ゾーン延伸・熱処理法をポリ (エチレンテレフタレート) フィルムに適用し, 幅広の高配向フィルムが得られたので, フィルム面内の各方向 (θ) の動的弾性率 (
E'θ) を測定し異方性を検討した. 90℃でゾーン延伸したフィルムの場合, 25℃での延伸方向 (θ=0゜) の弾性率
E'0は7.7GPaで, 延伸方向から垂直方向 (θ=90゜) になるに従い
E'θはしだいに減少し, 垂直方向の弾性率
E'90は2.3GPaとなる. また, これら各方向の
E'θの温度依存性を検討したところ
E'θはいずれも昇温とともに減少するが, 160℃以上になるとほとんど同じ値となる. ゾーン延伸フィルムにさらに200℃でゾーン熱処理を施すと
E'θは増大する. 特に, 延伸方向の
E'0は顕著に増大し15.6GPaとなる. しかし,
E'90は2.3GPaで, ゾーン延伸フィルムの値とほぼ同じであるため
E'θの異方性はさらに増す. ゾーン熱処理フィルムではゾーン延伸フィルムとは異なり, α分散以上の温度域でも
E'θの異方性が認められる. そこで25℃から220℃の温度範囲で, ある温度
Tにおける弾性率の異方性の程度を定量的に評価するため, 異方性の温度関数φ (
T) を次式のように定義した.
φ (
T) = (
E'0 (
T) -
E'90 (
T) ) /
E'0 (
T)
ゾーン延伸フィルムのφ (
T) は100℃付近から単調減少し, 220℃ではほとんど0になり等方的になる. 一方, ゾーン熱処理フィルムではφ (
T) は全温度範囲にわたって変化せず, 高温域においても室温付近と同等の異方性を示す.
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