高分子論文集
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57 巻, 10 号
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  • 石津 浩二
    2000 年 57 巻 10 号 p. 611-617
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ミセルやミクロ相分離構造のような, 組織化だった反応場に橋かけ反応を加えるとスター, コアーシェル型ミクロスフェア, (AB) n型スターのポリマー群およびナノロッドポリマーが容易に合成できる. これらのポリマー群は密な高分岐腕セグメントにより, 溶液中で立体安定化され単分子での構造形成をひき起こす. スターポリマー群はフィルム形成過程において, 球構造の階層的格子転移をひき起こし, またナノロッドポリマーは幾何学的な異方のため液晶性を示すなどの興味深い高分子性を発現する. さらにこの階層的格子転移を応用すると, 3相ミクロ相分離した超構造体ポリマーが構築でき種々のデバイスへの応用が可能となる. これら高分岐ポリマー群の合成と発現する高分子性について最近の研究展開を概説する.
  • 松宮 由実, 渡辺 宏
    2000 年 57 巻 10 号 p. 618-628
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    分岐鎖長および分岐点間分子量に分布のないpom-pom型および櫛型ポリブタジエン (PB) 試料について, 枝どうしは十分絡み合っているが幹どうしは絡み合わない濃度の溶液の粘弾性を検討した. その結果観察されたRouse型の終端緩和は, 枝運動で誘起される幹の束縛解放緩和によるものと推論された. 拡張管模型の枠内で, 束縛解放の結果として起こると考えられている管膨張過程が上記のpom-pomおよび櫛型PB試料の幹緩和を支配していないことを確認するため, より基本的な直鎖および星型鎖に対して管膨張過程の検証を行った. この目的のため, A型双極子を有する絡み合い鎖の規格化粘弾性緩和関数と誘電緩和関数に対して管が膨張する場合に成立する一般的関係を導出した. 単分散直鎖についてはこの関係がかなりよく成立し, 管膨張過程が実証された. 一方, 単分散星型鎖と希薄高分子量プローブについては, この関係が成立せず, 単純な管膨張は起こっていないことが見いだされた. この結果は, 隣接絡み合いセグメントが平衡化して管が膨張する際の素過程となる束縛解放運動の重要性を示す. また, この結果は, 上記のpom-pom型および櫛型PBの緩和に対する推察を支持する.
  • 北川 優, 常盤 豊
    2000 年 57 巻 10 号 p. 629-636
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    還元末端を有する単糖とアジピン酸ジビニルとの酵素触媒によるエステル交換反応では片方のビニルエステルのみが反応し, 重合反応は進行せず糖ビニルエステル (単量体) が生成されることを見いだした. 種々の加水分解酵素の中では放線菌由来アルカリ性プロテアーゼがジメチルホルムアミド (DMF) 中で優れた触媒作用を示した. 二糖を用いた反応でも酵素重合は進行せず, 糖ビニルエステルのみが生成した. 得られた糖ビニルエステルは化学重合により容易に高分子化できることから, 種々の糖含有ポリマーのデザインが容易になった. この還元糖の分岐をもつ高分子の酵素・化学合成について紹介する. 具体的には, (1) 糖ビニルエステル合成のための親水性有機溶媒中でのエステル交換反応を触媒する酵素のスクリーニング, (2) 放線菌由来アルカリ性プロテアーゼによるエステル交換反応の特徴, (3) 種々の糖ビニルエステルの酵素合成, (4) 糖ビニルエステルの化学重合, (5) 生分解性, (6) ラジカル生成能について述べる.
  • 横山 士吉, 益子 信郎
    2000 年 57 巻 10 号 p. 637-645
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    分子構造の繰返しに, アゾベンゼン色素を有するデンドリマーが高い分子内組織性を有し, 超分極率を有効に増幅していることを示した. 分子集合体から発生する2次非線形光学現象の起源は, 反転対象中心のない分子配向構造であるので, デンドリマーが分子内で高度に組織化し1軸配向を有していることが明らかとなった. 本研究では超分極率の測定をHyper-Rayleigh散乱法で行い, 解析したデンドリマーの2次非線形光学特性は, 溶液中における分子コンホメーションに反映している. したがって, デンドリマーの分子組織構造が, 分子内の自己組織化によって構築されていることを示すとともに, 観察した超分極率の増幅がデンドリマー組織体によって発現した特異な現象であることを示した. 本誌では, 以上の結論に併せて, 詳細を量子化学的に考察する目的でデンドリマーの3次構造と非線形光学現象について分子動力学計算と分子軌道計算を用いて解析した.
  • 高木 幸治, 内倉 和一, 服部 達哉, 国貞 秀雄, 結城 康夫
    2000 年 57 巻 10 号 p. 646-651
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    コンバージェント法により1, 3, 5-トリアジン環を分岐点に有するデンドリマーの合成を検討した. まず, 塩化シアヌルに対して1分子のp-ニトロアニリンを置換させ2, 4-ジクロロ-6- (p-ニトロアニリノ) -1, 3, 5-トリアジン (DCNT) を得た. 続いてDCNTに2分子のアニリンを置換させた後, ニトロ基を還元することでアミノ基を活性基として有する第1世代デンドロン (G1-A) を合成した. また, DCNTとG1-Aとの類似の反応により第2世代デンドロン (G2-A) を合成した. 一方, DCNTとG2-Aとの反応ではG3-N (1: 2付加体) と1: 1付加体とが混合物として得られたが, このままニトロ基の還元反応を行って精製した結果, 目的とする第3世代デンドロン (G3-A) を低収率ながら得ることができた. 最後にこれらのデンドロンを中心核となる塩化シアヌルとカップリングさせて第1 ([G1] 3-C) および第2世代デンドリマー ([G2] 3-C) を合成した. 得られたデンドリマーはトリアジン環とベンゼン環がイミノ基を介して交互に配列しており, 比較的平面性の高い構造をしているものと考えられる. 本報では, 得られたデンドリマーの性質についても併せて述べる.
  • 丹羽 政三, 森川 全章, 東 信行
    2000 年 57 巻 10 号 p. 652-658
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    片末端にジスルフィド部位を導入したポリ (L-グルタミン酸-γ-ベンジル) の合成を行った. クロロホルム (CHCl3) およびジメチルスルポキシド (DMSO) 溶液中でのポリ (L-グルタミン酸-γ-ベンジル) の2次構造や会合状態によって, 金表面上に得られる単分子膜の集合構造は異なり, 吸着時の溶媒を変えることでヘリックス・マクロダイポールが逆平行または平行に並んだ単分子膜が得られることを水晶発振子マイクロバランス (QCM) やサイクリックボンタルメトリー (CV) 測定により明らかにした. 電極/電解液界面の電気二重層による電場を利用してポリペプチド・ヘリックスロッドの配向制御を検討したところ, 溶液中でポリ (L-グルタミン酸-γ-ベンジル) どうしが会合している場合でも電場によって金表面上の吸着集合状態が平行配列に変化したことから, 個々のポリ (L-グルタミン酸-γ-ベンジル) のマクロダイポールは電場の方向に沿って配向することがわかった.
  • 東 信行, 古賀 智之, 北松 瑞生, 丹羽 政三
    2000 年 57 巻 10 号 p. 659-664
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    光重合開始能を有するザンテート基で表面を修飾した第4世代ポリアミドアミンデンドリマー (G4-X) を新規に調製した. 表面圧-面積等温曲線ならびに反射吸収スペクトルよりG4-Xは気水界面で単分子膜を形成することがわかった. またX線光電子分光法 (XPS), 反射吸収スペクトルから, このG4-X単分子膜は気水界面上でアルカリ加水分解することで容易にザンテート基の一部がメルカプト基に置換され, 表面ブロック型デンドリマー (G4-X-SH) が調製できることがわかった. このように調製したG4-X-SHはラングミュア・ブロジェット膜 (LB) 法ならびに自己吸着 (SA) 法により金基板上に固定化することができ, その単分子膜の形態観察を原子間力顕微鏡を用いて行った.
  • 板屋 智之, 井上 賢三
    2000 年 57 巻 10 号 p. 665-671
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    4, 4′ -ビピリジン (Bipy) と長鎖アルキルスルホン酸銀 (ドデシルスルホン酸銀 (AgSO3C12), テトラデシルスルホン酸銀 (AgSO3C14), ヘキサデシルスルホン酸銀 (AgSO3C16)) から櫛形構造を有する配位高分子の合成を行い, 固体状態における高分子の構造を元素分析, 1HNMRスペクトル, FT-IRスペクトル, 示差走査熱分析 (DSC), 粉末X線回折 (XRD) 測定から研究した. Bipyとアルキルスルホン酸銀との自己集合によって, BipyとAg+が繰返し結合してできた剛直な高分子鎖を主鎖とし, Ag+にイオン結合したアルキルスルホン酸アニオンを側鎖にもつ櫛形構造を有する配位高分子が形成された. これら配位高分子の中で, BipyとAgSO3C14, BipyとAgSO3C16からなる櫛形配位高分子はラメラ構造に組織化されていることがわかった. 前者においては隣接する高分子の側鎖アルキル基どうしは, 高分子主鎖に対して垂直に配向し互いに入れ子状にパッキングしているのに対し, 後者の場合, アルキル基が主鎖に対して約60°傾いていることが示された. これらの結果をもとに, 配位高分子形成に及ぼすアルキル鎖長の影響について考察した.
  • 金子 隆司, 堀江 貴洋, 青木 俊樹, 及川 栄蔵
    2000 年 57 巻 10 号 p. 672-677
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    デンドリマーの分岐部位として, 4- (3, 5-ジブロモフェニル) -2-メチル-3-ブチン-2-オールを合成した. 最外殻部のユニットとしてt-ブチル基が導入されたフェニルアセチレン誘導体とパラジウム触媒を用いてクロスカップリング反応し, さらに脱保護基することで第1世代のモノデンドロンマクロモノマーを合成した. 焦点部のフェニルアセチレンを重合性官能基として, ロジウム錯体触媒で重合することで, 高分子量のポリデンドロンが合成できた. 1HNMR, 紫外可視スペクトルから, 共役系の発達したシスートランソイダル主鎖構造をもつことが明らかとなった.
  • 長瀬 裕, 中川 淳
    2000 年 57 巻 10 号 p. 678-684
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    結晶性などの特徴を有し, なおかつ有機溶媒への溶解性に優れた芳香族ポリアミドを得ることを目的としてスター型ポリアミドの合成を検討した. まず, 末端アミノ基とカルボキシル基をそれぞれ8個もつシクロシロキサン骨格からなる2種類のコア分子を合成した. 次に, それらの末端官能基を重合開始点として直接重縮合法によるp-アミノ安息香酸の重合を行い, アミノ末端とカルボキシル末端をそれぞれ有する2種のスター型芳香族ポリアミドを合成した. また, これらのスターポリマーの末端官能基を4-メチル安息香酸塩化物およびp-トルイジンとそれぞれ反応させ, エンドキャッピングを行った. 物性測定の結果, 得られたポリマーは良好な耐熱性と, 同様な繰返し構造からなる線状ポリマーに近い結晶性を示し, しかも有機溶媒に可溶であることが明らかとなった.
  • 山崎 弘毅, 井原 真希子, 木下 篤美, 本間 隆夫, 長瀬 裕
    2000 年 57 巻 10 号 p. 685-690
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    片末端に2, 2′-ジ (ヒドロキシメチル) ブトキシプロピル基を有する新規のポリジメチルシロキサンマクロモノマー (DHMBP-PDMS) の合成を行った. また, 得られたマクロモノマーを用いてポリウレタンの側鎖にポリジメチルシロキサン鎖を有するグラフト共重合体の合成を検討した. DHMBP-PDMSは, 1-アリルオキシ-2, 2′-ジ (ベンジルオキシメチル) ブタン (ABMB) と片末端にヒドロシリル基を有するポリジメチルシロキサン (H-PDMS) をヒドロシリル化し, 得られる2, 2′-ジ (ベンジルオキシメチル) ブトキシプロピル基を片末端に有するポリジメチルシロキサン (DBMBP-PDMS) のベンジル基を水素化還元により脱保護することで合成した. 得られたDHMBP-PDMSと, p-キシリレングリコール (XG), および4, 4′-ジフェニルメタンジイソシアナート (DPMDI) との重付加により, 数種の組成からなるポリウレタン/ポリジメチルシロキサングラフト共重合体 (PU/PDMS) を合成することができた. このPU/PDMSは, N, N′-ジメチルホルムアミド (DMF), N, N′-ジメチルアセトアミド (DMAc), ジメチルスルホキシド (DMSO), および1-メチル-2-ピロリドン (NMP) などの非プロトン系極性溶媒に溶解し, アセトン, テトラヒドロフラン (THF), クロロホルム, および塩化メチレンなどの有機溶媒には不溶であった.
  • 松岡 浩司, 齋藤 洋介, 照沼 大陽, 葛原 弘美
    2000 年 57 巻 10 号 p. 691-695
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    末端に12個の臭素原子を含むカルボシランデンドリマーを合成した. 得られたデンドリマーと, β-シクロデキストリン (β-CD) のベンジルスルフィド誘導体からバーチ還元により生成するチオレートアニオンとの置換反応を液体アンモニア中, ワンポットで行ったところ, 12個のβ-CD残基を含有する目的物とともに11, 10, 9個のβ-CD残基を含有する化合物の混合物として得られることがわかった. 得られた化合物の包接能を, 2-p-トルイジニルナスタレン-6-スルホン酸 (TNS) をゲスト分子として評価したところ, β-CD残基: TNSが2: 1の包接錯体を形成していると推定した.
  • 新 和之, 玉垣 誠三, 長崎 健
    2000 年 57 巻 10 号 p. 696-700
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    核酸に対する親和性を光制御するためにフォトクロミック構造を人工ベクターへ導入し, 哺乳細胞への遺伝子導入・発現 (トランスフェクション) を行う際にアゾベンゼン光異性化の影響について検討した. 遮光下にて完全にtrans体へと異性化した状態を用いプラスミドDNAと複合体形成を行い3時間細胞と接触させ遺伝子導入を行った. その後, 通常培養を行う前に5分間UV照射を行ったときトランスフェクション効率は50%向上した. UV照射によりアゾベンゼンがトランスからシス構造に異性化することで末端アミノ基間が接近し電荷反発が生じカチオン量が減少する. 粒子のゼータ電位測定からも電荷量変化は確認された. 人工ベクターに導入されたフォトクロミック構造の光異性化によりトランスフェクション効率を制御できることがわかった.
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