高分子論文集
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37 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 高浜 隆, 地大 英毅, 佐藤 文彦
    1980 年 37 巻 3 号 p. 139-144
    発行日: 1980/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    粒子径の異なる一連のブチルメタクリラートラテッタスの水中における融着現象を調べた. 電気泳動法を用いてブチルメタクリラートラテックスの電着凝集物を作成し, これを種々の温度に保持した水中へ浸せきした. 得られた皮膜の融着状態を樹脂固形分率および機械的性質により評価した. その結果, 水中におけるラテックス粒子の融着は皮膜形成の初期段階において有効であり, 粒子径が小さくなるほど融着は促進することが明らかとなった. 粒子の融着が開始する温度においてLaplaceの式を適用し, 各ラテックスについて実験値の比較を行った. 更に過度状態の融着機構についても考察した. また, ポリマーラテックスの乾燥に伴う皮膜の形成過程を過べ, その挙動を湿潤シンタリング効果により説明した
  • 大久保 政芳, 堤 義高, 角岡 恒夫, 松本 恒隆
    1980 年 37 巻 3 号 p. 145-150
    発行日: 1980/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    無乳化剤乳化重合法より作成したアクリル酸エチル-メタクリル酸メチル共重合体エマルションの皮膜構造を透水度, 吸水率および走査型電子顕微鏡観察より検討した. 単分散ポリスチレンエマルション粒子 (粒子径, 0.091μm) の排除率は透水度の増加とともに単調に減少した. 同皮膜の溶液再キャスト皮膜では透水度は0で, 上記粒子も透過しなかった. アクリル酸エチル含有量の増加につれて, 皮膜の吸水率, 透水度は増大した. 造膜時の空気側および支持体 (ガラス板) 側からの透水度には顕著な差が認められ, 前者のそれは後者の約36倍に達した. 乾燥皮膜の吸水性においても同様で, 空気側から吸水させた場合の吸水に伴う皮膜の自濁初遠度は支持体側からのそれの約4倍であった. 走査型電子顕微鏡による皮膜断面観察より, 空気側の方がガラス側よりも多孔であった. 以上の結果より, 本無乳化剤エマルション皮膜は造膜時の空気側をいわゆる“スポンジ層” , 支持体側を“スキン層”とする非対称多孔構造からなることが明らかになった.
  • 高橋 璋, 高橋 史朗
    1980 年 37 巻 3 号 p. 151-156
    発行日: 1980/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ジアルデヒドセルロースへの光照射グラフト重合が行われた. 石英管によるグラフト重合速度はアクリル酸メチル, メタクリル酸メチル, 酢酸ビニル (VAC), アクリロニトリル (AN), スチレン (S) の順になり, グラフト効率はVACを除くと70~98%であった. 石英管によるSおよびANのグラフト重合において, グラフト率は [M] とともに増大する. グラフト率および見掛けの分岐数はセルロース試料のC=O基量の増加とともに増大し, 分岐鎖長は減少した. またANの重合において, 看英管での見掛けの分岐数がパイレックス管のそれに比べて大きい. これらのことから, グラフト重合は主として300 nmより長波長の光によるC=O基の光分解により進行し, 253 nmの光が照射されると, セルロースの鎖長が切断され, 一部鎖末端にグラフトされる. 重合の停止は生長ポリマーラジカルとアルデヒドセルロースの光分解により生じたセルロースラジカルの反応により進行すると考えられる.
  • 河合 和三郎
    1980 年 37 巻 3 号 p. 157-163
    発行日: 1980/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    合成高分子膜を用いる逆浸透膜の研究は, 多くの著者により精力的に展開されできた. 本報告は疎水部と親水部を併せもつスチレンーアクリル酸ブロック共重合体の逆浸透膜への応用に引き続き, N, N-ジメチルアミノエチルメタクリラートと光橋かけしうるモノマー, 4-メタクリロイロキシカルコンとの共重合体を合成し, 微多孔性ポリプロピレン膜上に担持させ, 光橋かけを行った複合膜が優れた排除効果を示す逆浸透膜になりうることを示した. この複合膜の排除機構を論ずるに当たり, 膜中に外部環境の変化に伴い揺動しうる孔が存在するとする均一膜モデルにより検討した結果, 微多孔性支持膜中の微孔に充てんされたとみなせる低分子量の上記共重合体からの複合膜は, 水と溶質の膜内での拡散性の違いにより, 排除効果が現れるものと考えられ, 拡散機構を支持しうるものであった.
  • 田坂 雅保, 子林 勝義, 藤 建治
    1980 年 37 巻 3 号 p. 165-171
    発行日: 1980/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    粘度法によって決定された種々の分子量をもつ精製ポリアクリルアミド (PAAm) の水溶液中におけるカオリン懸濁物の凝集が, 種々の高分子濃度について, その上澄み液の濁度を観測することによって測定された. PAAmの命子量が3×106より低い範囲では, 凝集に対する高分子最適濃度と高分子の分子量の比率はほとんど一定であった. もし, 凝集剤が異なる分子量をもつPAAmの混合物であるならば, 凝集は主として高分子量の成分によって支配される. 特に, 高分子濃度が最適濃度以下ならば, 上澄み液の濁度に対して低分子量成分はほとんど無関係である. また, PAAm自身の安定性についても粘度め時間的変化から検討した. 高分子量の粗製PAAmの濃厚水溶液は不安定であった. 透析により精製した場合, 高分子量のPAAmが2%の場合でさえ, 1週間後には一定の粘度を示し安定であった.
  • 在間 忠考, 西久保 忠臣, 三橋 啓了
    1980 年 37 巻 3 号 p. 173-177
    発行日: 1980/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    1,1′-ビス (メトキシカルボニル) ジビニルアミン (BDA) の重合および共重合について検討した. この結果, BDAはラジカル重合, カチオン重合はするが, アニオン重合はしない, 電子供与性モノマーであることが明らかになった. 更にBDAは, ラジカル重合で, 他のモノマーとほとんど共重合しないだけでなく, 他のモノマーの重合を禁止することも判明した. またBDAのラジカル重合により得られたポリマーは, 全くゲル化物を含まず, 非常に高い環化率の, 重複素環構造であると推定した.
  • 松井 とも子, 田中 誠之
    1980 年 37 巻 3 号 p. 179-183
    発行日: 1980/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ATR法は物質, 特に高分子フィルムなどの赤外波長程度の深さまでのスペクトルを得るために従来用いられてきた非常に重要な方法である. しかし表面に薄膜状に他成分が存在する場合には, 両層によるスペクトルが重複して得られ, 表面第1層および第2層に関して単独に知見を得ることが困難である. 本研究ではコーティングされた高分子フィルムを試料に用い, 第1層および第2層成分のスペクトルを単独に分離することを試みた. フーリエ変換赤外分光光度計にATR付属装置を組み入れ, 入射角を変えた2種のATRスペクトルa, bの測定を行い, 観測された吸収帯の中から第1層, 第2層成分を代表する吸収帯を選択し, 各吸収帯におけるa, b間の強度比に基づき計算処理を行い, 各層のスペクトル分離を行った. その結果ポリビニルアルコール, ポリプロピレン各表面処理試料について, ほぼ良好な第1層, 第2層成分のスペクトルを得ることができた.
  • 片岡 清一, 安東 忠直
    1980 年 37 巻 3 号 p. 185-190
    発行日: 1980/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    キトサン (CS) の存在下で, メタクリル酸 (MAA) のラジカル重合を水媒体中で行い, 生成したポリ (メタクリル酸) (PMAA) およびそのメチルエステルの立体規則性および旋光性を検討した. 重合の反応液はCS酢酸塩とMAAのナトリウム塩を混合して調製し, 重合は過硫酸カリウムを開始剤として30℃で行った. 生成PMAAの分離は, 析出したコンプレックス (CSとPMAAから成る) 中のCSを濃塩酸で加水分解し, メタ過ヨウ素酸ナトリウムで酸化して除去する方法で行った. このPMAAおよびメチルエステル誘導体は光学活性であり, 旋光度の符号はCSの逆であった. そしてアイソタクト成分は比較的多く存在し, このポリマーはBernoullian試行に従わなかった. PMAAおよびメチルエステル誘導体の旋光度は, ポリマー主鎖が保持するものと推定した.
  • 藤村 敏一, 鈴木 博, 山田 公章, 岩倉 賢次
    1980 年 37 巻 3 号 p. 191-194
    発行日: 1980/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高弾性率ポリエチレンを連続的に生産するため, 流動延伸押出の直後に, 固体延伸, 焼なましをして, 結晶化度, 配向性, および引張弾性率に対する影響を検討した. あらかじめ, 適温で流動延伸した高密度ポリエチレンを, 押出直後に固体延伸することにより, 弾性率が向上し, さらに焼なましにより, 32 GPaに達しえた. これは, 配向性の向上が主であるが, 流動延伸により生成した伸び切り鎖結晶の成長も考えられる. 更に, 試料の分子量分布, および押出, 延伸, 焼なまし, の最適組合せ条件を検討し, 結晶化度を高めれば, より高弾性率を得る可能性がある.
  • 林 修, 高橋 透, 栗原 秀夫, 上野 治夫
    1980 年 37 巻 3 号 p. 195-198
    発行日: 1980/03/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリブタジエンのin situ過酸法によるエポキシ化を研究した. 過酸化水素と有機酸は過酸を生成しポリブタジエンの不飽和部分と反応してエポキシドに変える. エポキシ化ユニットの定量はエポキシ価と1H NMRから算出した. 有機酸としてギ酸を用いた系では強酸触媒なしでも反応は速く, 少量のギ酸を用いるときエポキシ環の開環はほとんど観察されない. 反応速度はポリマーのミクロ構造の違いによって (シス-1, 4) >液状イクイバイナリー (シス-1, 4-1, 2) > (液状1, 2) の順に変化している. 13C NMRの測定からも一つのポリマー中, 1, 4-ユニットは1, 2-ユニットよりも反応が速い.
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