高分子論文集
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56 巻, 4 号
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  • 武田 貴徳, 安部 明廣, 比江島 俊浩, 古屋 秀峰
    1999 年 56 巻 4 号 p. 175-183
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ネマチック液晶を発現する二量体α, ω-bis (4-cyanobiphenyl-4′-yloxy) alkanes (CBA-n, n=9,10) および三量体化合物4,4′-bis [ω- (4-cyanobiphenyl-4′-yloxy) alkoxy] biphenyls (CBA-Tn, n=9,10) について, 2H NMRデータの回転異性状態解析およびPVT測定から定容相転移エントロピーを求めることにより, 以下のような結論が導かれた. (1) 主鎖型二, 三量体化合物は, 液晶状態でスペーサーと両端メソゲンのいずれもが適度な配向を保てるような形態を取ろうとする結果, 液晶場の軸に対してメソゲン軸は平均的にやや傾いて配位している. (2) それにも関わらずNI転移点が単量体液晶よりもかなり高いのは, スペーサーの両端に位置するメソゲンの空間的配向が必ずしも独立ではなく, 分子軸方向の分極率の異方性が, 単量体の場合よりも平均的にかなり大きいためであろう. (3) 液晶場に対する分子の配向は温度によって大きく変化するが, スペーサーのネマチック・コンホメーションは液晶領域を通してほぼ安定している. (4) 結晶相-液晶相, ならびに液晶相-等方相転移において, 主鎖型二, 三量体液晶が示す常圧下での転移エントロピーのかなりの部分 (50~60%) はスペーサーのコンホメーション変化に基づくものであることをコンホメーション解析ならびにPVT測定で確認した. 最後に, モデル化合物の解析から導かれたスペーサーの立体化学的ならびに熱力学的役割は, 主鎖型高分子液晶にそのまま当てはまると考えられることを指摘した.
  • 戸木田 雅利, 長田 健介, 土屋 仁, 渡辺 順次
    1999 年 56 巻 4 号 p. 184-194
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    スメクチック液晶を形成する2種の主鎖型ポリエステル, BB-n, PB-nの小角X線散乱測定からスメクチック液晶場に高分子鎖のfolding構造が存在することを明らかにした. スメクチックA液晶から徐冷して結晶化させたBB-6に積層ラメラ構造による散乱極大を認めた. そのラメラ厚は, 結晶状態での熱処理で増大するのに対し, 液晶状態での熱処理では変化しない. さらに結晶状態での熱処理で増大したラメラ厚は液晶状態での熱処理により減少し250Åの一定値となる. また, 結晶化温度の低下に伴い長周期が増大する. これらの結果はスメクチックA液晶でchain foldingがエントロピー効果により熱力学的平衡状態にあることを示している. また, スメクチックH液晶を形成するPB-14では液晶状態で積層ラメラ構造による散乱極大が3次まで明確に捉えられた. そのラメラ厚は190~220℃の液晶化温度とともに300から500250Åに増大する. 等方相転移温度はラメラ厚に依存し, その関係はThomson-Gibbsの式で表される. また, 液晶状態での熱処理で等方相転移温度とエンタルピーが上昇する. これは分子鎖が折りたたみ鎖から伸びきり鎖へとその形態を変化させ, スメクチックH液晶構造に取り入れられないfold部を減少させる結果, 液晶化度が上がることを示している.
  • 木村 恒久, 伊藤 栄子
    1999 年 56 巻 4 号 p. 195-203
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高分子液晶60mol%p-hydroxybenzoic acid/40mol% ethylene terephthalateを磁場 (6T) 中で配向させ, 配向フィルムの構造, 物性解析を行った. 磁場配向フィルムは同程度の配向度をもつ機械配向フィルムに匹敵する弾性率を示した. 破断強度は磁場配向フィルムの方が低い値を示したが, これは配向構造の相違に起因するものと考えられる. 熱膨張率の配向度依存性は機械配向させた液晶性高分子あるいは結晶性高分子と同様の傾向を示した. 結晶性高分子poly (ethylene-2, 6-naphthalate) (PEN) およびisotactic polystyreneが磁場 (6T) 中, 融点付近の熱処理により磁場配向することを見いだした. X線解析, 磁気複屈折測定により, 配向は結晶化誘導期に起こることを示した. PENのin situ赤外分光法により, 結晶化誘導期において非晶中にtrans構造が増大することがわかった. これは誘導期における液晶的な配向秩序が磁場配向に寄与していることを示唆する.
  • 秋山 映一
    1999 年 56 巻 4 号 p. 204-216
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    側鎖型液晶高分子 (SCLCP) においてスペーサー構造が液晶性およびメソゲン基の運動性に与える効果を調べるために, アルキレンスペーサー (AS), シロキサンスベーサー (SS), オリゴ (エチレンオキシド) スペーサー (EOS), およびEOSとASを組み合わせたセグメント化スペーサー (SegS) を有するポリアクリレートを合成し, それらの相転移挙動および誘電緩和挙動を比較検討した. その結果, SSおよびEOSのようにスペーサー構造の柔軟性を高めることでメソゲン基の運動性をより高めることができるが, この場合液晶性が発現するためには比較的大きなメソゲン基を必要とすることがわかった. さらにメソゲン基の運動性を高めるという点では, 小さなメソゲン基の導入が最も効果的であることもわかった. これらの結果に基づきSegSを考案した. SegSを有するポリアクリレートはそれ以外のSCLCPと比較して極あて低いTgを示し, メソゲン基の運動性も極めて高いことがわかった. また電場配向処理によって容易にメソゲン基を配向させることができた. このように低分子液晶と同様なメソゲン基の高い運動性をもつ側鎖型液晶高分子の開発には, セグメント化スペーサーの導入が効果的であることが示唆された.
  • 赤木 和夫, 後藤 博正, 白川 英樹
    1999 年 56 巻 4 号 p. 217-233
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究では, 共役系高分子のポリアセチレン側鎖に液晶基を導入して, 液晶のもつ自発配向性と種々の外部応力に対する配向応答性を利用することで, 巨視的にも配向した導電性高分子薄膜を作製し, 分子配向の制御と電気伝導度の向上を図った. まず, フェニルシクロヘキサン系あるいはビフェニル系液晶基で置換したアセチレンモノマーを合成し, これらをチーグラー・ナッタ触媒あるいはメタセシス触媒を用いて重合することにより, 従来にない共役系高分子, 液晶性ポリアセチレン誘導体を合成した. 溶解性, 溶融性, 分子量の評価をはじめ, 分光学的キャラクタリゼーションを行った後, 示差走査熱量計の測定および偏光顕微鏡の観察により, ポリマーはすべてエナンチオトロピックなスメクチック液晶 (Sm A) を示すことを明らかにした. X線回折測定と分子メカニックス計算とにより, 合成したポリアセチレン誘導体はhead-head (tail-tail) 結合からなる立体規則的配置からなることを示した. 次に, ESRの測定から, シス型およびトランス型異性体での不対電子の有無, ヨウ素ドーピング後のスピン状態の変化について知見を得た. さらに, 液晶状態で磁場配向した後, ヨウ素ドーピングを行い, 分子配向による電気伝導度の上昇と伝導度の異方性を確認した. 最後に, 溶融13CNMR法を用いて, 液晶状態での異方性ケミカルシフトを測定し, 磁場配向挙動と配向秩序度を明らかにした.
  • 川月 喜弘, 川上 優雅, 有田 忠弘, 山本 統平
    1999 年 56 巻 4 号 p. 234-239
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    4- (メトキシシンナモイルオキシアルキルオキシ) ビフェニル基を側鎖に有する高分子液晶を合成し, それら薄膜の高圧水銀ランプによる光反応を行ったところ, 光反応はメトキシ基をもたないものに比べ数倍速くなった. また, 偏光光反応を行うと, 室温の反応ではシンナモイル基の異方的な光反応による負の二色性が生じ, 液晶温度範囲で露光すると未反応メソゲンの光誘起配向に基づく正の二色性が生じた. さらに, 室温で光反応したこれらの薄膜上での低分子液晶の配向挙動を調べたところ, 室温で反応した薄膜上では, 露光時間に応じてホメオトロピック配向とホモジニアス配向の両方が観察され, さらに, ホモジニアス配向は偏光の電界方向に平行から垂直へと変化した. これらの挙動は薄膜中の光反応したメソゲンの方向と低分子液晶の相互作用によって説明される.
  • 川村 兼司, 小出 直之
    1999 年 56 巻 4 号 p. 240-246
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    メソゲン基をもたない液晶性および非液晶性の側鎖型ポリエーテルを合成した. 側鎖末端のアルコキシ鎖の炭素数が12以下のもので液晶相が発現し, それ以上のものは液晶相を示さなかった. これら液晶性および非液晶性ポリエーテルにアルカリ金属塩を添加すると液晶性ポリエーテルは液晶温度範囲が広がり, 非液晶性ポリエーテルもスメクチック相を発現した. これらの混合系について交流インピーダンス測定法によりイオン伝導度について測定したところ, イオン伝導度と相転移について相関が見られ, 非液晶性ポリエーテルよりも液晶性ポリエーテルの方が高いイオン伝導度を示した. また, 液晶性, 非液晶性ポリエーテル共に液晶相でのイオン伝導度は, 塩濃度の影響を等方相ほど受けないことがわかった. 液晶性ポリエーテルのイオン伝導度は, 5.38×10-6Scm-1 ([LiClO4] / [ポリマー繰返し単位] =0.67, 100℃). 非液晶性ポリエーテルの場合は, 4.57×10-7Scm-1 ([LiClO4] / [ポリマー繰返し単位] =0.67, 100℃).
  • 栗原 清二, 増本 晃二, 野中 敬正
    1999 年 56 巻 4 号 p. 247-253
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    低分子液晶, 2官能性液晶モノマーおよび1官能性液晶モノマー (およびアゾベンゼン分子) の3種 (あるいは4種) の液晶成分からなる混合液晶を一軸配向状態で重合して作製した (高分子/低分子液晶) 複合膜の電界印加, 紫外光照射に伴う透明性変化について研究した結果を述べる. 作製した複合膜は一軸配向構造のために透明であったが, 電界印加あるいは紫外光照射により光散乱状態が誘起された. これは, 液晶分子の電界応答性やアゾベンゼン分子のトランスーシス光異性化による光相転移に対するポリマー鎖のアンカリング効果により生じる二相構造に起因する光散乱であり, この光散乱挙動においてフレキシブルなポリマー鎖が影響することが明らかとなった.
  • 前野 光史, 中村 洋, 寺尾 憲, 佐藤 尚弘, 則末 尚志
    1999 年 56 巻 4 号 p. 254-259
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    側鎖重合度が33の主鎖・側鎖ともポリスチレンからなるポリマクロモノマーSS-33の濃厚溶液の液晶性について調べた. この高分子を直鎖ポリスチレンに対する溶媒に高濃度で溶解させると, 多くの場合流動性がなくなりゲル化を起こす傾向にあった. その中でジクロロメタンの濃厚溶液は複屈折性を呈し, 液晶相の形成が認められた.
    稀薄溶液研究から決定されたポリマクロモノマーSS-33のみみず鎖パラメーターを用いて, これまでに直鎖の剛直性高分子溶液系に適用されてきた尺度可変粒子理論より計算した液晶相の出現し始める濃度 (相境界濃度) は, 実測の相境界濃度と半定量的に一致した. ただし, 理論の相境界濃度の分子量依存性は実測のそれよりも弱く, この理論をポリマクロモノマーに適用するときの問題点を指摘した.
  • 佐藤 守之, 竹内 晋
    1999 年 56 巻 4 号 p. 260-263
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    1, 3, 4-チアジアゾール環の両端にフェニル基をもつテルフェニル類似物 (2, 5-ジフェニル-1, 3, 4-チアジアゾール) の二酸クロリドと脂肪族ジオール (m=6, 8~10, 12) から高温溶液重縮合により, 新しい半剛直型ポリエステルを合成した. 得られたポリマーはほとんどの有機溶媒に不溶であるが, トリフルオロ酢酸およびジクロロ酢酸には溶解した. DSCおよび偏光顕微鏡観察の結果, 長い脂肪族鎖のポリマー (m=9, 10, 12) はサーモトロピック液晶相 (スメクチック相) を発現するが, 脂肪族鎖が短いポリマー (m=6, 8) は融解前に分解し, 明瞭な液晶相は確認できなかった.
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