スギ樹皮由来のフェノール性成分を利用した樹皮フェノール樹脂(BPF)を開発するため,樹皮抽出物と市販フェノール樹脂を混合した BPF の硬化反応を示差走査熱分析(DSC)によって評価した。100℃,140℃,170 ℃の高温でスギ樹皮のアルカリ抽出を行った結果,抽出温度が高いほど樹皮抽出物の抽出率が増加した。また,抽出温度が140℃,170℃と高温になると,樹皮フェノール性成分の平均分子量は低下した。140℃,170℃抽出物を用いたBPFのDSC のピーク温度は,フェノール樹脂単体よりも低温側にシフトしたことから,これらの抽出物が硬化反応に関与したと考えられた。なお,100 ℃抽出物を用いたBPF では,このような変化は認められなかった。また,抽出物のホルムアルデヒド処理によってエンタルピー変化量(ΔH) が増加したことから,架橋結合量が増加したことが示唆された。ホルムアルデヒド添加量が抽出物100 g あたり1.0 mol で室温処理した場合にΔH は顕著に増大した。
反応誘起相分離を利用したハイブリッド弾性瞬間接着剤を紹介する。本接着剤は,硬化が速い多量のシアノアクリレート成分と,硬化が遅い少量の変成シリコーン成分からなり,その硬化物は,ポリシアノアクリレートからなる硬い島と,変成シリコーンの架橋による柔軟な連続相を有する。シアノアクリレートが多いため短時間で硬化するが,変成シリコーンが連続相となる海島型の相分離構造を形成するため,硬化物は柔軟である。柔らかくて粘り強い硬化物となり,幅広い環境下で優れた接着性を示す本製品は,振動,衝撃,温度変化といった従来の瞬間接着剤では対応できなかった場面にも好適である。また,瞬間接着性を維持しているため,他の接着剤より生産性向上も期待できる。これらの特長により,自動車,電子材料,その他様々な分野で接着の高速化と耐久性向上に寄与することが期待される。