高分子論文集
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36 巻, 5 号
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  • 堀内 裕治
    1979 年 36 巻 5 号 p. 287-292
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ギ酸, 酢酸, プロピオン酸などで部分的にエステル化されたポリビニルアルコール (PVA) の水溶液をポリメタクリル酸 (PMAA) で電位差滴定した. 液のpHはPMAAのモル分率 (対数) によって幾つかの直線 (あるいは極めて緩やかな曲線) の連続として表され, 折点はそれぞれ両成分ないしは錯合体の特性的な性質に対応している. 定溶質濃度混合物のpH曲線から, PVA上のエステル基が分子全体としてはPVAの塩基性を増大させてPMAAとの相互作用を大きくするが, 一方では構造的な相補性をそこなわせて酸の解離を促がすことが分かった. しかし実験した範囲内では両者は等モルの錯合体を形成するといえる. 電導度の測定結果もこれを支持する. 両成分混合系の相対粘度バターンも両成分高分子の凝集状態を示す尺度となるであろう.
  • 鎌谷 博善, 小長谷 重次
    1979 年 36 巻 5 号 p. 293-298
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ビス (2-ヒドロキシエチル) =テレフタラートの重縮合触媒 (Zn (II), Co (II), Mn (II)) の活性に与えるリン化合物の影響について検討した. 重縮合触媒にリン酸を添加していくと, その添加量に比例して重縮合速度は遅くなる、触媒と等モル量, もしくはそれ以上のリン酸の添加で重縮合反応はほぼ停止する. リン酸のOH基をフェニル基で置換していくと, OH基の減少とともに触媒活性への影響は少なくなり, トリフェニルホスフィンオキシドでは触媒をほとんど失活させない. 触媒を失活させる順序を次に示す. (HO) 3PO>C6H5 (HO) 2PO> (C6H5) 2 (HO) PO> (C6H5) 3PO. 次に, リン酸エステルを用いた場合にも重縮合反応は阻害されるが, その効果はアルコール成分に依存し, 次の順に阻害効果が小さくなる. (HO) 3PO> (CH3O) PO> (C2H5O) 3PO> (n-C4H9O) 3PO. この場合, リン酸エステルから導かれたリン酸基が触媒活性を阻害していることを明らかにした.
  • 渡会 脩, 梅原 明
    1979 年 36 巻 5 号 p. 299-303
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    Fischerのインドール合成法によって合成した. 1,3,3-トリメチル-2-メチレンインドリン (Fischer's Base; FB (I)) の重合に関する研究を行った. ラジカル重合開始剤に, アゾビスイソブチロニトリルを用いたFB (I) の単独重合は進まなかったが, アクリル酸エチルや, アクリロニトリルをコモノマーとした場合は, 交互性共重合体が得られた. FB (I) と共重合体のスペクトルの比較から, FB (I) のエキソメチレン基が重合にあずかることが分かった. 共重合の結果から, Qおよびe値を算出したところ, 各々1.92, -1.40と求まる. e値が負であることから, プロトン酸やルイス酸を用いて. カチオン重合を試みたが, FB (I) の塩基性のため, 四級塩を形成して, 重合は起こらなかった. 更に5位に種々の置換基を有するFB誘導体の共重合についても検討した.
  • 井上 和夫, 星野 貞夫
    1979 年 36 巻 5 号 p. 305-310
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    1,3-シクロヘキサンビスメチルアミン (1,3-CBMA) とアジピン酸 (6) との重縮合によって得られるポリアミド1,3-CBMA-6において, 1,3-CBMAのシス/トランス異性体が構造と物性に及ぼす影響について調べた. 1,3-CBMA-6塩のシス/トランス混合物より, 再結晶法によって各異性体を分離し, それらを重合して各異性体のみから成るポリマーを得た. DSCおよびX線回折測定から, シス異性体97.4%のポリマーは高結晶性であり, 253℃に融点を示すが, トランス93.3%のポリマーは非晶性であることが分かった. しかし, ガラス転移温度はあまり異ならず, 前者が97℃で後者が84℃であった. これらの結果から, 結晶性や融点に関係する分子鎖のコンフォメーションは異性体によって著しく影響されるが, ガラス転移温度を左右する分子鎖の易動度はあまり影響されないことが推察された.
  • 鎌谷 博善
    1979 年 36 巻 5 号 p. 311-315
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ (エチレンテレフタラート) の重要な原料であるビス (2-ヒドロキシエチル) =テレフタラート (HOC2H4O2C-C6H4-CO2C2H4OH) を二三の有機溶媒中でテレフタル酸とエチレンオキシドから合成する反応をアルキルもしくはフェニルボスフィン, アルシン, スチビン (R3X, X=P, As, Sb) の存在下に行い, これらの化合物の触媒作用について検討した. 反応中間体の単離および速度論的検討からボスフィン, アルシンではテレフタル酸, エチレンオキシドおよびR3Xから成る三元錯体形成を経て生成するカルボン酸第四級塩 (R′COO (-) X⊕ (R3) C2H4OH) が触媒となり, テレフタル酸のエステル化が起こっている. 一方, トリフェニルスチビンではカルボン酸第四級塩の生成は起こらず, エステル化反応も観測されなかった. テレフタル酸のエステル化速度は次の順に低下することを明らかにした. (n-C4H9) 3P> (C6H5) 3P>> (C6H5) 3As>> (n-C4H9) 3Sb, (C6H5) 3Sb.
  • 結城 康夫, 小坂 寧, 山根 章宏
    1979 年 36 巻 5 号 p. 317-320
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    p-およびm-ニトロフェニルジシアンジアミドを水中で亜鉛末, 塩化ナトリウムを用いて還元し, 対応するアミノフェニルジシァンジアミドを得た. アミノフェニルジシアンジアミドを塩酸塩とし, そのDSCを測定した結果, p-置換体は190~220℃で, m-置換体は150~180℃で重付加し, ポリフェニレンビグァニド塩酸塩を与えることが分かった. またアミノフェニルジシアンジァミド塩酸塩を160~200℃で等温塊状重付加反応して, 還元粘度0.15~0.16 (DMSO中) のポリマーを得た.
  • 田中 勝敏, 小川 弘正, 田中 裕子
    1979 年 36 巻 5 号 p. 321-327
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニルに熱硬化性のエトキシメチル化メラミン樹脂を0~60部, 熱ロールで混合したフィルムを加熱処理し, メラミン樹脂の硬化反応を段階的にすすめた試料の動的粘弾性を調べた. メラミン樹脂はポリ塩化ビニル中に微細な粒子として存在し, 加熱処理をしても分布状態の変化はみられない. メラミン樹脂の硬化反応をすすめていくと, 充てん材を増していくように弾性率は増加し, 又, 温度-tanδ曲線に現れるポリ塩化ビニルに固有のαおよびβピークは減少する. しかし, 硬化反応による脱離分子のホルムアルデヒドおよびエタノールによって, ポリ塩化ビニルは可塑化され, ガラス転移温度は低下する. これらの現象はメラミン樹脂の添加量が多くなるほど顕著になるが, この混合系はポリ塩化ビニルに充てん材と可塑剤とを添加したものとして, その粘弾性挙動をモデルを用いて説明した.
  • 岡谷 卓司, 今井 清和
    1979 年 36 巻 5 号 p. 329-335
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    一級アルコール中で酢酸ビニルの重合を行い, けん化して得られたポリビニルアルコール (PVA) の希薄水溶液の粘度挙動を調べた. まず通常のPVAのHuggins定数をSchulz-Blaschke式により求めるとその値, kS′は0.4~0.5であった. ミリスチルアルコール以下の低級アルコール中で得られたPVAのkS′は通常の値であったが, セチルアルコールおよびステアリルアルコール中で得ちれたPVAではkS′>0.5であり, 低重合度ほど増大した. この変性PVAのジメチルスルポキシド (DMSO) 中および再アセチル化物のアセトン中のkS′は通常のものと同じであった. この変性PVAの水溶液中の極限粘度から計算された重合度は, DMSO中およびアセトン中のそれらから計算された重合度よりかなり大きい. 水溶液中のこれらの異常は連鎖移動の結果, 片末端に導入されたアルキル基間の分子間相互作用, いわゆる疎水結合が原因であると推定された.
  • かせ村 知之, 宇治 文雄, 近土 隆, 畑 敏雄
    1979 年 36 巻 5 号 p. 337-342
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    炭素数が2から16までの側鎖を有するポリビニルアルキレートの表面張力 (γ) を種々の温度において静泡法を用いて測定した. 表面張力, 表面エネルギーおよび表面エントロピーは側鎖長の増加に伴い減少し, C3で極小となった後, 再び増加した. 界面張力のデータからFowkesの式を用いて表面張力の分散力成分 (γd) と極性成分 (γp) を計算した. γdとγpはともに側鎖長とともに急激に減少し, PV-C6でそれぞれγと0に近づいた. MacLeod指数 (β) は側鎖長とともに減少し, dlnγ/dT=-αβ (αは熱膨張率) の関係は実験的に証明された.
  • 増田 精造, 太田 忠甫
    1979 年 36 巻 5 号 p. 343-346
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    α-シアノビニルアセテート (α-CN・VAc) はブチルリチウムのような強い塩基性触媒を用いると分解を起こし, ポリマーは得られない. しかし, 弱い塩基性触媒であるピリジンの存在下では比較的高温においてアニオン重合が可能である. 重合温度が高いために熱重合が同時に進行する. 0.12mol/l以下の濃度では, ピリジンは熱重合の禁止剤として作用し, ベンゾキノンを添加することによって初めて有効なアニオン開始剤となる. ベンゾキノンを添加した系における重合速度はピリジン濃度の1次に比例する. α-CN・VAc (M1) とスチレン (M2) とのピリジンーベンゾキノン系触媒による塊状アニオン共重合では, モノマー反応性比としてr1=10.0, r2=0.01が得られる.
  • 亀田 徳幸, 石井 恵美子
    1979 年 36 巻 5 号 p. 347-349
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ヒドリドカルボニルトリス (トリフェニルボスフィン) ロジウム (I) -四塩化炭素系によるメタクリル酸メチル (MMA) の重合に対する溶媒効果について検討した. 幾っかの溶媒を用いて重合を行った結果, 重合促進効果は, 次の順に減少していくことが分かった.
    DMSO>DMF>THF>ベンゼン
    DMSOを溶媒とした場合, DMSOの濃度が重合収率に大きな影響を及ぼすこと, スチレンとMMAとの共重合による組成曲線は, 通常のラジカル重合に一致することが分かった.
  • 三山 創, 春宮 紀穂
    1979 年 36 巻 5 号 p. 351-353
    発行日: 1979/05/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    ブロモホルムを開始剤としてジメチルスルホキシド中でアクリロニトリルの光重合を行い, ジラトメーター法で重合速度を測定した. その結果重合速度 (mol・l-1・s-1) はRp=6.26exp {(-2.6kcal/RT)} √Iab [M] で与えられることが分かった. ここでIab, [M] はそれぞれ吸光量 (El-1・s-1), モノマー濃度 (mol・l-1) を示す.
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