高分子論文集
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56 巻, 6 号
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  • 原本 雄一郎
    1999 年 56 巻 6 号 p. 335-340
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    1,3-ジチアン環または1,3-オキサチアン環をもつ新規な高分子液晶が系統的に合成された. 最初に, メソゲン基の基本構造に1,3-ジチアン環または1,3-オキサチアン環をもつ重合可能なモノマーの合成を議論した. 次に, それらのモノマーの重合による側鎖型の液晶性高分子およびシロキサンポリマーの合成について論じた. さらに, それらの液晶モノマーと液晶ポリマーの液晶性を論じた. これらの新規な高分子液晶の基本的特徴は, 室温付近で液晶性を示すこと, および対応する1,3-ジオキサン型の高分子液晶よりも低いネマチック相-等方相間の相転移温度を示すことである.
  • 氏家 誠司, 内野 裕子, 飯村 一賀, 佐藤 守之
    1999 年 56 巻 6 号 p. 341-349
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    電子アクセプター性の二量体液晶 (TN-n) をベースとする二成分液晶システムの液晶形成能および配向特性を二量体液晶成分のコンポメーションと関連づけて検討した, 二成分液晶システムとして次の二つのタイプを構築した, 一つはニトロ末端基をもつTN-nにブチル末端基をもっ二量体液晶を混合した液晶系 (T-n-x) であり, もう一方はTN-nにエチルァゾベンゼン基を側鎖にもつ高分子液晶を混合した液晶系 (P-n-x) である. これらの二成分液晶システムは, 電子ドナー・アクセプター効果によって誘起スメクチック相を形成し, 誘起されるスメクチック相の構造は, 二量体液晶分子の中央メチレン鎖長の偶奇性に依存する. T-n-xとP-n-xの両方とも, 中央メチレン鎖長が偶数で, 二つのメソゲン基が比較的平行に配置した形状をもつ偶数系二量体液晶を混合成分としてもつ場合には, SmA相を誘起する. それに対し, 一つのメソゲン基がもう一方のメソゲン基に対して傾いた形状をもつ奇数系二量体液晶を混合成分とするT-n-xの場合には, 誘起SmCA相が形成される. 側鎖型高分子液晶と奇数系二量体液晶との混合系のP-n-xでは, SmCA相に加えSmA相を誘起する. 以上のように, 電荷移動力に加え, 分子の立体的な効果を組み合わせることによって新しい液晶集合体の構築が可能であることが明らかになった.
  • 田畑 昌祥, 貞広 嘉和, 曽根 岳之, 稲葉 泰夫, 横田 和明
    1999 年 56 巻 6 号 p. 350-360
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    一連のアセチレンエステルのモノマー, n-アルキルプロピオレート: HC≡C-COOR (n-アルキル基) はRh錯体, [Rh (ノルボルナジェン) Cl] 2によって立体特異的に重合でき, シス-トランソイド体のポリアセチレンエステルが得られることを見いだした. メタノールなどのアルコールがこの二核錯体から重合開始種を生成させること, また生成したポリマーは自己集合体としての擬ヘキサゴナル構造 (カラムナー) を作り, そのカラムの直径は最小で約9.7Å~最大65Åになること, またポリプロピオレートは酸素の透過係数Po2は約10-9, 酸素と窒素ガスとの分離係数: α (=Po2/PN2) =3.4を示す新規の酸素富化膜になることを見いだした. 合成したポリアセチレンのエステルにはラジカルが含まれており, これはシス体の二重結合が回転してトランス体に異性化したときに生じたπ-ラジカル (ソリトンと呼ぶ) であり, シス体とトランス体では, 観測された電子スピン共鳴スペクトル, g値, 線幅とその温度依存性, ラジカル量とが著しく異なることを見いだした.
  • 浅田 忠裕, 田中 裕之
    1999 年 56 巻 6 号 p. 361-369
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    主鎖型液晶性高分子の二次非線形光学効果 (SHG) について研究した. 試料高分子はp-ヒドロキシ安息香酸 (PHB) と2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸 (HNA) の共重合ポリエステルである. フィルム状試料のSHGは重合時の条件のみならず製膜時の条件によって大きく左右される. まず, SHG測定装置を構築した. これは主としてメーカー・フリンジ法によって非線形光学係数を求められるようにしたものである. 次に, 機械的配向フィルムと電場配向フィルムのSHG特性を比較した. メーカー・フリンジ法で決定した機械的配向フィルムの非線形光学係数dexpは約5pm/Vで, 電場配向フィルムのそれはこの値より2~2.5倍大きい. 主鎖型光非線形性高分子が大きいSHGを示すのは, head-to-tailの結合によって, 個々の繰返し単位の超分極率 (β) の加成性が実現するためであると考えられる. このことは分子軌道法を利用した計算でも裏づけられた. 機械的配向フィルムの重ね合わせによって, 変換効率を上げること, および, 重ね合わせ方式にドメイン反転をとり入れ, 疑似位相整合を利用した変換効率の向上により, 実用化への道が拓けるのではないかと考えられる.
  • 河田 憲, 西川 秀幸, 根来 雅之, 岡崎 正樹
    1999 年 56 巻 6 号 p. 370-377
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    配向膜上に塗布することで, ディスコチック液晶 (光重合性基をもったトリフェニレンヘキサベンゾェート) は均一なモノドメインディスコチックネマチック (ND) 相を形成し, その分子は深さ方向にハイブリッド配向しながらも単一方向に配向していることがわかった. 紫外光の短時間照射により, 上記のディスコチック液晶の新規な配向はほとんどその配向秩序度を変えずに固定化することが可能であった.
  • 奥山 光作, 瓜生 敏之
    1999 年 56 巻 6 号 p. 378-384
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    脂環型ポリエーテルであるポリ (trans-4-オキシシクロヘキサン) は高いパッキング性のため不溶不融のポリマーである. 側鎖置換基としてフェニル基のようなかさ高い置換基を導入してパッキング性を下げることにより, ガラス転移点 (Tg) 以上でサーモトロピック液晶性を示す脂環型ポリエーテルを合成した. このポリマーは主鎖中に共役構造をもたないので無色である. モノマーとしてフェニル基を有するキラルなexo-2-フェニル-7-オキサビシクロ [2.2.1] ヘプタン (POBH) をカチオン開環重合した場合, 光学純度100%の (+) -体と (-) -体から得られるポリマーは立体規則性を有した. ポリマーのシクロヘキサン環は1,4-trans構造でフェニル基はエクアトリアル位の構造をもっていた. 液晶ポリマーは152~195℃にあるTg以上でネマチック液晶性を示した. イソトロピック温度 (Ti) は309~310℃でポリマー間で大きな相違は見られなかった. 高い立体規則性を有するポリマーは高いTgをもっていた.
  • 氏家 誠司, 矢野 由美, 谷本 晋一, 佐藤 守之
    1999 年 56 巻 6 号 p. 385-389
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリアクリル酸 (PAa) とジェタノールアミノ基を有するアゾベンゼン誘導体 (Aazo) とのプロトン移動反応によって, イオンコンプレックス (IC-n) を合成し, その熱的性質と液晶形成能について調べた. PAaとAazoはいずれも単独では液晶性を示さなかったが, IC-nはAazo成分のモル分率 (n) が0.2~0.6の範囲で, エナンチオトロピックなスメクチックA (SmA) 相を形成した. nが0.3のIC-0.3は最も高いSmA-等方相転移点を示し, 11.5~139.1℃の広い範囲でSmA相を形成した. SmA相の層構造として, イオン基が集合した凝集層 (親水性層) とAazoのアゾベンゼン基部分の配列層 (疎水性層) から形成された配向モデルが提案された. IC-nのAazo成分を長鎖アルキルアミンに代えた液晶性イオンコンプレックスとIC-nとの比較から, IC-nのSmA相の発現にはおもにイオン凝集層の形成が強く影響を与え, アゾベンゼン単位は液晶形成への寄与が小さいことが示唆された.
  • 守屋 慶一, 川西 康之, 鈴木 敏也, 矢野 紳一, 梶原 鳴雪
    1999 年 56 巻 6 号 p. 390-395
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    同じオクチルオキシビフェノキシ基を側鎖にもつ, シクロトリホスファゼン (HOBCP), シクロテトラホスファゼン (OOBCP), ポリホスファゼン (POBP) およびシッフ塩基, 4- (N- (4′-ヘプチルオキシフェニル) イミノメチル) フェノキシ基を側鎖にもつシクロトリボスファゼン (HHICP), シクロテトラホスファゼン (OHICP), およびポリホスファゼン) (PHIP) を合成し, その液晶相転移をDSCおよび偏光顕微鏡観察を用いて検討した. HOBCPはCr-SmC-Iのエナンチオトロピック相転移を示したが, OOBCPとPOBPは液晶性を示さなかった. それぞれHHICPはCr-Sml-SmC-SmA-IのOHICPはCr-SmA-Iのエナンチオトロピックの液晶相転移を示した. またPHIPには液晶らしい相が現れた. 同じオルガノホスファゼンにおいては, シッフ塩基を側鎖にもつ誘導体がオクチルオキシビフェニル基を側鎖にもつ誘導体よりも液晶性が高い. これはシッフ塩基のラテラル方向における比較的強い相互作用に起因すると思われる. オクチルオキシビフェニル基を側鎖にもつオルガノホスファゼンにおいては, 液晶性と分子構造の関係が論じられた.
  • 三上 直子, 本間 正男
    1999 年 56 巻 6 号 p. 396-400
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ-DL-アミノ酸 (ポリ-DL-ロイシン, アラニン, グリシン, フェニルアラニン) と繊維タンパク質 (フィブロイン, ケラチン, セリシン) を強誘電性液晶用 (FLC) の配向膜として検討した. 絹から得られるフィブロインでは, 強誘電性液晶の層状構造の法線がラビング方向に対し垂直に配列した. ポリ-DL-アミノ酸配向膜でも, 強誘電性液晶相の層状構造の法線がラビング方向に対し垂直に配列するという同様の現象を示した.
  • 野平 博之, 山田 巌浩, 照沼 大陽, 野平 美紗子
    1999 年 56 巻 6 号 p. 401-405
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    分子内にトリフルオロメチル不斉骨格と末端ビニル基をもつ3種類の液晶モノマーを合成し, これらとシロキサン化合物のヒドロシリル化反応によって, シロキサン結合をもつダイマー型液晶およびポリシロキサンを主鎖とする高分子液晶を合成した. これらのうち, 強誘電性を示すモノマーから合成したものは広い温度範囲で強誘電性を示し, 自発分極は1000~2500μCm-2, 応答時間は115~2800μsであった. また, これらはいずれも大きなチルト角を示した. 一方, 反強誘電性を示すモノマーから合成したダイマー型および高分子液晶は, 反強誘電性は示さず高次の強誘電性相を示した.
  • 永野 修作, 関 隆広, 市村 國宏
    1999 年 56 巻 6 号 p. 406-409
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリジヘキシルシラン (PDHS) に, 3種の棒状液晶分子を混合したスピンキャスト膜を調製し, その混合膜の紫外可視吸収スペクトル測定を行った. いずれのPDHS/液晶分子混合膜でも, PDHS結晶相の吸収バンドが未添加のものに比較して長波長シフトし, その程度は液晶分子の種類に依存した. また, このシフトは, 混合比 ([液晶分子] / [PDHS]) が0.05においても明瞭に認められた. 棒状液晶分子との相互作用によって, 有効共役長のより長いPDHS主鎖のtrans-zigzagコンポメーションが誘起されることがわかった.
  • 加藤 隆史, 小笠原 益美, 氏家 誠司
    1999 年 56 巻 6 号 p. 410-413
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    側鎖に安息香酸を有するポリアクリレートあるいはポリメタクリレートと2,6-ビスアシルアミノピリジンは, 相補的な二重水素結合の形成により, 超構造側鎖型高分子複合体となり, モノトロピックなサーモトロピック液晶性を示した. この高分子液晶においては, 偏光顕微鏡下, 等方相-液晶相転移点付近で, 樹状のテクスチャーが観察された. このことは, この超構造複合体がカラムナー相を形成していることを示している.
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