高分子論文集
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58 巻, 8 号
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  • 有賀 克彦
    2001 年 58 巻 8 号 p. 363-374
    発行日: 2001/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本報では, ナノ薄膜を用いた情報変換デバイスの開発について述べる. 第1の例では, 圧力情報を光学情報に変換するデバイスについて紹介する. ステロイドシクロファンを気-水界面に展開すると, 低圧下では開いた状態をとるが, 高圧下では立体的なキャビティーを形成した. 水相中に蛍光分子を存在させると, 圧縮によって生じたキャビティーに蛍光分子が取り込まれて, 蛍光強度が増大した. さらに, 単分子膜の圧縮・膨張の繰返しにより, 圧力印加に同調した周期的な蛍光強度の増減が観測された. 第2の例は, 人工脂質膜上で人工的なアミン型レセプターと乳酸脱水素酵素をカップリングさせたデバイスである. この系に銅イオン (阻害剤) をくわえると, 酵素活性が失われた (OFF状態). そこに, 化学シグナル (アルデヒド化合物) を加えると, 人工レセプターとの間にシッフ塩基を形成し, 銅イオンを捕捉して酵素を活性化した (ON状態). また, 化学刺激と光学刺激の組み合わせによって酵素活性をコントロールする分子ロジックデバイスの作製にも成功した.
  • 野崎 京子
    2001 年 58 巻 8 号 p. 375-381
    発行日: 2001/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アキラルなモノマーから出発して, キラリティを制御しながら主鎖中に不斉炭素を構築し, 光学活性高分子を合成した. 特に, オレフィン類と一酸化炭素の不斉交互共重合反応, エポキシドと二酸化炭素の不斉交互共重合反応の2つの反応についてまとめた. 前者においては, キラルポスフィンホスファイト配位子 [(R, S) -BINAPHOS] のパラジウム錯体を触媒とし, プロピレンと一酸化炭素から, ほぼ完全にイソタクチックな完全交互共重合体の合成に成功した. 主鎖中の不斉炭素の絶対配置を初めて明らかにするとともに, 主鎖中の不斉炭素がほぼ完全に一方の絶対配置に規制されている (>95%ee) ことを証明した. また, 生成するポリケトンの不斉炭素の立体配置を保ったまま, カルボニル基をヒドロキシル基やメチレン基に変換することもできた. さらに, スチレン誘導体をはじめとするほかのオレフィン化合物にもこの重合反応を適用した. 後者においては, キラルな亜鉛錯体を触媒に用い, シクロヘキセンオキシドと二酸化炭素の不斉交互共重合に初めて成功した. すなわち, メソ型エポキシドの一方の配置の不斉炭素上で立体の反転を伴ってエポキシドを開環した. 得られたポリカーボナートは, アルカリ条件下加熱するとシクロヘキサンジオールと二酸化炭素に分解できるので, このジオールの鏡像体過剰率を求めることにより, ポリカーボナートの光学純度の絶対値, 最高で79%eeを求めることもできた.
  • 宇山 浩
    2001 年 58 巻 8 号 p. 382-396
    発行日: 2001/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    酵素を触媒とする高分子合成に関する筆者らの最近の成果を概説する. 主たるターゲット高分子として芳香族ポリマーとポリエステルを取り上げ, 単離酵素を用いる非生合成経路による重合反応を開拓した. 酸化還元酵素を触媒とする酸化重合により新しい芳香族ポリマーの合成を検討した. フェノール類の酵素触媒重合では, 毒性の高いホルマリンを含まない新規フェノール樹脂が穏和な条件で得られた. さらに酸化還元酵素のモデル錯体を触媒に用いることにより新しい高性能高分子を開発した. ポリエステル合成には主にリパーゼを触媒を用いた. ラクトン類の重合では単量体の酵素触媒重合性が化学触媒を用いた場合とまったく逆の挙動を示した. また, ラクトン類の立体選択的重合およびポリオールを単量体とする位置選択的重合を見いだした. いずれの成果も酵素の特異的触媒能に基づくものであり, 生成ポリマーの多くが従来法では合成できない高分子新材料である. また, 酵素触媒重合は自然界の物質循環に取り込まれるものであり, 持続的社会構築への大いなる貢献が期待される.
  • 金澤 昭彦
    2001 年 58 巻 8 号 p. 397-410
    発行日: 2001/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    新規カチオン型抗菌剤として種々の高分子および低分子ホスホニウム塩を合成し, 第4アンモニウム塩類似体との比較を交えながら構造-活性について論述した. オニウム塩の抗微生物活性に関する系統的な研究を通して, 抗微生物活性が本質的はオニウム塩のリオトロピック液晶性に支配されることを明らかにし, 作用機序の新しい概念を提案した. また, 優れた抗微生物活性・リオトロピック液晶性を有するホスホニウム塩が優れたサーモトロピック液晶性を示すことを見いだし, 電子・光機能薄膜へ展開した. ホスホニウム組織体は固体状態においてもイオン層とガラス状のアルキル層が規則的にスタッキングした集積型構造を示し, 2次元イオン層内で正負イオンの自発的な相対変位が起こり非中心対称構造 (永久電気分極) が誘起されることがわかった. この極性構造が電界応答を示すことから, ホスホニウム組織体は自発分極をもつ2次元原子層から構成される「擬似-強誘電体」として機能することが明らかとなった. さらに, オニウム塩に遷移金属イオン, 希土類イオンを組み込んだ有機配位子をもたない新しいイオン性金属錯体液晶を合成し, それらがユニークな相転移現象, 組織体構造を示すことを明らかにした. 加えて, 一般的な強誘電性液晶をその場重合することによって得られる分極制御可能な高分子機能薄膜に関する研究例についても論じた.
  • 中野 環
    2001 年 58 巻 8 号 p. 411-426
    発行日: 2001/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    メタクリル酸1-フェニルジベンゾスベリル (PDBSMA) およびN-フェニルおよびN-シクロヘキシルマレイミド (PMI, CHMI) のラジカル重合における不斉誘導について検討した. PDBSMAはラジカル重合でもほぼ完全にイソタクチックならせん状ポリマー (左右のらせんの等量混合物) を与える. 本研究では, PDBSMAのラジカル重合を, 光学活性な開始剤 (過酸化物), 連鎖移動剤 (チオール), 溶媒 (アルコール類), あるいは不対電子をもつ添加剤 (コバルト (II) 錯体) を用いて行うことにより, 左右どちらかに偏ったらせん構造をもつ光学活性ポリマーを合成した (らせん選択ラジカル重合). らせん選択は, 成長ラジカルと1次ラジカルとの反応, 連鎖移動剤あるいは溶媒から成長ラジカルへの水素移動, あるいはコバルト錯体と成長ラジカルとの相互作用を通じて起きる. さらに, 少量の光学活性単量体とPDBSMAとの共重合でもらせんの偏りが誘起された. また, PMI, CHMIのラジカル重合を光学活性コバルト (II) 錯体存在下で行ったところ, 光学活性ポリマーが得られた. この重合ではコバルト錯体が生成ポリマーの主鎖のコンフィグレーションに影響し, キラルな (R, R) -あるいは (S, S) -トランス型の単量体単位が過剰に生成したものと考えられる
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