高分子論文集
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49 巻, 1 号
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  • 日口 洋一, 宮坂 宣利, 中村 賢市郎
    1992 年 49 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    蛍光色素であるアクリジンを高分子中に分散させた波長変換フィルムの試作を行い, その光化学的評価を行った. フィルムの耐光性及びアクリジンの分散性向上を目的として, 新規アクリジン蛍光色素オリゴマーを合成した. 反応は, 相間移動触媒を使用し, 2相不均一系で行った. アクリジンイエロー色素の末端アミノ基と2官能性のイソシアネート基の脱水縮合により, 発色団自身を高分子主鎖に導入した種々のオリゴマーを合成することができた. 汎用性高分子の一つで透明性の高いポリメタクリル酸メチル (PMMA) への得られたオリゴマーの分散性を検討し, PMMAの透明性をそこなうことなくサブミクロンオーダーの分散が可能となった. フィルムの耐光性を, 発光蛍光強度の経時変化より調べた. 色素を高分子主鎖に導入しオリゴマー化したことで, 発色団での光分解を抑制してPMMA中で強い蛍光発光を保持させることが可能となった.
  • 外村 秀明, 松浦 元司, 斉藤 拓, 井上 隆
    1992 年 49 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ビス (4-アミノフェニル) エーテルとイソフタル酸ジクロライドとの重縮合により得られるアラミドとポリエーテルスルホン (PES) との混合系における結晶化に及ぼす延伸効果及び延伸配向結晶化時に形成される高次構造について密度法, 光学顕微鏡観察, HvならびにVv光散乱法により調べた. アラミド/PES混合系の結晶化速度は延伸によって著しく加速され, アラミド単体の配向結晶化速度をはるかに上回るものであった. また, 結晶化と競争的に液-液相分離が進行することがわかった. 液-液相分離は延伸によって著しく加速した. 相分離構造には延伸配向に由来する異方性は全く見られなかった. これらの結果から, 本系では延伸により液-液相分離が加速され, 液-液相分離は異方性を消失させながら進行し, その際の“up-hill”拡散により結晶化が加速されたものと考えられる. 結晶の高次構造には延伸に伴う構造異方性が存在し, 結晶ラメラの延伸方向に対する垂直配向性は, PESの含量の多い混合系ほど低下することがHv光散乱像の解析よりわかった. 混合系の配向結晶化物は, 市販ガラス織維強化プラスチックと同等以上の引張特性を有することがわかった.
  • 辻井 彰司, 山田 英樹, 竹上 信介
    1992 年 49 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ビス (3-アミノフェニル) スルホンとm-フェニレンジアミンの混合ジアミンとイソフタル酸クロリドを用いて各種共重合ポリ (スルホン-アミド) を調整し, 均質平膜で水/エタノール混合物の浸透気化分離を行った. 水の分離係数はm-フェニレンジアミン含有率が30 mol%の時に最大値 (=2400) を示した. この組成は, 水素/一酸化炭素の透過係数比が最大値を示す組成と同一であった. この共重合体を用いて非対称中空糸膜を紡糸し, 浸透気化性能を評価した. ガラス転移温度より若干低い温度で熱処理することにより分離係数は向上したが, 最大4O0程度と均質平膜よりかなり低い値であった. また, スキン層の厚みと透過速度は逆比例せず, スポンジ層の抵抗がかなり大きいことがうかがわれた. 供給液濃度及び経過時間の影響の検討により, 分離係数は膨潤度と密接な関係があることが分かった.
  • 敷波 保夫, 森田 里子, 蔦 薫, 谷口 雅彦
    1992 年 49 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    常温で液状であるポリプロピレングリコール及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのABA型ブロック共重合体あるいはランダム共重合体をセグメントに, ポリエチレングリコールモノメチルエーテル (M-PEG) をその分岐鎖としてもつセグメント化ポリエーテルウレタンを合成した. ポリオール成分とイソシアネート成分の組み合わせ, OH/NCO比及びM-PEGのポリオール成分に対する比率を変えることによって広範囲の初期粘着力をもつ粘着性ゲルが得られた. M-PEGはタック付与剤として作用した. タックカの最大値は800g (対ステンレスSUS #304面, 剥離速度1000 mm/min) であった.
  • 敷波 保夫, 森田 里子, 蔦 薫, 谷口 雅彦
    1992 年 49 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    セグメント化ポリエーテルウレタン系粘着剤 (SPUA) の表面張力はおよそ30dyn/cmであった. 表面張力の異なる種々のプラスチックに対する剥離強度は, ポリカーボネート表面 (40dyn/cm) で最も大きく, 720g/cmであった. セグメントがエチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダム共重合体からなるSPUAは, ヒトの皮膚に適度に粘着し, 初期剥離強度は250g/2.5cmであり, 10回の繰り返し貼付・剥離後で200g/2.5cmであった. また, 水洗いすることにより, 粘着性が回復するので, 使用上の耐久性もあった. 皮膚に対する刺激が少なく, 安全であることが確認された.
  • 結城 康夫, 国貞 秀雄, 松下 嘉文, 鈴木 司朗, 太田 祥子
    1992 年 49 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    2-アミノ-4- (m-ヒドロキシアニリノ) -6-イソプロペニル-1, 3, 5-トリアジンとエチルからヘキサデシルまでのハロゲン化アルキルとの反応により, 8種の2-アミノ-4- (m-アルキルオキシアニリノ) -6-イソプロペニル-1, 3, 5-トリアジン (mCnIT, nはアルキル基の炭素数) を合成した. これらの単独重合により櫛状高分子を得た. ポリマーはアルキル基が長くなるに従い, DMSO, DMAに不溶となり, ジオキサン, THFには可溶となった. ガラス転移温度はpoly (mC6IT) まではnの増大につれて低下するが, poly (mC8IT) からpoly (mC16IT) では161~165℃でほぼ一定であった. また, poly (mC14IT) とpoly (mC16IT) には, 側鎖の結晶化の現象が見られた. mCnITとスチレン, メタクリル酸メチル, 及びアクリル酸メチルとの共重合を行い, 共重合パラメーターを決定した. 共重合パラメーターはアルキル鎖長によらず似た値となった.
  • 結城 康夫, 国貞 秀雄, 立松 裕章, 高橋 由紀
    1992 年 49 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    2-アミノ-4- (m-オクタデシルオキシアニリノ) -6-イソプロペニル-1, 3, 5-トリアジン (mCl8IT) には三つの結晶多形があることが分かった. mCl8ITの単独重合の動力学から, mCl8ITの重合熱として-11.1 kcal/molの値が得られた. ホモポリマーのガラス転移温度は163℃であり, 8℃に側鎖の結晶の融解が見られた. スチレン, メタクリル酸メチル, 及びアクリル酸メチルとの共重合により櫛状高分子を得た. コポリマーについてもそのガラス転移温度以下の温度で, 側鎖の結晶の融解が見られた.
  • 御船 直人, 西本 一夫, 永井 靖隆, 竹本 喜一
    1992 年 49 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    SBR加硫物に促進劣化を2方法で与え, 表面に発生するき裂形態を画像解析した. その結果, 促進劣化方法の違いにより以下のことが明らかとなった. 1) き裂長さ密度は促進劣化初期に最大値を示す場合と単調に増大する場合とがあった. 2) 平均き裂幅は次第に増大する場合とほとんど一定で変化しない場合があった. 3) き裂分岐点数は促進劣化初期に最大値を示す場合と単調に増大する場合とがあり, いずれの場合にもき裂長さ密度との間に直線関係が認められた. 4) き裂面積比はいずれの促進劣化方法においても単調に増大し, 劣化の程度を評価する指標としては最良であった. 5) き裂の配向は促進劣化初期には列理方向が優勢な場合や列理に直角方向が優勢な場合があるが, 促進劣化後期にはいずれの場合にも列理方向が優勢となった. 6) いずれの促進劣化方法においてもき裂面積比の変化は損失係数の規格化最大値と逆比例関係を示した.
  • 阿部 英喜, 山本 裕司, 土肥 義治
    1992 年 49 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    制癌剤ラステットを5~10 wt%含有したポリ (3-ヒドロキシブチレート) (PHB) のミクロスフェアを液中乾燥法により調製した. PHBミクロスフェアの平均粒子径は, 調製時の塩化メチレン中のPHB濃度を6.5~29.6g/lまで変えることにより, 20~150 μmの範囲で調節できた. 0.01Mリン酸緩衝溶液 (pH 7.4) 中, 37℃におけるPHBミクロスフェアからのラステット放出速度は極めて遅く, 20日間で含有量の25%が放出されるだけであった. ラステットの放出速度を増加させるために, PHBミクロスフェアに添加物として脂質のグリセロールトリステアレート (GTS) を10~25 wt%含有させ, ラステットの放出速度におよぼす添加物の効果を調べた. GTS含有量の増加とともにラステットの放出速度は著しく増加し, 10~30日以内にPHBミクロスフェア中のすべてのラステットが放出された. また, PHBミクロスフェアの平均粒子径が20~100 μmまで増大するにつれて, ラステットの放出速度は低下することがわかった.
  • 功刀 利夫, 鈴木 章泰, 一瀬 千恵
    1992 年 49 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ゾーン延伸・熱処理法をポリ (エチレンテレフタレート) フィルムに適用し, 幅広の高配向フィルムが得られたので, フィルム面内の各方向 (θ) の動的弾性率 (E'θ) を測定し異方性を検討した. 90℃でゾーン延伸したフィルムの場合, 25℃での延伸方向 (θ=0゜) の弾性率E'0は7.7GPaで, 延伸方向から垂直方向 (θ=90゜) になるに従いE'θはしだいに減少し, 垂直方向の弾性率E'90は2.3GPaとなる. また, これら各方向のE'θの温度依存性を検討したところE'θはいずれも昇温とともに減少するが, 160℃以上になるとほとんど同じ値となる. ゾーン延伸フィルムにさらに200℃でゾーン熱処理を施すとE'θは増大する. 特に, 延伸方向のE'0は顕著に増大し15.6GPaとなる. しかし, E'90は2.3GPaで, ゾーン延伸フィルムの値とほぼ同じであるためE'θの異方性はさらに増す. ゾーン熱処理フィルムではゾーン延伸フィルムとは異なり, α分散以上の温度域でもE'θの異方性が認められる. そこで25℃から220℃の温度範囲で, ある温度Tにおける弾性率の異方性の程度を定量的に評価するため, 異方性の温度関数φ (T) を次式のように定義した.
    φ (T) = (E'0 (T) -E'90 (T) ) /E'0 (T)
    ゾーン延伸フィルムのφ (T) は100℃付近から単調減少し, 220℃ではほとんど0になり等方的になる. 一方, ゾーン熱処理フィルムではφ (T) は全温度範囲にわたって変化せず, 高温域においても室温付近と同等の異方性を示す.
  • 長尾 博孝, 平井 英史, 好野 則夫
    1992 年 49 巻 1 号 p. 75-77
    発行日: 1992/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    炭素繊維と大過剰のテトライソプロピルチタネートを反応させ, 表面にチタンアルコキシドを有する炭素繊維を得た. 得られた炭素繊維をアンモニア水で加水分解し, 生じるアルコールをガスクロマトグラフを用いて定量することにより, 反応したテトライソプロピルチタネート量を求め, これより炭素繊維表面官能基量を算出した. この結果は中和滴定による炭素繊維表面官能基の定量結果と一致し, 本法が炭素繊維表面官能基の新しい定量法となることを見いだした. この方法は, 従来法 (100時間) に比べて分析時間を短縮 (50時間) でき, また, 空気中の二酸化炭素の影響がないので, 炭素繊維表面官能基の定量法として有利である.
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