高分子論文集
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69 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
一般論文
  • 大城 浩徳, 河野 昭彦, 團野 哲也, 堀邊 英夫
    2012 年 69 巻 4 号 p. 135-141
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    本研究は優れた誘電特性を有するポリフッ化ビニリデン(PVDF) I型結晶の作製を目的に行った.PVDFとポリメタクリル酸メチル(PMMA)のブレンド物の溶媒キャスト法による薄膜におけるPVDFの結晶構造の制御を試みた.PVDF/PMMA=60:40 wt%のブレンド物をジメチルホルムアミド(DMF)溶媒に120℃で溶解した.溶媒キャスト後にフィルムを150℃のホットプレートでベークした後,200℃で溶融し直ちに氷水で冷却し,その後120℃で1日間熱処理した.その結果,PMMA存在下でPVDF I型の結晶のみが優先的に成長することを明らかにした.他のブレンド比のものは,PVDF II型かアモルファスの状態を示した.上記ブレンド比は,すべてのブレンド比の中で最もPVDFとPMMAの相溶状態が優れていると考えられる.その結果,PVDFの結晶化が抑制され,PVDFの結晶化速度が遅くなりPVDF I型の結晶構造が出現したと考察した.
  • 村田 幸進
    2012 年 69 巻 4 号 p. 142-148
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    ピペラジン(Pip)と脂肪族ジカルボン酸(炭素数n=7から10)とから重合した分子間水素結合を形成しないポリアミドPipnの急冷試料の誘電緩和挙動を周波数範囲25 Hzから1 MHz,温度範囲200から450 Kを測定した.Pip8を除きこれらの試料は急冷することによって非晶状態であった.αとγ緩和を温度低下の順に観測した.α緩和の誘電率ε′と誘電損失ε″の周波数依存性はPip7とPip9では高周波側にゆがんだDavidson-Cole型であり,Pip8とPip10でも多少困難をともなうがDavidson-Cole型で記述できた.Pipnのα緩和強度は,ジカルボン酸炭素数が奇数のPip7と9で10から13で,偶数のPip8と10では3.9から4.0であった.ガラス転移点以上で観測されるα緩和は主鎖のミクロブラウン運動によってN-C=O基が再配列されることに起因すると考えられ,H-N-C=O基をもつm-キシリレンジアミンと脂肪族ジカルボン酸からのポリアミドのような水素結合による分子間の相関はない.α緩和温度以下,吸湿Pip9に観測したβ緩和は吸湿水分量が多いと緩和強度が大きくC=O基に水素結合したH2Oの分子運動に起因するものと思われる.さらに低温に観測されるγ緩和はメチレン鎖の局所運動に起因するものと思われる.α緩和以上の温度域にPip7とPip9に結晶化によるε′とε″の極小を観測した.
  • 成田 武文, 高山 登, 水野 克美, 大箸 信一, 大澤 敏
    2012 年 69 巻 4 号 p. 149-153
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    麹菌の有用タンパク質をキトサンフィルム表面に吸着処理したフィルム上における線維芽細胞の接着性を評価した.その結果,未処理のキトサンフィルムと比べて,細胞接着性が著しく向上した.XPSにより,表面の含窒素・酸素量が増加しタンパク質の吸着が認められた.さらに吸着タンパク質のSDS-PAGEおよびプロテオーム解析によりタンパク質を特定した結果,β-グルコシダーゼ,ジぺプチジルペプチダーゼ,ジペプチジルアミノペプダーゼの3種類のタンパク質が試料表面に吸着することが明らかとなり,麹菌が生産する3種類のタンパク質が細胞接着性に有効であることが明らかとなった.
  • 青柳 裕一, 深澤 清文, 菊地 洋昭
    2012 年 69 巻 4 号 p. 154-159
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    ジエン系ゴムは,大気中のオゾンによって,その表面にクラックが入ることが古くから知られているが,その反応機構やクラック生成メカニズムは不明である.本研究では,シス-1,4ポリブタジエンのオゾン劣化生成物の特定とクラックの発生機構解明を目的に分子シミュレーションを行った.その結果,無伸長時にはオゾンによって切断したポリマー中C=C結合が再結合しオゾニドとなった後,水酸化エステル化すると予測された.また伸長時には切断したC=C結合は再結合に至らず,分子量の低下を引き起こすと予測された.これらシミュレーション結果をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)から検証したところ,伸長状態では分子切断が進行しており,これによりオゾンクラックが発生したことがわかった.
  • 永井 靖隆, 櫻井 剛, 上乃 均, 小林 幸治
    2012 年 69 巻 4 号 p. 160-165
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    ポリブチレンテレフタレート–ポリテトラメチレングリコールブロックコポリマー(PBT-block-PTMG)の光劣化の波長依存性について,自然科学研究機構の岡崎大型スペクトログラフ(OLS)を使用し,280 nm∼400 nmの波長範囲で10 nmごとに光照射を行い解析した.その結果,主鎖切断反応は320 nmより短い波長の光を照射したときに起こり,310 nmの波長の光を照射した試料でもっとも著しいことが明らかとなった.310 nm以下の波長の光を照射した試料において,光劣化生成物が生成し,310 nmの波長の光を照射した試料で最大の生成量を示した.これらの結果から,PBT-block-PTMGの光劣化の閾値は約310 nmであり,光劣化はn,π*状態に励起したPBTブロックのカルボニル基がPTMGブロックのエーテル酸素に結合したメチレン基から水素を引抜くことにより開始することが明らかとなった.
  • 明治 宏幸, 橋本 保, 漆﨑 美智遠, 阪口 壽一
    2012 年 69 巻 4 号 p. 166-170
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    オキセタニル基とビニルエーテルの二つのカチオン重合可能な官能基を有する3-エチル-3-[(ビニロキシ)メチル]-オキセタン(EVMO)のカチオン重合を種々の反応条件下で検討し,いずれか一方の重合官能基の選択的なカチオン重合の可能性を検討した.開始剤にBF3OEt2を,溶媒に塩化メチレンを用いて-10℃で重合を行うと,オキセタニル基のカチオン開環重合が選択的に進行し,溶媒に可溶性で分子量が4万以上の側鎖にビニルエーテルを側鎖に有するポリオキセタンが高収率で生成した.EVMOのカチオン重合では,一般にはオキセタニル基が優先して重合が起こる傾向があるが,溶媒の種類や開始剤の種類が生成ポリマーの収率と分子量に影響を及ぼすことがわかった.
  • 梁 道鉉, 二神 渉, 水谷 直貴, 李 丞祐
    2012 年 69 巻 4 号 p. 171-178
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    表面ゾル–ゲル法を用いたTi(O-nBu)4とC60 (またはC70)の交互積層化によるナノコンポジット薄膜を作製した.QCM振動数変化とUV-visスペクトル測定によって,TiO2/C60ナノコンポジット薄膜の形成過程や吸着挙動を確認した.QCM振動数変化を用いて,TiO2表面へのC60 (直径1 nmの球)の一分子が占める面積平均0.79 nm2から吸着分子数を計算すると,0.5 molecules/nm2となる.AFM測定により,TiO2表面上に固定化されているC60は平滑な表面が確認され,分子レベルで均一に吸着していることが明らかになった.表面接触角の測定によって薄膜最表面の物性を評価した結果,TiO2にC60を吸着することで表面の物性が変わって疎水性になり,再びTi(O-nBu)4の吸着を行うことで表面は親水性になった.このことからC60はTiO2表面に吸着していることが明らかとなり,表面の性質も吸着した物質に依存することがわかった.サイクリックボルタメトリー(CV)を用いてナノコンポジット薄膜の電気化学特性を評価したところ,TiO2薄膜ではC60による酸化–還元ピークが検出できなかったが,TiO2/C60ナノコンポジット薄膜の場合,-0.2 V付近にC60/C60に由来するものと,0.15 V付近にアモルファスTiOHの酸化–還元に由来するピークが観察でき,数十サイクル以上繰返し操作を行っても安定であった.このことからC60 (またはC70)は酸化チタンマトリックス中で安定に存在していることが確認できた.また,XPS分析を用いてそれぞれの薄膜を評価したところ,TiO2/C60ナノコンポジット薄膜においてC60の吸着に帰属される炭素成分の増加が見られ,C60 一分子に対し13原子のTiがかかわる構造となっていることが判明した.
ノート
  • 曽山 誠, 木内 幸浩, 位地 正年
    2012 年 69 巻 4 号 p. 179-183
    発行日: 2012/04/25
    公開日: 2012/04/25
    ジャーナル フリー
    To expand the use of polylactic acid (PLA), a biomass-based polymer, in durable products, we improved its toughness by adding reactive silicones with amino or epoxy functional groups. We investigated the effects of the silicones with regard to their functional group densities and viscosities on their dispersion in PLA, their migration on PLA/silicone composite surfaces, and the toughness of PLA. As a result, reactive silicones that are moderately disperse (particle sizes: 1–20 µm), did not migrate and improved the impact strength of PLA. Moreover, silicones with relatively low viscosity (15–300 mm2/s) improved the break elongation of PLA. Especially, an amino silicone with an amino group equivalent weight of 4000 g/mol and a viscosity of 230 mm2/s remarkably improved the toughness of PLA while maintaining its high flexural strength.
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