高分子論文集
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40 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 新保 正樹, 吉田 朋昭, 湊本 雅也
    1983 年 40 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    充てん系高分子の内部応力は複雑な挙動をとるために, 充てん材のモデルとしてガラスビーズをエポキシ樹脂に充てんし, 充てん量の変化に伴う内部応力の変化を追求した. その結果, この系では低充てん領域では充てん量増加にともなって内部応力は低下し, 高充てん領域では顕著な上昇を示し, 両領域の間に内部応力のめいりょうな変曲点がみられた. この系の内部応力はガラス状領域の収縮によって発生するが, 充てん材による収縮量の低下作用と弾性率の上昇作用の二つの効果が重なるために, 上のごとき挙動をとるものと考えられる. この系について, 冷却収縮と弾性率からその内部応力を算出すると, 上記内部応力の不連続変化をよく説明することができる. 更にX線マイクロアナラィザーによる充てん系の観察から, 上記充てん系の内部応力の不連続変化は, 充てん材粒子の接触によると考うべきことが示唆された.
  • 瀬戸 順悦, 野口 勉, 永井 透, 荒川 清一
    1983 年 40 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    各種のアクリル系オリゴマーについて, 電子線による硬化特性を明らかにするために, 加速電圧160kVのカーテン式電子線照射装置を用いて, 反応挙動と分子構造の関係, ゲル化の挙動などが検討された. 3官能のトリメチロールプロパン・トリアクリラート・オリゴマーの電子線照射による反応率は照射線量が増加するほど高くなるが, 線量率 (1.4~7.0Mrad/s) には依存していない. 一方, 反応速度は線量率の1次に比例しているので重合反応の機構は1分子停止反応であるとみられる. 反応率は, 照射線量0.3Mrad以下では官能基数によって変らないが, これ以上の領域では官能基数が多くなるほど減少する. これは, より高い密度の橋かけ生成によって活性種の易動度が減少するためである. また, 官能基間分子量が大きくなると反応率も増大する. これはガラス転移温度Tgの挙動から分子鎖のフレキシビリティーが大きくなるためであると説明される.
  • 須藤 新一, 杉沼 晋一, 藤村 敏一
    1983 年 40 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    非等温カレンダー加工時の高分子融液の冷却挙動を推定する. そのため, ロール表面温度は一定, 融液は非圧縮性で熱特性は一定, また, 粘性発熱は無視などの仮定のもとに, ロールニップ部における流動時温度分布をエネルギー方程式の差分近似により解析した. また, 熱伝対による実測との比較により誘導解析式のロールへの適用性を考察する. 実測温度は解析値よりわずかに高温の傾向を示したが, 粘性発熱無視の影響は大きくなかった. 界面の密着性などに問題を残すが, エネルギー方程式の差分近似式は比較的低速でのカレンダー加工に適用可能で, 流動時の融液内冷却挙動を予測しえた.
  • 八尋 信英, 浅川 一雄
    1983 年 40 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    (R) -2-エチルエチレンイミンと, 1- (R) -2-ジエチルエチレンイミンの共重合を, 三フッ化ホウ素エーテル錯体を触媒として行ったところ, 高粘性のポリマーが得られた. このコポリマーと, ポリ- (R) -2-エチルエチレンイミンとポリ-1- (R) -2-ジエチルエチレンイミンとのブレンドポリマーの構造を旋光度, 旋光分散, 円偏光二色性から比較したところ, ユポリマーは, 1, 4-ジオキサン中で, いずれのホモポリマーとも異なる構造として存在することが考えられた.
  • 後藤 弘太郎, 河合 鱗次郎, 相田 広巳
    1983 年 40 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    PMMA, POMなどのプラスチックに吸収された水分のIR吸収は3650cm-1付近に2本になって現れる. そして, MMAとPMMA, ジオキサンとPOMのように類似した物質中の, 水は同じ波数域に吸収を示す. IR吸収と水分量との関係は吸光度の波数積分値で表わしたが, MMA, PMMA, ジオキサン, POMに対して, 4.1×104, 2.6×104, 5.5×104, 3.6×104cm-1/ [cm (mol/l)] となり, 純水の場合の3×104と同程度であった.
  • 山田 純男, 田口 和宏
    1983 年 40 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    主鎖に剛直構造をもっポリイミド膜 (PI), ポリスルホン膜 (PSU) とポリエチレンテレフタラート膜 (PET) に紫外線を照射し, He, O2とN2ガスに対する40~120℃の高温領域における透過係数と拡散係数を測定した. これからN2の透過係数に対するHeとO2のそれぞれの透過係数比 (PHe/PN2PO2/PN2) を求め, 高温における軽ガス分離膜としての適合性を評価した. 未照射のPET, PIとPSUのPHe/PN2 (40℃) の値はそれぞれ208, 171と47であり, 空気中96時間紫外線照射をするとこの値は高くなるが, 順位は変わらない. PIについて空気中, 窒素中, 酸素中と雰囲気を変えて紫外線を照射すると, 酸素中で最も高いPHe/PN2が得られた. 空気中で96時間照射したPSUは, Heの透過係数が1.41×10-9cm3 (STP) cm/cm2scmHgであり, PHe/PN2も101であることから, 高温におけるヘリウム分離膜として適合していることが明らかになった.
  • 桐生 春雄, 熊野谿 従, 増田 初蔵, 佐藤 弘三
    1983 年 40 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    鎖停止剤に安息香酸を使用したやし油脂肪酸変性アルキド樹脂の分子量と溶液物性について検討した. その結果は次のようである. (1) 数平均分子量Mnは1000~3000のオーダーである. (2) 極限粘度数 [η], Mnはアルキド樹脂1分子当たりの水酸基数Mean OH/moleと関係がありMean OH/moleの値4~6で極小になる. (3) [η] =KMna (Kaは定数) におけるaの値は1.8~2,0で大きく, 本実験のアルキド樹脂は溶液状態では剛直な棒状分子になっていると思われる.
  • 丹羽 政三, 東 信行, 松本 孝広, 伊藤 宏
    1983 年 40 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    メタクリル酸2-クロロエチル (CEMA) とスチレンのコポリマーとベンジルアミン (BAm) との反応を種々の条件のもとで行った. 見掛けの速度定数 (k) は反応度の増加とともに直線的に増大し, 反応速度は次式に従う. ここでabはコポリマー中のCEMA基及びBAmの初濃度であり, xは時間tにおける塩素イオンの濃度である;
    dx/dt=k0 [1+α (x/a)] (a-x) (b-2x) コポリマー組成, 反応溶媒, コポリマー濃度及び反応温度の影響について研究した. αによって示される反応の加速効果の大きさはコポリマー中のCEMA基の増加によって増加した. これらの反応に関して, 通常の二次反応速度式の積分形中の対数項と反応時間のプロットを行うと, 反応度が0.30~0.38に交点をもつ2本の直線で表すことができるから, この二つの段階に対するk1とk2の値を計算し考察を加えた.
  • 中前 勝彦, 井上 祐一, 藤村 保夫, 酒井 五十治, 松本 恒隆
    1983 年 40 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 1983/01/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    湿式延伸を行った場合のポリビニルアルコールフィルムの配向挙動について光学的, X線的に検討を加え, 次の結果を得た. 湿式延伸を行ったポリビニルアルコールフィルムは, 定長で乾燥する過程においてポリマー全体の配向性が向上することがわかった. 湿式延伸法は乾式延伸法に比して, ポリマー非晶鎖を高度に配向させる効果は劣っていたが, 非晶領域に吸着したCongo Red分子の配向は, 湿式延伸を行った場合の方がむしろ高くなった. 湿式延伸過程において, 延伸倍率4倍までポリマーの膨潤度は増加し, その後減少した. また, その応力-ひずみ曲線は, 応力一定の領域を有する特異な概形を示した. これらは延伸過程で結晶領域の一部が破壊されて結晶化度が低下するためであることを明らかにした.
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