高分子論文集
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54 巻, 11 号
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  • 阪野 元, 井川 清, 小島 洋
    1997 年 54 巻 11 号 p. 757-763
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリブタジェンラテックスの架橋構造を明らかにするため, SchneiderらによるパルスNMRを用いた解析法を以下の3種類の系について検討した. (1) 種々のレベルで硫黄架橋したシスポリブタジエンゴム, (2) 重合時の連鎖移動剤量を変えることによって得た溶媒不溶部の割合 (ゲル量) の異なる乳化重合ポリブタジエン, (3) 乳化重合中にサンプリングした重合転化率の異なるサンプル. (1) について, パルスNMRにより測定した磁化の横緩和挙動の解析から得た架橋点間分子量 (Mc) は, 架橋度の比較的高いサンプル (Mc<10000) の場合は, 既存の方法である平衡膨潤測定, 引張試験から得られる値と近く, 横緩和挙動はSchneiderらの理論式と良く一致した. 一方, 架橋度が低いサンプル (Mc>10000) では, いずれの測定のMcも異なっており, パルスNMRにおける横緩和挙動はSchneiderらの理論式には従わず, 適用性に限界があることがわかった. (2) の乳化重合ポリブタジエンにおいては, ゾルの量が異なるにもかかわらず, Mcの連鎖移動剤量依存性は小さかった. (3) の解析より, 乳化重合中の架橋構造の形成は連続的に形成されること, 重合初期には, ごくわずかに分子運動性の極めて低い成分が存在することがわかった. これは, 他の乳化重合系においても見いだされている分子内架橋した成分と考えている.
  • 折原 勝男, 日下 和洋, 勝山 哲雄
    1997 年 54 巻 11 号 p. 764-769
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    基板上にフタロシアニン (Pc) とパラフィン (Pa) とを別々の蒸着源から共蒸着した膜 (Pc*Pa) の上に, Niを蒸着して複合蒸着膜 (Pc*Pa+Ni) を作成した. この膜の固体構造とPcに関する化学変化を調べ, Paを使わない複合蒸着膜 (Pc+Ni) の場合と比較した. その結果, Pc*PaのX線回折強度曲線には何らのピークも現れずにアモルファスに近い構造を示し, α型結晶を示したPcのみの蒸着膜と異なることがわかった. これらの相違はXPSスペクトルからも支持された. Pc+NiではPcに何らの化学変化も見られないが, Pc*Pa+NiではNiPc錯体の生成が, 希薄溶液の可視吸収スペクトルから示唆された. 有機共蒸着膜Pc*Paにおける凝集性低下がPcとNiの反応性を向上させたと考えられた.
  • 鯉沼 康美, 村田 敬重, 大津 隆行, 滝田 祐作
    1997 年 54 巻 11 号 p. 770-777
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリフマル酸ジイソプロピル (PDiPF), ポリフマル酸ジシクロヘキシル (PDcHF), およびアリルジグリコールカーポネート (ADC) との共重合から得られる架橋型共重合物の物性を, 光学的性質, 密度, 動的粘弾性, 引張強度について検討した. PDiPF, PDcHF, 共重合体は, いずれも透明性を有した. 屈折率は, よりかさ高いシクロヘキシル基を有するポリマーの方がイソプロピル基より高くなり, 共重合物の屈折率ではモノマー組成と加成性を示した. 密度は, PDiPF<PDcHF<PADCの序列で, 共重合物の密度はフマル酸ジエステル (DRF) の組成増加に伴い低下した. 動的粘弾性では, PDcHFの温度分散曲線はPDiPFより高温側になり, 共重合物の場合はDRFの組成の増加に伴い高温にシフトした. また, 共重合物の引張強度はDRF組成の増加により低下した.
  • 邱 建輝, 川越 誠, 水野 渡, 森田 幹郎, 宮地 智章
    1997 年 54 巻 11 号 p. 778-784
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究では射出成形したポリプロピレン (PP) を用い, 主に圧延による材料内部の微細モルフォロジー, 結晶化度, 配向性の変化, および動的粘弾性および引張特性などの力学特性の変化を調べた. 射出成形した試料では良く知られているようにスキン, 中間, コアという性質が異なる三層構造となっているが, 圧延加工を行うと試料全体が軟化し, 各層における配向度, 硬さの分布も一様になっていく. 引張試験 (大気中10℃) では非圧延試料ではひずみ10%以内で破断したが, 圧延された試料はすべて150%以上伸びても破断せず, かなり優れた塑性変形特性をもっていることがわかる. 特に圧延率50%以上に圧延された試料では, 延性的な特性が上昇するとともに引張強さも向上するという高靱性特性を示している.
  • 櫻井 良, 斎藤 翼, 浅井 茂雄, 住田 雅夫
    1997 年 54 巻 11 号 p. 785-790
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    粒子分散系電気粘性流体 (Electforheological Fluid; ERF) において, 分散粒子の電気的特性の評価方法と, 電気的特性とelectrerheelogical (ER) 特性 (電場印加時の粘度変化) との関係について考察した. 電気的特性として. 分散粒子の導電性の不均一性を取り上げ, ER特性との関連を調べた. 電気特性の不均一性とER特性の相関を観察するために, 導電性の高い粉体と低い粉体を意図的に混合し, その不均一性によってERFの電気的特性およびER特性がどのように変化するかを観察し, さらに同様の観察を実際のERFを用いて行った. 流体の電気的特性の不均一性の評価方法としては, 流体の誘電分散を測定し, Maxwell-Wagnerの球形微粒子分散系の誘電体理論, Cole-Coleのフィッティングパラメーターαによる緩和時間の分布の評価法をERFに適用した. 本研究によって, Cole-Coleのαの値を用いて, ERFの電気特性の不均一性が評価でき, さらに分散粒子の理想的な電気特性を得るためには, 粒子間の電気的特性が均一なことが重要であることがわかった.
  • 井上 眞一, 伊藤 律子, 岡本 弘, 古川 淳二
    1997 年 54 巻 11 号 p. 791-795
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリウレタンのモデル化合物として, トルエンジメチルカーバメート (DMTC) および4, 4′-ジフェニルメタンジメチルカーバメート (DMMC) を用い, ケミカルリサイクルの一つである加アルコール分解法 (グリコリシス反応) の反応系への無機酸 (塩酸および硫酸) および有機酸 (酢酸, トリフルオロ酢酸, およびp-トルエンスルホン酸) の添加物効果を検討した. DMTCでは, マンガン (III) に無機酸である硫酸を添加することにより, 6.48×105s-1の速度定数, コバルト (III) およびイリジウム (III) に有機酸であるトリフルオロ酢酸を添加することにより6.90および8.81×105s-1の速度定数が得られ, 5~14倍の添加効果が認められた. また, DMMCにおいても, マンガン (III) に硫酸および塩酸を添加することにより, 5.34および4.65×105s-1の速度定数, コバルト (III) にトリフルオロ酢酸を添加することにより, 3.86×105s-1の速度定数が得られ, 添加効果が認められた. このように触媒反応系に対して適切な酸を添加することにより, 分解効率が向上することが明らかとなった.
  • 前田 育克, 中山 敦好, 川崎 典紀, 林 和子, 山本 襄, 相羽 誠一
    1997 年 54 巻 11 号 p. 796-804
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    開環共重合法で合成した無水コハク酸 (SA) /エチレンオキシド (EO) 共重合体 {コポリ (SA/EO) } およびSA/EO/無水フタル酸 (PHA) 三元共重合体 {コポリ (SA/EO/PHA) } のリパーゼによる酵素加水分解試験を行い, 残渣ポリマーおよび分解生成物の分析から酵素加水分解挙動について考察した. コポリ (SA/EO) は, 組成SA/EO=44/56mol%を, コポリ (SA/EO/PHA) では, SA/EO/PHA=39/56/5と29/59/12mol%のものを用いた. これらのポリマーは, クモノスカビリパーゼ (Rhizopus arrhizas, 2500U) で24時間で約30wt%の重量減少が確認された. またコポリ (SA/EO) とPHA含量5mol%のコポリ (SA/EO/PHA) では, 分解試験を4回繰り返し行うと完全に水溶化された. 残渣ポリマーの組成および数平均分子量 (Mn) は, 分解前と比べて大きな変化は見られないのに対し, 分解生成物をテトラヒドロフラン (THF) で抽出したものの組成は, 分解前のポリマーの組成と比較してEO含率が増大した. また, それらのGPC曲線はすべてポリモーダルな曲線を示した. またTHF抽出後, メタノールにて抽出されたものは, コハク酸誘導体であった. 残渣ポリマーの熱分析の結果を分解前のものと比較すると, 融点および融解熱が増大し, ガラス転移温度 (Tg) は, コポリ (SA/EO) では大きな変化が見られないのに対し, コポリ (SA/EO/PHA) では分解により高温側にシフトした. クモノスカビリパーゼによる酵素加水分解は, ポリマー表面の非晶領域から優先的にかつランダムに進み, やがて結晶領域も酵素加水分解された.
  • 重原 淳孝, 松田 正樹, 八木 敏晃, 松元 道子, 渡邊 敏行, 宮田 清蔵
    1997 年 54 巻 11 号 p. 805-811
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    側鎖に分子超分極率の大きいp-ニトロフェニル基を有するポリフマレートを合成し. そのZ型LB膜を構築して第2次高調波発生 (SHG) 特性を調査した. フマレートは適当なかさ高さを有する分枝アルキルエステル構造でないと重合しにくいため, ヒドロキシネオペンチルイソプロピルフマレートを選択し, ラジカル重合体 (PF1) の側鎖-OH基と過剰のp-ニトロフェニルイソシアナートを高分子反応させて相当するポリ (イソブロピルp-ニトロフェニルカルバモイロキシネオペンチルフマレート) (PF2) を得た. この高分子反応は付加反応であるため, ほぼ100%非線形光学 (NLO) 発色団を導入できた. PF1, PF2のいずれも純水副相上で安定な単層膜 (L膜) を形成し, シラザンによる疎水化処理ガラス・石英ガラス基板に垂直浸漬法で累積できた. 交互累稽トラフによりZ型累積されたPF2膜は膜厚方向に自発分極が残っており, Nd: YAGレーザーを基本波として入射するとSHGが観測された. SHG強度の1/2乗と膜厚 (累積数) は比例関係にあり, SHGの起源は界面ではなく, 膜のバルク相に由来することがわかった. この膜厚方向の異方性は, 気/水界面でのL膜形成時にNLO発色団の配向が起きるためと考えられるが, その規制力は弱い. 事実, PF2スピンコート膜を加温しながらコロナポーリング処理して強制的な配向を発現させたときには, Z型LB膜の約5倍のSHG強度を示した. 分極基をつなぐネオペンチルの二つのメチレンが自由回転しやすいことに起因すると思われる.
  • 草薙 浩
    1997 年 54 巻 11 号 p. 812-814
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    疎水性ポリマーの吸湿率を赤外スペクトル法を用いて測定する試みを行った. その結果, 水の赤外吸収バンドの波数領域に疎水性ポリマーが強いバンドをもたないことから, 高い水分率検出限界0.0015±0.0003%で測定できることを明らかにした. さらに, 吸湿率から算出したヘンリー定数が吸湿水の赤外振動波数と相関することを見いだした.
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