臨床血液
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36 巻, 8 号
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臨床研究
  • 伊藤 真理, 鶴沢 正仁, 川井 進, 藤本 孟男
    1995 年 36 巻 8 号 p. 713-719
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    Ki-67モノクローナル抗体を用いて,小児急性白血病の76例のgrowth fractionを免疫蛍光法にて検討した。Ki-67陽性率は症例によって幅広い分布を示し(0.0∼49.2%), その平均値はANLLに比べてALLは有意に高値であった(23.6% vs 5.6%, P<0.001)。ALLにおいてKi-67陽性率はS期細胞比率と正の相関関係を示した(r=0.82)。またALLでは予後良好因子であるJ5陽性,初診時白血球数の低値,DNA aneuploidyをもつ症例でKi-67陽性率は比較的高値を示した。これらの結果はKi-67陽性率は小児急性白血病の骨髄細胞における増殖力の相違を示唆し,白血病における治療の選択や予後因子として有用であると考えられた。
  • 藤田 和博, 高橋 直樹, 多田 淳一, 樋口 敬和, 清水 透, 原田 浩史, 森 啓, 新倉 春男, 小峰 光博, 岡田 定, 寺田 秀 ...
    1995 年 36 巻 8 号 p. 720-727
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    1986年から1992年までの7年間に急性非リンパ性白血病と診断された成人55例の染色体,細胞形態と予後に関する検討をおこなった。FAB分類による内訳はM1 11例,M2 14例,M3 14例,M4 7例,M5 3例,M6 5例,M7 1例であった。全体の染色体異常率は65.5% (36/55)で,8;21転座を10例,15;17転座を12例,偽2倍体を5例,高2倍体を3例,低2倍体を2例,そして5または7番の異常を4例に認めた。予後評価が可能な45例の完全寛解率は80%であった。FAB分類別にM2は12例全例が完全寛解に到達し,生存期間中央値はM1に比較して長かった。染色体所見別に8;21転座群は10例全例が完全寛解に到達し,生存期間中央値は15;17転座群に比較して長かった。NN, AN, AA群による分類および60歳未満とそれ以上の群との比較では予後との間に関連性は認められなかった。このようにFAB分類と染色体異常の内容はANLLの予後予測因子として重要であることが確認された。
  • 中世古 知昭, 王 伯銘, 佐藤 宏, 趙 龍桓, 石井 昭広, 池上 智康, 木暮 勝広, 深沢 元晴, 横田 朗, 川野 英一郎, 橋本 ...
    1995 年 36 巻 8 号 p. 728-734
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    1990年7月より1994年3月までに当科にて行った同種骨髄移植は31例であるが,移植後100日以上生存した評価可能症例29例のうち,11例(37.9%)に遅発性出血性膀胱炎を合併した。出血性膀胱炎は11∼205日(中間値57日)に発症した。4例に尿中よりアデノウイルス11型を検出した。11例のうち5例は保存的治療にて軽快したが,6例に尿中凝血塊を認め,うち5例は水腎症を合併した。尿中凝血塊の認められた6例に対し,重症化防止として7日間のprostaglandin E1 (PGE1) 500 μgの膀胱内注入療法を行った。のべ9コースの治療に対し,開始7日後の効果判定では著効3例4コース,有効2例4コースで奏効率(著効+有効)は88.9%であった。副作用として注入時の膀胱刺激症状を全例に認めたが,対症療法にて対処可能であり,全身的副作用は認めなかった。PGE1膀胱内注入療法は同種骨髄移植後の遅発性出血性膀胱炎の重症化防止,血尿管理に有効であり,安全に行える治療法であると思われる。
  • 酒井 リカ, 丸田 壱郎, 田口 淳, 富田 直人, 児玉 文雄, 原田 昌興, 清水 昭男, 中村 圭靖, 飯田 萬一, 亀田 陽一, 本 ...
    1995 年 36 巻 8 号 p. 735-741
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    1985年5月∼1992年3月に施行した骨髄移植後の剖検例12例のホルマリン固定,パラフィン包埋された肺組織を用いて,H.E.染色,免疫染色,polymerase chain reaction (PCR)を行い,サイトメガロウイルス間質性肺炎(CMV-IP)について検討した。8例が臨床上間質性肺炎(IP)を合併し,うち3例は気管支肺胞洗浄液よりCMVが検出され,CMV-IPと診断された。剖検肺組織のH.E.染色では,臨床上のIP症例8例中2例は巨細胞封入体を認め,残る6例は線維化が主体であった。これら6例中4例は免疫染色法,あるいはPCR法にてCMVが証明された。また,臨床上CMV-IPと診断された3例は組織では巨細胞封入体を認めず,免疫染色法あるいはPCR法によりCMVが証明された。骨髄移植後のCMV-IPはH.E.染色のみでは診断困難な症例もあり,免疫染色法やPCR法によるCMVの検出が有用な場合があると考えられた。
症例
  • 秋本 佳久, 石山 泰二郎, 川上 恵一郎, 日野 研一郎, 友安 茂, 鶴岡 延熹, 九島 巳樹, 大田 秀一, 風間 和男
    1995 年 36 巻 8 号 p. 742-748
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    49歳,男性。某医で貧血および高IgG血症を指摘され当科に入院した。入院時,表在リンパ節腫大を認めたが,肝,脾は触知しなかった。WBC 5,300/μl, 白血球像に異常なく,小球性低色素性貧血を認めた。総蛋白11.5 g/dl, IgG 10,100 mg/dl, IgA 295 mg/dl, IgM 160 mg/dl, 免疫電気泳動では,血清,尿中にM-蛋白はみられなかった。CD4/8比0.58, ツ反は陰性であった。尿蛋白陽性,腎生検で形質細胞の浸潤をみた。リンパ節生検では,多数のリンパ濾胞と濾胞間に形質細胞の浸潤を認めた。以上の所見から,MCD (multicentric Castleman's disease)と診断し,血漿交換,CHOP療法後,etoposideを連日経口投与した。IgG 3,120 mg/dlまで減少し退院したが,4日後,発熱で再入院し,肺炎からARDSを発症し死亡した。剖検で肺はlymphoid interstitial pneumoniaの所見を示した。MCDでは本例のごとく免疫不全に起因すると思われる肺炎を併発し,急激な経過をとる例もあり留意する必要がある。
  • 柳 富子, 浅井 和規, 菅沢 源, 瀬田 克孝, 北村 成大, 井上 昇
    1995 年 36 巻 8 号 p. 749-754
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    未熟型形質細胞が急速に浸潤増生した骨髄腫に,末梢血幹細胞移植術(PBSCT)を施行した。症例は54歳,男性。右眼窩の腫瘍剔出術を受け形質細胞腫と診断された。約3年後左肺および両腎に腫瘤を指摘され,当科入院となった。左肺腫瘤は経気管支肺生検で,形質細胞腫と診断された。血清中にM-蛋白,IgGλが検出され,IgGは4,557 mg/dlに増加していた。骨髄中に形質細胞の増加は認めなかった。Etoposide大量療法(500 mg/day, 4日)にてPBSC (3.3×106/kg)を採取したが,経過中に急速な進展をきたしたため,移植前治療としてcyclophosphamide(2.0 g/day, 2日),etoposide(200 mg/day, 3日),ranimustine(200 mg/day, 2日)を投与し,PBSCTを行った。移植後顆粒球数500/μl, 血小板数5万/μl以上に回復するのに要した日数はおのおの7, 14日で,効果はminor responseであった。しかし2カ月後白血化をおこし,肺出血にて死亡した。剖検の結果,未熟型形質細胞が心,肝,脾,腎,消化管,骨,骨髄,その他全身性に浸潤しているのが確認された。
  • 花村 明利, 市川 篤
    1995 年 36 巻 8 号 p. 755-761
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は64歳女性。1990年1月に進行性の子宮頸癌と診断され,60 Gy放射線照射をうけた。1993年11月,末梢血に芽球が出現しているのを指摘され当科受診。初診時末梢血WBC 2,400/μl, Blast 9%, RBC 373×104l, Hb 9.5 g/dl, Plt 12.5×104l, NAPS 21。骨髄穿刺NCC 26.0×104l, Myeloblast 14.2%, Auer body (+)にてMDS (RAEB in T)と診断を下した。約40日間無治療で様子観察を行ったが,赤血球・血小板減少が徐々に進行するためSPAC+ACRによる化学療法を行った。反応は示したものの治療開始後約2カ月にはAML (M2)へ移行し,治療抵抗性となったため,計4コース施行後にAML (de novo)に準じたintensive chemotherapy (BHAC+ACR+6MP)を施行した。芽球は減少したが,合併症のため死亡した。従来よりt(8;21)はde novoのM2に特徴的な染色体異常として知られ,MDS·二次性白血病に認められる事は極めてまれである。本症例はt(8;21)の臨床病態における意義を考える上で示唆に富む症例と思われる。
  • 本村 茂樹, 藤沢 信, 安斎 成一郎, 藤巻 克通, 服部 美智子, 府川 仁哉, 大久保 隆男
    1995 年 36 巻 8 号 p. 762-767
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は50歳,女性。急性前骨髄球性白血病にて昭和63年8月4日に受診した。寛解導入はdaunomycin連日BH-AC·DMP療法が行われ,完全寛解となり,地固め療法としてBH-AC·DM療法が2クール行われた。強化療法はBH-AC·DM療法1回と中等量ara-C/mitoxantrone療法5回が年2回の割合で行われ,平成4年3月を最後に終了した。平成5年9月に再発し,ATRAにて寛解となった。平成6年5月に2度目の再発を起こし,G-CSF併用中等量ara-C/mitoxantrone療法にて寛解となったが,同年9月に3度目の再発となった。同意を得てG-CSF (300 μg/body, day 1-7)でdormantな芽球を細胞回転に導入するよう試み,cyclosporin-A (8 mg/kg, day 2-5)で薬剤耐性克服を試み,daunomycin (45 mg/m2, day 3-5)とara-C (1.4 g/m2×2, day 3-7)による治療を行った。骨髄抑制が強く,寛解を認めるのに治療終了後46日かかった。cyclosporin-Aによる副作用は特に認めず,再発および難治性白血病患者には有効と思われた。
  • 岸本 卓巳
    1995 年 36 巻 8 号 p. 768-773
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    methicillin resistant staphylococcus aurus (MRSA)肺炎に対してvancomycin (VCM)を使用後17日目に血小板減少症を来した2症例を経験した。2症例ともVCMを用いたdrug lymphocyte stimulating test (DLST)あるいは抗血小板抗体は陰性であったが,Platelet bound IgG (PBIgG)の増加と骨髄巨核球の絶対数と未熟巨核球の増加が見られた。治療としてはVCMの中止と副腎皮質ステロイド薬投与が有効であった。症例1ではMRSA肺炎に対してVCMのみが有効であったため,VCMを3度投与したが,その度に血小板減少が起こったことからVCMによる薬剤性の血小板減少症であると診断した。MRSA肺炎が増加している現在VCMによる好中球減少症の発生については報告されているが,血小板減少症についても考慮して治療にあたる必要があると思われるので報告した。
  • 島野 俊一, 村山 佳予子, 小川 晃, 片平 均, 土屋 純, 秋本 佳久, 李 雅弘
    1995 年 36 巻 8 号 p. 774-779
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は75歳,女性,栃木県出身。'91年10月腰痛で当院へ入院した。Hb 12.3 g/dl, 白血球数11,800/μl, 異常リンパ球22.5%, リンパ球表面形質ではCD4 84.9%, CD8 4.8%, CD25 70.0%, 抗HTLV-I抗体陽性,HTLV-I proviral DNAよりATLと診断した。なお,患者はHBVキャリアであった。また,TP 8.5 g/dlで単クローン性ガンマグロブリン分画が30.7%を占め,頭蓋骨に打抜き像を認めた。骨髄では形質細胞を7.6%, リンパ球を14.4%認めたが異常リンパ球はなかった。免疫電気泳動で抗IgGと抗λにM bowを認めた。11月に退院し経過観察となった。'92年11月微熱で某病院へ入院,異常リンパ球の増加を認めCHOP療法変法を3コース行い,末血中の異常リンパ球は消失し'93年1月に退院した。同年3月昏睡状態で当院へ入院し劇症肝炎で翌日死亡した。剖検ではATLの他に,多発性骨髄腫,劇症肝炎,甲状腺潜伏癌が認められた。劇症肝炎の発現には感染と化学療法の関与が推定された。
  • —劇症肝炎の予防—
    新津 望, 中山 道弘, 梅田 正法
    1995 年 36 巻 8 号 p. 780-785
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    HBVキャリアの悪性リンパ腫3例に対し,IFNを併用した多剤併用化学療法を行った。全例HBsAg+, HBsAb-, HBcAb+, HBeAg-, HBeAb+(変異株+)で,HBV-DNA polymerase (DNA-P)は化学療法開始時・完全寛解時全例正常であった。症例1は3クール目開始後GOT, GPTは正常であったが,DNA-Pは軽度上昇認めたためIFN-αを週2回投与とした。症例2は5クール目開始後DNA-Pが上昇しGOT, GPTは正常であった。このためIFN-αを連日開始した。症例3もDNA-Pの上昇を早期に認めたため,3クール目よりIFN-α投与を開始した。よって,DNA-PはGOT, GPTより早期に上昇するためDNA-Pを指標にIFNを使用すれば重症肝障害を予防できると考えられた。またHBV変異株の検出は,HBsAg+, HBeAb+患者では治療の助けとなると考えられた。3例全例ともにDNA-P, GOT, GPTはIFN-α投与により速やかに軽快し,重症肝炎の併発を認めなかった。
  • 海渡 健, 大坪 寛子, 小笠原 洋治, 関田 徹, 佐伯 明子, 西脇 嘉一, 増岡 秀一, 島田 貴, 吉田 真弓, 小林 正之, 酒井 ...
    1995 年 36 巻 8 号 p. 786-791
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は58歳女性。1992年8月,白血球700/μl, 3.4 g/dl, 血小板4.2万/μlと著明な汎血球減少及び脂肪化を伴う低形成性骨髄などから重症型再生不良性貧血と診断された。種々の治療に抵抗性で経過観察していたが,1993年1月に腹部の緑膿菌による壊疸性膿瘡を併発し入院。感染症の治癒後,7月に抗リンパ球グロブリン2,000 mg/dayを4日間投与した。その後,徐々にしかし確実な改善傾向が認められ,1995年2月には白血球数2,000/μl, Hb 15.2 g/dl, 血小板11.0万/μlと良好な反応が得られている。初診時には脾腫や骨髄線維化は認められなかったが,1993年4月頃より徐々に脾腫が増大,最大肋骨弓下10 cmにもおよび,また1993年6月頃からは骨髄線維化が明らかとなりその後も消失していない。巨脾と骨髄線維化は原発性骨髄線維症の特徴であり,再生不良性貧血との因果関係は不明であるが,この様な症例の報告は全く認められず,非常に興味深い症例と思われた。
短報
  • 牧野 虎彦, 宇都宮 與, 鈴木 紳介, 石塚 賢治, 中原 勝志, 竹下 武承, 大納 伸人, 中馬 好子, 大塚 真紀, 魚住 公治, ...
    1995 年 36 巻 8 号 p. 792-794
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    We have studied the incidence and characteristics of associated neoplasms in 210 ATL patients. Twelve patients had other primary neoplasms and the incidence of double cancer was 5.7%. The additional malignancies in ATL patients consisted of 4 cases of stomach, 3 cases of colon and one of each lung, ovary, uterus, liver and bladder cancer. In metachronous double cancer patients, the neoplasm was found before the time of diagnosis of ATL in 5 out of 6 patients.
    Immunodeficiency due to HTLV-I infection as well as chemotherapy for the preceding neoplasm are suggested to be related to the leukemogenesis of ATL.
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