高分子論文集
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58 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 今西 秀明, 山口 知宏, 福田 徳生
    2001 年 58 巻 3 号 p. 99-104
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル (PVC) の耐衝撃性は微粉末状の炭酸カルシウム (CC) を良好に分散された状態でPVCに添加することによって大きく改善できる. 優れた耐衝撃性を得るための要因として, 数種類の安定剤, 可塑剤の量, PVCの種類および熱ローラによる混練温度および混練方法について検討した. その結果, 安定剤では脂肪酸塩が優れた効果を示した. PVCの分子量が大きく, 可塑剤が多い場合にも優れた耐衝撃性が発現する傾向が認められた. 混練温度と混練方法の影響が大きく作用し, 特に, 低温での予備混練が有効であった. 走査型電子顕微鏡 (SEM) による観察では優れた耐衝撃性を示した試料は良好な分散状態でPVCのマトリックス中にCC (粒径, 0.01-0.3μm) が存在することが示された.
  • 中村 隆司, 小林 昭彦, 三上 隆三
    2001 年 58 巻 3 号 p. 105-110
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    新規シリコーンアイオノマーを合成し粒子化しシリコーンオイルへ分散させて電気粘性 (ER) 流体を作製した. (1) カルボン酸塩型およびスルホン酸塩型新規シリコーンアイオノマーおよびその微粒子の製造方法を確立した. これら微粒子をシリコーンオイルへ分散させたとき, ER特性を示した. (2) カルボン酸塩型アイオノマー粒子を用いたER流体は2kPa以上の大きい降伏応力を示した. 降伏応力は100℃付近に極大値が存在し, それ以上では低下した. 降伏応力が大きくなるほどリーク電流も大きくなるという傾向が認められた. (3) カノレボン酸塩型アイオノマー粒子を用いたER流体は高温特性および高温安定性が悪かった. (4) 分岐状構造を有するスルホン酸ナトリウム塩アイオノマー粒子を用いたER流体は降伏応力は小さかったが, リーク電流の温度依存性も小さかった. また, 高温安定性がよかった. このER流体の降伏応力は温度上昇に伴い増大した.
  • 中村 隆司, 峰 勝利
    2001 年 58 巻 3 号 p. 111-116
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    水素シルセスキオキサン (HSQ) 樹脂の200-400℃の温度範囲で窒素中または空気中での動的粘弾性挙動をG′, G″値に着目することにより調べた. HSQ樹脂は熱をかけることにより溶融し次いでキュアした. キュアが進むにつれG′は温度の上昇とともに増大したが, G″はある温度で消失した. すなわちHSQ樹脂は完全弾性体にまでキュアするものと思われる. 窒素中でのキュァと比較することにより, 酸素の役割はキュア挙動のパターンを変えることなくキュアの速度を促進し最終的な弾性率を増大させることであることがわかった. 温度・雰囲気が溶融挙動へ与える影響, 窒素中でキュアの前にプレヒートを行う効果についても調べた. 得られたデータは, HSQ樹脂が半導体への応用分野において実際に適用可能な平坦化・キュアプロセスおよび膜特性を向上する可能性を示唆するものである.
  • 福田 光完, 菊地 洋昭
    2001 年 58 巻 3 号 p. 117-122
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    熱力学積分 (Thermodynamic integration: TI) 法と呼ばれる分子シミュレーションを用いて, シス1, 4-ポリイソプレンへの4種の炭化水素ガス (メタン, エタン, プロパン, ブタン) の自由エネルギー関連パラメーター (過剰化学ポテンシャル, 溶解度, 溶解度係数) を評価した. 系がゴム状態である100℃と0℃において溶解度はブタン>プロパン>エタン>メタンの順に大きく, またこれらのガスの溶解度は温度の低下とともにやや増加した. これらの結果は, 従来報告されている実験結果と比較すると, 定性的な傾向はすべて一致し, 溶解度係数の絶対値においてもほぼ満足される値であった. TI法による高分子膜材料への低分子ガス溶解度の評価について, 実用的な見地からその有用性を検討した.
  • 小川 俊夫, 甚内 英樹, 大澤 敏
    2001 年 58 巻 3 号 p. 123-129
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    既存の漆工芸品や文化財建築物をはじめとする漆塗装物は時間とともに光によって色褪せ, 劣化を起こす. したがって, 漆膜にとってもっとも変化の少ない条件は, 暗所保存である. しかし, 博物館や漆器の使用においてこれは現実的ではない. そこで本研究では漆膜に臭素付加を行うことにより, 漆膜の耐光性向上を試みた. その結果, 漆膜に臭素付加を行うことにより, 紫外線照射しても光沢や色差などの外観変化が少なく非常に高い耐光性改善効果が認められた. なお漆膜の最適臭素付加時間は10~20分間程度であった. ただし, 漆膜の表面酸素量は臭素付加の有無にかかわらず紫外線照射によって時間とともに増加した.
  • 井出 孝, 上田 憲司, 椿原 啓
    2001 年 58 巻 3 号 p. 130-133
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    大気中および真空中において熱処理されたエメラルディン塩基ポリアニリン (EB) の構造変化を可視紫外および赤外分光スペクトルにより調べた. その結果から筆者らは210℃までとそれ以上の領域の2つの温度領域に分けて考えることができる. 真空中で熱処理した場合, 210℃までの温度増加では構造上の変化はほとんど認められない. それ以上の高温熱処理では, イミン間の鎖間架橋のためのキノイド減少が観察された. 大気中で熱処理した場合には210℃までの低温熱処理で酸素の付加によるEBの構造変化が生じた. さらに高温熱処理ではアミンの水素脱離も生じ, 鎖間架橋反応が進行する.
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