高分子論文集
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65 巻, 3 号
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総合論文
  • 内藤 昌信, 佐伯 奈保, 大平 昭博, Sun-Young KIM, 川上 雄資, Anubhav SAXENA, Guangqing G ...
    2008 年 65 巻 3 号 p. 199-207
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/25
    ジャーナル フリー
    可溶性有機ポリシラン(PSi)は,Si 主鎖に沿った Siσ-Siσ*遷移に由来する吸収を 250~400 nm の波長領域に示す.この主鎖吸収の最大吸収波長および半値幅は,PSi のらせん構造や剛直性,σ 共役性と強い相関関係があることから,希薄溶液,固体,薄膜,表面など種々の条件下において PSi のコンホメーションや剛直性を UV 測定から簡便に議論することができる.本報では,PSi の UV 吸収-構造相関を,基板上における高分子鎖のコンホメーションを同定するためのプローブとして用いた.PSi の基板上でのトポロジー,コンホメーション,配向挙動を,UV 吸収スペクトル測定,水晶発振子マイクロバランス測定,原子間力顕微鏡観察から検討した.PSi の末端基が Si-H/Si-OR という知見を基にして,シランカップリング反応で,PSi をヒドロキシル基をもつ基板上にエンドグラフトすることに成功した.このとき,持続長よりも十分に短い分画分では,棒状低分子と同様に自己組織化単分子膜(SAM)を形成した.この SAM は,固定化された PSi の表面密度の増加に伴い,水平から垂直方向に主鎖軸配向が協同的に変化した.また,基板上にキャストした半屈曲性 PSi 孤立鎖が,分子長に応じて棒状から環状構造へ転移することを明らかにした.
  • 高田 忠彦, 正路 大輔, 伊藤 幸一
    2008 年 65 巻 3 号 p. 208-217
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/25
    ジャーナル フリー
    表面構造の異なる不活性表面を有する 2 種類のゴム補強用ポリエステル(PET)繊維(R-繊維:通常の物性を有するレギュラーポリエステルおよび HL-繊維:優れた寸法安定性を有するポリエステル)の表面改質を目的に,紫外線および酸素プラズマによる物理処理を検討した.ポリエステル(PET)フィルムを比較に入れ,ぬれ性,表面張力,XPS などの表面解析を行った結果,PET フィルムは物理処理により著しく表面のぬれ性が改良されるのに対して,2 種類の PET 繊維のぬれ性の改質効果は極めて小さいことがわかった.XPS のデータ解析から PET フィルムの場合には,その表面構造の特性から物理処理により容易にヒドロキシル基などの親水性基が導入されるのに対して,PET 繊維は,PET フィルムと異なり,物理処理により解離反応が優先的に起こり,親水性基の導入が起こりにくいためと推定された.分子軌道法から反応機構の考察も試みた.
  • 山下 基, 高橋 卓也
    2008 年 65 巻 3 号 p. 218-227
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/25
    ジャーナル フリー
    アイソタクチック・ポリブテン 1(it-PB1)の正方晶と三方晶について,SAXS および DSC 測定,メルト成長キネティクスのその場観察から,結晶相の側面と分子鎖折りたたみ面の表面自由エネルギー σ と σe を決定した.正方晶の σ の値は Hoffman の表面自由エネルギーのモデルから得られる理論値 σHoff とほぼ一致したが,三方晶の σ は理論値 σHoff の約 7 倍の値であった.it-PB1 分子鎖が三方晶の表面核を形成する際には,従来の Hoffman のモデルで想定されている分子鎖のセグメント化と整列の過程だけでなく,エチル側鎖のコンホメーションが制限を受ける過程を導入すると理論からの乖離を説明することができる.側鎖のコンホメーションが制限されるために,側鎖のコンホメーションのエントロピー損失が表面核形成の自由エネルギー障壁を大きく押し上げ,その結果として理論から導かれる σHoff よりもはるかに大きい σ の値として現れていると考えられる.
  • 高井 まどか, Yan XU, James SIBARANI, 石原 一彦
    2008 年 65 巻 3 号 p. 228-234
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/25
    ジャーナル フリー
    マイクロ流路を用いたバイオ分析デバイスの機能性,たとえば感度,精度,再現性の向上には,生体分子の非特異的吸着を抑制するバイオインターフェイスの構築が欠かせない.本報では,マイクロ流体デバイスに適したリン脂質(MPC)ポリマーの創製と,そのポリマーを用いたバイオインターフェイスの構築についての研究成果をまとめた.
      マイクロチップの基板として,汎用されている SiO2 系,およびポリマー系の基板に適した MPC ポリマーを設計した.石英基板には,シランカップリング基を有した MPC ポリマーが,ポリマー基板においては,疎水基,さらにはイオン性基を有する MPC ポリマーにより安定な界面が形成された.これらの MPC ポリマーは,タンパク質や細胞の吸着を抑制する機能性を示した.また,電荷を有する MPC ポリマーによるバイオインターフェイスは,生体適合性に加えて,ゼータ電位制御による電気浸透流速度の制御を同時に実現させた.
      このように,MPC ポリマーは,基材と分析目的にあわせた分子設計が容易であり,生体物質を扱うさまざまなマイクロ流体デバイスの基盤となるバイオインターフェイスを構築するバイオマテリアルである.
一般論文
  • 邱 建輝, 高畑 宏樹, 黄 玉東, 潘 裕柏
    2008 年 65 巻 3 号 p. 235-241
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/25
    ジャーナル フリー
    本研究は熱板溶着した PP における溶着界面部の微細構造,溶着強度に及ぼす溶着条件の影響について検討し,高い溶着強度が得られる溶着条件を明らかにした.その結果は次の通りである.(1)溶着体の界面構造は高い配向性を有する流動層およびこの流動層の間に挟んでいる溶融樹脂の再結晶層からなっている.(2)基本的に高い加熱温度,溶着圧力および比較的に高い押込み速度は健全な溶着界面が得られやすいので,溶着強度の向上に有利である.(3)高い溶着強度が得られるかどうかは接合する際に両溶融表面の接触による巻き込んでいる気泡などの欠陥を完全に排出することが最も重要である.(4)必要以上に溶融樹脂を排出させると,流動層の配向傾向がかなり強くなるため,配向方向に沿って破壊が生じやすくなる.特に繰返し疲労負荷を受けるとき,き裂がこの結晶配向方向に沿って進展しやすくなり,疲労寿命を低下させるおそれがあると思われる.
  • 川島 由香, 和田 理征, 清水 秀信, 岡部 勝
    2008 年 65 巻 3 号 p. 242-247
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/25
    ジャーナル フリー
    スチレンとトリブチル-4-ビニルベンジルホスホニウムクロライド(VBPC)をソープフリー乳化重合させ,所定時間後に VBPC を後添加する 2 段階重合によりホスホニウム化ポリスチレン粒子を作製し,得られた粒子のコロイド安定性について評価した.後添加する転化率を変えて作製した粒子を透過型電子顕微鏡で観察したところ,転化率が 80%以上のときには,新粒子の生成は認められず,大きさが約 180 nm である真球状の粒子が得られた.また,粒子 1 g に導入されたホスホニウム基の量は,後添加する転化率によらずほぼ一定の値となった.粒子の大きさやホスホニウム基の導入量がほぼ等しいこれらの粒子の臨界凝集濃度(CFC)を求めたところ,後添加する転化率が 80%台の粒子は,90%以上の粒子に比べて,CFC は約 1.5 倍大きかった.これは,後添加する転化率を変えると,構築される表面構造が異なるためと考えられる.
  • 福田 光完, 菊地 洋昭
    2008 年 65 巻 3 号 p. 248-252
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/25
    ジャーナル フリー
    メルト高分子表面におけるガス吸着の熱力学を分子シミュレーションの手法を用いて考察した.重合度 300 のシス-1,4-ポリイソプレン 20 本鎖を用いて 373 K における薄膜構造を分子動力学シミュレーションによって作成した.表面から内部に至る分子鎖間の空隙分率を仮想球分子の挿入によって評価し,粒子挿入法を用いてメタンの過剰化学ポテンシャル(あるいは溶解度)と平均的な溶質-溶媒間の相互作用エネルギー(溶解エンタルピー)を表面からの各層において計算した.密度変化から見積もった表面の厚さは約 1.3 nm であった.過剰化学ポテンシャルは,表面密度が内部密度の半分よりもやや小さい位置で負の最小値を示した.この結果は,表面近傍にはガスが相互作用しやすい場が存在することを示しており,分子シミュレーションによって吸着のメカニズムを定量的に評価することができた.
  • 大山 秀子, 信田 重成
    2008 年 65 巻 3 号 p. 253-262
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/25
    ジャーナル フリー
    ポリ-D,L-乳酸(PDLLA)の機械特性を改善するために,ブレンド化と共重合化の効果を比較検討した.PDLLA を主成分として柔軟な物性を有する ε-カプロラクトン(CL)またはトリメチレンカーボネート(TMC)を含む L-ラクチド共重合体を用いてブレンドを生成し,GPC, 1H NMR, TEM, DSC, DMA と引張試験により検討を行った.その結果,非相溶系ブレンドの PDLLA/LLA-CL と PDLLA/LLA-TMC が得られた.柔軟な成分が均一に系に分散しているラクチド共重合体と,不均一に分散しているブレンドの機械特性を同じ CL または TMC コモノマー濃度で比較すると,前者の共重合体ではほとんど機械特性の向上が見られなかったが,後者のブレンドでは CL または TMC 濃度が系全体の 4 モル%ぐらいの低濃度であっても格段に機械特性(破断伸度,衝撃強さ)が向上し,形状保持性も示すことが明らかになった.
  • 久田 研次, 西田 雄樹, 馬場 俊之, 佐中 大輔, 堀 照夫
    2008 年 65 巻 3 号 p. 263-268
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/25
    ジャーナル フリー
    アクリル酸 2-(パーフルオロオクチルエチル)とアクリル酸オクタデシルの共重合体単分子膜あるいは,ポリ [アクリル酸 2-(パーフルオロオクチルエチル)] とポリアクリル酸オクタデシルの混合単分子膜によって,固体基板の表面を修飾した.外部環境に依存した修飾基板のぬれ特性変化を接触角測定により評価した.乾燥雰囲気での熱処理により,水接触角は増大し,n-アルカンの接触角により求めた臨界表面張力は減少した.熱処理後にこの基板を乾燥雰囲気に静置すると水接触角が低下した.また,保存環境を乾燥雰囲気から飽和水蒸気中に変えると,接触角低下が加速された.修飾基板に加熱と加湿を繰返すと,接触角は可逆的に増減した.原子間力顕微鏡による観察結果とあわせて考察し,この接触角変化をフッ化炭素側鎖の傾き角変化と関係づけた.
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