高分子論文集
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36 巻, 3 号
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  • 岡橋 和郎, 二口 通男, 柴山 恭一
    1979 年 36 巻 3 号 p. 135-139
    発行日: 1979/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛塩 (DFDC-Zn) によるエポキシ樹脂の硬化反応の知見を得るために, この樹脂のモデル化合物であるフェニルグリシジルエーテル (PGE) とDEDC-Znとの重合を80~150℃の温度で無溶媒下で行い, 130℃の温度で溶媒下 (メタノール, トルエン) で行った. 無溶媒重合の場合は次の速度式で進行する. -d [PGE] /dt=k3 [PGE] [DEDC-Zn] 2. 活性化エネルギーは13.4 kcal/mol, 活性化エントロピーは-25 cal・mol-1・deg-1である. 溶液重合における速度定数は, メタノール溶媒の場合は大きくなり, トルエン溶媒の場合は小さくなる. DEDC-ZnのN原子の置換基を変化させて (メチル基, n-プチル基, ベンジル基) PGEの重合を行うと, N原子置換基の分子が小さいほど重合速度は大きい. 以上のことは, DEDC-ZnによるPGEの重合がDEDC-ZnのN原子とZn原子がエポキシ基に関与して環状錯体構造を形成するSN2機構によって, 進むことを示している.
  • 井上 和夫, 星野 貞夫
    1979 年 36 巻 3 号 p. 141-146
    発行日: 1979/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    溶融状態から急冷したポリ (m-キシリレンアジパミド) の非晶試料の吸湿特性について検討した. 50℃において, 低湿度では収脱着曲線に特に異常な挙動は見られないが, 約60% RH 以上では収着曲線がいったん極大を示した後, 著しく減少する現象が認められた. 吸湿前後の試料のX線回折および熱的性質の変化から, 吸湿によるガラス転移温度の低下に伴う結晶化温度の低下により, 吸湿によって試料が結晶化することがその原因となっていることが分かった. 結晶化による吸水率の減少率は体積非晶化度の減少率にほぼ等しく, 非晶相に収着された水は非晶相の結晶化に際して結晶内に取り込まれず結晶外へ析出し, さらに, 析出した水は結晶間にとどまることなくポリマー系外へ排除されることを示している.
  • 井上 和夫, 星野 貞夫
    1979 年 36 巻 3 号 p. 147-153
    発行日: 1979/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    吸湿によるポリ (m-キシリレンアジパミド) の結晶化の過程を, 結晶化の際の吸水率の変化をもとに解析した. 結晶化による吸水率の減少量と非晶化度の減少量との関係から, 結晶化の際に水は結晶外へ完全に析出すると推察される. したがって, 吸水率の変化は, (1) 吸湿過程, (2) 吸湿による結晶化に伴う結晶外への水の析出過程, (3) 析出した水の拡散過程, の三つの過程に帰着される. 拡散方程式と結晶化速度式とを組み合わせて数値計算を行うことによりこれらの過程を解析し, 実測値と極めてよく一致する吸水率の変化の計算値を得た. 計算結果を解析することにより, 結晶化の過程および結晶化の際の水の挙動に関する知見を得た.
  • 藤村 敏一, 鈴木 博
    1979 年 36 巻 3 号 p. 155-161
    発行日: 1979/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高密度ポリエチレンの伸び切り鎖結晶 (ECC) 分子複合物の連続生産を図るために, 解析しやすい断面縮小スリットダイス型より押出した. そして, 引張弾性率, 結晶化度に対する, 流動延伸, 試料ブレンドの影響, ECC分子複合物の可能性を考察した. 延伸率, 延伸速度の増加に伴い, 引張弾性率は向上したが, 結晶化度はあまり変わらなかった. これは, 延伸速度が不安定流動により制限されたことや, Deborah数が不十分であったためと思われる. 押出温度を低くすると, ダイス型内で固化が起こったが, その試料は引張弾性率, 結晶化度が格段に向上した. 粘度に大差のある試料のブレンドは, 引張弾性率, 結晶化度, 流動安定性に有効な場合があった. 押出し直後の延伸, 吐出圧力の増大によって, 分子複合物連続生産の可能性があると思われる.
  • 佐藤 行彦
    1979 年 36 巻 3 号 p. 163-168
    発行日: 1979/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンの誘電的γ分散に及ぼす結晶化度の影響を調べるため, 熱処理により結晶化度を変えた高圧法・中圧法・低圧法ポリエチレンの誘電損失 (tan δ) を23℃, 500 MHz で測定した. tan δは結晶化度の増加とともに直線的に減少し, 又, この変化は熱処理の繰返しに対しても可逆的であった. 分岐のないポリエチレンの結晶格子定数から求めた結晶相の密度 (ρc=1.014 g/cm3) とn-paraffinの比容の温度変化から求めた無定形相の密度 (ρa=0.850 g/cm3) とを用いて算出した結晶化度 (χw) に対しtan δをプロットすると, いずれの製法のポリエチレンにおいでも, χw=100%でtan δはほぼ0となる傾向があることが分かった.
  • 下川 洋市, 三山 創
    1979 年 36 巻 3 号 p. 169-174
    発行日: 1979/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ-ε-カプラミドにギ酸の存在下でホルムァルデヒドとアリルァルコールを反応させて合成したN-アリロキシメチル化ポリ-ε-カプラミドは高感度の橋かけ型感電子線性材料になる. N-アリロキシメチル化率が25~30%以上でメタノールあるいはエタノール-水混合溶媒などのアルコール性溶媒に可溶となり, 薄膜の形成, 現像が可能となるが, 35~40%付近が好適である. 橋かけ不溶化に必要な最小照射量は5×10-8クーロン/cm2と高感度で, 解像力も良好である. 芳香族ケトン類などの光増感剤を添加すると, 橋かけ型感光材料としても利用できる.
  • 片岡 清一, 安東 忠直
    1979 年 36 巻 3 号 p. 175-181
    発行日: 1979/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    トリクロル酢酸とジクロルメタン, クロロホルムあるいは1, 2-ジクロルエタンとの混合溶媒にキチンを溶解し, キチン溶液からフィルムを作成するときの条件を, フィルムの強度を比較することによって検討した. キチンはハロゲン酢酸のうち, ジクロル酢酸およびトリクロル酢酸と低級ハロゲン炭化水素との混合溶媒に溶解した. トリクロル酢酸と1, 2-ジクロルエタンの混合溶媒はトリクロル酢酸の含量25~67 wt%の範囲でキチンを溶解し, 35~40 wt%が最もよい溶剤である. 又, 溶液中のキチン濃度および溶解時の温度はフィルムの強度を大さく変え, 室温 (27~32℃) 溶解では数時間で強度低下を起こすが, 15℃および0℃では溶解に伴う強度低下がほとんどみられず, 引張り強度が9.4~9.5 kg/mm2のものを得た. 再成キチンフィルムは元素分析値および赤外スペクトルがキチンとほぼ一致し, 吸湿性の大きいセロハンに似たフィルムである.
  • 森 哲夫, 山田 哲郎, 田中 隆一, 田中 武英
    1979 年 36 巻 3 号 p. 183-187
    発行日: 1979/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ (L-グルタミン酸) (PGA) とポリ (オキシエチレングリコール) (PEG, Mn=300) のジメチルホルムアミド (DMF) とジオキサン-水混合溶媒 (D-W, 容積比で3対1) の濃厚溶液およびこれから溶媒を蒸発させて調製した固体膜の高次組織を, レーザー光小角光散乱と偏光顕微鏡観察により調べた. PGAとPEGの重量比を100/0から40/60まで変化させた. すべてのDMFおよびD-W濃厚溶液中にコレステリック液晶相が形成される. DMF溶液から調製した固体膜ではPGA含量が100%と90%の場合, HV散乱像は十型となり偏光顕微鏡像は棒状組織の集合体であるが, 80%から40%ではHV散乱像は×型であリコレステリック液晶構造が偏光顕微鏡により観察される. 一方, D-W溶液から調製した固体膜のHV散乱像はすべて×型となり球晶状のコレステリック液晶や縞模様が観察される.
  • 森 哲夫, 山田 哲郎, 田中 隆一, 田中 武英
    1979 年 36 巻 3 号 p. 189-192
    発行日: 1979/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ (L-グルタミン酸) (PGA) とポリ (オキシエチレングリコール) (PEG, Mn=300) のジオキサン-水 (D-W, 容積比で3対1) 溶液から, PGA固体膜およびPGA含量が90~40 wt%の橋かけ高分子膜を調製した. 橋かけ高分子のPEG含量が多くなると, (1) X線回折によるPGAのαヘリックス間距離はRobinsonの式に従って増大し, (2) 偏光顕微鏡観察によるコレステリック液晶構造のピッチは広がり, ねじれ角は小さくなり, (3) tan δ曲線におけるピーク温度は低下し, 強度は増加する. これらの結果はαヘリックス鎖が六方晶格子に充てんされてコレステリック液晶構造を形成し, ヘリックス鎖間にPEG鎖が入り込んだ分子鎖凝集構造を示唆している.
  • 小高 正人
    1979 年 36 巻 3 号 p. 193-195
    発行日: 1979/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ヘキソキナーゼ固定化ゼラチン膜, アルカリフォスファターゼ溶液層およびセルロース膜から成る複合膜を調製し, D-グルコースとD-キシロースの透過性について検討した. 遊離および固定化酵素の動力学的定数を求めた. 固定化ヘキソキナーゼの活性は遊離酵素の約30%, 見掛けのMichaelis定数は約54倍となった. 予想したとおりキシロースの透過速度の方が大きくなった. 選択透過性は時間とともに低下し, 又, 糖の初期濃度が低い方が選択性は若干高かった. ATPを添加しない場合には, 選択性はほとんどみられなかった.
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