高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
51 巻, 11 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 高田 昌子, 岡野 光治, 栗田 公夫, 古坂 道弘
    1994 年 51 巻 11 号 p. 689-693
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリビニルメチルエーテル (PVME) 水溶液は下限臨界共溶温度 (LCST) を示す. 本研究では, PVME水溶液に対するアルコール添加の影響を調べる目的で, PVME- (水+10vol% 2-プロパノール) 系半希薄溶液の中性子小角散乱測定をLCST近傍の温度領域で行い, 高分子セグメント間の2体クラスター積分B1および3体クラスター積分B2を求めた. またPVMEセグメント間相互作用のエントロピーおよびエンタルピーへの寄与をB1とB2の温度依存性から求めた. 我々がすでに測定したPVME-水系およびPVME- (水+メタノール) 系と比較すると, PVME- (水+2-プロパノール) 系のセグメント-セグメント相互作用は, エントロピーをより大きく増大させることがわかった. これは疎水性が強い2-プロパノール分子のPVMEへの選択的溶媒和によるものと考えられる.
  • 田村 章, 米澤 正次, 佐藤 三善, 奥山 登志夫
    1994 年 51 巻 11 号 p. 694-700
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    各種2-シアノアクリル酸エステル重合体の電子線に対するレジスト特性を調べ, 高感度, 高解像度, 高ドライエッチング耐性を有するポジ型電子線レジストとしての検討を行った結果, レジスト特性はエステル基の大きさと構造に関係することがわかった. 感度に関しては, いずれの重合体ともに高感度なポジ特性を示したが, 1級エステル重合体ではアルキル鎖が長くなるとネガ反転を起こしやすくなる傾向にあった. また, 解像度に関しては, 1級エステル重合体の場合はアルキル鎖が長くなるに従い, 解像度が低下するが, 2級エステル重合体では良好な解像性を示した. さらに, ドライエッチング耐性に関してはアルキル鎖長の増加とともに耐性は向上する傾向にあり, メタクリル酸エステル重合体と比較した場合, より高い耐性を示した. 以上の結果より, 感度, 解像度, ドライエッチング耐性の総合性能において, 2-シアノアクリル酸2-ペンチル重合体が最も優れたレジスト特性を有していた.
  • 早川 明史
    1994 年 51 巻 11 号 p. 701-709
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    クレイズ説に基づき, クレイズに関する報文の研究結果から計算のための適当な仮定を導入し, さらにいくつかの仮定を追加することによって, ゴム含有量Rc, ゴム粒子のトルエン膨潤比SR, 粒子内ポリスチレン/ゴム体積比g, ゴム粒子径D, 粒子径分布ψDを変数として, クレイズの生成により吸収される総エネルギーを計算した. その結果, アイゾッド衝撃強度IZとハイインパクトポリスチレン構造因子との関係式 (IZ-1.0) ∝ Rc SRが導かれた.
  • 原田 修, 杉田 正見, 山本 統平, 三軒 齋
    1994 年 51 巻 11 号 p. 710-716
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    可溶化コラーゲンフィルム (コラーゲンフィルム) をメタクリル酸メチル (MMA) 溶液に接触させて光照射してグラフトフィルムを得た. このフィルムの動的粘弾性測定の結果, グラフトポリメタクリル酸メチル (PMMA) のα分散の活性化エネルギーはグラフト率の増加とともに増大する傾向が見られ, グラフト率が増加するとフィルム内でのPMMAの運動がより束縛されることがわかった. グラフトフィルムを酸分解してコラーゲンを除去したフィルムは走査型電子顕微鏡 (SEM) の表面観察から多孔質体で, グラフト率が高いほど空孔は小さくなることがわかった. また, その断面観察からモノマー接触面からその対面に向かって空孔径が徐々に大きくなっていることが認められた. これらの結果からグラフトフィルムの構造は, 低グラフト率ではコラーゲンマトリックス中にPMMAの杭 (パイル) を打ち込んだような, 高グラフト率ではお互いにパイルを打ち込みあったような構造であることが示唆された. グラフト重合に伴う膜厚の増大やフィルムの熱的, 物理的性質の変化はこのような構造に起因すると考えられた.
  • 高橋 清久, 中島 純, 石黒 繁樹
    1994 年 51 巻 11 号 p. 717-723
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    フェノール型硬化剤 [トリスフェノールPAR (TPPA) ] で硬化した三官能エポキシ樹脂 [TACTIX 742R (T742) ] は, T742の配合割合が化学量論的組成より多い場合, より高いガラス転移温度を示す. このT742/TPPA系は硬化反応に長時間 (230℃, 12h) を要するが, 硬化時間は, ホスファゼン誘導体; 1, 1-ジアミノ-3, 3, 5, 5-テトラ (パラクロロフェノキシ) シクロトリホスファゼン [ (PN) 3 (NH2) 2 (OC6H4Cl) 4] (ACPP) の添加により短縮できる (230℃, 2~3h). 3成分系; T742/TPPA/ACPPでは, ACPPの配合割合が少ないほど, 硬化樹脂はより高い破断強度, より高い伸度, およびより高い熱分解に対する抵抗を示す. そして, ACPPの配合割合とは無関係に, TPPAの配合割合が少ないほどガラス転移温度は高い. 以上の結果より, T742/TPPA/ACPPの最適配合割合は化学当量化で1/0.8/0.1または1/0.7/0.1であり, このとき, T742/TPPA系と比べて硬化時間は1/4~1/6に短縮され, 硬化物の力学的性質および耐熱性はよくバランスがとれたものとなる.
  • 前田 育克, 中山 敦好, 川崎 典起, 林 和子, 山本 襄
    1994 年 51 巻 11 号 p. 724-730
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    無水コハク酸 (SA), エチレンオキシド (EO), および第三成分としてプロピレンオキシド (PO) またはフェニルグリシジルエーテル (PGE) からなる三元共重合体を合成し, 分子量, 熱的性質, および酵素加水分解性について検討した. またコポリ (SA/EO) への第三成分の導入による生分解性への影響について考察した。三元共重合体の組成は, 各々のモノマー仕込比と同程度となった. 数平均分子量は25000から35000であった. 第三成分の含率が小さいときは融点が認められたが含率の増大に伴い非晶性となった. 酵素加水分解性は, 第三成分含率が小さいときに良好であったがその増大に伴い著しく低下した. 加水分解性が低下する傾向は, POに比べPGEの方がより大きかった. コポリエステルエーテルの側鎖としてメチル基や芳香族環などを導入すると生分解性を大きく抑制させることがわかった.
  • 高橋 真一, 鈴木 洋仁, 平沼 正弘, 山内 愛造, 荻野 一善
    1994 年 51 巻 11 号 p. 731-738
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    当研究室で開発したレオメータを, 1~2wt%程度のヒアルロン酸水溶液の粘弾性測定に応用する. 非線形性があるとされるこの溶液に対し, 長周期側での挙動を, 簡単な力学モデルで表現することを試みる. 微小強磁性体球をマイコンで制御された磁場により液体試料中の一定位置に浮かせ, これに水平方向から正弦磁場を加えて振動させることにより, 粘弾性を測定する. ヒアルロン酸は, 蒸留水をイオン交換処理した水に溶解させる. 溶解時の温度のみならず, その後の保存温度, 時間を一定に揃えて測定を行う. 1wt%程度の濃度ではη 10-1Pa・s, G 10-3Paのオーダで, 微弱な弾性率をもつ粘性液体であり, これらの値は保存時間が長くなると減少してゆく. このとき粘性率の方が低下は大きい. コンプライアンスは周波数依存性を示すが, 周期101~103sでの粘弾性は単一のVoigt modelで表現することができた.
  • 前山 薫, 辻出 昌弘, 上田 清資, 加藤 忠哉
    1994 年 51 巻 11 号 p. 739-744
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    板状無機化合物/水溶性高分子の複合体は分散構造を形成してゲル化する. それらの分散構造の破壊およびその安定化の機構を詳細に検討するために, 動的粘弾性測定を行った. 板状無機化合物として3-八面体型スメクタイト構造をもつ合成Na型コロイド性含水珪酸塩を, 水溶性高分子はポリエチレングリコール (PEG) の主に分子量4000のものを使用した. 混合物をまず通常のホモミキサー (1500rpm) で分散させたのち, 100MPa以上の超高圧マイクロフルイダイザーでさらに分散処理し, 安定なクリーム状の分散物を作った. その処理法の違いによって, パラレルプレート型レオメーターを用いて求めた粘弾性に大きな差異が生じた. また凍結試料を走査型電子顕微鏡で観察して, その構造はいわゆるカードハウス構造からなり, その破壊と回復に伴ってこの分散系の粘弾性が変化することがわかった. さらに構造破壊の程度が無機化合物表面へのPEGの吸着によって制御されることが判明した.
  • 宮下 憲和, 中尾 辰也, 藤田 忠宏, 藤原 隆, 天野 敏彦
    1994 年 51 巻 11 号 p. 745-751
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    新しい方法で製膜したポリ (パラフェニレンテレフタルアミド) (PPTA) のフィルムの構造形成過程をX線回折法にて解析した. フィルムは, PPTAの光学異方性濃硫溶液を平板上にキャストし, 温湿度を調節して光学的等方性に転移させたのち凝固, 乾燥して作成した. 乾燥を自由端で行うとフィルムは無配向となり, PPTAのII型結晶の特徴である (010) 面の反射もほとんど現れなかった. 一方, 定長室温乾燥したフィルムではII型結晶で (010) 面がフィルム面に平行に積層した面配向構造であった. 定長室温乾燥フィルムを高温で熱処理すると非晶部の結晶化に加えて, II型結晶の (010) 面配向構造がI型結晶の (200) 面配向構造に転移した. なお, 凝固後の未乾燥湿潤状態ではフィルムは完全に無配向で結晶性も低かった, PPTAフィルムは水凝固させるとII型結晶となることが知られていたが, II型結晶の配向構造は定長乾燥によって発現することが明らかとなった.
  • 後藤 日出夫, 蔵谷 克彦, 紀藤 光, 下野 務, 小倉 興太郎
    1994 年 51 巻 11 号 p. 752-758
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アクリロニトリルーブタジェンースチレン (ABS) 樹脂のアイゾット衝撃試験の破断面のTEMによるクレーズの観察より, ゴムー粒子から発生するクレーズの数またクレーズの幅 (大きさ) が, そのゴムの粒子径にある程度依存することが確認された. またこのクレーズの数さらには幅は, ゴムの変形の大きさによって関係づけられることも認められた. そして, これらゴム粒子から発生するクレーズの数に体積的概念 (クレーズ幅と長さ) を考慮することによって, 衝撃強度を定量的に説明することができた. しかし, ゴムの形態などによってその関係は変化することも観察された.
feedback
Top