高分子論文集
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44 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 鳥居 隆司, 隅田 克彦, 日比 貞雄, 中西 英二, 前田 松夫, 藤本 浩一
    1987 年 44 巻 5 号 p. 331-339
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ロール延伸高密度ポリエチレンのOff-angle再延伸する場合, 分子鎖軸の再配向に関して塑性変形機構をさらに進展させて研究を行った. Off-angle再延伸によるSlippyあるいはKinkyな変形をひずみ楕円体, 分子鎖ベクトル及び, 局所座標系に基づいて解析した. これらの変形は, ラメラ間及び, ラメラ聞滑りに起因し, フィルム面内での単純せん断応力より非常に大きな純粋せん断応力によって容易に分子鎖軸を再配向をさせることができる. 中でも, Kink bandを形成する変形が分子鎖軸の再配向を促すのに有効である.
  • 日比 貞雄, 勝野 歳康, 横山 明宏, 中西 英二, 前田 松夫, 野村 春治
    1987 年 44 巻 5 号 p. 341-359
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    弾性定数 (あるいはコンプライアンス) のような物理重及び偏光螢光光とレーザーラマン散乱光が異方性高分子フィルムを通過する強度は, 4階テンソルの座標変換で定義される4階テンソルTijklの分子配向分布関数w (cosθ. φ, η) により重みづけされた空間平均として与えられることが示される. Tijklの展開係数のあるものは, 試料の対称性により消失する. Morrisにより提示されたように, 展開係数は斜方晶系に等しいか更に高度の対称性をもつ試料では実数のみ残る. 三斜晶系で表される一般的な場合, Tableに示すような虚数部の係数ができ, そしてこれらの展開係数は七つのグループに分けられる. 一般化によるこれら係数は偏光の斜め入射による螢光法及びレーザーラマン法による分子配向評価に重要な値である.
  • 鳥居 隆司, 日比 貞雄, 隅田 克彦, 中西 英二, 前田 松夫, 藤本 浩一
    1987 年 44 巻 5 号 p. 361-368
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    我々は, ロール延伸高密度ポリエチレンのOff-angleでの再延伸に伴う塑性変形時の分子鎖軸の再配向角ならびに, Kink band角を解析し, 特性曲線を用いて, Kink band角を評価した. 高分子材料の降伏点ひずみは, 金属材料のそれよりも非常に大きいため, 弾塑性変形によって配向角の変化は, 補正されなければならない. Off-angle延伸中, 分子鎖軸の再配向機構は, Slippyな変形と, Kinkyな変形に分けられる. 前者は, ラメラ間のすべり, 後者は, ラメラ内のChain slipによるものである. Chain slip中の分子鎖軸の配向は, ラメラ間のすペリによるものよりも非常に大きい.
  • 末次 憲一郎, 坂入 忠
    1987 年 44 巻 5 号 p. 369-373
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    繊維強化複合材料の射出成形物において, 充てん繊維の長さの分布状態は正規分布に近い分布をもつことがわかった. そこで, 充てん繊維の長さの分布を正規分布と考え, 3σ (標準偏差) ≅ L (平均長) とすると, 山木が提出した引張り強度の式は, 樹脂/充てん剤間密着度を評価するパラメーターφと, 平均アスペクト比xの一次関数となることがわかった. この式を用い, 処理剤により樹脂/充てん剤間の密着度の異なるPC/GF系材料, PP/GF系材料の実測値φを評価した. 同時に完全密着を仮定したH. L. Coxの引張り強度の式を用いてφ0を求あ, (φ/φ0) を計算した. これから, 密着度に対する処理剤効果の定量的な把掘や, 密着度が完全な場合と比較したとき, 密着度がどの程度なのかを定量的に把握するための見通しが得られた.
  • 桜井 謙資, 早川 浩二, 高橋 利禎
    1987 年 44 巻 5 号 p. 375-382
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    超高分子量ポリエチレンを融点以上の温度で一軸延伸し, 直ちに急冷しその後定長熱処理した試料の微細構造を広角及び小角X線回折により検討した. 急冷試料では高延伸比 (12倍) にもかかわらず, a軸配向結晶が優勢に発現した. このとき, 2成分結晶化が起こり. 少量の伸び切り鎖結晶と大部分の折りたたみ鎖結晶が生成すると考えられた. 急冷試料を80℃以上で熱処理すると, 熱応力により結晶の回転を生じ, 130℃熱処理ではほとんど完全なC軸配向に変った. 結晶厚D002は熱処理により顕著な変化を生じなかった. ミクロフィブリル間のミクロボイドは熱処理により減少し, 一方, 長周期は温度上昇に伴い徐々に増大し, 100℃以上で急激に増大した. 架橋点効果と比較して, 大きな長周期増大に対する絡みあい点の抑制効果は認められなかった. 長周期増大の原因として, 大きな結晶間の微結晶の融解や巨大分子鎖の絡みあいの解除を伴う非晶層厚の増大及び結晶の側面方向へのエピタクシャル成長などが推察された.
  • 中島 利誠, 飯田 かおる
    1987 年 44 巻 5 号 p. 383-388
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンテレフタラート (PET) の吸着特性を調べるためガスクロマトグラフィーを用い, PETを固定相とし, 低級カルボン酸4種を移動相とした系での吸着挙動を検討した. 注入量 (S) に対する比保持容量 (Vg) は, 全温度領域でSの減少に伴い増加する. また, 保持図からは150~170℃で変曲点が見られ, PETの結晶化が始まる温度と一致した. さらに吸着等温線からは, 温度上昇に伴い吸着量が減少することが分かる. また, カルボン酸の鎖長が長くなるほど吸着量が減少する. 吸着量からB.E.T. プロットや相互作用パラメーターを算出して検討した結果, PET-カルボン酸系の吸着はB.E.T. 型であると思われる.
  • 坪川 紀失, 山本 勇, 曾根 康夫
    1987 年 44 巻 5 号 p. 389-394
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリアミドイミド (PAI) の加熱による硬化機構を明かにするため, イミド結合量及びアミド結合量の異なる数種のPAI並びにポリアミド酸を合成して, それらの加熟による化学構造と物性の変化について検討した. その結果, (1) アミド結合の多い試料ほど加熟によって極限粘度が上昇しやすい. (2) 加熱時間が長くなるとイミド結合量に関係なく, 溶媒に対する溶解性が低下する. (3) 真空中より空気中で加熱する方が溶解性が低下する. (4) 180℃以上で加熱すると切断伸びは急激に低下する, (5) 加熟によって結晶化は起らない. などが明らかになり, これらから, PAIの加熱による硬化はポリマー主鎖及び分枝鎖中あるいは, それらの末端に存在する官能基間の反応による架橋の効果が大きく, また, 空気中で高温加熱するときはジフェニルメタン構造の熱酸化も影響することが分かった.
  • 近江谷 克裕, 篠原 健, 金井 伸人, 神戸 博太郎
    1987 年 44 巻 5 号 p. 395-398
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    芳香族ポリアミドイミドを芳香族ポリアミド織維の平織布で強化することによって高強度, 高耐熱性の繊維強化フィルムを作成した. この繊維強化フィルムの疲労強度について検討した. 繊維強化フィルムの疲労挙動は強化繊維とマトリックスの挙動の特徴がそれが支える度合に応じて発現される. 疲労強度と静的強度の間には, ある種の相関がある. また, 面内には力学的性質と同様に異方性が存在する.
  • 山田 紳月, 時任 静士, 筒井 哲夫, 斎藤 省吾
    1987 年 44 巻 5 号 p. 399-403
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ (p-フェニレン) (PPP) の誘導体で, 側鎖の働きにより有機溶媒に可溶でフィルム形成能を持つポリ (2,5-ジブトキシフェニレン) (PDBP) の固有の性質を明らかにした. 誘電性と動的粘弾性の測定より, PDBPにはPPPと異なって側鎖の運動が存在し剛直な主鎖自体も局所的なねじれ運動が可能であることを明らかにし, この緩和の存在がフィルム形成能を持つ所以となることを示した. 暗導電性及び光導電性の測定から, PDBPの導電性が光履歴を受けることや顕著な光導電性を示すことより, PPPと同様に電子伝導体としての性質を有することを示した. ヨウ素のドーピングで半導体領域まで導電率が向上したことからPPPと同様に導電性の向上が可能であることを明らかにした. この結果より, ベンゼン環への置換基の導入がPPPの電子的性質にはあまり大きな変化をもたらさないと考える.
  • 糸山 国義
    1987 年 44 巻 5 号 p. 405-408
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    アイソタクチックポリプロピレン融液を伸長変形して, β結晶変態を主成分とする配向シートを調製した. 同シートを融解後, 等温結晶化したときのβ晶形成に及ぼすポリマー融解温度および融解時間の効果を, DSCで結晶の融解挙動を調べ, 検討した. β晶形成の活性点は融点以上の温度でかなり安定であり, 180℃で, 10分間処理しても融液は融解前の構造を記憶している. しかし処理温度が230-240℃になると1分間程度でその構造記憶が失われることが分かった.
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