臨床血液
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39 巻, 5 号
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第39回総会
シンポジウム4
非血縁者間造血幹細胞移植の問題点と将来
臨床研究
  • 上田 恭典, 森 眞一郎, 伊藤 量基, 前迫 善智, 小西 博, 矢切 良穂
    1998 年 39 巻 5 号 p. 348-354
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    Cytarabine ocfosfate (SPAC)は経口投与後速やかにcytarabine (ara-C)に変換される薬剤である。SPACを6人の急性非リンパ性白血病(ANLL)もしくは骨髄異形性症候群(MDS)の患者に1日100∼400 mg 14日間経口投与し,その血中動態を調べた。血中ara-C濃度は投与開始後48∼96時間でほぼプラトーに達し,投与終了の1日後まで横這いないしは軽度の上昇を示したが,投与終了の8日後では1 ng/ml以下であった。この検討により,薬物動態学的には,SPAC 150∼300 mg/m2/dayの経口投与が20 mg/m2/dayのara-C持続注入に匹敵することが示された。また,全患者に対してSPACの14日間投与が可能であった。SPACは,特に強力な化学療法の実施できないANLLやMDS患者に対して外来で強化,維持療法を実施する場合に有用な薬剤であると思われる。
  • 太田 忠信, 岸田 卓也, 長谷川 太郎, 平井 学, 山根 孝久, 日野 雅之, 巽 典之
    1998 年 39 巻 5 号 p. 355-362
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    末梢血幹細胞移植(PBSCT)は,悪性疾患の治療戦略の一つとして現在広く普及しつつある。1993年以来当院ではPBSC採取36例,採取PBSC量をCD34+細胞で評価し,内22例にPBSCTを施行した。採取CD34+細胞量は,採取時白血球数が高いほど,採取前治療が強いほど多い傾向がみられ,さらに化学療法後の白血球回復速度が早いほど有意に多かった。PBSCT後の造血回復ではCD34+細胞2.0×106/kg以上の輸注で白血球の回復はすみやかであるが,ANLLで血小板の回復が遅延した。臨床効果では症例数が少なく観察期間も短いが,無病生存率および無病生存期間は,ANLL(5例)で60%, 12.8カ月,ALLで100%, 11.3カ月でありさらに観察中である。一般病院でもPBSCT併用の大量化学療法を安全に施行・運用できることを示したものと判断された。
症例
  • 澤登 雅一, 中川 靖章, 井上 靖之, 鈴木 憲史, 管野 恵子, 橋本 幸子, 武村 民子
    1998 年 39 巻 5 号 p. 363-368
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例,64歳,男性。89年12月にAML (M2)発症。92年3月,93年10月に再発したがいずれも完全寛解にて退院。94年5月,頚部から前胸部を中心に隆起性の皮疹が出現。末梢血WBC 56,300/μl, 芽球5%認め,AML再々発の診断で入院。皮膚生検にて白血病細胞の浸潤を認め,骨髄穿刺では芽球56%, CD13, CD33陽性,HLD-DR陰性。染色体検査で,以前はすべて正常核型であったがt(12;17)(p13;q11-21)が初めて認められた。BHAC-DMP単独では無効であったが,FISH法にてPML-RARα遺伝子が8%に陽性であったため,ATRAを併用したところ皮膚病変が著明に改善した。RARα遺伝子の存在する17q11.2-21に切断点をもつ染色体異常が存在し,ATRAが部分的に有効であったAML (M2)症例であり,臨床上示唆に富む症例と思われ報告する。
  • 藤井 浩, 中川 均, 中尾 誠, 薗田 精昭, 谷向 茂厚
    1998 年 39 巻 5 号 p. 369-373
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    通常の化学療法を5コース以上施行してもNC∼PRであった初回寛解導入不成功の非Hodgkinリンパ腫3例で,double PBSCTによりCRが得られた。年齢は35∼69歳,初診時にbulky massを有するstage IVの中等度悪性群のNHLの3例。1st PBSCTの前処置にregimen A (CBDCA 1.0 g/m2, ETP 1.2 g/m2, CY 120 mg/kg)を用いたが,3例とも治療効果はPRであった。3∼5カ月後に前処置にregimen A(1例)かregimen B(MCNU 500 mg/m2, ETP 750 mg/m2, L-PAM 140 mg/m2: 2例)を用いて2nd PBSCTを施行。3例ともCRに到達し,無治療で29∼54カ月間CRを維持。輸注CFU-GM数は3∼22×105/kg, 好中球数は(9日で500/μl以上,血小板数は12∼22日で5万/μl以上に回復した。1st PBSCTのRRTはいずれもgrade 0∼1, 2nd PBSCTでgrade 3の口内炎が1例に見られた。double PBSCTは初回寛解導入不成功の悪性リンパ腫例に強力で安全性の高いsalvage療法と思われる。
  • 関 義信, 高橋 芳右, 相澤 義房
    1998 年 39 巻 5 号 p. 374-378
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は94歳,男性。痴呆で入院中,不穏症状が強く某院精神科を受診し,ハロペリドール5 mgほかを投与された。翌日から意識障害,急性呼吸不全,高熱と7.7×104lの血小板減少を認めた。薬剤の中止,抗生物質の投与,輸液,呼吸循環管理を施行したが,投与開始後4日目から横紋筋融解による急性腎不全,DIC(準備状態)を認めた。以上より,ハロペリドールが原因と思われる悪性症候群にDICを併発したものと考え,ヘパリン,アンチトロンビンIII製剤を投与した。速やかな凝血学的改善と悪性症候群の改善を認めた。経過中の血中組織因子濃度とTNF-α値は持続的に上昇していた。ほかのサイトカイン(IL-1β, IL-2, IL-6)値は上昇を認めなかった。悪性症候群の急性腎不全,横紋筋融解では持続する外因系凝固の活性化とTNF-α値の上昇が認められた。これらがDICの発症,病態に関与していることが示唆された。
  • 高谷 典秀, 宮腰 重三郎, 久保 かなえ, 武藤 良知, 遠藤 雄三
    1998 年 39 巻 5 号 p. 379-385
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は62歳女性。1988年2月よりIgA-λ型単クローン性γ-グロブリン血症として経過観察中,1991年3月IgAの増加,骨髄形質細胞8.8%等より多発性骨髄腫と診断。メルファラン,プレドニゾロン併用療法等にて治療中の1996年3月,皮下・リンパ節・胸壁などに髄外腫瘤形成,高カルシウム血症,腎不全を来し入院。化学療法施行中にイレウスを起こし緊急手術を施行,組織学的検索にて異型性の強い骨髄腫細胞の小腸浸潤によるイレウスと判明。その後病勢の進行に伴い血中M蛋白は著減,尿中BJPは増加し,治療抵抗性となり1996年8月に死亡。剖検では多臓器に髄外病変(未分化な形態を持つ骨髄腫細胞の浸潤)を認め,免疫組織学的検索ではα鎖陽性細胞に対する,λ鎖陽性細胞の増加を認めた。本例の末期の臨床像は劇症型多発性骨髄腫aggressive phase multiple myelomaの病態に相当する。また,これまでに報告のない消化管壁への骨髄腫細胞の浸潤でイレウスを起こした稀な症例である。
  • 佐原 直日, 玉嶋 貞宏, 井原 道生
    1998 年 39 巻 5 号 p. 386-391
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    Aplastic crisisからの回復期に著明な低リン血症をきたした遺伝性球状赤血球症2例を報告する。症例1: 31歳の男性。15歳の頃より黄疸,脾腫を指摘され長男も溶血性貧血である。発熱,リンパ節腫大,黄疸を主訴に入院し,末梢血液像より遺伝性球状赤血球症と診断した。入院後一過性の貧血の増悪を認め臨床経過よりAplastic crisisと診断した。また第2病日の血清リンが0.5 mg/dlと低下したが網状赤血球回復に伴い正常化した。症例2: 29歳の男性:幼少時より一過性の黄疸,脾腫を指摘されていた。症例1と同様に発熱,黄疸,貧血を認めヒトパルボウイルスB19DNA, IgG抗体,IgM抗体が陽性であった。第8病日血清リン1.2 mg/dlと低下したが症例1と同様の経過をたどった。これらの現象は赤芽球過形成の際に血清リンが細胞内に移行したために起こったと考えられた。
  • 八嶋 亜紀子, 成ケ澤 靖, 石田 陽治, 内山 聡之, 小宅 達郎, 榎本 さなえ, 金子 潤子, 小野 葉子, 菅原 健, 沼岡 英晴, ...
    1998 年 39 巻 5 号 p. 392-397
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    再生不良性貧血の経過中に,全身性粟粒結核起因性と考えられる血球貪食症候群を発症した1女性例を経験した。入院時の諸検査で結核症の診断を確定しうる所見が得られず,単純ヘルペスウイルスI型に対する血清IgM抗体価の上昇を認めたため,ウイルス関連性血球貪食症候群と考えメチルプレドニゾロンパルス療法を行なったが,消化管出血を契機に多臓器不全のため患者は死亡した。剖検の結果,全身に播種した結核症の存在が明らかとなった。免疫機能低下状態にある患者の血球貪食症候群に遭遇した場合には,基礎疾患として結核症の存在も念頭に置く必要がある。
短報
  • 久村 岳央, 山根 孝久, 太田 健介, 中尾 隆文, 日野 雅之, 巽 典之
    1998 年 39 巻 5 号 p. 398-401
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    A 27-year-old male with acute myelogenous leukemia received an allogeneic bone marrow transplantation (allo-BMT). Pneumocystis carinii pneumonia developed on day 65 after the allo-BMT. The patient was intravenously treated with pentamidine. This resulted in a prompt improvement of his dyspnea and fever, but hyperkalemia occured during the pentamidine therapy. Treatment with pentamidine was stopped and emergent treatment was started. Neverthless, the serum potassium level rose to 7.7 mEq/L. Urgent dialysis was performed and the serum potasium level fell to 5.0 mEq/L after treatment. Careful monitoring of the serum potasium level is recommended during intravenous therapy with pentamidine.
  • —第2報1994年調査より—
    神谷 忠, 長尾 大, 吉岡 章
    1998 年 39 巻 5 号 p. 402-404
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    In this report, we discuss the findings of a 1994 retrospective study concerning the rate of inhibitor formation in Japanese hemophiliacs. The study was the second of its kind, following on the first in 1991 (Kamiya et al. 1995 Int. J. Hematology1). The records of 77 medical institutions were examind. Inhibitors were found in 6.50% (140 of 2154) of the patients with hemophilia A (HA), and 5.21% (22 of 422) of those with hemophilia B (HB). The median age for antibody formation was 10.7 years in patients with HA, and 4.5 years in those with HB. The median period (exposure period) from initial plasma factor concentrates exposure to inhibitor formation was 46 days and 20 days, respectively, in the HA and HB patients. Among the HA inhibitor patients, those with a large deletion or a nonsense mutation were aged 17.4 years or less (0.58, 1.7, 3.5, 5.5, 7.0 and 17.4), whereas those with intron 22 inversion were aged 55.7 years or less (1.3, 1.3, 1.8, 33.0, 36.1, 37.7, 43.9, 47.9 and 55.7).
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