高分子論文集
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65 巻, 11 号
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総合論文
  • 枚田 健, 名和 豊春, 湯浅 務
    2008 年 65 巻 11 号 p. 659-669
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/27
    ジャーナル フリー
    ポリメタクリル酸(PMAA)の側鎖にメトキシポリ(n)エチレングリコール(PGM-n)を有するポリカルボン酸(PC)について,セメント分散性能の面からその最適構造を検討した.PC は,主鎖の PMAA でセメントに吸着し,側鎖でセメントを分散する.PC がセメントに吸着するには,主鎖にカルボキシル基が 30 モル以上必要であった.また,側鎖が PGM-10 の PC では,温度が上がるとセメント分散性能が低下した.この原因は,側鎖がセメントペースト中で疎水性になって収縮し,そしてセメントへ吸着するためであると推察された.そこで,夏場のような高温でも高いセメント分散性能を発現させるには,PC の側鎖の要件としては,温度によらず親水性で,そのため n≧15 の鎖長が必要であることが示唆された.また,高いセメント分散性能を得るには,側鎖長とメタクリル酸比率,PC の Mw との間に一定の関係があることを見いだした.そして,PC の Mw と分子量分布からもセメント分散性能とスランプ保持性能についての検討を加えた.
一般論文
  • 佐藤 久美子, 嶋野 安雄, 平原 英俊, 成田 榮一
    2008 年 65 巻 11 号 p. 670-678
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/27
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル(PVC)表面に親水性を付与することを目的に,ポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)(PMeOZO)を PVC にグラフト化した.グラフト化は,PVC の塩素原子を s-トリアジンチオールが末端にある PMeOZO テレケリックスで置換することにより行った.実験は 1-メチル-2-ピロリドン中 60℃ で,チオール型のテレケリックス(n=4.00~23.0, n は MeOZO の重合度)と炭酸カリウム,もしくはナトリウムチオラート型のテレケリックス(n=4.20~55.5)を用いるという二つの方法で行った.その結果,グラフト鎖導入率は最高で 6.63%,グラフト率は最高で 87.4 wt%となった.得られたグラフト共重合体のフィルムをガラス上で調製し,水に対する接触角を測定したところ,はがしたフィルムのガラス側は 75~86°,空気側は 82~95°となった.また,フィルムの表面抵抗率は,ガラス側は 5.8×1014~1.6×1016 Ω,空気側は 1.4×1015~1.2×1016 Ω を示した.この結果は,ガラス側表面には親水性の PMeOZO 鎖が,空気側表面には PVC 鎖が偏析しやすいことを示している.
  • 高橋 裕, 粟野 宏, 羽場 修, 高橋 辰宏, 米竹 孝一郎
    2008 年 65 巻 11 号 p. 679-687
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/27
    ジャーナル フリー
    硝酸による酸化処理を利用し多層カーボンナノチューブ(Multi-walled Carbon Nanotube, MWCNT)表面にカルボン酸を修飾した.MWCNT 側面に修飾された正確なカルボン酸量は,IR スペクトルによる定性的な把握と中和滴定により定量分析を行った.また,修飾前後の 2 種類の MWCNT を用いて,in situ 重合により約 1 wt%の MWCNT を含有したナイロン 6 複合体を合成した.溶融紡糸により複合体ファイバーを作製し,ファイバーの引張強度試験を行ったところ,修飾した MWCNT をわずか 1 wt%用いることで機械的特性がナイロン 6 の約 1.4 倍にまで改善された.この物性向上について,カルボン酸量,MWCNT の繊維長や分散性,ファイバーの結晶構造,結晶の配向,結晶化度の観点から,SEM 画像解析,光学顕微鏡観察,DSC, XRD を用いて詳細に検討した.
  • 村田 英則, 佐藤 琢郎, 小柳津 研一, 古屋 武, 竹林 良浩, 依田 智, 大竹 勝人, 湯浅 真
    2008 年 65 巻 11 号 p. 688-694
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/27
    ジャーナル フリー
    汎用エンジニアリングプラスチックであるポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキサイド) (PPO) は,有機溶媒中で 2,6-ジメチルフェノール (2,6-DMP)を酸化重合することで生産されている.超臨界二酸化炭素(scCO2)を溶媒とすることで,無毒・不燃性・臨界条件が穏和といった優れた特性により,プロセスの安全性の向上が期待できる.筆者らは scCO2 を溶媒とし,分子量分布の狭い高分子量 PPO を合成する重合プロセスの開発を試みてきた.scCO2 を溶媒とした重合では,反応系が不均一相となることが,分子量分布が広くなる原因の一つと考えられる.また,平均分子量が小さくなる原因としては,重合の進行とともに生成する水による触媒失活の影響が考えられる.本報ではこれらの点を考慮して,二段階の重合(二段重合)を試みた.二段重合の一段階目では,反応系を均一相にすることで,分子量分布の狭いプレポリマーを合成する.二段階目では一段階目のポリマーを精製し,水を反応系から除去後,再び重合することで高分子量化する.このような考えに基づいた二段重合の実施により,PPO の分子量分布の制御と高分子量化が示された.また,温度・圧力・触媒濃度の最適化によって,高分子量の PPO を得ることが可能となった.
  • 荒井 一禎, 刈込 道徳, 木村 隆夫
    2008 年 65 巻 11 号 p. 695-699
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/27
    ジャーナル フリー
    顔料分散剤を添加せずに,ポリ[メタクリル酸 2-(ジメチルアミノ)エチル](PDMAEMA)水溶液中で酸性顔料であるカーボンブラック(CB)の分散制御を可能にするため,第一の方法として,PDMAEMA の水中でのコイル-グロビュール転移を利用した CB と PDMAEMA の酸-塩基相互作用による分散体の調製,第二の方法として,CB 表面へのメタクリル酸 2-(ジメチルアミノ)エチルのグラフト化による分散体の調製を行い,両分散体の室温での安定性を透過率,粒径および粒径分布の経日変化から評価した.その結果,後者の分散体は前者のものに比べて,高い分散安定性を示した.また,後者の分散体は 60℃ で 2 週間静置させることで沈降分離が進行したが,室温に戻した後,手振りすることで容易に再分散させることができた.
  • 常 福祥, 藤野 知子, 山吹 一大, 鬼村 謙二郎, 大石 勉
    2008 年 65 巻 11 号 p. 700-706
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/27
    ジャーナル フリー
    セルロースと塩化ベンジル(BzCl)から置換度(DS)が約 2 のベンジル化セルロース(CBz)を合成し,3 種の酸クロライド [クロロアセチルクロライド(CACl),p-クロロメチルベンゾイルクロライド(CMBCl),ジクロロアセチルクロライド(DCACl)] から,新規な原子移動ラジカル重合(ATRP)マクロ開始剤 [クロロアセチルベンジル化セルロース(CBz-CACl),クロロメチルベンゾイルベンジル化セルロース(CBz-CMBCl),ジクロロアセチルベンジル化セルロース(CBz-DCACl)] を合成した.これらのマクロ開始剤を用いて,ATRP によるメタクリル酸メチル(MMA)およびスチレン(St)のグラフト化をそれぞれ行った.得られたグラフトコポリマーの有機溶媒に対する溶解性が向上した.また,グラフトコポリマーの poly((CBz-CACl)-g-MMA)系において,モノマーの添加量とグラフト鎖の分子量の関係から,重合がリビング系であることを確認した.X 線回折および poly((CBz-CACl)-g-MMA)系に関しては SEM 画像において,セルロースを化学修飾することで回折パターンおよび表面構造に変化がみられた.
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