高分子論文集
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59 巻, 2 号
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  • レーザー照射によるポリ酢酸ビニルの蛍光発光発現メカニズム
    前田 満穂, 尾崎 靖, 西内 啓二
    2002 年 59 巻 2 号 p. 69-73
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    CO2レーザーを照射したポリ酢酸ビニル (PVAc) フィルムは, 365nmの紫外光下で青色に発色する. 本研究では, X線光電子分光法 (ESCA) を用いて, PVAcの蛍光発光発現のメカニズムを解析した. PVAcフィルム表面に生成した不飽和二重結合およびカルボキシル基を臭素およびフッ素を用いてラベル化し, 臭素およびフッ素のスペクトル強度を測定した. その結果, 蛍光強度が増大するに従って, PVAc表面の不飽和二重結合およびカルボキシル基の量は増大していた. この結果から, PVAcの蛍光発光メカニズムは, レーザー照射によってPVAcが熱分解し, ポリエン構造を生成するとともに, そのとき脱離した酢酸の一部がふたたびポリエン構造に付加するPVAcの構造変化によるものと考えられた.
  • 鈴木 一孝, 森 邦夫, 平原 英俊, 清水 健司
    2002 年 59 巻 2 号 p. 74-80
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アセトン, 酸 (HCl), アルカリ (NaOH), および還元剤 (NaBH4) にて洗浄処理した鉄 (Fe), ステンレス (SUS), ニッケル (Ni) および銅 (Cu) 基板に6-ジブチルアミノ-1, 3, 5-トリアジン-2, 4-ジチオール (DB) を真空蒸着法により3nmの薄膜を作製し, 洗浄処理により変化する基板表面状態によるDB被膜の吸着確率とDB被膜構造との関係を調べた. 金属基材の酸化被膜が薄いほどDBのチオール基によって金属基材と化学吸着しやすいことがわかった. 洗浄処理により変化する金属基材の吸着水として, 化学吸着水と物理吸着水がDB被膜の吸着性に影響することがわかった. 化学吸着水量に比例し吸着確率は高くなり, 被膜構造は重合体を形成しやすく金属基板と化学吸着しやすくなることがわかった. また, 物理吸着水が過剰に存在するとDBの官能基であるチオール基の酸化により硫酸基を形成しやすくなることもわかった.
  • 川上 恒夫, 石原 知彦, 坂本 雄二, 日比 貞雄, 中西 英二
    2002 年 59 巻 2 号 p. 81-87
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    筆者らは, X線極点図形回折装置を用いて, シンジオタクチック1, 2-ポリブタジエンフィルムの幅拘束1軸延伸に伴う各結晶面法線の配向分布関数を評価した. これらの分布関数を多結晶の集合体と仮定することにより, 結晶の配向のシミュレーションと比較した. そして, 最大塑性仕事の原理により, 7個の滑り系のうちで, (210) 〈001〉, (100) 〈001〉, (110) 〈001〉, (010) 〈001〉の滑り系の支配する幅拘束1軸延伸の配向機構を解析した.
  • 久保 公弘, 正本 順三
    2002 年 59 巻 2 号 p. 88-92
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    自動車の軽量化のために, プラスチック製のガソリンタンクが要望される. メタノールとの混合ガソリン (ガソホール) に対して, 1つの問題点は, ガソホールの耐透過性に優れた適当なプラスチック材料がない点である. ナイロン, ポリアセタール樹脂はガソリンに対しては, 耐透過性が優れた材料であることは知られているが, ガソホールに対しては, 耐透過性が優れていなかった. そこで, 筆者らは, エラストマー強化ポリフェニレンスルフィド (PPS) について, ガソリンおよびガソホールについての透過性を検討したところ, 優れた耐透過性を有することがわかった. エラストマー強化PPSは反応性の官能基を有するエチレン系コポリマーに対して, 強い接着性を有する. 一方, エチレン系コポリマーはポリエチレンに対して, 強い接着性をもっている. そこで, ポリエチレンー反応性官能基を有するエチレン系コポリマーエラストマー強化PPSのラミネートシステムが自動車用途のガソホールタンクに対して優れた材料系として, 提案される.
  • 川越 誠, 川越 みゆき, 中西 誠, 邱 建輝
    2002 年 59 巻 2 号 p. 93-100
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリメチルメタクリレート (PMMA) によるアルコールの吸収挙動においてcase II拡散が発現するときのアルコールの構造と性質および環境温度について調べた. すでに知られているメタノール, エタノール, 2-プロパノールのほかに, 1-プロパノール, 1-ブタノール, および2-メチルー1-ブタノールの吸収挙動にもcase II拡散が見いだされ, その発現温度は大体においてアルコールの分子容の増大とともに上昇した. また, アルコールの吸収速度はほかの高分子-液体系で見られるFick拡散と同様に分子容の増大とともに小さくなり, プロパノールとブタノールでは線状構造の方が分岐構造をもつ異性体よりも大きな吸収速度を示した. 平衡吸収量は線状アルコールの方が小さく, 分子容の増大に対して一定もしくは低下の傾向を示した. Case II拡散に関するKramerの理論を体積ひずみ速度の導入により修正したものはPMMAによるメタノールの吸収挙動を比較的良好に表現したが, その妥当性を述べるにはほかのアルコールの挙動との比較が必要である.
  • 足立 廣正, 長谷川 照夫
    2002 年 59 巻 2 号 p. 101-103
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究では, 独立気泡ポリエチレンフォームにおける応力とひずみとの関係を明らかにして, フオームの基材と空孔率から静的圧縮弾性率を推定する手法の検討を行った. その結果, 独立気泡ポリエチレンフォームの静的圧縮挙動は空孔率により大きく異なり, 空孔率のもっとも大きいフォーム試料を除いて降伏し, 空孔率が小さくなると降伏応力が大きくなることがわかった. また, 空孔率のもっとも小さいフオーム試料において, 圧縮弾性率の実験値は飯塚らの斜めセルの曲げ変形のみを考慮した式に近い値であることがわかった. ほかのフオーム試料において, 圧縮弾性率の実験値は独立気泡の存在で斜めセルの曲げが小さいため飯塚らの式による推定値より大きいと考えられる.
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