高分子論文集
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46 巻, 7 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 尾野 凱生, 谷垣 輝之, 山口 幸一, 谷野 吉弥, 橋詰 源蔵
    1989 年 46 巻 7 号 p. 389-396
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    混練によるケプラー短繊維とアクリロニトリルブタジエンゴム (NBR) の複合化とその補強効果について検討した. 表面未処理のケプラー短繊維は, NBRとのバンバリーミキサーによる混練中に強いせん断力を受けてフィブリル化し, ゴム中に均一分散することを見いだした. フィブリル化したケプラー繊維は, ゴム複合体中で列理方向に配向して複合体を異方性にし, かつこの複合体を低伸度で高強度, 高弾性率にし, その補強効果が増大した. また, これらの複合体の応力-歪曲線ならびに膨潤挙動から, ケプラー繊維はフィブリル化の進行とともにその比表面積を増して表面活性となり, NBRとの間に相互作用が存在することが示唆された.
  • トヴマシャン Yu. M., トポルカラエフ V.A., ベルリン Al. A.
    1989 年 46 巻 7 号 p. 397-403
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    微粒子充てん熱可塑性樹脂におけるフィラーの集合度を定量的に評価する方法を提案した. フィラーのアグロメレ-ションを計算するために, 粒子集合体のサイズと密度をパラメーターとする分布関数F (r0, j) とその1~4次の四つのモーメントを導入した. これらの構造パラメーターをサンプルの低温破断表面の電子顕鏡写真から決定した. いろいろな加工方法によって作成された試料中における粒子分散の構造パラメーターを比較するために, 低温破断表面における粒子分布の数学的モデルが提出された. HDPE-ガラス・スフィア組成物モデル・システムにおいて, フィラー粒子の集合度の減少とじん性値の増加の関係が見いだされた.
  • 中川 貫次, 朝倉 好男, 中西 俊介, 星野 治利, 国府田 浩之, 楠木 喜博
    1989 年 46 巻 7 号 p. 405-411
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    新しく開発した芳香族ポリイミド中空糸膜を用いて, 蒸気透過法で水-アルコール混合蒸気の分離特性を検討した. このポリイミド中空糸膜は水蒸気を選択的に透過させる特質を持ち, 混合蒸気のアルコール含量80wt%以上, 温度120℃の条件で水蒸気の透過速度がエタノール蒸気の透過速度の230倍, イソプロパノール蒸気の透過速度の4400倍という高い値を示した. エタノール蒸気の透過速度は, 供給蒸気の温度, 水蒸気含量の上昇により大きくなったが, 水蒸気の透過速度の変化は小さかった. 種々な組成の水-エタノール混合液中におけるポリイミドフィルムの膨潤度を測定し, 蒸気透過との関係を調べた. 機械的性質及び固有粘度の測定に基づく膜の安定性試験及び長時間にわたる水-エタノール蒸気透過実験の結果, このポリイミド中空糸膜は極めて安定で長期使用に耐えることがわかった.
  • 尾形 正次, 金城 徳幸, 江口 州志, 河田 達男
    1989 年 46 巻 7 号 p. 413-419
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    フェノール硬化型エポキシ樹脂の硬化物物性に著しい影響を及ぼす橋かけ密度 (ρ (E')) と自由体積分率の関係を調べるため, 4種類の硬化促進剤を用いて得られたρ (E') が著しく異なる硬化物の緩和挙動を検討した. その結果, 緩和弾性率には温度引時間換算則が成立し, shift-factor αTはガラス転移温度より高温側数十℃の温度範囲でWLF式に従った. そこで, WLF式のパラメーターCg1, Cg2を求め, これをもとに各硬化物の自由体積分率fg及び自由体積の熱膨張係数αfを算出した. しかし, これらの値は普遍値とは一致せず, ρ (E') が高い硬化物ほどCg1及びCg2は大きな値を示し, fg及びαfは小さな値を示した. 一方, 各硬化物の比容積の温度依存性から予想されるfgはρ (E') が高い硬化物ほど大きな傾向を示し, WLF解析結果と一致しなかった. また, 各硬化物の熱膨張係数から予想されるαfはρ (E') が高い硬化物ほど小さな値を示し, WLF解析結果と同じ傾向を示した.
  • 芳賀 一雄, 樫崎 好郎, 金子 良平
    1989 年 46 巻 7 号 p. 421-426
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    N-メチル-11-アクリロイルアミドウンデカン酸 (MAUA) を合成し, その重合性を検討した. MAUAの塩は両親媒性を有し, 臨界ミセル濃度の存在が見られた. 開始剤として一定量のBPOを溶解したベンゼンとアルカリ水溶液を混合した不均一系での重合では, 重合収率は一定量までベンゼン添加量とともに増加し, それ以後はほぼ一定となった. この系に長鎖脂肪酸塩を加えると, 重合性は脂肪酸の分子鎖長及び添加量にも規制され, ステアリン酸塩添加の場合は重合性が著しく大きくなった. スチレン (M1) とMAUA (M2) との共重合モノマー反応性比はアルカリ存在下の水・ベンゼン (20: 7) 不均一系でr1=0.03, r2=1.91であり, 一方, 溶液重合ではr1=0.50, r2=0.08であった. 不均一系での重合挙動は水相・ベンゼン相界面での両親媒性モノマーの局在化及び配列の容易さにより説明される. 比較のため両親媒性を有しない11-アクリロイルアミドウンデカン酸の不均一系での重合も試みた.
  • 藤本 邦彦, 斉藤 史朗, 金子 良平
    1989 年 46 巻 7 号 p. 427-435
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    射出成形炭素短繊維複合液晶ポリマーの流動方向に対する曲げ弾性率Efと曲げ強度σfBを, -20℃-140℃の範囲で測定し, 温度-時間関係について検討した. Ef, σfBのいずれも, その時間-温度移動因子は, 繊維量には無関係に特定の温度で変曲点をもつArrhenius形の曲線で与えられ, 核磁気共鳴 (NMR) でのスピンースピン緩和時間及び力学的損失係数の温度依存性でも同一温度に変曲点が観測された. また, 合成曲線より得られた曲げ弾性率の緩和スペクトルは, マトリックス及び短繊維複合に起因する二つのスペクトルの混合和で与えられ, 前者のスペクトルはガンマ形分布関数, 後者のそれはべータ形分布関数で近似できることを導いた.
  • N-アルキル基の影響
    伊藤 昭二
    1989 年 46 巻 7 号 p. 437-443
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    種々の側鎖構造をもつN-置換アクリルアミド誘導体, N-置換メタクリルアミド誘導体, ならびにN, N-ジ置換アクリルアミド誘導体を合成し, これらを重合させて得られる高分子について, それぞれの一次構造と水に対する溶解特性の関係を比較した. これら高分子は, 側鎖アルキル基の鎖長の増加につれて 「水溶性」 から 「低温で水溶性でかつ高温で水不溶性」, 「水不溶性」 へと変化する. 「低温で水溶性でかつ高温で水不溶性を示す」 高分子の系では, その水溶液を加熱するときは相転移に相当する曇点現象が観測され, その相転移温度はそれぞれの高分子の一次構造に依存することが実証された. このようにして側鎖アルキル基の形状を含めた鎖長の構造を変えることにより, 転移温度が5℃から72℃までの範囲にみられる種々の高分子が得られた, メタクリルアミド系高分子水溶液の転移温度は, アクリルアミド系高分子のそれと比べほぼ規則的に7~15℃高温側に現れることがわかった.
  • 鳥井 政典, 丸山 厚, 讃井 浩平, 緒方 直哉
    1989 年 46 巻 7 号 p. 445-449
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    イミド化率を制御したポリアミック酸を水-エタノール混合液の分離膜として用い, ポリアミック酸からポリイミドへの環化に伴う膜構造変化によって水-エタノール混合液に対する透過性が受ける影響について, パーベーパレーション法を用いて検討した. 各部分イミド化膜はすべて水選択性を示した. 流束はイミド化率が増すにつれ減少したが, 水の選択性は増大した. 水-エタノール混合液の中間組成に対し急激な流束の増大及び選択性の減少がみられた. その組成が操作温度に依存することより, ポリマーと透過物の間の親水及び疎水性相互作用が重要な役割を果たしていることが示された.
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