臨床血液
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58 巻, 2 号
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Picture in Clinical Hematology
総説
  • キャッスルマン病の疫学診療実態調査と患者団体支援体制の構築に関する調査研究班 , 吉崎 和幸, 岡本 真一郎, 川端 浩, 水木 満佐央, ...
    2017 年 58 巻 2 号 p. 97-107
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/17
    ジャーナル オープンアクセス

    キャッスルマン病は原因不明のリンパ増殖性疾患で,適切な治療を行わなければQOL低下や生命予後の短縮をきたす。しかしながら,その希少性のためにこれまで明確な診断基準や重症度分類が定まっていなかった。これに対して厚労科研・難治性疾患等政策研究事業の調査研究班では,本疾患の診断基準と病型分類,重症度分類の案を策定した。診断は,病理診断と臨床的な除外診断を併せて行う。組織型は硝子血管型,形質細胞型,および混合型に分類される。臨床的病型は,単中心性(限局型)と,HHV-8関連の多中心性,HHV-8陰性の特発性多中心性に分類した。重症度は主に臓器障害の程度により分類した。難治性とされる特発性多中心性キャッスルマン病は,重症度等に応じてprednisoloneやtocilizumabを用いて治療を行うこととした。今後,本疾患に関するエビデンスを集積し,本診断基準や重症度分類の妥当性を検証するとともに,質の高い診療ガイドラインを策定していく予定である。

症例報告
  • 内藤 千晶, 小川 孔幸, 柳澤 邦雄, 石埼 卓馬, 三原 正大, 早川 正樹, 松本 雅則, 野島 美久, 半田 寛
    2017 年 58 巻 2 号 p. 108-112
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/17
    ジャーナル 認証あり

    後天性の血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)はADAMTS13活性を阻害する自己抗体により惹起される重篤な血栓性疾患で,急性期治療が確立した現在でもその死亡率は20%と高い。症例は,77歳の男性。数ヶ月前から脳梗塞を繰り返し,同時に遷延性の血小板減少も指摘されていた。急激に進行する意識障害と血小板減少で前医へ入院。TTPと診断,治療目的に当院へ転院し,血漿交換と並行してステロイドによる免疫抑制療法を開始した。急性期治療は奏効するも,grade 3の肝機能障害が出現したため,ステロイドによる免疫抑制療法を中断した。その後,低力価のインヒビターが残存し,ADAMTS13活性低値で推移したにも関わらず,長期にわたりTTPの再燃なく経過している。本症例のようにくすぶり型の経過を示すTTPは稀ではないと思われる。このような知見を報告することは,TTPの早期診断と早期死亡の低減に有用である。

  • 安達 正晃, 三橋 公美, 松田 博幸, 渡邊 絢子, 中西 勝也
    2017 年 58 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/17
    ジャーナル 認証あり

    症例は77歳男性。およそ10年前に糖尿病と診断され,経口薬(pioglitazone 15 mg/日およびmiglitol 150 mg/日)にて良好にコントロールされていた。原因不明の会陰部不快感,陰茎および陰嚢の腫脹と発熱が突然出現し,尿閉となり陰茎を主病変としたフルニエ壊疽Fournier's gangrene(FG)と診断された。抗生剤治療を施行しつつ陰茎および精巣切除を含めた感染巣のデブリードマンを頻回に施行し6週間ほどでFGは軽快した。入院時から末梢好中球の顆粒低下と難治性の貧血が持続していたため骨髄穿刺検査を施行し,3系統の細胞異形成と芽球の増加(9%)から骨髄異形成症候群MDS(RAEB-1),IPSS-R high riskと診断された。Azacitidine(AZA)治療4コース目施行後から輸血非依存状態となり,FGの再発なく18ヶ月以上経過している。FGは,糖尿病やアルコール多飲などの基礎疾患を認めることが多いが,FG発症を契機にMDSが発見されることは稀である。高齢者FGを診療する際に糖尿病が基礎疾患にある場合でもMDSの合併を想起することが重要と思われる。

  • 梶口 智弘, 鴨下 園子, 伊藤 貴康, 八木 光昭, 木村 智樹
    2017 年 58 巻 2 号 p. 119-125
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/17
    ジャーナル 認証あり

    アナグレリドは血小板の前駆細胞である巨核球に選択的に作用し,血小板産生を抑制する薬剤であり,本邦においても2014年以降,本態性血小板血症のハイリスク群に対して細胞減少治療薬として用いられている。アナグレリドによる重大な副作用として間質性肺疾患が報告されているが,頻度は稀であり病態の知見に乏しい。我々はアナグレリドに関連した薬剤性間質性肺炎を2症例経験した。症例は67歳女性と75歳男性の本態性血小板血症患者。いずれの症例でもアナグレリド投与開始8週経過後に発熱と間質性陰影が出現し,画像所見,気管支肺胞洗浄液所見および経過から薬剤性肺炎と考えアナグレリドの中止とステロイド治療を行い奏効した。2症例ともアナグレリドに対する薬剤誘発性リンパ球刺激試験が陽性であった。本剤の適正かつ安全な使用に向けて我が国での症例蓄積が必要である。

  • 定免 渉, 佐藤 孝, 前沢 千早
    2017 年 58 巻 2 号 p. 126-131
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/17
    ジャーナル 認証あり

    症例1は78歳,女性。2012年4月に前医でH. pylori陽性胃炎と診断され三次除菌療法まで受けたが不成功であった。2016年1月に口腔内出血と四肢の点状出血が出現し血小板数が低下していたため当科に紹介となった。ITPの診断で入院加療後,外来でPSLを継続していたが,3月に四次除菌を行い成功した。以降,血小板数は正常範囲となりPSLを中止して無治療経過観察を行っている。症例2は65歳,女性。2013年6月に前医でITPと診断され二次除菌療法まで受けたが不成功であった。以降,外来でPSLが継続されていたが,2016年3月に当科に紹介となり,三次除菌を行ったところ成功した。以降,血小板数は正常範囲となりPSLを中止して無治療経過観察を行っている。本2症例の経過から,ITPにおいても三次以降の除菌療法が有用であると考えられた。

  • 越智 清純, 横山 和明, 大野 伸広, 大田 泰徳, 東條 有伸
    2017 年 58 巻 2 号 p. 132-137
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/17
    ジャーナル 認証あり

    脾辺縁帯リンパ腫はリンパ腫全体の1%未満の頻度を占める脾原発低悪性度B細胞リンパ腫であり,様々な自己免疫性疾患を合併することが知られている。症例は48歳女性。前医にてステロイド治療抵抗性の慢性寒冷凝集素症として当科紹介受診となる。入院時,発熱ならびに労作時動悸・息切れを認めるとともに脾腫を認め,血液検査では重度貧血,寒冷凝集素価高値・可溶性IL-2R高値を示した。全身PET/CT検査では明らかなリンパ節腫大を認めなかったが,脾腫とともに脾臓・全身骨においてFDP集積を認めた。脾原発悪性リンパ腫を疑い脾摘を施行し,病理検査にて脾辺縁帯リンパ腫と診断した。脾摘に引き続きrituximab単剤療法(375 mg/m2)を8サイクル施行し,全身症状の改善とともに貧血の改善を認めた。脾辺縁帯リンパ腫における特徴的な所見とともに,全身PET/CT検査を用いた画像診断の有効性,そのほかの低悪性度B細胞リンパ腫との鑑別,脾摘の意義とともにrituximabの有効性について考察する。

  • 井上 宏昭, 森田 泰慶, 頼 晋也, 角谷 宏明, 大山 泰世, 谷口 康博, 田中 宏和, 嶋田 高広, 辰巳 陽一, 芦田 隆司, 松 ...
    2017 年 58 巻 2 号 p. 138-142
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/17
    ジャーナル 認証あり

    固形臓器移植後の免疫抑制療法は,骨髄異形成症候群(MDS)の発症リスクとなることが知られている。我々は,固形臓器移植後に発症した低リスクMDSに対して移植臓器の拒絶などの悪影響がなく,安全にアザシチジン(AZA)を投与することが可能で,血液学的改善が得られた2症例を経験したので報告する。1例目は肝移植後の74歳の男性である。免疫抑制療法として,シクロスポリンとプレドニゾロンを投与されていた。肝移植9年後,MDS(RCMD)と診断された。2例目は死体腎移植後の47歳の女性である。免疫抑制療法として,シクロスポリン,アザチオプリンおよびプレドニゾロンを投与されていた。腎移植27年後,MDS(RA)と診断された。両患者は,AZA治療(75mg/m2,5日間,28日間隔,点滴注射)を受けた。両者とも,2コース後にグレード3/4以上の非血液学的毒性を認めず,血液学的改善(国際ワーキンググループ2006年分類)が得られた。さらに,両患者に対するAZA治療は,移植臓器に対する拒絶などの悪影響を及ぼさなかった。固形臓器移植後に発症したMDSに対するAZA治療は,安全かつ有効である。しかしながら,真の安全性と有効性を確かめるために経過を長期間追跡することが必要である。

  • 植村 優, 長谷川 大一郎, 横井 健人, 二野 菜々子, 太原 鉄平, 田村 彰広, 齋藤 敦郎, 神前 愛子, 岸本 健治, 石田 敏章 ...
    2017 年 58 巻 2 号 p. 143-149
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/17
    ジャーナル 認証あり

    症例は10歳女児。左頬部腫瘤と歯肉腫脹,末梢血中の異常細胞の出現を主訴に当院紹介入院となった。骨髄検体による表面マーカー検査ではCD10,19,TdT,HLA-DR陽性,CD20陰性でありB前駆細胞性急性リンパ性白血病(BCP-ALL)と診断した。BCP-ALL型の治療を開始したが,末梢血中の白血病細胞は残存していた。寛解導入療法終了時の骨髄検体による表面マーカー検査ではCD19,CD20,HLA-DR陽性でCD10,TdT陰性で形態学的にも初診時と異なる白血病細胞が81.3%占めていた。染色体検査の結果,IgH/BCL2Igλ/C-MYCの転座を伴うdouble-hit lymphoma/leukemia(DHL)と診断した。Rituximabを用いた治療により一旦寛解に至ったが,治療中に骨髄および中枢神経再発を認めた。化学療法を継続したが,再寛解に至らず髄外病変も再度出現した。再発時は初診時と同様の表面マーカーをもつ白血病細胞が出現していた。非寛解状態で臍帯血移植を行ったが,移植後44日目に原病により死亡した。小児期発症のDHLは極めて稀で,成人では進行が急速かつ治療抵抗性と言われており予後不良である。今後,治療法の確立が望まれる。

  • 小野 敬子, 伊勢 美樹子, 池部 大, 佐藤 昌靖, 王 暁斐, 菅原 武明, 辻村 秀樹, 伊丹 真紀子, 熊谷 匡也
    2017 年 58 巻 2 号 p. 150-154
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/17
    ジャーナル 認証あり

    芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)は,形質細胞様樹状細胞由来の稀な腫瘍である。初期治療は奏効するもののほとんどの症例が1年以内に再発し,再発後は治療抵抗性となり,予後は極めて不良である。症例:67歳男性,前胸部紅斑と鼻咽頭腫瘤の生検でCD4・CD56・CD123陽性,CD3・CD20陰性の腫瘍細胞を認め,BPDCNと診断された。骨髄浸潤は認めなかった。CHOP類似療法を施行し,完全寛解となった。治療終了1年後に頭頂部皮膚腫瘤と鼻腔腫瘤で再発し,骨髄浸潤も認めた。BPDCNの再発であり治療抵抗性で予後不良であることが予測されたが,biweekly CHOP療法が奏効し,再び完全寛解が得られた。以後16ヶ月間,無再発生存している。

  • 木田 亨, 谷村 朗, 小野 晃裕, 松井 崇浩, 本間 圭一郎, 藤田 二郎, 前田 哲生, 柴山 浩彦, 織谷 健司, 森井 英一, 金 ...
    2017 年 58 巻 2 号 p. 155-160
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/17
    ジャーナル 認証あり

    症例:61歳男性。全身性リンパ節腫大を認め当院受診。骨髄生検でCD20陽性のリンパ形質細胞様小型異型リンパ球の浸潤を認め,IgM型M蛋白血症を伴っていたため,リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンストレームマクログロブリン血症(LPL/WM)と診断された。同時に,頸部リンパ節生検および胸水も認めていたため胸水穿刺を実施したところ,いずれもびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)との病理診断が得られた。これらLPL/WMとDLBCLの細胞は表面マーカーの発現および遺伝子再構成の解析が同様の結果を示したことから,同一クローン由来であると判断された。しかしながらLPL/WMに高頻度で認められるMYD88L265P変異は,DLBCL細胞のみに認められた。LPL/WMからMYD88L265P変異を伴いDLBCLに形質転換する症例は希少であり,文献的考察を加え報告する。

短報
  • 山本 宜和, 住居 優一, 白石 雄太郎, 池内 一廣, 山田 晴士, 新谷 大悟, 塩手 康弘, 山本 和彦, 今城 健二
    2017 年 58 巻 2 号 p. 161-164
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/17
    ジャーナル 認証あり

    A 69-year-old man presented with back pain over the prior few months and was hospitalized because of bilateral adrenal masses and fracture of the left sixth rib. The mass on the right measured 6.5×3.6×7.0 cm, that on the left 8.1×4.8×6.9 cm, on CT. The final diagnosis was CD5- and CD10-positive primary adrenal diffuse large B-cell lymphoma (PA-DLBCL) with rib involvement. After EPOCH therapy accompanied with rituximab and intrathecal treatment, the tumors decreased dramatically. However, he died due to disease progression 8 months after the diagnosis. The prognosis of CD5- and CD10-positive PA-DLBCL may be very poor even with rituximab-containing chemotherapy.

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