高分子論文集
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60 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 栄 秀司, 高山 茂樹, 山崎 輝昌
    2003 年 60 巻 5 号 p. 203-208
    発行日: 2003/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    スチレン/ブタジエン/スチレン (SBS) ブロックコポリマーは代表的な熱可塑性エラストマーとして広く用いられているが, ポリブタジエン部分に由来する二重結合のため, 耐熱性, 耐候性に劣るという問題がある. しかし, ポリブタジエンの構造単位である1, 2-結合と1, 4-結合に含まれる2種の二重結合がポリマーの熱安定性に及ぼす影響についての詳細な検討は今までほとんどされていない. 本報ではSBSのポリブタジエンブロック中の1, 2-結合を高選択的に水素添加した新規スチレン系熱可塑性エラストマー (ポリ [スチレン-block- (1, 4-ブタジエン-ran-ブチレン) -block-スチレン] : SBBS), またポリブタジエンブロックを完全に水素添加したスチレン/エチレン/ブチレン/スチレン (SEBS) を合成し, これらとSBSでエージング試験を行った. その結果, SBBSはSBSと比較して, 高温静置時において大幅にゲル生成が抑制されることが明らかになった. これはポリブタジエンブロックに含まれる1, 2-結合と1, 4-結合でゲル生成挙動が大きく異なることを示唆している. また, SEBSと比較しても実用的な加工条件である220℃においてはほぼ同等のゲル抑制性を示した.
  • 石井 敏也, 本郷 忠志, 森田 まち子, 小川 俊夫
    2003 年 60 巻 5 号 p. 209-217
    発行日: 2003/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アルミニウムに熱水処理を施すとべーマイト (AIOOH) と呼ばれる水酸化アルミニウムに変化する. このべーマイトは針状結晶を呈し, 処理時間の増加とともに結晶が成長し形状が複雑になる. このべーマイトは押出しラミネーションより低密度ポリエチレン (LDPB) を貼り合わせると処理時間の増加とともにはく離強度が高くなる. この接着力は処理時間の増加によるベーマイト結晶の形状変化によってもたらされる. 一方, 化学状態はアルミニウム基材表面がベーマイトに変化した後は一定であるが, ベーマイト処理によりアルミニウム基材表面はアルミニウムの自然酸化膜からベーマイトへ化学状態が変化しているため, この化学状態の変化に対する接着への効果を検討する必要がある. そこで化学状態と表面形状が連続的に変化する短時間処理で初期成長過程のベーマイトを作製し, 低密度ポリエチレンを貼り合わせてはく離試験を行った. その結果, 化学的な効果は初期成長過程のベーマイトとLDPEのはく離強度にほとんど寄与せず, 表面積や表面粗さに依存していたことがわかった. したがって, はく離強度はアルミニウム表面の物理的な状態が支配的である. 本研究に用いた試料構成ではベーマイト処理面の表面粗さ (RMS) が5nm以上, 表面積率が1.1倍以上ではく離強度が向上し, 実用強度としてはRMSが約20nm以上, 表面積率が約1.8以上必要であることがわかった.
  • 石井 義行, 反田 久美
    2003 年 60 巻 5 号 p. 218-224
    発行日: 2003/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    反応誘起相分離構造をもつポリフェニレンエーテル/トリアリルイソシアヌレートアロイ (PPE/TAICアロイ) は, 低誘電率と高耐熱性を兼ね備えた材料であり, 電子材料分野で実用化されているが, 非ハロゲン系難燃処方の確立が急務である. 本研究ではPPE/TAICアロイを用いて非ハロゲン系難燃処方を確立する上で重要である熱分解挙動の速度論的解析, および, 難燃性の指標とされる酸素指数について検討を行った. 難熱分解性樹脂であるPPEと易熱分解性樹脂であるTAICをアロイ化すると, PPE自身の熱分解が促進されることがわかった. パイロライザー装着熱分解ガスクロマトグラフィー (Py-GC/MS) による分解生成物の解析の結果, PPEの熱分解前駆体であるメチレンブリッジ構造への転移反応が, TAICとのアロイ化によって抑制されていることが示唆された.
  • 邱 建輝
    2003 年 60 巻 5 号 p. 225-231
    発行日: 2003/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン (PP) / 液晶ポリエステル (LCP) ブレンドの疲労破壊特性に及ぼす環境温度 (-50~50℃) の影響などについて検討した結果, 以下のことが明らかになった. (1) 動的粘弾性試験により-50~50℃の範囲において, ブレンド材のE'とtanδはPPとLCPの中間的な傾向を示し, 材料の力学特性は試験温度の影響を強く受けると予想される. (2) 引張試験によりブレンド材はLCPの影響を強く受け, 脆性的な破壊傾向を示している. また, LCPの添加は低温になるほど引張強度がPPより大きくなる. (3) 室温以上の温度範囲では試験温度の上昇につれてE'のレベルが低く, tan δのレベルが高くなるため, 疲労破壊は脆性から延性的な傾向へと変化して, 寿命も短くなる. (4) PPのTg以下の低温域では試料の破壊は脆性的であるが, 試験温度の上昇につれて材料強度が低下するため, 疲労寿命が短くなる. (5) LCPの添加は主に材料強度の向上および自己発熱の能力の低下により疲労寿命が向上している.
  • 名取 至
    2003 年 60 巻 5 号 p. 232-234
    発行日: 2003/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    水素化がシクロヘキサジエン系ポリマーの電気的特性に与える影響を調べた. ポリ (1, 3-シクロヘキサジエン) (PCHD) -ポリブタジエン (PBd) -PCHDブロックコポリマーの誘電率 (εr) は約2.4であった. ポリシクロヘキサン (PCHE) -ポリ (エチレン/ブチレン) (PEB) -PCHEブロックコポリマーのεrは組成に影響され, 最小値は約2.1であった. PCHD-PBd-PCHDの誘電損失 (tan δ) は組成によって変化した. 一方PCHE-PEB-PCHEでは, 広い組成範囲において低いtan δが観察された.
  • 佐藤 隆郎, 内田 玲, 谷川 晴康, 宇野 憲治
    2003 年 60 巻 5 号 p. 235-237
    発行日: 2003/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    側鎖にリン酸基を有する高分子ゲルが, 良好な薬物徐放性を有し, ソフトコンタクトレンズ (SCL) としての応用が可能であることを見いだした. SCL形状の高分子ゲルにおいて, そのリン酸基をリガンドとして作用させることでカチオン性薬物であるNaphazolineを効率よく包括し, 生理環境下において約14時間にわたって徐放し, 形状変化も小さいことが明らかとなった.
  • 中村 亨, 濱道 佳子, 上原 啓嗣, 石井 武彦, 林 寿人, 長崎 幸夫, 片岡 一則
    2003 年 60 巻 5 号 p. 238-240
    発行日: 2003/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    服用性のよいコレステロール低下剤を目指し, ポリエチレングリコールとポリアミンを分子レベルでつなぎ合わせた水溶性グラフトおよびブロック共重合体を合成した. これらは, 高コレステロール食負荷ラットの血漿コレステロールを有意に低下させ, コレステロール低下剤として有効であることが示された.
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