臨床血液
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37 巻, 1 号
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第36回サテライトシンポジウム
臨床研究
  • 和泉 透, 今川 重彦, 室井 一男, 清水 律子, 高橋 弘憲, 星野 充明, 冨塚 浩, 河上 利則, 戸矢 公比古, 倉田 寛一, 角 ...
    1996 年 37 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    濾胞性リンパ腫(以下FL)自験例に対して,retrospectiveに予後因子解析を含めた臨床的検討を行った。当科入院悪性リンパ腫231例中FLは21例(9.1%), 全21例の1年,3年,5年生存率はそれぞれ90.2%, 78.2%, 52.1%, 生存期間の中央値は43カ月。初回治療によるCR率は9/21 (42.7%)。単変量解析による予後因子は病期(IV), ヘモグロビン(10 g/dl以下),骨髄浸潤(有),節外病変数(2以上),全経過中のCR到達(無)(括弧内が予後不良)。多変量解析ではCR到達が最も独立性が高かった。解析可能20例のtime to treatment failure (TTF)の中央値は30カ月。治療不応期から死亡までの期間は40—320日(中央値171日)。TTFに関与する因子はHb, 骨髄浸潤,CR到達(単変量解析)。多変量解析ではCR到達の有無が最も独立性が高かった。今後多数例の集積ならびに予後因子解析に基づいた治療方針について検討を要する。
  • 酒井 リカ, 丸田 壱郎, 田口 淳, 富田 直人, 藤田 浩之, 児玉 文雄, 小川 浩司, 藤沢 信, 松崎 道男, 本村 茂樹, 大久 ...
    1996 年 37 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    骨髄移植後のサイトメガロウイルス間質性肺炎(CMV-IP)に対するganciclovirの予防投与の効果を検討した。移植前に患者またはドナーの血清CMV抗体価が陽性であった33症例,および,CMV抗体価は陰性であったが,Day 30∼37にCMVがpolymerase chain reaction (PCR)法で陽性であった2症例を対象とした。投与方法は移植後Day 30∼37に血液,尿,咽頭ぬぐい液,気管支肺胞洗浄液でCMVをPCR法で調べた後,ganciclovir 250 mg/body/dayをDay 70まで投与した。また,Day 70, 100にもPCR法にてCMVを検索した。CMV-IPは35例中2例(5.7%)に発症し,これはコントロール群の約3分の1の発症率であった。また,血液,咽頭ぬぐい液,気管支肺胞洗浄液のCMVの陽性率は予防投与後有意に低下した。白血球数,血小板数,血清クレアチニン値に関して,明らかな副作用も認めず,ganciclovirの予防投与は,その有用性が期待できるものと考えられた。
  • 宮入 泰郎, 村井 一範, 槍澤 大樹, 成ケ澤 靖, 下瀬川 健二, 伊藤 薫樹, 菅原 健, 沼岡 英晴, 小野 葉子, 伊藤 敏治, ...
    1996 年 37 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    前治療に不応性の再生不良性貧血(AA) 4例に計5回のインターロイキン3 (IL-3)治療を試みた。3例では,2.5∼5.0μg/kg·7∼14日間のIL-3単独治療を1コース行い,IL-3終了2週後から顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)およびエリスロポエチン(Epo)を含む後治療を継続した。他の1例では7.5μg/kg/day·14日間のIL-3投与を,G-CSFあるいはEpo併用下で2コース行い,G-CSFおよびEpoはIL-3終了後も継続投与した。IL-3を単独投与した3例中1例では副作用のため2日間の投与で中止,1例では無効,残りの1例ではIL-3治療後の経過で末梢好中球数および貧血の改善が認められた。IL-3と他の造血刺激因子を併用投与した1例では末梢好中球数と貧血の改善に加えて,リンパ球数の増加も観察された。AAに対するIL-3治療においては他の造血刺激因子の併用あるいは後投与が必要かもしれない。
症例
  • 緒方 正男, 卯野 規敬, 大塚 英一, 菊池 博, 那須 勝
    1996 年 37 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は76歳男性。1987年8月胃癌にて胃全摘施行後25カ月間UFTの内服を行う。1994年2月発熱,全身倦怠感を主訴に当科入院した。末梢白血球数は57,700/μl (blast 74%), 骨髄はNCC 38.4×104l (blast 67.5%)であった。骨髄のblastは著明な形態異常を呈し,非常に大型の芽球や多核の芽球がみられた。骨髄細胞表面マーカーはCD2, CD5, CD7, HLA-DRが陽性であり,T細胞抗原受容体γ鎖,β鎖の再構成を認めT細胞性の急性リンパ性白血病(ALL)と診断した。寛解導入療法を施行し当初反応は良好であったがその後急速に芽球の再増加がみられ肺炎併発し8月9日死亡した。治療関連白血病としての報告はほとんどが急性骨髄性白血病でありALLの報告は少ない。本例は形態異常が著明なALLが化学療法後に発症しており治療関連ALLの臨床的特徴の解明に示唆する点があると思われた。
  • 横田 朗, 深沢 元晴, 中世古 知昭, 石井 昭広, 池上 智康, 木暮 勝広, 西村 美樹, 松浦 康弘, 森尾 聡子, 中村 博敏, ...
    1996 年 37 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は36歳男性。12歳時より尋常性乾癬を発症し,ステロイド外用剤およびPUVA療法を行ったが,改善は軽度であった。1987年再生不良性貧血を発症。各種治療が無効のため,1993年同種骨髄移植を行った。移植前処置はtotal lymphoid irradiation 7.5 Gyとcyclophosphamide 200 mg/kgで行い,GVHD予防はcyclosporin A + short term methotrexateで行った。移植前の乾癬の活動性は高く,全身性に融合傾向の強い紅斑が多発し,著しい爪の変形も認められた。移植後十分な造血の回復とともに,皮疹は消失し,爪の変形も改善した。乾癬の発症には免疫学的機序の関与が知られているが,同種骨髄移植による細胞性免疫の再構築により乾癬の消失が得られたと考えられた。難治性の免疫異常による疾患に対して,同種骨髄移植が一つの治療法となり得ることが示唆された。
  • 小泉 和輝, 横山 浩二, 西尾 充史, 柴田 真吾, 小堤 圀雄, 山口 美樹, 佐藤 典宏, 安河内 太郎, 澤田 賢一, 小池 隆夫
    1996 年 37 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は60歳,男性。全身倦怠感,腹痛を主訴に受診。初診時,WBC 3,900/μl, RBC 289×104l, Hb 11.5 g/dl, Plt 0.9×104l, 骨髄穿刺にて貪食像を示す組織球を22.4%認めた。また,BUN 109.5 mg/dl, クレアチニン7.4 mg/dlと著明な腎機能障害を認め,CPK, アルドラーゼ,ミオグロビンの上昇などより横紋筋融解症による急性腎不全と診断した。単純ヘルペスウイルス抗体価が有意に高く(8×→128×), これによるVirus-associated hemophagocytic syndrome (VAHS)と横紋筋融解症の合併例と考えた。入院後早急に血液透析の導入を行い,ステロイド剤使用にて血小板減少,腎機能障害は急速に改善し救命し得た。成人のVAHS発症例の報告例は少なく予後不良と言われており,さらに横紋筋融解症を合併した報告は極めて稀である。成人のVAHS発症例,およびウイルスによる横紋筋融解症発症例の文献的考察を含めて,報告する。
  • 吉田 道彦, 植田 誠司, 原野 浩, 山崎 悦子, 加藤 和伸, 田辺 寿一, 岡本 理英, 小川 浩司, 毛利 博, 大久保 隆男, 佐 ...
    1996 年 37 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    26歳男性。CML慢性期の非血縁骨髄移植後に,間質性肺炎と両側性顎下腺腫脹を併発した。顎下腺の生検組織からは核内封入体を有する巨細胞が認められ免疫染色標本上もサイトメガロウイルス(CMV)によるものと診断。ganciclovirと抗CMV高力価免疫グロブリンの投与により軽快した。骨髄移植後のCMVによる唾液腺炎は報告がない。本例ではCMV肺炎の診断に有用であり,今後顎下腺腫脹を来した場合本症も考慮する必要があると思われた。
  • 高橋 敦, 名越 温古, 山川 珠美, 福村 玲子, 松岡 利恵, 野村 眞智子, 高橋 重明, 磯部 穂積, 井手 潔, 斎藤 宣彦
    1996 年 37 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    骨髄異形成症候群(MDS)には一次性と,放射線や薬剤の影響により発症する二次性MDSがある。われわれはcyclophosphamide (CPM)またはrifampicin (RFP)によって惹起されたと考えられる二次性MDS (RA) 2症例を経験したので,1988年から1993年に,当科に受診した一次性MDS 14例と染色体分析,病態,予後について比較検討した。二次性は2例とも一年以内にRAEBで死亡したが,一次性MDSは2例が白血化した。死亡までの期間は一次性の中央値と近似していた。二次性MDSは2例とも-5/5q-, -7/7q-を含む様々な核型異常を呈していたのに対して,一次性MDSは9症例に認めた。今回の検討では,一次性と二次性のMDSでの病態,染色体分析において有意な差は見られなかった。
  • 松田 晃, 楠本 修也, 伊東 克郎, 横尾 ハル江, 丸山 太郎, 陣内 逸郎, 原野 昭雄, 渡辺 清明, 平嶋 邦猛
    1996 年 37 巻 1 号 p. 60-64
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    76歳男性。平成3年8月より特発性間質性肺炎で経過観察中であった。初診時よりHbFは2.7%と軽度の増加を認めたが,血球減少はなかった。その後HbFは増加傾向を示し,平成6年4月に初めて汎血球減少が出現した。骨髄は正形成で,異形成を認め,芽球は9%であった。染色体分析では46, XY, del(20)(q11;q13)を認め,骨髄異形成症候群(MDS), refractory anemia with excess of blastsと診断した。この時点でHbFは20.0%まで増加していた。3カ月後,急性骨髄性白血病へ移行した。MDS症例の約40%にHbFの増加が認められ,これはMDSクローンによる機能異常の一つと考えられている。よって本症例では,明らかな血球減少の認められる32カ月前のHbF上昇時点でMDSのクローンが出現していた可能性が推定される。
  • 児玉 和也, 山田 卓司, 川上 恭子, 安井 顕一, 野村 哲彦, 山岡 雅顕, 松尾 武文
    1996 年 37 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は44歳女性。1991年8月発熱と全身性紅皮症を主訴に当院に入院。表在性リンパ節腫大,肝脾腫を認めた。白血球数は21,490/μlでそのうちflower cellを含むリンパ球を14,310/μl認めた。この異常リンパ球はCD2, 4, 25, 29が陽性でヘルパーインデューサーT細胞の性質を有し,真皮,リンパ節に異型性を示すT細胞の浸潤を認めた。HTLV-1抗体は陰性で,HTLV-1 proviral DNAもPCR法にて陰性であった。以上よりCTCLと診断し,prednisoloneを開始したところ血球数はコントロールされたが紅皮症は次第に増悪した。Vincristine, etoposide, cyclophosphamideによる多剤併用化学療法はorganomegalyに対し有効であったが皮疹に対し効果を認めなかった。Deoxycoformycin (DCF) 7.5 mgの投与を開始したところ皮疹は速やかに改善傾向を示し,掻痒感の消失とともに皮疹は劇的に改善した。多剤併用化学療法が無効なCTCLの全身性紅皮症に対しDCFは骨髄抑制などの副作用もなく有用な治療法と考えられた。
  • 岡本 隆弘, 丸茂 幹雄, 佐伯 要, 岡田 昌也, 川口 巧太郎, 高塚 広行, 藤盛 好啓, 武元 良整, 神前 昌敏, 金丸 昭久, ...
    1996 年 37 巻 1 号 p. 72-76
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    重症肺炎を合併した重症再生不良性貧血(SAA)に対し,顆粒球輸血を行いながら緊急の骨髄移植を施行し,救命しえた一症例を経験した。患者は16歳の女性で,著しい汎血球減少症で発症し,SAAと診断時に重症肺炎を合併した。患者,家族のHLA検査により,弟とHLAが一致していることが分かり,cyclophosphamide (CY)とウサギ抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン(ATG)の前処置で緊急に骨髄移植を行った。顆粒球輸血を移植前後に施行して重症肺炎の悪化を阻止し,移植後の造血能の回復により肺炎は治癒した。急性および慢性GVHD症状は認められず,血液学的に正常化した。ウサギATGは移植片の拒絶を防止し,前処置として放射線照射に変えて使用できると考えられた。
  • 渡辺 礼香, 河内 康憲, 西原 利男, 三宅 隆明, 内田 立身
    1996 年 37 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    混合型自己免疫性溶血性貧血(混合型AIHA)の1例を報告した。症例は56歳,女性。レイノー様症状,労作時息切れのため入院。発熱,黄疸あり。蛋白尿,ヘモグロビン(Hb)尿,円柱の出現を認めた。室温採血では赤血球凝集が著明で,Hb 5.6 g/dl, RBC 105×104lと貧血を認め,網赤血球の著増,黄疸,LDHの上昇,ハプトグロビンおよび補体の低下を認めた。免疫グロブリンはポリクロナールに増加し,ANA, 抗Sm抗体が高値を示した。直接抗グロブリン試験でIgG1, IgG3, C3dが陽性,寒冷凝集素(CA)は4096倍で抗I特異性を示し,30°Cでも活性を認めた。SLEに合併した混合型AIHAと診断し,prednisoloneの投与を開始,CAは低下し,溶血は消失した。混合型AIHAは温式抗体とCAが同時に存在するものとされるが,その診断にはAIHAによる溶血のほか寒冷凝集素症としての症状を有するか,低力価で作用温度域の広いCAの存在を証明することが必要であることを述べた。
短報
  • 吉田 勝彦, 川井 信孝, 松田 晃, 室橋 郁生, 陣内 逸郎, 猪野 裕英, 別所 正美, 竹内 仁, 齋藤 昌信, 平嶋 邦猛
    1996 年 37 巻 1 号 p. 82-85
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    A 33-year-old man was admitted to our hospital because of thrombocytopenia found on a periodic physical examination. Splenomegaly was recognied Peripheral blood showed WBC 4,510/μl, Hb 12.5 g/dl, and Plt 40,000/μl. Increased serum levels of acid phosphatase and angiotensin converting enzyme were observed on laboratory tests. Bone marrow aspirate revealed Gaucher cells. Decreased β-glucosidase activity was demonstrated in blood leukocytes, cultured blood lymphocytes, and cultured bone marrow fubroblasts from the patient. His glucocerebrosidase genotype was T1448C/C1504T (L444P/R463C). Since neurological examination and skeletal X ray results were normal, Gaucher disease type 1 was diagnosed.
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