無配向・非晶質ポリエーテル・エ-テル・ケトンフィルムを用いて, ゾーン延伸過程における延伸温度とネッキングが発生するために必要最少限の応力 (臨界ネッキング応力) との関係を検討した. その結果, ガラス転移温度 (
Tg=143℃) 以下では臨界ネッキング応力 (σ
c) は延伸温度 (
Td) に反比例するが,
Tg以上の温度域ではσ
cは
Tdにほとんど依存せず, その値は1.47MPaと極めて小さい. そこで,
Tg以下におけるσ
cを
Tgと
Tdの差 (
Tg-
Td) についてプロットしたところ比例関係が見いだされ, 次式で示されるような簡単な経験則を得た. σ
c=0.539 (
Tg-
Td). σ
cのもとで作製した試料の延伸倍率及び複屈折は
Tdにほとんど依存せず2.4及び0.165程度である. また, 結晶化度は
Tdが20℃から100℃までの範囲では3.8%と低いが, 110℃以上の温度域では
Tdの上昇とともに急増する. 100℃以下でネッキングゾーン延伸した試料では70℃付近から熱収縮が始まり, 特にガラス転移領域での収縮が著しい. しかし, さらに昇温すると170℃付近から試料の自発伸長が始まる. 一方, 110℃及び120℃の
Tdで得られたゾーン延伸試料では, 収縮の開始温度は
Tdの上昇につれ高くなり, 急激な収縮を示さず, 170℃付近の結晶生成に基づく自発伸長も認められない. また, この自発伸長が生じた試料のDSC曲線にのみ結晶化の発熱ピークが観察された.
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