高分子論文集
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43 巻, 3 号
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  • 藤田 祐二, Kong-Khen KOO, Juan Carlos ANGOLA, 井上 隆, 酒井 哲也
    1986 年 43 巻 3 号 p. 119-131
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    延性高分子とぜい (脆) 性高分子とからなる耐衝撃性プラスチックの設計は, 近年, ポリカーボネートとスチレン-アクリロニトリル共重合体などの混合系において見いだされた新しい概念である. この多相系プラスチックにおいては, 分散相としてのぜい性高分子の存在により延性高分子の剛性とじん (靱) 性を同時に向上させることが可能であり, 実用面からの興味も大である. 本報では同様な強化機構を持つ他の新しい多相系を見いだすため, 種々の延性高分子とぜい性高分子の組合せについて, それらの力学物性評価を行った. また, 多相構造の電子頭微鏡観察や変形時の応力解析を行い, 強化機構について考察した. その結果, ポリカーボネート/ポリメタクリル酸メチル系など新たに6種類の強化系を見いだし, この現象がかなり一般性のあることを明らかにした. また, これらの強化系においては, ぜい性高分子の分散相が変形時に冷延伸され, これによって強化が発現することを確認した. さらに, 修正Eshelby理論をもとにした応力解析より, ぜい性高分子の冷延伸の成否はMisesの降伏条件式によって記述しうることが判明した. 以上より, 成分高分子のヤング率, ポアソン比などの材料定数より強化の成否を半定量的に予測する可能性が示唆された.
  • 中前 勝彦, 西 野孝, 畑 克彦, 松本 恒隆
    1986 年 43 巻 3 号 p. 133-138
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール (PVA) の分子鎖軸方向の結晶弾性率 (E1) の温度依存性を測定した. E1℃までは235GPaと一定であったが, れ以上の温度域で急激に減少し, 80℃では167GPaとなった. さらに, 子鎖軸方向 (020) の面間隔及び回折強度の温度変化において110℃に屈曲点が存在し, の温度域を境として高温側で面間隔の熱膨張率α (020) は-3.3×10-6K-1から-9.9×10-6K-1と3倍となった. これらの結果および動的粘弾性測定, 赤外吸収スペクトルなどの結果との対応より, 110℃以上でのE1の低下はこの温度以上で生じている結晶内分子鎖の運動性, すなわち非調和格子振動の増大に基づくものと考えられた.
  • 藤原 寛, 杉下 朗夫, 金井 作信, 大野 陽一, 谷口 博昭
    1986 年 43 巻 3 号 p. 139-146
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    反応性に富む多孔性コボリマービーズの合成を目的とし, p-ビニルフェニルアセタート (p-VPOAc) とジビニルベンゼン (DVB) の懸濁共重合条件を生成コポリマーの表面積や多孔度を測定することによって検討した. 多孔性コポリマーの生成に効果の大きい希釈剤としてイソオクタン-2-エチルヘキシルアルコール (3/7wt比) 混合溶媒を選択し, コポリマーの多孔性構造に及ぼす希釈剤添加量, モノマー組成, 開始剤濃度, 重合温度などの諸因子の影響を調べた. その結果, コポリマーの表面積あるいは多孔度は希釈剤添加量及びモノマー組成によって敏感に影響を受けることが分かり, 前記物性値は希釈剤/モノマーの最適組成比においてモノマー中のDVB含量 (15~60%) とともにほぼ直線的に増加した.
  • 山本 真, 山口 達明
    1986 年 43 巻 3 号 p. 147-151
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    カーボンアーク燈型耐候試験機を用いて, ポリ塩化ビニル (PVC) フィルム, ポリエチレン (PE) フィルム及び市販の農業用軟質ポリ塩化ビニルフィルム (農ビ) を試料として促進劣化させた. PVCフィルムでは, 暴露初期から, α, β-不飽和カルボニル基の生成など化学構造変化が進行したため, 伸びや引張強度が低下したが, それ以後は橋かけ反応の進行により, 引張強度は逆に増加に転じた. 一方, 農ビは暴露1000時間まで化学構造変化が少なく, その間の物性変化は主に可塑剤の減少によるためであった. またPEフィルムでは, 暴露300時間以後に, 橋かけ反応が急激に増加したため, カルボニル基の生成が増加しているにもかかわらず, 引張強度は増加した.
  • 佐伯 英夫
    1986 年 43 巻 3 号 p. 153-160
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    共重合組成の異なるポリ (メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸t-ブチル) の感電子線性と熱的性質とに対する熱処理温度の効果を調べ, 高感度ポジ型電子線レジストとしての可能性を検討した. このコポリマーは250℃程度の熱処理によって重量減少を起こし, この際コポリマー中のメタクリル酸t-ブチル (tBMA) 成分からイソブテンが脱離し, 分子内酸無水物が形成される. その結果コポリマーのガラス転移点は向上し, tBMA成分が多いほど熱安定性が改善される. これらのコポリマーのうちではtBMA成分が37mol%であるCP-3-2が最も高感度で, 感度0.35μC/cmcm2とγ値1.9が得られた. また, CP-3-2は線幅1.0μm以下の微細回路パターンを低ドースで十分解像しており, 耐ドライエッチング性はポリ (メタクリル酸メチル) と同程度以上で, 高感度ポジ型電子線レジストとしての要件を備えている.
  • 茶碗谷 仁, 戸嶋 直樹, 平井 英史
    1986 年 43 巻 3 号 p. 161-164
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ (N-ビニル-2-ピロリドン) の存在下, 塩化パラジウム (II) をメタノールで還元することにより, 平均粒径18Åのパラジウムコロイドを調製した. このパラジウムコロイドは1,5-, 1,4-, 1,3-及び2,4-ヘキサジエンの水素化触媒として高い活性を示し, 90%以上の高選択性で対応するモノエンを生成した. 生成物のヘキセンの異性体分布から, 反応混合物中にジエンが残っているあいだはヘキセンの異性化は起こっていないことが分かった. 共役ジエンの水素化は1,2-付加と1,4-付加の両方により起こっており, その割合はジエンの構造により異なっていた.
  • 大野 陽一, 藤原 寛, 俵 欣也
    1986 年 43 巻 3 号 p. 165-168
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    p-ビニルフェニルアセタートとジビニルベンゼンを, 希釈剤としてイソオクタンと2-エチルヘキシルアルコールを用いて懸濁共重合させ, 多孔性コポリマービーズを調製した. この多孔性コポリマービーズを加水分解して多孔性p-ビニルフェノールージビニルベンゼンコポリマービーズを, 更にニトロ化して多孔性ニトロ化かビゴルフェノールージビニルペンゼンコポリマービーズを調製し, 赤外スペクトログラムにより構造を確認した. 更に, これらの多孔性コボリマーピーズの高性能液体クロマトグラフィ-用充てん剤としての性質を調べ, 優れた性能と特有の分離能を示すことを明らかにした.
  • 八尋 信英
    1986 年 43 巻 3 号 p. 169-172
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    光学活性アジリジン, ポリアジリジンを用いる種々ラセミオキシランの立体区別反応を検討した. S体のアジリジンを用いたとき, 回収オキシランの旋光度のサインはすべて負を示し, 反応はR体のオキシランを区別することが分かった. 一方, 同反応にS-ポリアジリジンを用いると, 回収オキシランは正のサインを示し, 複雑なポリマー構造と, オキシランの構造による立体障害の影響によって, S体オキシランが消費された.
  • 倉持 智宏, 志村 宏, 伊保内 賢
    1986 年 43 巻 3 号 p. 173-176
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    塩素化ポリエチレン [CPE (塩素含量35%)] 中の塩素をアミン類を触媒としてアクリルアミド (AAm) と置換して置換度8.5, 15.5の塩素化ポリエチレン置換アクリルアミド (CPE-AAm) を合成した. 後者のCPE-AAmにアゾビスイソブチロニトリル開始でスチレンをグラフト重合したところ, 未置換CPEに較べて著しく大きなグラフト率が得られた. たとえばスチレン濃度2mol/lのとき約10倍に達する.
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