高分子論文集
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45 巻, 4 号
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  • 原田 紀枝子, 上野 信雄, 杉田 和之
    1988 年 45 巻 4 号 p. 295-302
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    反応性の高い光開始剤は熱安定性の低下とひきかえに高感度な感光性高分子系を与える. そこで崩壊性ポリマーの一つであるポリアセトアルデヒド (APA) を用い, p-ジメチルアミノベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラート {(CH3) 2NBD} の選択的触媒活性について研究した. (CH3) 2NBDを添加したAPAは40℃以下の照射では崩壊しなかったが, 60℃以上の光照射, 40℃以下での照射後60℃以上の加熱によって崩壊した. 紫外スベクトルにより (CH3) 2NBDの分解は確認できたので, 生成した電子受容体であるBF3は電子供与性墓であるジメチルアミノ基に配位するため崩壊を示さなかったと考えられる. このためAPA中で (CH3) 2NBDから放出されたBF3は選択的触媒活性を示した. (CH3) 2NBDを添加した崩壊性ポリマーは電子供与性基を持つので高感度で保存性も良好であった.
  • 粘度法とGPC法の比較
    角岡 正弘, 岸村 眞治, 田中 誠
    1988 年 45 巻 4 号 p. 303-307
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    メタクリロイルアセトフェノンオキシム (MAAPO) とスチレン (St) あるいはメタクリル酸メチル (MMA) 共重合体の固相における光崩壊反応について, 粘度法及びGPC法により検討した. 数平均分子量 (Mn) 及び重量平均分子量 (Mw) はGPCより求めた. 粘度平均分子量, Mr (f) 及びMv (u) は, それぞれ分別したポリマーあるいは未分別ポリマーを用いて求められたホモポリマーの粘度式に固有粘度を代入して求めた. 主鎖切断数SnSn = (1/Mn1-1/Mn0) (1) (0, tは照射時間) より求めた. MAAPO (1.9) -Stの光崩壊において, 式 (1) のMnの代わりにMv (f) を用いて求めたSv (f) はSnSn=2Sv (f) (2) なる関係がありMAAPOが16.5mol%でも式 (2) は成立したが, MAAPO-MMAでは成立しなかった. St共重合体の光崩壊反応の初期では, 光分解したアシルオキシイミノ基の4%が主鎖切断に関与していることがわかった.
  • 草開 稔, 安藤 慶一
    1988 年 45 巻 4 号 p. 309-315
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    ヘキサメチルジシロキサンより生成したプラズマ重合膜を平行平板電極間で大気中で放電処理した場合の赤外吸収スペクトル, ESCAスペクトル, 接触角, 表面抵抗率, 静電容量, 及びtanδの変化を調べた. その結果, 放電処理すると水酸基, カルポニル基, 及び窒素化合物が導入され, 処理時間とともにシリコン原子に対する炭素原子の比が減少するのに対して窒素原子及び酸素原子のものは増加すること, プラズマ重合膜の水に対する接触角は放電処理前では103°で疎水性を示すが, 処理後では水滴が表面に広がることがわかった. また, プラズマ重合膜を放電処理するとその表面抵抗率は109Ω程度に低下し, 静電容量は約2倍, tanδは10%程度に増加することがわかった.
  • 松村 秀一, 前田 秀一, 高橋 淳, 吉川 貞雄
    1988 年 45 巻 4 号 p. 317-324
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリピニルアルコール (PVA) の生分解について詳細な検討を行い, 活性汚泥により生分解を受けることを認めた. 細菌としてPseudomonas sp. M1及びPseudomonas putida M2などがPVAのポリマー部分分解菌として単離された. これらを用いた試験からポリビニルアルコールの優れた生分解性が確認された. さらに, ビニルタイブの生分解性を有する高分子電解質の分子設計としてポリアクリル酸ナトリウムの主鎖中に生分解性を有するポリビニルアルコール単位を有するポリ [(アクリル酸ナトリウム) -co- (ビニルアルコール)] [P (SA-VA)] を酢酸ビニルとアクリル酸を共重合させることにより合成し, 得られたものの生分解について検討を行った. その結果P- (SA-VA) は土壌で生分解を受けることが見いだされた. また, 共生的に働いているPseudemonas sp. C1及びC2の2菌株がP (SA-VA) のポリマー部分分解菌として単離, 同定された.
  • 松村 秀一, 高橋 淳, 前田 秀一, 吉川 貞雄
    1988 年 45 巻 4 号 p. 325-331
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    生分解性を有するポリビニル型高分子電解質の分子設計としてポリ (ビニルオキシ酢酸ナトリウム) (PVOA) を合成し, その生分解性について検討を行った. PVOAはペンダントに存在するオキシ酢酸基が水解反応のような一般的な微生物反応により容易に生分解性のポリビニルアルコールに変換されることが予想される. 本報において, PVOAは活性汚泥や土壌などにより生分解されることが見いだされ, 細菌としてBacillus cerrus LC, Agrobacterium sp. SC, Cellulomonas sp. Y1C及びY2C, Aeromonas sp. WC, Pseudomonas sp. T10, 及び酵母菌Trichasporon cutrsneum RCなどがPVOAのポリマー部分を分解する菌株として単離された. さらに, ビニルオキシ酢酸とのコポリマー化により生分解性を付与されることが確かめられたことより, ビニルオキシ酢酸単位を生分解部分として用いることが可能であることが見いだされた.
  • 相田 博, 漆崎 美智遠, 前川 浩之, 岡崎 正二
    1988 年 45 巻 4 号 p. 333-338
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    N-エチルマレイミド-α-メチルスチレン共重合体 (co-EMI), マレイミド-α-メチノレスチレン共重合体 (co-MI), 及び無水マレイン酸-a-メチルスチレン共重合体 (ce-MAn) の熱安定性を検討した. co-EMI及びco-MIでは約300℃. co-MAnでは260℃まで重量減少は少なく安定であり, 重量が半減する温度 (Th) はco-EMI及びco-MIで約340℃, co-MAnでは310℃である. 主鎖切断の速度定数は280℃においてco-EMIに比べco-MAnの方が約7倍大きい. 側鎖の酸無水物5員環は260℃を越すと開裂し始めるが, イミド5員環は320℃まで安定である. 分解生成物の主成分はco-EMIでα-メチルスチレン (MS), N-エチルマレイミド, 及びオリゴマーであり, co-MAnではMS, 無水マレイン酸, オリゴマー, 及び二酸化炭素である. 以上の結果から分解機構を推定した.
  • 大関 博, 高野 浩, 藤本 佳久, 近土 邦雄
    1988 年 45 巻 4 号 p. 339-346
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    芳香族ポリウレタン・ウレアのNOxガスによる黄変機構及びこれに対する黄変防止剤の作用について, フェニルイソシアナート系及び4,4′-ジフェニルメタンジイソシアナート (MDI) 系モデル化合物を用いて検討した. 黄変はモデル化合物のベンゼン環にニトロ基が置換することによって起こることが分かり, 特にウレタン・ウレア基に対しパラ位への置換が支配的であった. MDI系モデル化合物では, このニトロ基の置換とベンゼン環の間のメチレン基の部分での分子鎖の切断が同時に起こり, また高分子量化の反応も認められた. これらの黄変反応に対し, 三級アミン系有機黄変防止剤はNO2ガスの化学的吸着剤として働くことが確認された. すなわち黄変防止剤の三級アミンへのNO2ガスの吸着速度がベンゼン環へのニトロ基の置換速度よりも速いために, モデル化合物の黄変を防止することが分かった.
  • 相川 隆志, 大塚 寿子, 讃井 浩平, 栗栖 安彦, 佐藤 昭雄
    1988 年 45 巻 4 号 p. 347-355
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    微生物では, 難分解性であるポリアミド (ナイロン) に着目し, 酒石酸及び粘液酸とヘキサメチレンジアミンとの溶液重縮合により, 側鎖に水酸基を導入し, ポリアミドを合成し, このポリアミドを唯一の炭素源として, 集積培養を行い, 土壌よりポリアミド資化性細菌9-4株を分離した, この菌株を用い, ナイロン1, ナイロン3, ナイロン6, ナイロン66, 及びポリアミドの生分解性の比較を行った結果, 水酸基を導入したポリアミドは, ナイロン類に比べ, より分解されることが認められた. また, この菌株が水溶性高分子であるポリ (エチレンオキシド), ポリ (ビニルアルコール) をも分解することが認められた. これらの合成高分子を用いて, 生分解性における合成高分子の分子量依存性を, また各々の合成高分子の平衡吸湿量を測定し, 親水性と生分解性との関係について検討した, 吸湿性の多いポリ (エチレンオキシド) は, ポリアミド及びポリ (ビニルアルコール) よりも分解を受けやすかった. 分離した細菌94株の菌学的性質を調べた結果, この細菌が, coryneform baeteriaに属することを認めた.
  • 筏 英之, 竹内 康紀, 芦田 道夫
    1988 年 45 巻 4 号 p. 357-361
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ベンゼン, シクロヘキサン, エチルベンゼン, エチルシクロヘキサン, 及びデカリン中に溶解させたポリスチレンに20℃から沸点までの広い温度範囲で紫外光を8時間照射した. 照射ポリスチレンの分子量, 生成カルボニル基量, ゲル量を定量した. 主鎖切断数はすべての溶媒中で照射温度100℃までは温度上昇とともに増加した. 他方, エチルシクロヘキサンとデカリン中では100℃以上の高温になると温度上昇とともに減少した. 照射ポリスチレン中に生成したカルボニル基生成量の照射温度依存性は切断数の照射温度依存性に対応し, 酸化を経由する光分解反応であることがわかった. 100℃における主鎖切断速度が極大となる理由はわからなかった.
  • 大石 不二夫, 吉川 高雄, 矢口 直幸, 高木 繁輝, 高橋 信夫
    1988 年 45 巻 4 号 p. 363-366
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    高性能エンジニアリングプラスチックいわゆるスーパーエンジニアリングプラスチック (SEP) は高温用途だけでなく力学的用途に対しても有望視されているが, 実用上必要なせん断強度特性や耐久性についての報告は極めて少ない. そこで5種類のSEPすなわち液晶ポリマ-2種 (全芳香族ポリエステル) ・ ポリフェニレンサルファイド (PPS) ・ ポリエーテルサルホン (PES) ・ ポリエーテルエーテルケトン (PEEK) を採りあげ, 汎用エンプラであるポリアミド (PA), ポリアセタール (POM) と比較しながら, 次の諸物性について調べ, 傾向を明らかにした. 1) 熱特性, 2) ねじり強度特性 (促進耐候試験. 冷熱衝撃試験の前後), 3) 曲げ強度特性 (屋外暴露試験前後), 4) 耐疲労性 (ねじり疲労), 5) 環境応力き裂特性. なお使用した主要測定装置は著者らが考案, 試作したものである.
  • 吉川 高雄, 大石 不二夫, 東 俊文
    1988 年 45 巻 4 号 p. 367-370
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    プラスチックの耐候性を把握する目的で, 代表的なエンジニアリングブラスチックであるポリアセタール (POM) を採り上げて, 約9年間にわたって実施した耐候劣化試験の結果得られた引張り試験特性値の回帰分析による劣化の予測を試みるとともに, 試験体を染色して表面劣化層厚さを測定する方法を考案し, 供試体内部への劣化の進行についての定量的把握を検討した. 得られた主な結果は次のとおりである。(1) 引張り強さの劣化傾向が指数回帰式に良く一致する. (2) 暴露試験による劣化層厚さは, 樹脂飛散層, 完全劣化層, 分部劣化層の3層で構成される. (3) 染色による表面劣化層厚さの測定が材料の劣化度の定量的評価に有用である.
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