高分子論文集
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71 巻, 1 号
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一般論文
  • 堤 主計, 津々木 亜美, 原 光志, 中山 祐正, 塩野 毅
    2014 年 71 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2014/01/25
    公開日: 2014/01/24
    ジャーナル フリー
    本研究は鳥獣類や害虫に対する忌避性あるいは食中毒菌における抗菌性の優れた天然由来揮発性化合物を有効活用するために徐放性能を有するポリ乳酸共重合体を基盤材とする徐放剤の開発を目的としている.本実験では,超臨界二酸化炭素(scCO2)を媒体として防虫効果や抗菌性の高いヒバ油を共重合体に含浸させ,含浸量は1H NMRで評価した.共重合体はL-ラクチド(L-LA)を主要なモノマーとし,ε-カプロラクトン(CL),テトラメチレンカーボネート(TEMC),1,5-ジオキセパン-2-オン(DXO)を共重合させ合成した.合成した共重合体を用いた含浸実験において,含浸量はポリ乳酸重合体(PLLA)よりも共重合体で高くなる傾向であったが,L-LA/DXO共重合体(PLLArDXO) (83/17)の含浸量は最も低く,L-LA/CL共重合体(PLLArCL) (82/18)の含浸量が最も高かった.含浸させた共重合体の機械的特性を評価するために引張試験を行い,含浸前後で比較検討した.その結果,応力はPLLAにおいて大きく低下したが,L-LA/TEMC共重合体(PLLArTEMC) (88/12)とPLLArDXO (92/8)は大きく増加した.このような傾向は,弾性率においても同様の結果であった.伸度はこれらの結果とは逆の現象がみられた.飽和塩化カルシウム溶液を用いた分解試験において,共重合体の分解にともなうフィルム中のヒバ油残存含油率と放出ガス量を測定し,ヒバ油放出性を評価した.PLLArDXOは最も早く分解され,分解途中以降においては,PLLArCLは急激に分解が進行することがわかった.ヒバ油残存含油率は,共重合体の分解速度に比例しており,分解されやすいPLLArDXOは,残存含油率の減少が早かった.
  • 飯島 一智, 湯山 和也, 朝稲 香太朗, 入江 貫太, 橋詰 峰雄
    2014 年 71 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2014/01/25
    公開日: 2014/01/24
    ジャーナル フリー
    界面紡糸法を用いて生体由来アニオン性多糖であるコンドロイチン硫酸とカチオン性多糖であるキトサンとから多糖複合ファイバーを作製した.キトサン溶液を下層,コンドロイチン硫酸溶液を上層とし,界面に両多糖によるポリイオンコンプレックス膜を形成させ,その膜を引き伸ばし,アセトンバス中で乾燥させることで架橋剤や糖鎖の化学修飾なしに水に不溶なファイバーを作製することに成功した.得られたファイバーについて,光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡による形態観察,引張試験装置による引張強度測定などの評価を行った.ファイバーの直径はおよそ130 µmであった.用いるキトサンの分子量とファイバーの直径,引張強度の関係を調べたところ,低分子量のキトサンではファイバーは形成されず,高分子量のものほど高い引張強度を示す傾向が見られた.また,膨潤延伸処理によってファイバーの直径が減少し,一方で引張強度が向上することが示された.
  • 附木 貴行, Jauzein VINCENT, 脇坂 港, 西田 治男
    2014 年 71 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2014/01/25
    公開日: 2014/01/24
    ジャーナル フリー
    海藻中に含まれるアルギン酸やカニやエビの殻に含まれるキトサンは海洋由来の主要な生体高分子として知られている.アルギン酸(ポリアニオン)とキトサン(ポリカチオン)は,イオン架橋により高分子電解質複合体(ポリイオンコンプレックス:PIC)を形成することはよく知られている.PICの形成には,これまでキャスト法や交互積層法が用いられていたが,押出成形機を用いることで連続的にPICを形成し,簡便に均質なPICシートの成形加工を行えることを証明した.また,可塑剤(ポリ乳酸,ポリカプロラクトン,グリセリン)を添加することで,硬∼軟にわたり機械的特性を制御することが可能であることがわかった.
  • 岡田 きよみ, 辻井 哲也, 山田 和志, 西村 寛之
    2014 年 71 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2014/01/25
    公開日: 2014/01/24
    ジャーナル フリー
    非架橋の高温用ポリエチレン樹脂を120°Cで熱劣化促進させ,FT-IRイメージング法を用いて樹脂の劣化過程を解析し,次のような結果を得た.(1)劣化は配向が緩和し,酸化防止剤が減少することから始まった.表面から酸化が始まり,酸化速度は表面では速くなるが,成形体内部では遅くなる傾向があった.(2)酸化速度はカルボニル基の酸およびアルデヒドタイプの比率によって決定できた.(3)劣化のパラメータとしては,カルボニル基のみではなく,カルボニル基中の酸およびアルデヒドタイプのピークおよび1600 cm-1領域のピークを総合的に評価する必要があった.これらの結果は引張試験の結果および熱測定の結果とも一致した.FT-IRイメージング法を用いることにより,ポリエチレンの劣化進行の過程を可視的に捉え劣化メカニズムを明らかにすることができた.
  • 李 喜星, 脇坂 港, 長澤 教夫, 西田 治男, 安藤 義人
    2014 年 71 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2014/01/25
    公開日: 2014/01/24
    ジャーナル フリー
    バイオ燃料源であるセルロース資源作物エリアンサスは非可食性であり,生産性が高く有望なエネルギー資源であるが,材料としての利用については報告が少ない.そこで,低環境負荷な繊維強化材料として,生産性の高いセルロース資源作物であるエリアンサス繊維で強化したポリプロピレン複合材料の開発を検討した.エリアンサス繊維を粉砕し,篩のサイズ別に分級した粉末とポリプロピレンを二軸混練エクストルーダーにて複合化を行った.得られた複合材の機械的特性を引張試験および曲げ試験により評価を行った.樹脂と充填剤である繊維との界面の密着性を相溶化剤である無水マレイン酸変性ポリプロピレンを添加して改善した結果,無添加時に比べて機械的特性を大幅に改善することができた.また,分級した繊維を充填剤に利用した結果,繊維の表面積の違いが機械的特性,そして熱分解性に大きく影響することがわかった.エリアンサス繊維のサイズを制御することによって,エリアンサスがポリプロピレンの繊維強化成分として機能することは十分に期待できることがわかった.
  • 井上 玲, 田中 達也, 荒尾 与史彦, 田口 浩史, 澤田 靖丈
    2014 年 71 巻 1 号 p. 38-46
    発行日: 2014/01/25
    公開日: 2014/01/24
    ジャーナル フリー
    繊維強化熱可塑性複合樹脂の射出成形における繊維折損は,成形品の機械的特性を悪化させることが知られている.本研究では,可塑化中の繊維折損と繊維分散性に及ぼすスクリュ形状の影響について明確にすることを目的とした.4種類のスクリュを用いて得られた成形品をそれぞれ評価した結果,スクリュ圧縮部の形状が残存繊維長に最も大きな影響を与えることが明らかとなった.また,繊維長と繊維分散性を向上させるためには,樹脂溶融と混練工程を行うための適切な形状を選択することが重要な要素であることが,流動解析との比較検討により明確に示すことができた.さらに,樹脂の溶融と混練部を独立させ,形状の最適化を行ったスクリュを用いることにより,繊維長と分散性が同時に向上することを確認できた.
  • 小出 優一郎, 伊掛 浩輝, 室賀 嘉夫, 清水 繁
    2014 年 71 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2014/01/25
    公開日: 2014/01/24
    ジャーナル フリー
    ポリ-D-乳酸(PDLA)とポリ-L-乳酸(PLLA)の等量混合物(mix-PLA)を用い,キャスト溶媒として1,4-ジオキサン(DOX)とクロロホルム(CHL)を用いて,キャストフィルムmix-PLA(DOX)とmix-PLA(CHL)を作製した.これらのフィルムの透明性は大きく異なり,mix-PLA(DOX)が不透明であるのに対して,mix-PLA(CHL)は透明となった.本研究ではこのmix-PLAフィルムの透明性とモルフォロジーの関係を,広角X線回折,示差走査熱量測定,動的粘弾性,小角X線散乱から検討した.その結果,mix-PLAキャストフィルムの透明性は,sc晶の結晶化度ではなく,その結晶ドメインのサイズやラメラの平均の厚みや結晶ラメラの長周期の大きさと分布に反映される巨視的な構造に依存し,それらの乱れが大きくなるほどフィルムの透明性は低下することが明らかとなった.透明なmix-PLA(CHL)フィルムは,典型的な透明材料であるPCやPMMAに匹敵する透明性と,より優れた耐熱性をもつ高分子材料であることが示される.
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