初めに, アミノ酸 (L-アラニン) と各種ヒドロキシ酸誘導体とから環状デプシペプチドを合成した. ヒドロキシ酸誘導体としてクロロアセチルクロリド, 2-ブロモプロピオニルブロミド, そして2-ブロモ-
n-ブチリルブロミドを用いた. 得られたデプシペプチドをこれらヒドロキシ酸誘導体の順に従いそれぞれL-MMO, L-DMO, そしてL-MEMOと略称した. デプシペプチドの収率はそれら前駆体 (鎖状アミド) の環化反応の難易度に依存してL-MMO<L-DMO<L-MEMOの順となった. つづいて, これらデプシペプチドのホモポリマーならびにε-カプロラクトン (CL) とのコポリマーを触媒にオクチル酸スズ (II) [Sn (Oct)
2] を用いて合成した. デプシペプチドモノマーの反応性 (重合性) はL-MMO>L-DMO>L-MEMOの順に減少した (L-MEMOのホモポリマーは得られなかった). これは, これらモノマーのSn (Oct)
2触媒への配位のしやすさによるものであろう. ポリマーの熱的特性およびNMR測定から, デプシペプチド/CLコポリマーはランダムシークエンスを有していることがわかった. 最後にこれらコポリマーの酵素 (コレステロールエステラーゼ, プロテイナーゼK) および活性汚泥による分解性を調べた. コレステロールエステラーゼによる分解性はあまり認あられず, また, デプシペプチド中のヒドロキシ酸ユニットも分解性にはほとんど影響を及ぼさなかった. 一方, プロテイナーゼKおよび活性汚泥による分解性はCLホモポリマーに比べかなり大きく, その順序はcopoly (L-MMO/CL) <copoly (L-DMO/CL) <copoly (L-MEMO/CL) となった. プロテイナーゼKによる分解前後のコポリマーの諸物性 (分子量, 組成, 熱的特性) を調べたところ, コポリマー中のデプシペプチドを多く含む非晶性部分が優先的に分解されることが判明した. また, ポリマーの機械的特性の測定結果から, これらコポリマーは汎用プラスチックである高密度ポリエチレンと同程度の引張強度を有することが示された.
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