極性ポリマーに金属塩が溶解した固体高分子電解質(SPE)は,安全な固体イオン伝導体として電池用電解質材料などへの応用が期待されるが,イオン伝導性の向上などに課題がある。著者らは,poly(ethylene carbonate)(PEC)など脂肪族ポリカーボネートからなるSPEが,塩濃度増加にともなうイオン伝導度上昇や高カチオン輸率,高耐酸化性など,従来材料と異なる特性を示すことに着目し,それらの物性の起源について研究を進めてきた。その一環として,誘電分光法により高分子鎖の分子運動とイオン伝導の関係を解析した。すると,PEC/イミド系塩型SPEのセグメント運動の緩和時間は,塩濃度の増加とともに減少することが明らかとなった。一方,凝集性の高いLiClO4等を用いた場合,高濃度領域で緩和時間が増大した。高イオン伝導化に向けて,アニオンの可塑化効果やイオン間相互作用の制御の重要性が明確になった。こうした知見は,さらなるSPE の材料設計指針策定に有益である。
エキシマVUV光による表面処理技術は,単独での利用にとどまらず,他技術との融合により接着・接合分野での社会的課題の解決に資する新たな技術創出の可能性を有している。本研究では,VUV光処理と偏光板技術を組み合わせた分子配向制御技術,およびVUV 光処理とバイオミメティック表面修飾を融合した無電解めっき膜密着性向上プロセスの二つの応用例を検討した。偏光VUV 照射により高分子表面の分子配向を効率的に制御可能であることを,液晶分子を用いた評価により実証した,また,VUV光処理により改質されたポリフェニレンスルフィド表面にポリカテコール / ポリアミン( PC/PA) 薄膜を形成することで,従来のPC/PA コーティング単独に比べて強固な無電解めっき膜の密着性を得られることを確認した。本稿では,これらの取り組みと評価結果について報告する。
民間による宇宙開発が進んでおり,宇宙での超長期利用が可能な材料が必要である。宇宙環境の影響として,(1)微小重力,(2)高真空,(3)宇宙放射線( 紫外線,電子線),(4)太陽エネルギー,(5)熱環境(温度,熱サイクル),(6)微小隕石/軌道上デブリの衝突などが挙げられる。そのなかでも,高真空に関連する原子状酸素などの衝突( 照射),宇宙放射線の照射,熱環境,微小隕石/軌道上デブリの衝突などが,固体材料の強度特性に影響を与える可能性がある。宇宙環境について,これまで多くの研究が行われており,我々のグループも宇宙環境の影響を調べている。耐宇宙環境性を有する耐原子状酸素コーティング/炭素繊維強化複合材料(CFRP)について,結果の一部を紹介する。