高分子論文集
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56 巻, 2 号
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  • 深井 康子, 川越 誠, 森田 幹郎
    1999 年 56 巻 2 号 p. 53-60
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    食品として多目的に利用されているコンニャクグルコマンナン (KG) /κ-カラギーナン (CA) 混合系ゲルに食品添加物の水酸化カルシウムを凝固剤として添加した混合系ゲルに着目し, そのゲルを環境にやさしいアクチュエータ素材の一つとして活用することの可能性を探ろうとした. すなわち, 溶媒組成, pH, および温度における試料ゲルの体積変化から平衡膨潤度を測定し, その収縮・膨潤メカニズムについて検討を行った.
    その結果, 水/アセトン系溶媒組成 (0~50vol%) において温度を20~60℃と変化させたとき, 40℃において最も顕著な膨潤挙動を示した. 60℃では, 収縮状態であった. アセトンが膨潤に及ぼす影響をみると, アセトン濃度が0~20%では短時間で膨潤状態に達するが, 40%以上では膨潤度が1以下で収縮状態であった. またpHが平衡膨潤度に及ぼす影響では, 20℃, 40℃でpH5付近とpH10~11の両方で膨潤現象がみられ, pH2以下およびpH11以上で収縮した. このことから, KG/CA混合系ゲルは酸性官能基と塩基性官能基の両方をもつ両性電解質ゲルとしての膨潤機能を有するものとみなされることがわかった.
  • 佐々木 陽, 蓬田 茂, 梅津 芳生, 成田 榮一, 森 邦夫
    1999 年 56 巻 2 号 p. 61-67
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    硫化水素型合成温泉水 (湯花から調製) およびその比較溶液として用いた硫酸水溶液で木材を煮沸処理すると, 重量の軽い空孔率の高い木材が得られるが, 処理溶液による差は小さかった. しかし, 吸湿率は合成温泉水処理のものの方が大きな値を示した. また, X線回折より処理した木材の結晶領域の大きさを調べると, 合成温泉水, 硫酸水溶液ともに煮沸時間が長くなるに従い, セルロースの結晶領域の幅は広がり, その長さは減少するが, 結晶領域のサイズ, 結晶化度は硫酸水溶液処理のものよりも大きくなる傾向があった. 処理溶液による結晶領域のサイズの変化はセルロースの折りたたみ構造の変化によって説明ができる. 合成温泉水処理の場合は, 分子鎖の再配列が生じ, 結晶領域のサイズが大きくなると考えられる. この理由の一つとして, 合成温泉水中に含まれる鉄イオンと結晶領域内のヒドロキシル基の配位結合の形成が関係していると思われる.
  • 浅井 清次, 井上 眞一, 小嶋 憲三, 岡本 弘
    1999 年 56 巻 2 号 p. 68-76
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリウレタンエラストマー (PUE) に対し, 電場を印加することにより誘起される電場と同じ方向に生じる収縮ひずみ (電歪) の挙動について検討した. 弾性率がゴムの領域 (106~107Pa) にあるエラストマーの電歪挙動を, 曲げあるいは表面束縛から生じる誤差を排除し, より正確に評価するための方法として, 400Paの圧力を試料に負荷する方法および完全に試料表面を束縛する方法の両方を併用することにより, 表面束縛の誤差の少ない電歪定数の測定法が確立できた. ポリエーテルポリオールとしてポリオキシテトラメチレングリコール (PTG), ポリオキシプロピレングリコール (PPG), およびポリオキシ-1, 2-ブチレングリコール (PBG) を用い, ポリエーテルポリオール/1, 4-ブタンジオール (1, 4-BD) /トリメチロールプロパン (TMP) /4, 4'-ジフェニルメタンジイソシアナート (MDI) (モル比=1/0.8/0.13/2) 系PUEを180℃と非常に高い温度にて硬化させることにより, 相混合が促進されハードセグメントのドメインがより無秩序となるインターフェイス相が増大したPUEを得た. 180および100℃硬化のポリエーテル系PUEでは180℃での硬化により, 明確な電歪効果が認められた. 同一組成のPUEでは, 電歪効果の増大にはハードセグメントのドメインの秩序性をなくすことが有効な手段であることが明らかとなった.
  • ヒドロキシ酸ユニットの影響
    白浜 博幸, 梅本 浩一, 安田 源
    1999 年 56 巻 2 号 p. 77-85
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    初めに, アミノ酸 (L-アラニン) と各種ヒドロキシ酸誘導体とから環状デプシペプチドを合成した. ヒドロキシ酸誘導体としてクロロアセチルクロリド, 2-ブロモプロピオニルブロミド, そして2-ブロモ-n-ブチリルブロミドを用いた. 得られたデプシペプチドをこれらヒドロキシ酸誘導体の順に従いそれぞれL-MMO, L-DMO, そしてL-MEMOと略称した. デプシペプチドの収率はそれら前駆体 (鎖状アミド) の環化反応の難易度に依存してL-MMO<L-DMO<L-MEMOの順となった. つづいて, これらデプシペプチドのホモポリマーならびにε-カプロラクトン (CL) とのコポリマーを触媒にオクチル酸スズ (II) [Sn (Oct) 2] を用いて合成した. デプシペプチドモノマーの反応性 (重合性) はL-MMO>L-DMO>L-MEMOの順に減少した (L-MEMOのホモポリマーは得られなかった). これは, これらモノマーのSn (Oct) 2触媒への配位のしやすさによるものであろう. ポリマーの熱的特性およびNMR測定から, デプシペプチド/CLコポリマーはランダムシークエンスを有していることがわかった. 最後にこれらコポリマーの酵素 (コレステロールエステラーゼ, プロテイナーゼK) および活性汚泥による分解性を調べた. コレステロールエステラーゼによる分解性はあまり認あられず, また, デプシペプチド中のヒドロキシ酸ユニットも分解性にはほとんど影響を及ぼさなかった. 一方, プロテイナーゼKおよび活性汚泥による分解性はCLホモポリマーに比べかなり大きく, その順序はcopoly (L-MMO/CL) <copoly (L-DMO/CL) <copoly (L-MEMO/CL) となった. プロテイナーゼKによる分解前後のコポリマーの諸物性 (分子量, 組成, 熱的特性) を調べたところ, コポリマー中のデプシペプチドを多く含む非晶性部分が優先的に分解されることが判明した. また, ポリマーの機械的特性の測定結果から, これらコポリマーは汎用プラスチックである高密度ポリエチレンと同程度の引張強度を有することが示された.
  • 芹澤 洋之, 岡部 勝
    1999 年 56 巻 2 号 p. 86-92
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    エチレンとアルケンとの共重合体である直鎖低密度ポリエチレン (LLDPE) をそれぞれメチルシクロヘキサン, エチルベンゼン, イソオクタンに溶解させ, その熱溶液を室温で冷却すると, ポリマーの結晶化に伴い熱可逆性ゲルが生成する. 本研究では, これらの溶媒を用いLLDPEゲルの架橋長ζをゲル融点の測定から推算し, ζに及ぼすゲル化溶媒の影響を高分子溶媒間の相互作用パラメーターχの値から検討した. χの測定はゲルーゾル転移点近傍で行った. 同一試料を異なった溶媒間で比較すると, ζはχの値が大きくなるにつれ (つまり, 貧溶媒になるにつれ), 大きくなる傾向を示した. また, 短鎖分岐の長さが異なる試料を同一溶媒中で比較すると, コモノマーが1-ブテン, 4-メチル-1-ペンテン, 1-オクテンの順に (つまり, 短鎖分岐が長くなるにつれ), χは大きくなり, またζも大きくなった.
  • 徐 耀華, 小川 博司, 加納 重義, 元井 正敏
    1999 年 56 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリオキセタン樹脂の側鎖スペーサー, -CH2O (CH2) n- (n=4,6), 末端の脂肪族第一級アミノ基を, まず, 修飾率0.6~0.9でマレイン酸ジエチルとマイケル付加反応し, つづいて, 導入されたエステルのアルカリ加水分解あるいはヒドロキシルアミン処理で, アスパラギン酸あるいはそのヒドロキサム酸に導いた. 不溶性樹脂のマイケル付加反応生成物は, 脂肪族第一級アミノ基を側鎖にもつ可溶性ポリマーを用いるモデル反応の生成物に基づき確認した. 一方, 同じ方法でアニリン残基を用いるモデル反応生成物は得られなかったが, ポリオキセタン樹脂の側鎖アニリン残基はマイクル (Michael) 付加反応を起こすと思われる. 脂肪族アミン型樹脂側鎖に導入された酸残基の銅 (II) イオン吸着容量は, 樹脂1g当たり2.9~3.8mmolであった. これは, 通常のカルボン酸やヒドロキサム酸の2分子が1原子の銅 (II) イオンにキレートした構造に基づく計算値よりかなり高い. 水で溶媒和した銅イオンを樹脂内に浸入させる要因として, ポリオキセタン樹脂網目の柔軟性や伸張性と, 酸残基の親水性が重要である.
  • Wan-Ling CHEN, 藤重 昇永
    1999 年 56 巻 2 号 p. 102-108
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    衣料用繊維と比較して著しく直径の大きなナイロン6フィラメントを用いて, これの繊維軸方向ならびに繊維軸に直角方向から, 非イオン性の構造が異なる2種類の分散染料を試料内に拡散させたときの染料の濃度分布が染浴温度やフィラメントの微細構造の異方性にどのように影響されるかを検証した. これらの実験に併せて, それぞれの温度で所定染色時間処理されたナイロン6フィラメントの撮影写真からその直径を読み取り, 直径で近似した膨潤率が80℃では8%近くになることを実証した. また, それぞれの方向から試験片に染着した染料の濃度分布は顕微分光光度計により吸光度として読み取り, これを拡散プロファイルに整理して比較した. またこの挙動が酸性染料を拡散させる場合とどのように異なるかを明らかにした. さらに, アルカリ減量加工で表面組織を約30%削りとったポリエチレンテレフタレートのフィラメントについても同様の染色を施し, ナイロン6について見られる挙動と比較した.
  • 今田 安紀, 梶川 泰照, 谷口 正幸, 増田 隆志
    1999 年 56 巻 2 号 p. 109-112
    発行日: 1999/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    脂肪族ポリエステルにカーボネートを共重合させ, 酵素法, 土壌埋設法により生分解性を評価したところ, カーボネートの共重合比率が低い領域で融解熱の低下に伴い生分解性が向上することが確認された. また, 土壌懸濁法は生分解性試験の迅速な評価法になりうることがわかった.
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