ポリマーアロイの構造解析研究の新しい潮流として, 三次元画像解析および三次元構造定量解析を提案する. 高分子多成分系の最も単純な系である高分子二成分混合系を取り上げ, この系の相分離過程で形成される構造の微分幾何学的な特徴について考察した. 従来の研究の多くは, 相分離構造の粗大化過程を, 周期長に代表される相分離構造のおおまかな (globalな) 特徴を記述するパラメーターでとらえてきた. 界面の形態などの局所的な構造とその時間発展に関する研究例はごくわずかである. しかし, 異種の高分子がお互いの接触を避けるために界面を減らすことが相分離の駆動力であることを考慮すると, むしろ, 局所的な界面の形態とその時間変化こそが相分離の本質であろう. 本研究では, 界面の形態を共焦点レーザースキャン顕微鏡法により三次元実空間観察を行い, 界面曲率分布を測定する手法を開発した. 解析の結果, 高分子混合系の界面は双曲面からなることを初めて明らかにした. また, 界面曲率分布の時間変化を解析することにより, 界面という局所的な構造もスピノーダル分解後期過程において自己相似性をもつことも明らかとなった. さらに, 今後, 三次元構造解析によって測定可能となるであろう新しい構造パラメーターとそれらを用いた構造解析研究の可能性について述べる.
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