高分子論文集
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55 巻, 11 号
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  • 型表面転写性に与える断熱層の影響
    片岡 紘, 山木 宏, 梅井 勇雄, 加藤 厳生
    1998 年 55 巻 11 号 p. 671-676
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    断熱層被覆金型を用いたブロー成形品の型表面転写性について検討した. 断熱層として直鎖型高分子量ポリイミド (PI) を, 合成樹脂としてABS樹脂を使用した. 鏡面状型表面の転写性はPI層厚み, 金型温度や樹脂温度などの成形条件により異なり, 一般には0.2-0.5mm厚, あるいはそれ以上のPI層被覆が良好な型表面転写性を得るために必要であった.
    断熱層厚みと型表面転写性の関係を検討するため, 型表面/合成樹脂の界面付近の温度分布の経時変化と, PI層厚みの関係を計算した. 実験結果と計算値から, 加熱樹脂が型表面のPI層に接触し, 樹脂からPI層に熱が供給されてPI層表面温度が一時的に上がり, PI層表面が高温に保持されている間に樹脂にブロー圧力がかかることが型表面転写性発現メカニズムであると結論した.
  • 木村 隆夫, 木村 隆人, 三部 正大
    1998 年 55 巻 11 号 p. 677-684
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    炭素数2-6に相当するアルカンジアミン, ピペラジン, およびp-キシリレンジアミンを用いて (2R*, 4S*) -4-クロロホルミル-2-クロロホルミルメチル-2, 4-ジメチル-4-ブタノリドの重縮合を行った. 1, 2-エタンジアミンを除いて, 主鎖に五員環ラクトンを含むポリアミドが得られ, 脂肪族第一級ジアミンを用いたとき, ラクトン部位に部分的な開環が見られた. 一方, ピペラジンを用いたとき, 芳香族ジアミンと同様に開環は認められなかった. 二酸クロリドに対してn-プロピルアミン, ピペリジン, およびベンジルアミンを用いたモデル反応により, 閉環型と開環型のジアミドが得られた. その際, ラクトン部位の開環の有無は対応するポリアミドと一致した. 得られたポリアミドはいずれも300℃以上の熱分解開始温度を有しており, 特にアルカンジアミンを用いて調製できたポリアミドの場合, ジアミン成分のメチレン炭素数が少ないほど, 含水率とガラス転移温度が高くなる傾向を示した.
  • 佐古 猛, 菅田 孟, 大竹 勝人, 竹林 良浩, 神澤 千代志, 津組 雅之, 本郷 尤
    1998 年 55 巻 11 号 p. 685-690
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    453-623Kの広い温度範囲で高温・高圧のメタノールによるポリエチレンテレフタレート (PET) の加溶媒分解反応の速度定数を決定した. その結果, 臨界温度 (512.6K) 以下のメタノールによる分解の速度定数と, 臨界温度以上のメタノールによる速度定数のArrheniusプロットを同一直線で表すことができることから, 両領域のメタノール間の反応性の差はおもに温度によるものであり, 劇的な変化がないことが明らかになった. 一方, 今回検討した臨界温度以上のメタノールによるPET分解反応に比べて従来の約453Kでの液体メタノールを用いる分解反応速度がかなり遅い理由は, 従来法ではメタノールの蒸気圧が2.7MPaと低く, さらにPETが固体状態で存在するために反応に関与するPET濃度や接触面積が大幅に減少するためである. またモノマーとともに生成するオリゴマーの構造式を検討した結果, 573K, 11MPa, 反応時間30分より厳しい条件では, PETは重合度が3以下のオリゴマーまで分解されることがわかった.
  • 常盤 豊, 北川 優, 范 紅, 楽 隆生, 柴谷 滋郎, 前川 宜彦, 倉根 隆一郎
    1998 年 55 巻 11 号 p. 691-696
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    バチルス属由来のプロテアーゼを用いて, ジメチルホルムアミド (DMF) 中においてグルコースとアジピン酸ジビニルの間でエステル交換反応を行い, 重合性糖エステル, 6-ο-ビニルアジポイル-D-グルコースを合成した. ひき続きアゾ系の重合開始剤を用いてDMFあるいは水中で, 重合性糖エステルのラジカル重合を行いポリ (6-ο-ビニルアジポイル-D-グルコース) を得た. この還元糖の分岐を有するポリマーはニトロブルーテトラゾリウム法においてはモノマーよりも高い還元力を示したが, シトクロームc法においては変化はなく, 測定方法の違いにより異なった還元力を示した.
  • 松田 文彦, 藤本 高志, 飯澤 孝司
    1998 年 55 巻 11 号 p. 697-703
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (アクリル酸t-ブチル) (GBA) およびポリ (メタクリル酸t-ブチル) (GBM) の円柱形と粒状のゲルを合成した. GBAの脱エステル化反応は, 代表的な有機酸であるp-トルエンスルホン酸 (TS) とメタンスルホン酸および2種類のスルホニウム塩型の熱酸発生剤 (TAG) を用いて検討を行った. 酸触媒としてTSを用いてもゲル中に酸触媒を導入するなどの操作を30℃程度の穏和な条件下で行えば脱エステル化反応がほとんど起こらないばかりか, 室温で長期間保存してもゲルは全く変化せず, 加熱時の反応性も変わらなかった. さらに, TSは触媒活性がTAGより高く, 酸触媒として優れていることが判明した. GBAの脱エステル化反応を行った場合, 反応中副生した気体のイソブテンのためゲルが発泡したが, GBMでは架橋モノマーの種類やその含有率などを調整することにより, 脱エステル化率が高く気泡のない均一なゲルを合成することに成功した.
  • 河西 奈保子, 杉本 岩雄
    1998 年 55 巻 11 号 p. 704-709
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    機能材料の合成方法として広く用いられている高周波スパッタリングにより作製したポリエチレン (PE) 薄膜の経時変化を, 同薄膜を被覆した水晶振動子 (QCM) の共振周波数およびコンダクタンスの測定, 赤外分光法, 電子スピン共鳴法により検討した. その結果, スパッタPE膜においては, 大気中では重量の増加, 密度・粘度の減少が, 真空中では密度・粘度の増加が確認され, 前者では膜の軟化, 後者では硬化が起きている可能性が示唆された. また, 大気中に放置することにより膜表面の酸素原子の増加や膜内スピン密度の減少が見られたことから, 大気中では, 水や酸素の膜への収着や膜分子鎖との結合, 膜内の親水性セグメントの移動や膜分子の再配列など, 膜分子内の構造に変化が生じていることが示された. また, 真空中ではこれらの変化は遅くなり, 炭化水素化合物との反応や分子内結合による高分子化が起きている可能性が示唆された.
  • 内山 佳子, 伊藤 賢志, 李 洪玲, 氏平 祐輔, 芦田 彪
    1998 年 55 巻 11 号 p. 710-714
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    延伸によって結晶化度が増加したポリエチレン膜の自由体積孔の大きさ, 大きさの分布, 数濃度の延伸率の依存性を, 陽電子と電子の対 (ポジトロニウム) の消滅寿命から解析した. 8倍までの延伸によって自由体積孔の大きさは変化しなかったが, 数濃度は減少した. 延伸率を増加すると, ポリエチレンが結晶化することが, 示差走査熱測定における非晶部の減少, またX線回折ピークの増大として確認された. 延伸によるポリエチレンシートの結晶化度の増加に伴うアモルファス相の減少は, 自由体積孔の数濃度の減少と自由体積孔の大きさ分布の拡がりとして現れた.
  • 原口 和敏, 宇佐見 祐章
    1998 年 55 巻 11 号 p. 715-722
    発行日: 1998/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    フェノール樹脂中でシリコンアルコキシドをin situ重合させて得られる, フェノール樹脂/シリカハイブリッドの摩擦・摩耗特性について評価した. PV (荷重×速度) <100kg/cm2・m/min (以下, 単位同じ) の低PV試験条件ではハイブリッドとフェノール樹脂の摩擦摩耗特性は, 水による湿潤効果を含めほとんど同じであった. 一方, PV>200の高PV条件では, ハイブリッドはフェノール樹脂と比べて約1/2-1/3の低い摩擦係数を示し, 特にPV>1000ではハイブリッドの摩擦係数は0.1以下であった. またハイブリッドはフェノール樹脂と比べて2.5倍以上の高い限界PV値や低い摩耗率を示した. このような優れた耐摩擦摩耗特性は, ハイブリッド中に均質, かつ微細に分散含有されたシリカの効果によると考えられる. また, 特性発現には3.5wt%以上のシリカ含有が必要であること, 一方, ナノメータレベルでの含有シリカの大きさの影響は小さく, 50nmと300nmでほぼ同じ摩擦係数低減効果を示した.
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