高分子論文集
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59 巻, 8 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 鳥羽 泰正
    2002 年 59 巻 8 号 p. 449-459
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    オニウムボレートを用いた光重合開始剤系に関する筆者らの最近の成果を概説する. 特に, オニウムブチルトリフェニルボレートを用いたラジカル光重合とオニウムテトラキス (ペンタフルオロフェニル) ボレートを用いたカチオン光重合反応についてまとめた. オニウムブチルトリフェニルボレートはさまざまな増感剤によって光分解してフリーラジカルを発生し, アクリレートのラジカル光重合をひき起こす. これらは公知のオニウム塩やボレート開始剤と比べて数倍~数百倍の重合速度を示した. これはオニウムカチオンとボレートアニオン双方からフリーラジカルが発生することに起因する. 一方, オニウムテトラキス (ペンタフルオロフェニル) ボレートは, 自身の光分解およびアントラセン類による増感光分解によりエポキシドやビニルエーテルのカチオン重合をひき起こす. 光分解により発生する酸は加熱によってさらに分解し, 非酸性の中性分子を生成する. 光反応初期過程はいずれのオニウムボレートを用いた場合でも増感剤との光電子移動反応に基づくものであり, 反応の自由エネルギー変化がより負である系ほど高い重合速度を示すことが明らかとなった.
  • 宮武 健治
    2002 年 59 巻 8 号 p. 460-473
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高温で高いプロトン伝導度を保持する高分子固体電解質の合成と, その膜物性に関する筆者らの最近の研究成果をまとめた. スルホニウムやかさ高い側鎖置換基を有する可溶性前駆体を経由した, 芳香族高分子 (ポリフェニレンスルフィド, ポリエーテル共重合体) の高効率・高選択的な電解質化反応を開発した. チオアニソール類の酸化重合・重縮合によって得られるスルホニウム含有高分子のスルホン酸化により, 繰返し単位当たり最大ニスルホン酸基が導入されたポリフェニレンスルフィドを合成した. スルホン酸基導入量と膜の熱特性, 加湿条件下 (RH100%) におけるプロトン伝導特性の相関を解析し, 180℃で10-2Scm-1の伝導度が達成された. ポリフェニレンスルフィドスルホン酸とポリエチレンオキシドは相溶性がよく, その複合膜は非水系においても高温で安定なプロトン伝導性を示した. また, 側鎖フェニレン環にスルホン酸基を置換したテトラフェニルフェニレン (あるいは, ヘキサフェニルビフェニレン), パーフルオロビフェニレン, 部分フッ化アルキレンからなる新しい芳香族ポリエーテル共重合体を合成した. 組成によりガラス転移温度とイオン交換容量が調節できるこの共重合体は, 高温保水性と高プロトン伝導性を併せもつ. スルホン酸基が主鎖に直接結合していない構造は, 耐熱性, 酸化・加水分解安定性に優れていることが明らかとなった. ボスホン酸やホスフィン酸誘導体についても, その合成と電解質特性を述べる.
  • 寺境 光俊
    2002 年 59 巻 8 号 p. 474-483
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    芳香族系ハイパーブランチポリアミドの合成を行い, 重合体特性, モノマー構造と分岐度の関係, 分岐構造導入と分岐密度の物性への影響について検討した. 繰返し単位に分岐骨格を導入することで高い耐熱性を保ちつつ, 溶解性を付与したハイパーブランチポリアミドを合成した, 高い溶解性, 低い粘性, 末端官能基の化学修飾による重合体特性の変化などが観察された. デンドロンを出発物質とする1段階重合から分岐度の高いハイパーブランチポリマーを合成した. また, AB型モノマーとの共重合を行うことで分岐密度の低い重合体を合成した. 共重合体物性は組成に応じて連続的に変化した. 少量の分岐点導入により大きく物性値が変化する点が興味深い. また, AB2型モノマーの加熱溶融重縮合が可能であることを新たに見いだした. ハイパーブランチポリマーの結晶化のしにくさ, 溶融粘度の低さが重合進行に適した安定な溶融状態形成に寄与していると考えられる.
  • 大矢 裕一
    2002 年 59 巻 8 号 p. 484-498
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    乳酸を主成分とし, 反応性側鎖を有するアミノ酸や親水性の糖鎖ユニットを組み込んだ, ランダム・ブロック・グラフト・分岐などさまざまな分子形態を有する新しい生分解性高分子を合成した. ポリ乳酸は, 安全性・力学的強度などに優れる反面, 柔軟性に欠けるため軟組織適合性が低く, 反応性官能基をもたないので化学修飾が困難である. ポリ乳酸への柔軟性の賦与や, 化学修飾などによる機能賦与, 生分解速度の精密な制御が可能となれば, 生分解性バイオマテリアルとしての応用範囲の大幅な拡大が見込まれる. 本報では, 化学修飾による機能拡張性の賦与を意図した側鎖に反応性官能基を有するデプシペプチドー乳酸・ランダムおよびブロック共重合体の合成, 分岐構造化による力学的特性や生分解性の制御を意図した櫛型および分岐型ポリ乳酸共重合体の合成, 親水性セグメントの導入によるミクロ構造制御や物性の改変を意図したポリ乳酸グラフト化多糖および糖鎖末端ポリ乳酸の合成, およびそれらの新しい生分解性バイオマテリアル素材としての応用に関する基礎的検討の結果について報告する.
  • 田和 圭子
    2002 年 59 巻 8 号 p. 499-509
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本報では, 偏光紫外可視分光, 偏光FT-IR分光, 表面プラズモン分光などの偏光分光法で観た高分子マトリクス中のアゾ系色素の偏光誘起配向について述べる. 偏光FT-IR分光測定により得られたスペクトルを用いて, Trans体とCis体おのおのの配向因子を求める方法を確立した. その結果, アゾ色素を分散させた高分子では, アゾ分子の異性化過程や偏光誘起異方性の大きさに, 高分子めもつ極性基や自由体積の影響があることが示された. そして, 色素を側鎖に化学修飾した高分子では, 分散型の高分子より光誘起配向度が増大することがわかった. これは, 高分子への共有結合によるアゾ色素のピン止めによって, 回転緩和によるランダム化が抑制され, 頻度の高いTrans→Cis→Trans異性化サイクルの中で再配向が進むためと考えられるししかしながら, 偏光照射による高分子主鎖の配向は見られなかった. また, 膜厚100nmほどの薄膜におけるアゾ分子の配向について, 面内のみならず面外方向についても調べることができた. 偏光照射はアゾベンゼン分子を面内よりも面外方向に大きく再配向させることが示された.
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