高分子論文集
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49 巻, 6 号
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  • 末永 純一, 松本 哲夫, 鹿島 勝
    1992 年 49 巻 6 号 p. 471-474
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    異なる化学構造を有するサーモトロピック液晶ポリマー (以下LCP) 固体の結晶化度をX線解折で測定した. LCP固体はガラス化した液晶と結晶からなり, ガラス化した液晶は非晶と同じ扱いをできるとしてRulandの方法を用いて結晶化度を算出した. 求めた結晶化度と熱変形温度の間に良い直線関係があり, 結晶化度の高いLCP程高い熱変形温度を有することがわかった. 主鎖の芳香環上にバルキーな置換基を有するLCPは, 極めて低い結晶化度を有し, その弾性率の温度依存性は典型的な非晶性樹脂の挙動を示した.
  • 森 邦夫, 滝沢 利樹, 山田 弘, 柏葉 安兵衛
    1992 年 49 巻 6 号 p. 475-483
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    乾燥型導電性塗料における主成分である導電材 (銅粉), 溶剤, 及びバインダーの役割を塗膜の導電性について検討した. 塗膜の銅含量を変化させると臨界銅含量において最も低い体積抵抗値を示し, 臨界銅含量とその体積抵抗値が銅粉の粒径と形状の影響を受けた. 粒径が増大すると臨界銅含量は高含量側ヘシフトし, その時の体積抵抗値は高くなった. また, 形状の複雑な粉体は多くの接触点を持つので高い導電性を示した. 溶剤量は多すぎてもまた少なすぎても体積抵抗値を増加させたが, 特に前者では塗膜密度の減少を招いた. 同じSP値の溶剤とバインダーを使用すると銅粉の不均一分散型の塗膜が生成し, 高い導電性を示すが, 両者のSP値が異なる場合は均一分散型の塗膜が生成し導電性は低下した. 臨界銅含量はバインダーの分子量の増加とともに高含量側ヘシフトし, この時の体積抵抗値はある分子量まで減少するが, これ以上では増加した. 極性の高いバインダーは臨界銅含量を高含量側ヘシフトさせ, 同時にある分子量まで体積抵抗値を減少させた.
  • 森 邦夫, 佐藤 芳隆, 滝沢 利樹, 大石 好行, 山田 弘
    1992 年 49 巻 6 号 p. 485-492
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    導電性塗膜の導電性を向上させる目的で, フレイク状ニッケル粉, 溶剤, 及びバインダーからなる塗料に磁気処理を行った. 磁気処理により臨界フィラー含量は変化しないが, 各フィラー含量における見掛けの体積抵抗値 (表面抵抗値から計算) は減少した. 塗膜の体積抵抗値はニッケル粉が形状異方性であるため磁気処理の方向により異なった. 塗膜の導電性は295G~685Gの磁束密度の範囲で変化せず, 比較的低い磁気処理によって高い導電性が得られた. 磁気処理は塗膜に高い導電性を与えるだけではなく, 溶剤の種類やその量の使用範囲を広げるのに有効であった. 異方性のフィラーと磁気処理を組み合わせることにより塗膜は導電異方性に変化した. 塗膜の導電性は磁気処理により塗膜厚さに関係なく一定となった. 以上のような磁気処理による塗膜の導電性の向上は導電路を形成する粒子間の接触距離が磁気的な圧力により短縮された結果であると推測した.
  • 末永 純一, 衣川 雅之, 今村 高之
    1992 年 49 巻 6 号 p. 493-497
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    半芳香族液晶ポリマー (以下LCP) であるパラヒドロキシ安息香酸/ポリエチレンテレフタレート共重合体の機械的性能及び熱的性能を改良することを目的に検討を行った.従来の半芳香族LCP (以下旧LCP) のモノマー配列のブロック性は高いと考えられたので, 速い自己縮合反応を起こすモノマーであるパラアセトキシ安息香酸を分割して添加するという合成方法で, ブロック性の低い新LCPを合成した.新旧LCPの性能を比較した結果, 新LCPは機械的性能ばかりでなく熱的性能においても旧LCPより優れていることがわかった.旧LCPでは, 成形の際に溶融しないパラヒドロキシ安息香酸のホモポリマーブロックが分子配向を妨げるために機械的性能は低くなり, また, 含まれる非晶の成分が, 低い熱変形温度の原因になっているものと考えられる.
  • 越智 光一, 山田 英生
    1992 年 49 巻 6 号 p. 499-507
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ビスフェノールA型エポキシ樹脂をシリコーンとエポキシ樹脂のブロック共重合体で変性し, 硬化物の強靱性を向上させることが試みられた. その結果, この変性によってエポキシ樹脂中にシリコーンの分散した二相構造が形成され, しかもシリコーンブロックとエポキシブロックの分子量を変えることによって, シリコーン相の形態をコントロールできることが示された. 硬化物の強靭性はシリコーン相の直径が低下するのに伴って増加した. 特にシリコーン相の直径が0.1μm以下とミクロ相分離に近づくことによって強靱性は未変性系の1.5倍程度まで改善された. これはシリコーンブロック共重合体によるエポキシ樹脂の変性が硬化物の強靱性の改善に有効なことを示すものと考えられる.
  • 藤森 行雄, 加来 恭彦, 吉岡 直樹, 西出 宏之, 土田 英俊
    1992 年 49 巻 6 号 p. 509-512
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    光硬化型歯科用コンポジットレジン中のアクリレートモノマーの重合挙動を, 硬化体中に残存するラジカル濃度とモノマー二重結合のESR及びIR定量から考察した. 光照射により硬化体中にはメタクリル生長ラジカルが検出され, その濃度は光到達度に対応した. 生長ラジカルは極めて安定に硬化体中に残存したが, 温度が高く換気十分な口腔内では速やかに減少した. 一方, モノマー二重結合消費率は硬化体表面では酸素により, また深部では低い光透過により減少した. 重合率の経時変化から, 残存ラジカル種の後反応によって硬化体深部で重合が進行し, 硬度が維持されていることが示された.
  • 高瀬 巖, 松山 俊英, 川村 哲司
    1992 年 49 巻 6 号 p. 513-519
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    N-アルキルイソマレイミド (RIMI) の重合反応性に及ぼすN-置換基の効果を検討するため, 4種のRIMI (M2) とメタクリル酸メチル (MMA) (M1) とのラジカル共重合を1, 4-ジオキサン中, 70℃で行い共重合パラメーター (r1, r2) を求めた. ポリ (MMA) ラジカルに対するRIMIの相対反応性 (1/r1) とN-置換基との間にTaft式, log (1/r1) =ρ*σ*Esが成立し, ρ*=0.5, δ=0が得られた. RIMIのAlfrey, PriceのQ2, e2値は0.06~0.23及び0.91~1.38と決定され, これら値がN-置換基の電子吸引性の増加とともに増加するのが認められた. これら結果をN-アルキルマレイミドの場合と比較検討した.
  • 巽 富美男, 江連 秀敏, 伊藤 栄子
    1992 年 49 巻 6 号 p. 521-526
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本報告は芳香族ポリエステルに吸着した水の状態・運動と, 吸着水がポリエステルのβ分散に与える影響を誘電緩和測定により明らかにすることを目的とした. 水を吸着した試料の誘電損失スペクトルから乾燥試料のスペクトルを差し引くことによって得られた差スペクトルに現れた新たなピークは, 1) 左右対称形であり, ポリマーの種類によらず同一の形であり, 2) その大きさは吸着水分量に依存し, 3) ピークの高さは温度の低下によってほとんど変化しなかった. これらの実験結果より, 微量の水を吸着したポリエステルのβ分散ピークは見かけ上変化したように思われたが, 吸着水はポリマーの緩和スペクトルに影響を与えていないことが分かった. また, 差スペクトルから求められた水の双極子モーメントから, 吸着水はポリマー中で気相に近い状態で存在すると考えられる.
  • 筏 英之, 竹内 志彦, 芦田 道夫
    1992 年 49 巻 6 号 p. 527-533
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ乳酸はいわゆるポリエステルの1種で, 生分解性を持つポリマーである. 本実験では, 数平均分子量6.6×105のポリ乳酸を製膜し, このフィルムに紫外線照射し, 分解挙動を調べた. 紫外線照射開始後の15分経過で分子量は半分にまで下がり, 1時間経つと1/4となった. この低下は紫外光がポリマー鎖をランダムに切断したために起こった. 分解生成物のIR分析は, 空気または窒素気流中いずれの場合の照射でも, 3290cm-1近傍にカルボン酸の水酸基に帰属される吸収の増加を示した. この増加は, 主鎖切断により生成したカルボキシル基末端の生成によるものである. さらに照射時間に対するフィルム重量減少も測定され, 重量減少は, 窒素雰囲気より空気雰囲気での照射でより大きいことがわかった. 主鎖切断数, カルポキシル基量, 二重結合生成量は, 照射時間増加に対し, 直線的で, Norrish II型光分解であることがわかった.
  • 小林 英一, 庄崎 肇, 青島 貞人, 古川 淳二
    1992 年 49 巻 6 号 p. 535-540
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    種々のトリアルコキシガドリニウム触媒及びEt3Al, Et2AlCl助触媒を用い, ヘキサン中, 50℃でブタジエンの重合を行った. 例えばGd (neopentyl-O) 3-Et3Al-Et2AlCl触媒系では, 5時間でほぼ定量的に重合が進行し, 得られたポリマーは高シス (94~98%) であった. アルコキシリガンドの大きさ及び触媒系の調整条件が, 重合活性にどのような影響を及ぼすかを検討した. アルコキシ基としては, neopentyl-O基が最も活性であり, 助触媒としては, 還元力の大きな (iso-Bu) 3Al, Et3Alが有効であった. Et2AlCl濃度を変化させて重合を行った結果, Gdに対する塩素の最適割合は [Cl] / [Gd] =2であることが分かった. 以上の結果から重合活性種に関して考察を行った. スチレンとの共重合性について検討した. いずれの触媒系を用いても, ポリマー中にスチレン単位はほとんど挿入されず, ポリマー収率も減少した. そこで, 活性点に対するスチレンの配位を仮定し, 配位平衡定数を求めた.
  • 功刀 利夫, 鈴木 章泰, 早川 智洋
    1992 年 49 巻 6 号 p. 541-545
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    無配向・非晶質ポリエーテル・エ-テル・ケトンフィルムを用いて, ゾーン延伸過程における延伸温度とネッキングが発生するために必要最少限の応力 (臨界ネッキング応力) との関係を検討した. その結果, ガラス転移温度 (Tg=143℃) 以下では臨界ネッキング応力 (σc) は延伸温度 (Td) に反比例するが, Tg以上の温度域ではσcTdにほとんど依存せず, その値は1.47MPaと極めて小さい. そこで, Tg以下におけるσcTgTdの差 (Tg-Td) についてプロットしたところ比例関係が見いだされ, 次式で示されるような簡単な経験則を得た. σc=0.539 (Tg-Td). σcのもとで作製した試料の延伸倍率及び複屈折はTdにほとんど依存せず2.4及び0.165程度である. また, 結晶化度はTdが20℃から100℃までの範囲では3.8%と低いが, 110℃以上の温度域ではTdの上昇とともに急増する. 100℃以下でネッキングゾーン延伸した試料では70℃付近から熱収縮が始まり, 特にガラス転移領域での収縮が著しい. しかし, さらに昇温すると170℃付近から試料の自発伸長が始まる. 一方, 110℃及び120℃のTdで得られたゾーン延伸試料では, 収縮の開始温度はTdの上昇につれ高くなり, 急激な収縮を示さず, 170℃付近の結晶生成に基づく自発伸長も認められない. また, この自発伸長が生じた試料のDSC曲線にのみ結晶化の発熱ピークが観察された.
  • 森 勝, 奥村 城次郎, 山口 幸一
    1992 年 49 巻 6 号 p. 547-550
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    4-ビニルピリジン (4VP) と種々の分子量のポリスチレン (PSt) マクロモノマーとのラジカル共重合を行い, 組成比及び枝の分子量の異なるグラフト共重合体を合成した. 得られたグラフト共重合体を1, 1, 2-トリクロロエタン溶液から製膜し, 透過型電子顕微鏡により観察した. ミクロ相分離構造は組成比によって異なり, PSt分率が30-44mol%ではラメラ状, 20mol%ではPStが球, ポリ4VPがマトリックスの構造となった.
  • 宇田川 昂
    1992 年 49 巻 6 号 p. 551-553
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    繊維強化プラスチックの放射線劣化に及ぼす繊維の影響を, 2MeVの電子線を用いて調べた. 耐放射線性は, 母材にビスフェノールA系エポキシを用いた積層板の三点曲げ強度から評価した. カーボン繊維積層板はガラス繊維積層板より, かなり高い耐放射線性を示した. カーボン繊維とガラス繊維充填材の間にある違いを調べるため, 母材としてポリエチレンを用いてモデル化した積層板の吸収線量とゲル分率の関係を調べた. ゲルの生成はカーボン繊維を充填した場合に著しく遅かった. この結果からカーボン繊維には母材樹脂に対する放射線保護作用があり, これが炭素繊維強化プラスチックに高い耐放射線性を与える主な原因となっていることが分かった.
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