開環共重合法で合成した無水コハク酸 (SA) /エチレンオキシド (EO) 共重合体 {コポリ (SA/EO) } およびSA/EO/無水フタル酸 (PHA) 三元共重合体 {コポリ (SA/EO/PHA) } のリパーゼによる酵素加水分解試験を行い, 残渣ポリマーおよび分解生成物の分析から酵素加水分解挙動について考察した. コポリ (SA/EO) は, 組成SA/EO=44/56mol%を, コポリ (SA/EO/PHA) では, SA/EO/PHA=39/56/5と29/59/12mol%のものを用いた. これらのポリマーは, クモノスカビリパーゼ (
Rhizopus arrhizas, 2500U) で24時間で約30wt%の重量減少が確認された. またコポリ (SA/EO) とPHA含量5mol%のコポリ (SA/EO/PHA) では, 分解試験を4回繰り返し行うと完全に水溶化された. 残渣ポリマーの組成および数平均分子量 (
Mn) は, 分解前と比べて大きな変化は見られないのに対し, 分解生成物をテトラヒドロフラン (THF) で抽出したものの組成は, 分解前のポリマーの組成と比較してEO含率が増大した. また, それらのGPC曲線はすべてポリモーダルな曲線を示した. またTHF抽出後, メタノールにて抽出されたものは, コハク酸誘導体であった. 残渣ポリマーの熱分析の結果を分解前のものと比較すると, 融点および融解熱が増大し, ガラス転移温度 (
Tg) は, コポリ (SA/EO) では大きな変化が見られないのに対し, コポリ (SA/EO/PHA) では分解により高温側にシフトした. クモノスカビリパーゼによる酵素加水分解は, ポリマー表面の非晶領域から優先的にかつランダムに進み, やがて結晶領域も酵素加水分解された.
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