高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
48 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 滝口 良平, 瓜生 敏之
    1991 年 48 巻 2 号 p. 61-66
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリマーとモノマーの共存系に電子線を照射して得られたフィルムの硬度及び摩擦特性を調べた. モノマー単独系の硬度は分子量/官能基数に依存していた. 摩擦係数はステアリル基を持つモノマーでは低く水酸基では高かった. ポリマーとモノマーの共存系ではポリマー単独系とモノマー単独系の中間値を示したが, 特に摩擦係数の著しい低下がステアリル基をもつ系に見られた. これはモノマーが表面に析出してEB硬化するためで, 硬化時のアニール条件によっても表面の摩擦係数や水の接解角が異なることが見いだされた. ポリマーとモノマーの共存系のEB反応では, ポリマーとモノマーの相溶性, ポリマーとモノマーが重合したポリマーとの相溶性が表面物性に大きな影響を与える.
  • 神林 信太郎, 新井 孝昭
    1991 年 48 巻 2 号 p. 67-73
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    荷電基密度の違うカルボキシメチルセルロース (CMC-H) と, 部分アニオン化させたポリアクリルアミド (PAAm-H) を種々の温度でpH滴定を行った. 見掛けの電離定数 (Kapp), 電離のための静電自由エネルギー変化 (ΔGiel) などを求め, 荷電基密度と温度が電離に及ぼす影響を定量的に検討した. CMC-H及び低荷電基密度のPAAm-H系は, 温度の上昇でpKappが大きな値を示した。荷電基密度とΔGielの間には, 比例関係が存在した. 温度の上昇に対してCMC-Hでは, ΔGielが単純に増大した。しかし, PAAm-Hでは荷電基密度が高い系でΔGielは温度の上昇で減少し, 荷電基密度の最も低い系では他の系の1/10の小さな値で一定値を示した. このような温度とΔGielの関係は, 溶媒の誘電率の温度依存性と, 分子鎖の屈曲性の違いを強く反映していることが明らかになった.
  • 山水 孝文, 永野 修, 多田 啓司, 武田 邦彦
    1991 年 48 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    スルホン酸型カチオン交換基を有する多孔性橋かけポリマーを架橋度及び孔構造を制御して合成した. 孔構造は, ポリマー内の全空孔に対するマクロボア (ここでは固定孔と呼ぶ) の割合を固定孔率φihとし定量化を行った. 合成したカチオン交換体を用いてイオン交換反応を行ったところ, カチオン交換体の物理構造の違いによって交換特性は大きく異なった. φihが大きく, かつ高分子相の高分子鎖密度及び架橋密度が大きい場合, 極端に遅いイオン交換反応が生じることが明らかとなった. Nd3+とPr3+のイオン交換では, φih=0.94のポリマーを用いると, 交換時間が60分経過後の交換率は0.622であり約4割のイオンが未交換であった. これは, 堅く柔軟性のない高分子鎖によって, イオン交換場の一部に非常に安定な交換場が形成されるためと推定した.
  • 酒井 伸, 北野 武, 西村 哲夫
    1991 年 48 巻 2 号 p. 81-88
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    非相溶性ポリマーブレンドの溶融レオロジーに関する評価方法を確立するため, 細管流動性及び動的粘弾性測定を行い, 測定上の問題点を明らかにした. 試料はポリカーボネート (PC) と直鎖低密度ポリエチレン (LLDPE) のブレンドである. 同一の測定条件で, 各レオメーターの測定値を比較した. 2種類の細管型レオメーターを用いた定常流粘度の測定では, 各レオメーターの測定値に差が生じた. 2種類の回転型レオメーターを用いた動的粘弾性測定では, コーンプレート使用の場合に, 各レオメーターの測定値に差は生じるが, この差は細管型レオメーターの場合よりも小さかった. また, コーンプレート使用とパラレルプレート使用の比較では, ブレンドの全組成にわたってパラレルプレートの方が大きい値を示した. PC/LLDPE系では, レオロジー的特性に及ぼすブレンド組成, 測定温度, 及び装置形状の影響が大きいため, 測定条件の設定に注意が必要である.
  • 児玉 峯一
    1991 年 48 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンテレフタレート (PET) とp-ヒドロキシ安息香酸 (PHB) 共重合体タイプの液晶性ポリエステルとフェノキシ樹脂混合物の, 無配向状態での, 熱変性に伴う構造変化を粘弾性, 赤外吸収スペクトル, X線回折によって調べた. 両成分間の相溶性は悪く, 混合比にかかわらず相分離状態にあることが粘弾性の温度依存性からわかる. この相分離状態にあるものも280℃から300℃で圧縮成形すると混合状態が変化していき, 均一ブレンド状態の粘弾性を示すようになる. これは両成分間に交換反応が生じたためである. 均一ブレンド状試料ではゴム状平衡弾性域が現れるようになり, 交換反応により架橋構造が生じることを示す.
  • 小平 俊之, 品川 和博
    1991 年 48 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    側鎖にメソゲン基を有するテレケリックポリシロキサン (TLS) の合成を行い, TLSを1成分とするブロック共重合体合成の可能性を検討した. OH基を両末端に有するエンドキャップ剤 (EC) の存在下, 1, 3, 5, 7-テトラメチルシクロテトラシロキサンの開環重合により, テレケリックポリメチルヒドロシロキサン (THS) を合成した. その後, THSによるアリル基を有するメソゲンモノマーのヒドロシリル化を行った. これらの反応中ECのOH基はトリフルオロアセチル基で保護することにより, 副反応を防止した. ヒドロシリル化後, 加水分解によりOH基を再生しTLSを得た. 側鎖メソゲン基にエステル基を含む場合でもそのエステル基を傷つけることなく, 末端トリフルオロアセトキシ基のみの加水分解が可能であることを示している. ケリックポリマーとの反応を行い, ABA型のブロック共重合体の合成を試みた. 末端をイソシアナート化した重合度が50のポリエチレングリコールモノオレイルエーテル (PEON) の場合に, 最高のA/Bの値, 1.3, が得られた. 片末端にイソシアナート基を持つポリメチルメタクリレートの場合は, ほとんど反応しなかった. また, TLSの反応性は側鎖メソゲン基の種類に依存して大きく変わった. TLS及びケリックポリマーのコンポメーションの反応に対する影響を示唆している.
  • 大嶋 享, 市川 賢一, 田坂 茂, 稲垣 訓宏
    1991 年 48 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    無水マレイン酸と各種ビニルエステル (酢酸ビニル~ステアリン酸ビニル) をAIBNを開始剤としてベンゼン溶液中60℃で合成した. この高分子は完全交互共重合体であり, アタクチックに付加したビニルエステルのために非晶性で, 側鎖の種類に関係なく130℃付近にガラス転移温度を持つ. X線回折測定の結果は, 側鎖が傾いた層状構造を形成していることを示した. 長鎖の高分子にリン酸トリクレジルなどの可塑剤を加えると層間に優先的に可塑剤が入り, 一種の層間化合物を形成する.
  • 永田 実, 清造 剛
    1991 年 48 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    グルタミン酸ジエチルエステル及びリシンの塩酸塩が溶融重縮合によってナイロンに共重合することが判明した. グルタミン酸ジエチルエステル塩酸塩はナイロン66及びナイロン610に30mol%まで, またリシン塩酸塩はナイロン6及びナイロン610に15~40mol%まで共重合できた. 共重合成分量の増加とともに, これらの共重合体の還元比粘度, 融点, 結晶性及び熱安定性は低下し, 一方ガラス転移温度, 冷結晶化温度, 及び密度は上昇した. リシン塩酸塩含量の多い共重合体の極性溶媒に対する溶解性は向上した. α-アミノ酸含量1~2mol%の共重合体は単独重合体と比べて吸湿性が増加し, 染色性は顕著に増加した. これらの結果について考察を行った.
  • 江川 博明, 野中 敬正, 山口 竜夫, 東 広巳
    1991 年 48 巻 2 号 p. 119-122
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    2, 3-エピチオプロピルメタクリラート (ETMA) とp-クロロスチレンの共重合体を溶液重合により合成した. これらの共重合体の分子量はGPC法, 組成は共重合体中の塩素含量から決定した. 共重合体の分別は, そのベンゼン溶液にn-ブタノールを加えて沈殿させる方法により行った. ガラス転移温度は示差走査熱量測定により求めた. 共重合体の分子量の大きいものほど高いガラス転移温度 (T ) を示し, かつT と1/Mwは直線関係を示した. T は共重合体中のp-クロロスチレン含量が増加するにつれて高くなった. ポリマーのT は分散度の違いにより大きな差は認められなかった.
feedback
Top