本研究では, 共役系高分子のポリアセチレン側鎖に液晶基を導入して, 液晶のもつ自発配向性と種々の外部応力に対する配向応答性を利用することで, 巨視的にも配向した導電性高分子薄膜を作製し, 分子配向の制御と電気伝導度の向上を図った. まず, フェニルシクロヘキサン系あるいはビフェニル系液晶基で置換したアセチレンモノマーを合成し, これらをチーグラー・ナッタ触媒あるいはメタセシス触媒を用いて重合することにより, 従来にない共役系高分子, 液晶性ポリアセチレン誘導体を合成した. 溶解性, 溶融性, 分子量の評価をはじめ, 分光学的キャラクタリゼーションを行った後, 示差走査熱量計の測定および偏光顕微鏡の観察により, ポリマーはすべてエナンチオトロピックなスメクチック液晶 (Sm A) を示すことを明らかにした. X線回折測定と分子メカニックス計算とにより, 合成したポリアセチレン誘導体はhead-head (tail-tail) 結合からなる立体規則的配置からなることを示した. 次に, ESRの測定から, シス型およびトランス型異性体での不対電子の有無, ヨウ素ドーピング後のスピン状態の変化について知見を得た. さらに, 液晶状態で磁場配向した後, ヨウ素ドーピングを行い, 分子配向による電気伝導度の上昇と伝導度の異方性を確認した. 最後に, 溶融
13CNMR法を用いて, 液晶状態での異方性ケミカルシフトを測定し, 磁場配向挙動と配向秩序度を明らかにした.
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