表面ゾル–ゲル法を用いたTi(O-
nBu)
4とC
60 (またはC
70)の交互積層化によるナノコンポジット薄膜を作製した.QCM振動数変化とUV-visスペクトル測定によって,TiO
2/C
60ナノコンポジット薄膜の形成過程や吸着挙動を確認した.QCM振動数変化を用いて,TiO
2表面へのC
60 (直径1 nmの球)の一分子が占める面積平均0.79 nm
2から吸着分子数を計算すると,0.5 molecules/nm
2となる.AFM測定により,TiO
2表面上に固定化されているC
60は平滑な表面が確認され,分子レベルで均一に吸着していることが明らかになった.表面接触角の測定によって薄膜最表面の物性を評価した結果,TiO
2にC
60を吸着することで表面の物性が変わって疎水性になり,再びTi(O-
nBu)
4の吸着を行うことで表面は親水性になった.このことからC
60はTiO
2表面に吸着していることが明らかとなり,表面の性質も吸着した物質に依存することがわかった.サイクリックボルタメトリー(CV)を用いてナノコンポジット薄膜の電気化学特性を評価したところ,TiO
2薄膜ではC
60による酸化–還元ピークが検出できなかったが,TiO
2/C
60ナノコンポジット薄膜の場合,-0.2 V付近にC
60/C
60-に由来するものと,0.15 V付近にアモルファスTiOHの酸化–還元に由来するピークが観察でき,数十サイクル以上繰返し操作を行っても安定であった.このことからC
60 (またはC
70)は酸化チタンマトリックス中で安定に存在していることが確認できた.また,XPS分析を用いてそれぞれの薄膜を評価したところ,TiO
2/C
60ナノコンポジット薄膜においてC
60の吸着に帰属される炭素成分の増加が見られ,C
60 一分子に対し13原子のTiがかかわる構造となっていることが判明した.
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