高温で高いプロトン伝導度を保持する高分子固体電解質の合成と, その膜物性に関する筆者らの最近の研究成果をまとめた. スルホニウムやかさ高い側鎖置換基を有する可溶性前駆体を経由した, 芳香族高分子 (ポリフェニレンスルフィド, ポリエーテル共重合体) の高効率・高選択的な電解質化反応を開発した. チオアニソール類の酸化重合・重縮合によって得られるスルホニウム含有高分子のスルホン酸化により, 繰返し単位当たり最大ニスルホン酸基が導入されたポリフェニレンスルフィドを合成した. スルホン酸基導入量と膜の熱特性, 加湿条件下 (RH100%) におけるプロトン伝導特性の相関を解析し, 180℃で10
-2Scm
-1の伝導度が達成された. ポリフェニレンスルフィドスルホン酸とポリエチレンオキシドは相溶性がよく, その複合膜は非水系においても高温で安定なプロトン伝導性を示した. また, 側鎖フェニレン環にスルホン酸基を置換したテトラフェニルフェニレン (あるいは, ヘキサフェニルビフェニレン), パーフルオロビフェニレン, 部分フッ化アルキレンからなる新しい芳香族ポリエーテル共重合体を合成した. 組成によりガラス転移温度とイオン交換容量が調節できるこの共重合体は, 高温保水性と高プロトン伝導性を併せもつ. スルホン酸基が主鎖に直接結合していない構造は, 耐熱性, 酸化・加水分解安定性に優れていることが明らかとなった. ボスホン酸やホスフィン酸誘導体についても, その合成と電解質特性を述べる.
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