高分子論文集
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56 巻, 3 号
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  • 直接観察からのアプローチ
    上田 正則, 小穴 英廣
    1999 年 56 巻 3 号 p. 113-124
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    蛍光顕微鏡を用いた長鎖DNAの直接観察法を用いて, 非架橋中性高分子 (ポリアクリルアミド) 溶液中の電気泳動におけるDNAの泳動形態について研究した. 本研究において, DNA分子が溶媒中の高分子濃度に応じてU字運動と直線運動を行うことを発見した. U字運動の形成されるメカニズムについて考察し, U字運動から直線運動への転移が高分子の濃度変化によってひき起こされることについて議論した. DNAが直線運動を行う高分子濃度において, 二次元交差電場 (パルスフィールド) 法におけるDNAの再配向過程を調べた. これにより非架橋中性高分子溶液中でのDNAの再配向過程は, ゲル中の交差電場による電気泳動に比べて非常に単純になり, はっきりとした分子量依存性があることが発見された. これらの知見をもとにして, 非架橋中性高分子溶液中での二次元交差電場法による電気泳動が, ゲル中での二次元交差電場による電気泳動の問題点を克服できる可能性について議論した.
  • 根本 哲也, 左右田 智宏, 武田 邦彦
    1999 年 56 巻 3 号 p. 125-132
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリフェニレンエーテル (PPE), ポリカーボネート (PC) の重ね合せ薄膜を試料に用い, 岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所大型スペクトログラフ (OLS) の単色光照射および白色光照射により光劣化挙動を調べた. 重ね合せ薄膜の光劣化深さ測定に対する適用性を確認した. PPE, PCの光劣化深さ測定によって, 断層的に進行することがわかった. この劣化挙動に起因しているキノメチド構造の生成が, あたかも自ら光劣化を防御するという, 自己防御反応を発現させたと思われる. 光照射試料を溶解すると, キノメチド生成物は溶液中および不溶化物双方に溶解して存在している可能性が考えられる. 光安定化剤を添加したPPE, PCの白色光照射の結果, 照射側最表層における着色の上限が添加剤を含有してもほとんど低下しなかった. 深層での劣化では, 未添加の方がより劣化を抑えることができた. 光劣化生成物の抑制が, 自己防御反応を抑制することになってしまったのではないかと思われる.
  • 宮地 智章, 川越 誠, 邱 建輝, 森田 幹郎, 水野 渡
    1999 年 56 巻 3 号 p. 133-140
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン射出成形試料を用いて種々の条件で疲労試験を行い, その疲労破壊機構を考察した. 低応力振幅の場合, 疲労過程中の貯蔵弾性率E' および損失正接tanδはほぼ一定値を示した後急降下, 急上昇して破断に至った. このとき試料中に多数のクレイズが見られた. クレイズの発生により疲労寿命は増大するが, 脆性破壊の原因になると考えられる. 一方, 低応力振幅下であってもより高環境温度 (50, 60℃) の場合, 疲労過程中のE' は単調に減少し, tanδは単調に増加して破断に至った. 環境温度により試料は熱破損が促進され, 結果的に疲労寿命は短くなる. この試料では中間層およびそれに近いコア層で結晶化度が若干ではあるが高くなった. また, 室温で高応力振幅の場合, クレイズの発生が抑制され, 優先的にせん断流動を示し延性的な破断をもたらすため寿命は短くなった. この試料のコア層において配向結晶化が起こっていると考えられた.
  • 大生 和博, 飯嶋 秀樹, 今田 清久
    1999 年 56 巻 3 号 p. 141-150
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    結晶セルロース (MCC) を圧縮成形した錠剤の錠剤強度Tは粒子形態すなわちL/D (L, 粒子長径; D, 粒子短径) の影響を受ける. 本研究ではL/Dが異なるMCC粒子の錠剤強度Tの差をMCC錠剤の内部構造と関連づけるために錠剤断面の (1) SEM観察による粒子の配列と (2) X線回折による結晶の配向性を調べた. 錠剤断面のX線回折によりセルロース分子鎖の結晶配向度δを求めた結果, δが高いほどTが増加した. MCC粒子表面および錠剤断面のSEM観察よりMCC粒子内におけるセルロース分子鎖の結晶配向度δは間接的に結晶セルロース粒子の配向を示すと推察した. L/Dが大きな棒状粒子からなる錠剤ほどδが高く, 圧縮の過程において, L/Dが大きいMCC粒子ほど錠剤内部で圧縮面に平行に配向する傾向があった. 粒子がそのように配向するほど粒子間接触面積が大きくなり, 大きなTが発現すると考えられた.
  • 邱 建輝, 川越 誠, 水野 渡, 森田 幹郎
    1999 年 56 巻 3 号 p. 151-158
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本研究ではリサイクル容易な汎用結晶性高分子ポリプロピレン (PP) /高強度液晶ポリエステル (LCP) ブレンドに注目し, ブレンドと圧延加工の複合効果について試料内部の微細構造と疲労特性の観点から検討した. PP/LCPブレンドは非相溶系で, LCP相が射出成形方向に沿ってPPマトリックス中に棒状の形で分散している. 圧延加工を行うと, tanδの増加とE' の低下を示し, 延性的な特性が改善された. 繰返し負荷を印加させると, 低圧延率の試料は発熱しやすく, 寿命が短いが, 高圧延率 (40%以上) の試料は繰返し負荷により分子配向するために, tanδの低下とE' の増加が生じ, 耐疲労性が向上した. 特に, 低温で疲労負荷を印加させた場合に, 高圧延率のブレンド試料は補強材 (LCP) 単体よりもはるかに長い疲労寿命を示した.
  • 金 載宗, 大石 好行, 平原 英俊, 森 邦夫
    1999 年 56 巻 3 号 p. 159-165
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    6-置換-1, 3, 5-トリアジン-2, 4-ジチオールとジブロモキシレンの界面重縮合をセチルトリメチル第四級アンモニウムプロミド10~50mol%, 50~90℃, 24時間の反応条件で合成した結果, 高収率で高分子量のポリ (6-置換-1, 3, 5-トリアジン-2, 4-ジチオキシリレン) が得られた. このポリマーは高い透明性と300~800nmの波長範囲で不活性であった. ポリマーのガラス転移温度と溶融温度の検討から, 構造の選択により複屈折のない光学材料となることがわかった. また, ポリマーの屈折率を溶液法, フィルム法, および計算により求めて比較したところ, 電子密度や集合体密度の影響を強く受けることが確認された. ポリ (6-置換-1, 3, 5-トリアジン-2, 4-ジチオキシリレン) は溶融温度と分解温度がかなり離れており, エーテル系溶剤に溶解しやすいことから加工性に優れた光学材料であることがわかった.
  • 遠藤 貴士, 北川 良一, 広津 孝弘, 細川 純
    1999 年 56 巻 3 号 p. 166-173
    発行日: 1999/03/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    セルロース繊維を乾式で機械的粉砕し, 時間, 温度, 水分, および有機溶媒が生成粒子の物性に与える影響について調べた. セルロース分子 (ミクロフィブリル) の非晶領域における水および有機溶媒の吸着は粒子生成機構に重要であった. 水分量0.1wt%以下の絶乾状態では, セルロースの非晶領域での水素結合形成により分子内ひずみが増加し衝撃力に対し弱くなるとともに水分子により誘起される凝集が抑制され, 結晶化度が著しく低下した微粒子が生成した. 水分量約7wt%の風乾状態では, 低温粉砕により絶乾の場合と同程度の微粒子が生成し, 吸着水により非晶領域が脆弱になり優先的に破壊されるため, 絶乾の場合より高結晶性であることがわかった. 少量のアセトンなどの揮発性有機溶媒の添加は水分子を介した凝集を抑制し微粒子の生成を容易にした. これらの結果, セルロースの乾燥および少量のアセトン添加により, 最も効率的に微粒子が得られることがわかった.
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