル-1,3,5-トリアジン[2]のニトロ化により, それぞれ相当する (p-ニトロアニリノ) [3]および (N-メチル-p-ニトロアニリノ) -トリアジン[4]を得た. [4]を亜鉛末-塩化ナトリウム系で還元して2-アミノ-4-(N-メチル-p-アミノアニリノ-6-イソプロペニル[7]およびイソプロピル-1,3,5-トリアジン[8]を得た. [3], [4], [7] (M2) とスチレン (M1) との共重合を行い, 共重合パラメーター (r1, r2, Q, e) を求めた. このうち[2], [4], [7]についてはモノマー反応性比の逆数 (1/r1) はHammettの置換基定数とρ=+0.21の関係が認められた. また[1], [3]のグループではρ=+0.11の値が得られた.
  • 細田 喜六郎, 椎名 直礼, 門脇 芳雄, 上野 英世
    1977 年 34 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 1977/02/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンの橋かけと発泡とを同時に行うと, 橋かけ度の高い熱変形性に優れた発泡体が得られる. この理由を明らかにするため, 橋かけ剤と発泡剤の配合割合を変え, これら両剤が分解する温度に直接加熱して, 得られる発泡体の比容および気泡径を測定した. この方法では, 橋かけ剤の分解熱で発泡剤の分解が早まり一部の膨張が橋かけが終らないうちに起こるため, 橋かけ剤の配合量が比較的多い場合も膨張を抑制せず. 高い橋かけ度の発泡体になる. 又ガス加圧下で橋かけに引続いて発泡させ, この膨張を気泡の最密充てん以下にし, 次いで再加熱して膨張させると気泡の集合しない発泡体が得られる.
feedback
Top