高分子論文集
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49 巻, 2 号
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  • 飯阪 捷義
    1992 年 49 巻 2 号 p. 79-86
    発行日: 1992/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    異なる反応機構で高分子網目を形成するエポキシ樹脂とビスマレイミド樹脂 (BMI) とから作成したブレンド試料について, 組成が, 動的粘弾性, 引張り特性, 及び熱分解特性に及ぼす影響を調べた. ゴム弾性率及び主分散温度は, BMI成分の増加とともに著しく増加した. ゴム弾性率のBMI組成依存性は, Budiansky式に従い, 系内で相互貫通高分子網目 (IPN) の形成が示唆された. 主分散温度は, 共重合体のTg予測式に従い, 両成分間で十分な分子混合の起こっていることがわかった. また, 換算係数の温度依存性から決定された活性化エネルギーは, BMI成分の増加とともに大きくなり, セグメント運動の束縛されていくことが確認された. IPN形成効果は, 高温の引張り強度において, 特に, 顕著に現れ, 25~50 wt%のBMI組成で成分単体の場合より大きくなる相乗作用が観察された. また, 熱分解特性においても改善効果が認められた.
  • 藤山 光美, 脇野 哲夫, 和知 洋, 谷 和雄
    1992 年 49 巻 2 号 p. 87-95
    発行日: 1992/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン (PP), 無水マレイン (MAH), 及びパーオキサイドからなる混合物をスクリュー押出機により溶融混練し, 反応性及び得られた変性PPとエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物 (EVOH) との接着性について調べた. ホモ及びランダムPPを用いた変性PPはEVOHと全く接着しないが, ブロックPPを用いた変性PPは良好な接着性を示す. しかし, ブロックPPを用いた場合でも再現性が悪く, また長時間空気中に放置しておくと接着性が低下する. 変性PPを100℃以上の温度で加熱処理することにより, 未反応MAHは簡単に除去減少することができ, ホモ及びランダムPPを用いた場合でもEVOHと良好な接着性を示すようになる。
  • 藤山 光美, 脇野 哲夫, 和知 洋, 谷 和雄
    1992 年 49 巻 2 号 p. 97-104
    発行日: 1992/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン (PP), 無水マレイン酸 (MAH), 及びパーオキサイドからなる混合物をスクリュー押出機により溶融混練して得られた変性PPには未反応MAHが多量に存在し, 極性材料との接着性を阻害する. 加熱処理により未反応MAHを除去する方法において, エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物 (EVOH) との接着性に及ぼすベースPPの種類, エチレン-ブテン-1ランダム共重合体 (EBR) 混合量, MAH添加量, 及びパーオキサイド添加量の影響について検討した. (1) EBR混合量を増加するとMAHのグラフト率が増加し, EVOHとの接着性が向上する. (2) MAH添加量に対するパーオキサイド添加量が少な過ぎても多過ぎても接着強度が低く, 最適な添加量比が存在する. (3) 加熱処理により未反応MAHを除去減少すると接着性が向上する. 加熱処理は未反応MAHを除去する以外に, 接着性に好影響を与えるその他の効果を有する.
  • 木本 正樹, 平口 務
    1992 年 49 巻 2 号 p. 105-111
    発行日: 1992/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    サーモトロピック液晶コポリエステル (LCP) とポリカーボネート (PC) とのブレンド物の射出成形品について, 高次構造, 熱的, 力学的特性などを測定した. 射出成形品中では両成分ポリマーは相分離していた. ブレンド物中のLCP成分の相対的な結晶化度は, 単体に比べて低かった. またコア層に比べてスキン層の方が相対結晶化度は高く, LCPの分子配向はスキン層だけに生じていることがわかった. LCP成分の増加とともに曲げ弾性率は増加するが, ポリマーブレンドのマトリックス相がLCPであるかPCであるかによって, 弾性率の組成依存性が異なった. 力学異方性は, 主としてスキン層におけるLCPの結晶配向によって現れることがわかった.
  • 芳賀 裕, 四十宮 龍徳
    1992 年 49 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 1992/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    カプセル化ポリマーと無機粉体との界面の相互作用を明らかにするために, 酸化チタン (TiO2) にポリメタクリル酸メチル (PMMA) 及びポリスチレン (PSt) をカプセル化した試料とTiO2にPMMA及びPStを分散した試料を作製し, これらの熱的挙動, 密度, 赤外スペクトル, 及び分子量分布を測定して比較検討した. カプセル化ポリマーは二つの熱緩和域をもっていた. さらに, GPC, 密度, 及び赤外スペクトル測定の測定結果は, カプセル化ポリマーが高密度・高分子量, かつタクティシティの大きい分子構造を有するポリマーであることを示していた.
  • 山本 隆司, 賀嶋 淳子, 栗田 公夫, 石原 一彦, 中林 宣男
    1992 年 49 巻 2 号 p. 119-123
    発行日: 1992/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    歯質と歯科用レジンを接着させる新しい高分子材料として, 枝高分子がポリメタクリル酸メチル (PMMA), 幹高分子がポリ (p-スチレンスルホン酸) である水溶性のグラフトコポリマー (gMS) を合成し, このポリマー水溶液の性質及び歯質表面への反応性を評価した. gMS水溶液の表面張力は濃度増加に対して不連続に変化した. グラフトコポリマーにおける疎水性蛍光プローブの吸収波長は, ランダムコポリマーにおける吸収よりも低波長側にあり, 濃度を増加させても変化しなかった. この結果は, gMSが水中でミセルを形成し, そのミセルの疎水構造は安定であることを示している. gMS水溶液で処理した牛歯エナメル質について, X線光電子分光計により元素分析したところ, エナメル質上にポリマーが存在すること, さらにその表面は, PMMAの性質に類似することが付着張力の測定により明らかになった. この表面に対する歯科用レジンの接着強さは対応するランダムコポリマーより高かった. これは, gMSで処理したエナメル質表面が歯科用レジンに対し, 親和性を有することから解釈できる.
  • 成形条件と高次構造について
    水野 渡, 細野 恭孝, 前川 善一郎, 濱田 泰以, 横山 敦士, 泊 清隆
    1992 年 49 巻 2 号 p. 125-132
    発行日: 1992/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリアセタール樹脂の射出成形において, 成形条件と成形品の高次構造の関係を明らかにすることを本報の目的とした. 充填, 保圧過程を経るクローズドタイプと, 充填, 自然流動停止をするオープンタイプのスパイラルフローを用いて成形を行い, 両者の高次構造と成形時の金型内圧力変化の結果を比較することにより高次構造の生成機構について検討した. また, 成形品の流動位置による高次構造分布と成形条件の関係について検討した. 高次構造はスキン層と樹脂充填時に発達する微細な結晶層及び保圧, 冷却過程で発達する球晶層からなっていることが確認された. また, 成形品の先端部や成形時の樹脂の流動の小さい場合には, トランスクリスタルが成長しているのが観察された. 実験ではスキン層の厚さは成形温度の影響を受け, 微細な結晶層の厚さは樹脂の流動時間により変化した. また, 球晶の大きさは成形温度, 圧力の影響をほとんど受けなかった.
  • 辰巳 正和, 江川 洋介, 中西 一雄, 山本 清香
    1992 年 49 巻 2 号 p. 133-140
    発行日: 1992/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    アクリル酸カリウムやアクリルアミド (AAm) などの固体モノマーをグロー放電プラズマにさらすと, 重合反応が固相で起こってポリマーが生成した. ここではこの重合をプラズマ固相重合と呼ぶ. このような重合は鎖状のポリアクリル酸カリウム及びゲル状のポリAAmを生成した. AAmとメタクリルアミドあるいはマレイミドとの二成分固体の共重合を検討した結果, これらの系が混合物を形成する場合はゲル状ポリマーを生成するが, 固溶体あるいは化合物を形成する場合は鎖状ポリマーを生成することがわかった. これらの結果から, プラズマはモノマーの固体表面を攻撃して重合を開始すると推定され, また, AAmの場合は, プラズマ電極に供給した電力によって絶縁破壊が起こり, モノマー結晶が局部的に溶融するため, 固相重合の成長反応が進むと考えられる.
  • 沢田 英夫, 三谷 元宏, 松本 竹男, 中山 雅陽
    1992 年 49 巻 2 号 p. 141-145
    発行日: 1992/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    過酸化フルオロアルカノイル [ (RFCO2) 2, RF=C3F7, C6F13, C7F15, (CF2) 6H] をポリイミド樹脂: 6FDA-BAPF [〓], と反応させることにより6FDA-BAPF中の芳香環にフルオロアルキル基を温和な反応条件下にて導入できることが明らかとなった. 本反応においては, 反応副生成物として得られるフルオロアルカン酸によりイミド結合の開裂が起こり, 6FDA-BAPFの分子量の低下が起きることがわかった. 過酸化フルオロアルカノイルによりフルオロアルキル化された6FDA-BAPF [6FDA-BAPF-RF] のTgは6FDA-BAPFに比べ低下する傾向にあり, 誘電率は逆に高くなる傾向にあることがわかった.
  • 後藤 和生, 野口 徹, 山口 良雄, 出来 成人
    1992 年 49 巻 2 号 p. 147-153
    発行日: 1992/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリエーテルポリウレタンハイドロゲルの電気伝導度 (σ), 及び損失弾性率 (E'') の温度依存性を調べた. σのアレニウスプロットにみられる屈曲点と, E''の温度分散曲線のピークはほぼ同じ温度に観察され, これはゲルの相転移温度 (Tp) を示すものと思われる. σは, Tp以上の温度では, ゲル中に含まれる自由水に支配され, Tp以下では低温において凍結されない不凍水に強く影響を受けた. 自由水を除いた乾燥ゲルでは, ゲル分子が互いに不凍水を会して拘束し合い, Tpは高温に移動した. 以上より, ゲルの電気伝導性はゲルの分子運動と対応することがわかった. 一方, 電解質水溶液中の水, あるいは電解質イオンのゲル中への移行は, 溶液中に存在する陽イオン種の影響を強く受け, ゲル, 水, 溶存イオンの3者間の相互作用の差異が物質の移行を支配していると思われる. また, 塩化カルシウムを含有した乾燥ゲルのσのアレニウスプロットにおける屈曲点は約110℃に, E''の温度分散はブロードなピークが150℃付近と比較的高温側に各々観察されたことから, ゲル分子と吸収された電解質イオンが強く結合することによって極あて剛直な高次構造を形成したものと考えられる.
  • 松原 凱男, 上澤 俊治, 森澤 誠, 吉原 正邦, 前嶋 俊壽
    1992 年 49 巻 2 号 p. 155-160
    発行日: 1992/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリメチルメタクリレート (PMMA) を担体として, 一価銅イオンを担持させ, このものとアスコルビン酸混合系を不均一系触媒として, pH 4.0硫酸水溶液とアセトンの混合溶液中, アルゴン雰囲気下, 1-クロロ-2-プロペン, 1-クロロ-2-ブテン, シンナミルクロリドなどの塩化アリル類の水酸化反応を検討した結果, 一価銅とアスコルビン酸の存在で活性を示し, 特に高分子担体を用いた方が用いないブランク系よりもターンオーバーで最大約50倍の高い活性を示した. 一方, 反応溶媒に酢酸緩衝液を用いるとアセトキシル化が水酸化と同様な活性で進行した. そこで, この高分子担持体を用いる反応系の様式解明と応用を目的として, 水酸化反応に及ぼす, 基質, 溶媒, 及び配位子の変化の効果, 及び塩化ナトリウムの添加効果について検討を行った. その結果, 一価銅担持PMMAとアスコルビン酸を触媒とするアリルクロリドの水酸化反応は, 恐らく, PMMA担体表面の疎水的なミクロ環境による反応基質の濃度増大効果と推測されるとともに, 反応中間にπ-アリル銅クロリド錯体を経由する触媒活性を示し, 高分子担体の存在しない系に比べて極めて高い活性を示した. また, 配位子の違いにより, 高分子の配位の特異性と活性点における立体因子による位置特異性効果を示した.
  • 功刀 利夫, 鈴木 章泰, 久保田 詠美
    1992 年 49 巻 2 号 p. 161-167
    発行日: 1992/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ゾーン延伸を融点付近で行う高温ゾーン延伸法で得られたナイロン6繊維の高次構造及び力学的性質を延伸温度との関係で検討し, さらに繊維の高強度・高弾性率化を試みた. 190℃から210℃までの温度域では延伸温度の上昇につれ延伸倍率, 複屈折, 結晶化度, 非晶配向係数, 及びヤング率はしだいに増加し, 210℃で延伸した繊維の延伸倍率は5.3倍, 複屈折は56.3×10-3, 結晶化度は51%, 非晶配向係数は0.57及びヤング率は5.9GPaである. 一方, 210℃以上の延伸では延伸倍率は急増するが, 複屈折, 非晶配向係数, 及びヤング率は著しく低下する. 215℃で延伸した繊維では延伸倍率は7.8倍, 結晶配向係数は0.860と高いが, 複屈折は7×10-3, 結晶化度は38%, 非晶配向係数は0, ヤング率は0.9GPaまで減少し, これらの値は原繊維とほとんど同じ値である. また, 80℃及び215℃で延伸した繊維のDSC曲線は単一ピークでそのピーク温度はいずれも220℃で, これら繊維の融解挙動は原繊維と類似している. 一方, 190℃から210℃までの温度域で延伸した繊維では二重ピークが観察され, 形態の異なる二種類の結晶が混在していることを示す. また. 延伸張力を増大させながら210℃で高温ゾーン延伸を3回繰り返すと, 複屈折, 結晶化度, ヤング率, 及び動的弾性率は漸増し, 最終的に得られた繊維の複屈折は58.3×10-3, 結晶化度は53.6%, ヤング率は7.4GPa, 及び動的弾性率は12GPaであった. 以上の結果から, 210℃での高温ゾーン延伸が結晶性, 配向性, 及び力学的性質を向上させるのに効果的であることが分かった.
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