高分子論文集
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57 巻, 11 号
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  • 太田 浩司, 曽禰 元隆, 光井 英雄, 高岡 京
    2000 年 57 巻 11 号 p. 701-707
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリジメチルシロキサン (PDMSi) 中の溶存水が形成するクラスターをIRスペクトル法で検討し, 低分子シロキサン中および低分子エーテル化合物中溶存水の状態と比較した. また, 水クラスターの熱安定性を調べた. さらに含水PDMSiの導電率を計測し, PDMSiの絶縁性低下に及ぼすクラスターの効果について検討した.
    PDMSi中溶存水は1対1型の結合水を主体とした小クラスターによって構成されている. 低分子エーテル化合物と比較して, >O周辺に集まる大型クラスターはほとんど形成されていない. この小クラスターは加熱に対して安定で, 100℃においても68%残存していた.
    PDMSi中溶存水は総水分量180ppmまでは導電率の増加に寄与していないが180ppmを超えると水分量増加とともに導電率が増加する傾向を示した. この際 [>O・H2O] がもっとも伝導に寄与していることが明らかになった.
  • 小川 俊夫, 佐藤 智之, 大澤 敏
    2000 年 57 巻 11 号 p. 708-714
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    低密度ポリエチレンシートとポリエチレンテレフタレートフィルム表面にプラズマ処理やコロナ放電処理などの表面処理を施した後, ラミネートフィルムを作製した. その後, はく離試験を行い, 接着性を評価した. その結果, 接着強度は, ラミネートするフイルムの一方に表面処理を施すよりも, 両方に施すことにより大きく向上した. その結果, 接着強度は, 表面処理の組み合わせによっては, 接着剤を用いた場合の強度を大きく上回っており, 表面エネルギーの低い低密度ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートをラミネートする場合でも, 両方のフィルムに適切な表面処理を施し, ラミネートすることで, 接着剤を用いなくとも十分な接着強度が得られることが見いだされた. また, 高いはく離強度が得られたものは, はく離が凝集破壊となることが確認された.
  • 飯澤 孝司, 宮本 俊, 菅野 聡美
    2000 年 57 巻 11 号 p. 715-721
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    シェル層がポリアクリル酸アルキル, コア部分がポリアクリル酸の1, 8-ジアザビシクロー [5, 4, 0] -7-ウンデセン (DBU) 塩ゲル (DAA) のコアーシェル型ゲル (ゲルカプセル) を合成する条件を確立するため, 円柱形のDAAとアルキルブロミドの反応を検討した. さらに, 反応系にジブロモアルカンを加え, エステル化と同時に2次架橋し, 生成したシェル層の強化を試みた. この反応速度は, アルキルブロミドや少量のジブロモアルカンの種類などにより影響されなかった. 得られたゲルカプセルは, 50℃の水に浸けると膨潤し最終的には破壊した. ゲルカプセルの破壊時間は, シェル層およびコア部分の厚さ, アルキルブロミドとジブロモアルカンの組合せ, ジブロモアルカンの含有量により大きく変化し, これらの因子を調整することにより制御できることが判明した. さらに, ゲルカプセルに染料を担持した場合, 破壊するまで染料の放出は認められず, 破壊すると同時に染料を急激に放出することが認められた.
  • 木村 真哉, 南谷 浩二, 後藤 健彦, 迫原 修治
    2000 年 57 巻 11 号 p. 722-729
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    長鎖の疎水性側鎖をもつアクリル酸ステアリル (SA) 多孔質ゲルは, 有機溶媒中で温度変化に応答して素早く膨潤・収縮する. このような膨潤・収縮はSA側鎖の結晶化・融解に起因する. 多孔質SAゲルは相分離を利用して合成され, 多孔質構造はゲルを合成する際の架橋剤濃度によって制御できる. しかし, 架橋剤濃度が低い場合には非多孔質ゲルとなり応答速度が低下する. これらの問題を解決するために, メタクリル酸エステルとの共重合による多孔質構造の制御について検討した. さらに, これらの共重合ゲルの1-オクタノール中での温度応答性についても検討した. 4種類のメタクリル酸エステル, すなわち側鎖の長さの異なるメタクリル酸メチル, エチル, ヘキシルおよびドデシルを用いた. 架橋剤濃度が十分低くても, これらのメタクリル酸エステルを適度なモル比で共重合することによって多孔質ゲルが得られ, 共重合比が0.25以下の場合にはメタクリル酸エステルの側鎖の長さが異なっても多孔質構造にはほとんど差がなかった. しかし, これらのゲル中のSA側鎖の結晶構造はメタクリル酸エステルの側鎖の長さによって大きく異なり, このことが温度応答性に大きく影響した.
  • 木村 隆夫, 引地 真一
    2000 年 57 巻 11 号 p. 730-733
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    pH-温度応答性を感度よく示す共重合体を合成する目的で, カルボキシル基を分子内に2つ有するイタコン酸 (IA) に注目し, 単量体供給比を変えてN-イソプロピルアクリルアミド (NiPAAm) とのラジカル共重合を行った. また, 得られたNiPAAm-IA共重合体と同条件のもとで, 既知のNiPAAm-アクリル酸 (AA) 共重合体を合成した. 両共重合体水溶液のpHを酸性側に調整し, 透過率の測定から下限臨界溶液温度 (LCST) を求め, その値を比較した. その結果, NiPAAm-IA共重合体のLCSTは, IAユニットの組み込み比が高くなるに伴い, 高温側にシフトし, またNiPAAm-IA共重合体はNiPAAm-AA共重合体に比べて, そのLCST挙動に高いpH依存性が見られ, pHの増加に伴い, LCSTが上昇した.
  • 西尾 昭徳, 望月 周, 杉山 順一, 竹内 和彦, 浅井 道彦, 上田 充
    2000 年 57 巻 11 号 p. 734-742
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    非対称単量体, p-イソシアナトベンジルイソシアナート (PIBI) と, 対称単量体, エチレングリコール (EG) と1, 3-ベンゼンジメタノール (BM) の重合による定序性ポリウレタンの合成を検討し, 重合条件を変えることにより4種の定序性ポリウレタンを得た. これら定序性ポリウレタンは定序性の違いから, 溶解性や結晶性に大きな違いが見られた. また, 定序性ポリウレタンの屈折率を測定したところ定序性に応じて屈折率が変化することが明らかとなり, 定序性はポリマーの光学的性質に影響することがわかった.
  • 高野 希, 福田 富男, 小野 勝道
    2000 年 57 巻 11 号 p. 743-750
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アルコキシシラン化合物を用いて, 処理条件がシロキサン形態に及ぼす影響を検討した. シロキサン形態はFT-IRの拡散反射法で分析した. 試料はアルコキシシラン溶液で直接処理したKBrを用いた. 処理条件と鎖状シロキサンの生成割合との関係を評価した結果, 処理液濃度が低くなるとシロキサン結合は形成しにくく, 鎖状シロキサン成分の生成割合が高くなることがわかった. この傾向は, トリメトキシ系よりもジメトキシ系のアルコキシシラン化合物で顕著であった. メトキシ基に比べてエトキシ基を末端にもつアルコキシル化合物は, 鎖状シロキサンの生成割合が低かった. 一方, 低沸点の溶媒を処理液に用いた系は, 鎖状シロキサン生成割合が増加した. この傾向は, ケトン系溶媒に比べてアルコール系溶媒で顕著であった.
  • 柴田 祐子, 井上 博史, 下村 岳彦, 草薙 浩
    2000 年 57 巻 11 号 p. 751-756
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    X線光電子分光法 (ESCA) によりナイロン6フィルムを分析した. O1sピーク高工ネルギー側に認められるショルダーピークがアミド結合のOではなく, ナイロンを吸水させることにより出現することが判明した. 水はナイロン6のアミド基と水素結合することにより表面に吸着しているものと考えられる. またこの吸着水量はナイロンの結晶化度と相関があり, 結晶化度が低いほど吸着水量は多い. ナイロンの表面非結晶領域ではフリーのアミド基が多く存在し, 1分子の水が複数のアミド基と水素結合を取ることが可能となり表面に強く吸着しているものと考えられる. また水により内部のアミド基が表面に移行してきていることが予想される.
  • 足立 廣正, 長谷川 照夫
    2000 年 57 巻 11 号 p. 757-759
    発行日: 2000/11/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究では, ビーズ法ポリスチレンフォームにおいて, 粘弾性測定器により測定した圧縮モードの動的弾性率について, 静的弾性率との比較, 気泡破壊前後の温度特性の比較を行った. その結果, 静的弾性率と動的弾性率との関係において正の相関関係がみられ, 動的弾性率は静的弾性率よりかなり大きいことがわかった. 気泡破壊後の動的弾性率は気泡破壊前の動的弾性率と比較してかなり小さくなった. 独立気泡の存在と圧縮方向のスケルトンの座屈がスケルトンの変形に対する抵抗に大きく影響を及ぼしたことが動的弾性率低下の原因であると考えられる.
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