高分子論文集
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61 巻, 4 号
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  • 松本 章一, 田中 敏弘, 永浜 定
    2004 年 61 巻 4 号 p. 203-215
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    1, 3-ジエン化合物の固相重合において, 分子間相互作用によって結晶中での分子配列を制御することにより, 異なる構造の立体規則性ポリマーが合成できることを見いだした. 本報では, ムコン酸エステルならびにアンモニウム誘導体のトポケミカル重合における立体構造制御について得られた最近の成果をまとめた. まず, トポケミカル重合の反応原理について述べ, 結晶中での分子配列と生成ポリマーの立体構造のモデルについて説明した. つづいて, ZZおよびEE型のジエンモノマーの分子配列様式と重合によって得られる立体規則性ポリマーの構造の関係を示し, さらに, EZ型のジエンモノマーから得られる新しい構造のポリマーの合成についても最近の実験結果を紹介した. 最後に, 異なる立体規則性ポリマーの構造や性質, 反応についても概説した.
  • 大石 勉, 李 鎔〓, 鬼村 謙二郎
    2004 年 61 巻 4 号 p. 216-226
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    不飽和イソシアナート化合物である2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナート (MOI) を種々の光学活性なアルコールまたはアミンと反応させることにより, ウレタンまたはウレア結合を有するキラルメタクリレート (RMOC, RMOU) を合成した. アゾビスイソブチロニトリル (AIBN) を開始剤として用いRMOCおよびRMOUのラジカル重合を行い, 得られたポリマーの旋光性, 不斉認識能について検討した. ポリ (RMOC) およびポリ (RMOU) は, ウレタンまたはウレア部位に起因する水素結合を有していた. ポリ (RMOC) およびポリ (RMOU) の旋光性は温度により影響を受けた. これは水素結合および側鎖置換基間の相互作用に基づくポリマーの高次構造の変化によるものと考えられた. RMOCまたはRMOUとスチレン (ST) またはメチルメタクリレート (MMA), ブチルメタクリレート (BMA) との共重合により得られたコポリマーの旋光性は, コモノマーユニットにより強く影響を受けた. ポリ (RMOC) およびポリ (RMOU) は種々のラセミ体に対して不斉認識能を示し, 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 用キラル固定相として有用と思われた. また, MOIを用いキラルなポリアクリルアミドマクロモノマー (PMB-1, PMB-2, PPAE-1, PPAE-2) を合成した. これらのマクロモノマーの重合体はマンデル酸やメントールに対し光学分割能を示し, この不斉認識能はグラフトポリマー鎖による高次構造に起因するものと考えられた.
  • 山子 茂, 飯田 和則, 中島 充, 吉田 潤一
    2004 年 61 巻 4 号 p. 227-236
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    有機テルル化合物を用いるリビングラジカル重合TERPの開発を行った. 有機テルル化合物と種々の共役ビニルモノマーとを加熱することで, 予想された分子量と狭い分子量分布をもつ重合体が得られた. 重合末端には開始剤に由来する有機テルル基が存在し, これが活性末端として働くことを明らかにした. 精製した有機テルル化合物のみならず, アゾ化合物とジテルリドから生成する有機テルル化合物をそのまま開始剤として用いることも可能である. さらに, 重合機構の解析に基づき, アゾ化合物を重合系に添加することで, 低温かつ短時間でリビング重合が完結する実践的な新しい重合系の開発にも成功した. 本重合系は広い汎用性をもち, さまざまな極性官能基をもつモノマーとリビング重合を起こし, いずれの場合にも高度に構造の制御された重合体を与えた. さらに, 重合末端における活性末端を利用することで, ポリマー末端の化学修飾や異種のビニルモノマーとの間でジブロック, あるいはトリブロック共重合体の合成が行えることを明らかにした.
  • 梶原 篤
    2004 年 61 巻 4 号 p. 237-249
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    制御ラジカル重合法の一つである原子移動ラジカル重合 (atom transfer radical polymerization, ATRP) の手法を利用して電子スピン共鳴分光 (electron spin resonance, ESR) 法を用いたラジカル重合の基礎研究を行った. ATRPによって合成したメタクリル酸tert-ブチル (tBMA) の30, 50, 100量体から発生させたモデルラジカルのESRスペクトルとtBMAのラジカル重合系の成長ラジカルを観測して得られるESRスペクトルとを比較検討して, 重合系で観測される16本線のスペクトルが200量体程度の鎖長を有する高分子ラジカルであることを明らかにした. また同様の手法を用いて, アクリル酸エステル類のラジカル重合系では成長ラジカルのESRスペクトルよりも, 1, 5-hydrogen shiftに基づくmid-chain radicalのESRスペクトルが優先的に観測されることを明らかにした. いろいろなアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの組合わせによる2量体モデルラジカルのESRスペクトルから共重合系における前末端基効果についての知見も得た.
  • 網代 広治, 池島 理, 幅上 茂樹, 岡本 佳男
    2004 年 61 巻 4 号 p. 250-255
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    市販の大孔径シリカゲルを出発物質として, 原子移動ラジカル重合用シリカゲル開始剤 (1) を合成し, 1と塩化銅 (I) およびアミン配位子を用いて, スチレン, メタクリル酸メチル, およびメタクリル酸2-ヒドロキシエチルを重合した. モノマーの種類により固定化量に違いが認められ, またいずれの場合にも, 時間とともに直線的に高分子ゲルの収率は増加, 表面積は減少し, シリカゲル内部に存在する細孔がすべて埋め尽くされたところでそれぞれほぼ一定となった. このことはSEMによる観察結果ともよく一致し, 最終的に開始剤のシリカゲル1g当たり1.3gから2.5gのポリマー鎖を導入することができた. 適切な重合条件で反応することにより, 大孔径シリカゲルの表面構造は制御され, 表面積や細孔の大きさが任意に調節された高分子シリカゲルハイブリッド材料を調製することが可能となった.
  • 浜崎 真也, 安藤 剛, 上垣外 正己, 澤本 光男
    2004 年 61 巻 4 号 p. 256-262
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ルテニウム錯体 [RuCl2 (PPh3) 3] を用いたメタクリル酸メチルのリビングラジカル重合において, 種々の金属アルコキシド [M (Oi-Pr) n; M=Al, Sn, Ti, Zr, Sc] を添加することにより, 重合の加速と制御の可能性を検討した. いずれの金属イソプロポキシドも重合を加速し, 分子量の制御を可能としたが, 中でも, Ti (Oi-Pr) 4が重合の加速と生成ポリマーの分子量分布の制御の面からもっとも有効であった. また, 種々のチタンアルコキシ [Ti (OR) 4; R=Me, Et, i-Pr, t-Bu, Ph] を用いた結果, イソプロポキシドが重合の加速にもっとも効果があり, 分子量分布の狭いポリマーを与えた. Ti (Oi-Pr) 4を添加物として用いた重合において, 重合条件を最適化することにより, 比較的短時間 (7時間) で, 分子量分布の狭いポリマーの合成が可能となった (Mn=10700, Mw/Mn=1.17). またさらにこの系は, 分子量分布の狭い高分子量体の合成にも有効であった (Mn=100700, Mw/Mn=1.11). 添加物のTi (Oi-Pr) 4はRuCl2 (PPh3) 3に作用している可能性が1H NMRによる解析により示された.
  • 川口 修司, 光田 幸寛, 宇野 貴浩, 久保 雅敬, 伊藤 敬人
    2004 年 61 巻 4 号 p. 263-268
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    7, 7-ジシアノベンゾキノンメチド (CQM) と1, 3-シクロヘキサジエン (CHD) との無触媒重合を行い, ヘキサン不溶部および可溶部より得られた生成物を解析した. ヘキサン不溶部はCQMとCHDとの交互共重合体であった. その交互共重合体中のCHD単位は1, 2-と1, 4-結合した構造を有していた. ヘキサン可溶部には未反応のCQMとCHDのほかにCQMとCHDのDiels-Alder付加体が存在した. CQMとCHDとの仕込み組成を変化させても, 交互共重合体が生成し, モノマー仕込み比1/1の時に高収率でポリマーが得られた. 反応中間体を調査するために, 酢酸および2, 2, 6, 6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル (TEMPO) 存在下での無触媒反応を検討した. 酢酸存在下では生成物の構造, 収率に大きな変化は認められなかった. 一方, TEMPO存在下ではTEMPOによる捕捉物が得られた. これらの結果から, CQMとCHDとの無触媒重合はラジカル中間体を経由する機構であることが明らかとなった.
  • 辻 雅司, 堺井 亮介, 青木 登和子, 佐藤 敏文, 加我 晴生, 覚知 豊次
    2004 年 61 巻 4 号 p. 269-274
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    光学活性な原子移動ラジカル重合 (ATRP) 開始系を用いて, rac-2, 4-ペンタンジイルジメタクリレートのエナンチオマー選択重合を行った. 開始剤に2-プロモイソ酪酸メチル, ルテニウム (II) 触媒, 不斉添加剤を用いて重合を行ったところ, エナンチオマー選択的かつリビング的に進行した. 残存モノマーのエナンチオマー過剰率は重合の進行とともに増加し, 生成ポリマーは光学活性であった. ルテニウム (II) 触媒と不斉添加剤の種類や仕込み組成を変化させると, 重合のエナンチオマー選択性およびリビング性に差が生じた. また, AIBNを用いてSS体とRR体の共重合を行った結果, 得られたモノマー反応性比はほぼ等しかった. このことから光学活性な開始系を用いた重合のエナンチオマー選択性は触媒規制であることが明らかとなった. 以上より, 光学活性なATRP開始系はラセミ体の二官能性モノマーのエナンチオマー選択重合に有効であった.
  • 山田 文一郎, 井上 健太郎
    2004 年 61 巻 4 号 p. 275-281
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    α-メチルスチレン不飽和二量体 (2, 4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン, MSD) は付加開裂連鎖移動剤として, 分子量の低下とともにω-末端基として2-フェニル-2-プロペニル基を効果的な導入で注目されている. そこで, スチレンの光増感重合をMSDの存在下で行い, 成長ラジカルの付加で生じるアダクトラジカルの反応について検討するため, 電子スピン共鳴による検出と後効果における電子スピン共鳴シグナルの減衰を追跡した. その結果, アダクトラジカルは二分子反応ばかりでなくβ-開裂で不飽和末端基と高活性のクミルラジカルを生成する反応を経由して消失することが明らかとなった. β-開裂の活性化エネルギーは二分子反応より大きいから, 高温ほど連鎖移動剤としての効果が増す. メタクリル酸メチルの重合でも, 温度が高いほど効果的な連鎖移動剤となる.
  • 中野 環, 矢出 亨
    2004 年 61 巻 4 号 p. 282-288
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    成長ラジカル種と相互作用し得る光学活性なコバルト (II) 錯体存在下でのN-シクロヘキシルマレイミドの不斉ラジカル重合を試みたが, 錯体は重合を禁止するのみであった. しかし, 錯体により重合が禁止される反応系に微量の酸素を導入すると効率よく反応が進行して高分子が得られた. 同様な重合反応がラジカル開始剤を用いなくても起こることを確認した. この重合は, コバルト錯体-酸素錯体からモノマーへの電子移動を通じてアニオン的な活性種が発生し, これがモノマーを付加することにより進行するものと推定した. この重合系で生成する高分子は, 主鎖の不斉な立体配置による円偏光二色性吸収を示した.
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