アキラルなモノマーから出発して, キラリティを制御しながら主鎖中に不斉炭素を構築し, 光学活性高分子を合成した. 特に, オレフィン類と一酸化炭素の不斉交互共重合反応, エポキシドと二酸化炭素の不斉交互共重合反応の2つの反応についてまとめた. 前者においては, キラルポスフィンホスファイト配位子 [(
R, S) -BINAPHOS] のパラジウム錯体を触媒とし, プロピレンと一酸化炭素から, ほぼ完全にイソタクチックな完全交互共重合体の合成に成功した. 主鎖中の不斉炭素の絶対配置を初めて明らかにするとともに, 主鎖中の不斉炭素がほぼ完全に一方の絶対配置に規制されている (>95%
ee) ことを証明した. また, 生成するポリケトンの不斉炭素の立体配置を保ったまま, カルボニル基をヒドロキシル基やメチレン基に変換することもできた. さらに, スチレン誘導体をはじめとするほかのオレフィン化合物にもこの重合反応を適用した. 後者においては, キラルな亜鉛錯体を触媒に用い, シクロヘキセンオキシドと二酸化炭素の不斉交互共重合に初めて成功した. すなわち, メソ型エポキシドの一方の配置の不斉炭素上で立体の反転を伴ってエポキシドを開環した. 得られたポリカーボナートは, アルカリ条件下加熱するとシクロヘキサンジオールと二酸化炭素に分解できるので, このジオールの鏡像体過剰率を求めることにより, ポリカーボナートの光学純度の絶対値, 最高で79%
eeを求めることもできた.
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