日本心臓血管外科学会雑誌
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23 巻, 2 号
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  • 2種類の hollow fiber 型限外濾過装置を用いて
    渡辺 弘, 宮村 治男, 菅原 正明, 高橋 善樹, 篠永 真弓, 建部 祥, 高橋 昌, 江口 昭治
    1994 年 23 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    無血充填体外循環を行った複雑心奇形を除く15歳未満の小児開心術34例で限外濾過の効果を検討した. 体外循環終了後に人工心肺回路内の残留血を限外濾過により濃縮後, 患者に返血した. 限外濾過にはポリプロピレン (PP) 膜を使用したHC-30Mおよび100Mとポリアクリロニトリル (PAN) 膜を使用したPHC-500の2種類の hollow fiber 型限外濾過装置を用いた. 小児開心術では体外循環希釈率が高度になるため, 返血に際して水負荷軽減のために限外濾過装置の使用が有効であった. 限外濾過装置の hollow fiber としては血清タンパクの濃縮の点ではPAN膜が優れていたが, 遊離ヘモグロビンも高度に濃縮されるため体外循環時間が短く, 溶血が少ない症例ではタンパク保持に有利なPAN膜を, 溶血の多い症例では遊離ヘモグロビンの濃縮の少ないPP膜を限外濾過に選択するのが良いと考えられた.
  • とくに開腹既往症例に対する検討
    須藤 憲一, 小石沢 正, 津田 京一郎, 林 信成, 小野 稔, 小久保 純, 藤木 達雄, 野中 健史, 池田 晃治
    1994 年 23 巻 2 号 p. 78-83
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1987年1月より1992年10月までに経験した腎動脈下腹部大動脈瘤手術症例60例について開腹術の既往のある症例とない症例との比較検討を行った. 開腹既往症例は11例であり, そのなかで破裂は2例, 切迫破裂2例. 非破裂7例であった. 破裂の1例を術中出血で失い, 切迫破裂の2例が遠隔死した. 非開腹症例との比較で死亡率に差はなかった. 破裂症例を除く開腹既往のある群 (A群: 9例) とない群 (C群: 37例) との比較を行ったが, 手術時間はA群287.3±89.4分, C群: 215.9±66.0分, 術中出血量A群: 1,792±1,391ml, C群: 1,392±871ml, 術後禁食期間A群: 5.4±1.4日, C群: 6.8±3.6日, 術後歩行開始時期: A群: 8.9±2.1日目, C群: 11.3±12.2日目. 術後入院期間: A群: 24.6±6.3日, C群: 37.2±43.8日ですべて有意差はみられなかった. これらの結果より開腹既往を有することは, 非破裂性腹部大動脈瘤手術のリスクファクターとはならないものと思われた.
  • 長嶺 進, 阿部 寛政, 岡田 嘉之, 乙供 通稔
    1994 年 23 巻 2 号 p. 84-87
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    過去5年間に当施設で急性心筋梗塞 (AMI) 後の心室中隔穿孔 (VSP) を9例経験した. 内訳は心尖部中隔穿孔 (A-VSP) 5例, 高位中隔穿孔 (H-VSP) 1例. 後中隔穿孔 (P-VSP) 3例であった. A-VSPでは全例左室側1枚パッチで欠損孔を閉鎖した. H-VSPでは左右心室にそれぞれパッチをあてて欠損孔を閉鎖し, 自由壁の再建は行わなかった. P-VSPでは1例で心室中隔と自由壁のパッチによる再建を行い, 1例で右室側1枚パッチで欠損孔を閉鎖した. 他の1例では左室側1枚パッチで欠損孔を閉鎖した. A-VSPとP-VSPのそれぞれ1例を失ったが, 他の7例を救命できた. A-VSPに対する手術術式についてはほぼ確立していると考えられるが, H-VSPやP-VSPについては一定していない. われわれの経験をもとにAMI後のVSPに対する手術術式について考察した.
  • 末田 泰二郎, 渡橋 和政, 呑村 孝之, 林 載鳳, 浜中 喜晴, 松浦 雄一郎
    1994 年 23 巻 2 号 p. 88-91
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    最近5年間に手術した腹部大動脈瘤56例のうち破裂性腹部大動脈瘤は12例 (21%) であった. 12例中9例が来院時にショック状態であり, うち3例に心マッサージを要した. 初期に手術した直接開腹群4例のうち, 大動脈遮断に至るまでに出血性ショックで臓器不全となり病院死3例 (75%) を経験した. 他の8例は小さな左前側方開胸を加えて下行大動脈遮断が可能な状態で開腹した. このうち術前ショック状態が重篤であった4例は下行大動脈遮断を平均21分行った. 病院死は8例中1例 (12.5%) に減少した. 動脈瘤の最大径は左開胸群と非開胸群との間で差はなく, 手術時間も差はなかった. 出血量は左開胸群が平均3,925mlに対し直接開腹群は平均7,193mlであった. 開胸の合併症として, 肺炎と黄疸を1例ずつ経験したが軽快した.
  • 黒田 弘明, 佐々木 成一郎, 石黒 真吾, 原 陽一, 濱崎 尚文, 森 透
    1994 年 23 巻 2 号 p. 92-96
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    最近の11年間の41例の Stanford B型大動脈解離症例に対し, 臓器四肢の虚血, 破裂, 拡大瘤化, A型解離への進展などの合併症を併発したときに外科治療を行ってきた. この方針の妥当性を遠隔成績から検討した. 解離合併症は22例 (53.7%) に発生し, 四肢虚血5例 (12%), 破裂3例 (7%), 拡大瘤化13例 (32%), A型解離4例 (10%), DIC1例(2%) であった (重複例あり). これらに対し姑息的手術を含め17例に手術を施行した. 遠隔成績は5例 (12%) が解離関連死亡, 6例 (15%) が他病死し, 累積5年生存率は84.2±6.8% (解離関連86.7±6.6%) であった. 解離関連死亡例5例のうち4例はA型解離への進展をきたしており, 死因はA型解離の手術死亡2例, 破裂3例であった. 治療方針の順守とA型解離手術成績の向上がB型解離症例の遠隔成績の向上につながると考えられた.
  • 安田 慶秀, 佐久間 まこと, 松居 喜郎, 椎谷 紀彦, 朝田 政克, 松浦 弘司, 田辺 達三
    1994 年 23 巻 2 号 p. 97-100
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    胸腹部大動脈瘤18例の手術成績を報告した. 原疾患は動脈硬化 (56%) についで高安動脈炎, Behçet 病などの炎症性動脈瘤 (39%) が多く, 手術術式は Crawford 法13例, パッチ閉鎖3例, Hardy 法とextra-anatomic bypass 法が各1例で行われた. 補助手段は一時的バイパス法8例, 部分体外循環法7例で, 腹部主要分技は選択的に灌流した. 破裂例は全体の39% (7例) を占め, 炎症性動脈瘤では86%が破裂していた. 早期死亡率は非破裂例11例中0, 破裂例7例中3例, 42.9%, 全体18例中3例, 16.7%であった. 術後の重篤な合併症は対麻痺, 非閉塞性腸管虚血, 空置瘤の破裂が1例みられ3例とも在院死亡した (在院18例中6例死亡, 死亡率33.3%). 動脈硬化による胸腹部大動脈瘤手術例の follow up 期間中の死亡はなく成績は良好であった. 一方, Behçet 病では2例とも遠隔期に吻合部破裂をきたし再手術を行い, うち1例が死亡した.また, Marfan 症候群の1例も遠隔死亡した. F-Fバイパスによる部分体外循環法, Crawford 法による再建を行うことが胸腹部大動脈瘤に対するわれわれの基本方針である.
  • 安田 慶秀, 椎谷 紀彦, 松浦 弘司, 深山 雅寿, 大場 淳一, 松居 喜郎, 佐久間 まこと, 朝田 政克, 田辺 達三
    1994 年 23 巻 2 号 p. 101-105
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1988年から1992年の5年間に DeBakey III b型解離性大動脈瘤9例に対し Crawford 法による胸腹部大動脈グラフト置換術を施行した. Spiral opening 法による開胸・経後腹膜到達法で行い, 補助手段はシャントチューブ法による一時的バイパス法2例, F-Fバイパスによる部分体外循環法7例行われ, 腹部主要分枝動脈は選択的に灌流した. 再建術式は Crawford 術式に準じ, 5例は下行大動脈起始部から腸骨動脈までの全胸腹部大動脈を置換し, 他の4例では腎動脈上部までの胸腹部大動脈を置換した. 6例は待機的に手術し, 破裂1例, 破裂切迫の2例の計3例は緊急手術を行った. 術後30日以内の早期死亡は2例 (22.2%) で, 術後の主な合併症は致死的不整脈, 対麻痺, 脊椎不全麻痺, 呼吸不全, イレウスが各1例に, 腎不全と出血による再手術が各2例みられた. 最近2年間, 5例の手術では死亡0, 完全対麻痺発生0でIIIb型解離性大動脈瘤に対する胸腹部大動脈広範置換術の成績は満足できるものであった.
  • エリスロポエチンと術前自己血貯血
    大塚 吾郎, 東舘 雅文, 萩野 生男
    1994 年 23 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    同種血輸血節減を目的とし, 1989年8月より1990年11月までの緊急例を除く42例の開心術症例に対し, 19例にエリスロポエチン投与 (以下E群), 13例に術前自己血貯血 (以下S群) を行い, いずれも行わない10例を対照とした (以下C群). E群には術前2週, 術後2週隔日に各6回, 計12回のエリスロポエチンを静脈内投与し, S群には術前2週より1, 2回の単純液状保存による自己血貯血を行った. また全症例に対して術中体外循環開始直前, 400から1,200mlの希釈式自己血貯血を行った. E群の14例 (74%), S群の11例 (85%), C群の6例(60%) で同種血輸血を必要としなかった. E群とC群とにおいて同種血輸血を必要とした7例は(1)65歳以上の高齢 (1例), (2)3時間を超える体外循環時間 (3例), (3)体重45kg以下の低体重 (3例), (4)入院時赤血球数3.50×106/mm3以下の貧血(1例), (5)術中1,200ml以上の大量出血 (2例) のいずれかの条項を満たしていた.
  • 相馬 孝博, 丸山 行夫
    1994 年 23 巻 2 号 p. 111-113
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は71歳男性で, 腰痛を主訴に来院したが, 救急外来にてショックに陥り, 蘇生させられないまま死亡した. 剖検により, 腹部大動脈瘤の open rupture が, S状結腸を中心として広範な漿膜下血腫を形成した, きわめてまれな症例と判明した.
  • 河村 勉, 加藤 智栄, 高木 靖彦, 金沢 守, 岡田 治彦, 鈴木 一弘, 壺井 英敏, 宮本 正樹, 江里 健輔
    1994 年 23 巻 2 号 p. 114-117
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は47歳男性. 呼吸困難, 発熱を主訴とし, 当院内科紹介入院. 感染性心内膜炎 (IE), 大動脈弁閉鎖不全および僧帽弁弁膜瘤を伴う僧帽弁閉鎖不全と診断された. 抗生剤の投与でIEをコントロールした後, 二弁置換を施行した. 大動脈弁無冠尖および右冠尖を中心に多数の疣贅を認め, さらに僧帽弁前尖に疣贅とともに弁膜瘤を認めた. 僧帽弁弁膜瘤は希で, ほとんどの症例がIEに合併している. 本症では病巣の完全除去と確実な弁機能の維持が可能な弁置換術が適切な治療と考えられた.
  • 迫 秀則, 葉玉 哲生, 森 義顕, 重光 修, 木村 龍範, 小野 克重, 宮本 伸二, 穴井 博文, 添田 徹, 内田 雄三
    1994 年 23 巻 2 号 p. 118-121
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤破裂で発症した27歳 Marfan 症候群の女性に対し, 緊急に人工血管置換術を行い救命できた. 術後精査にて, 大動脈弁輪拡張症と下行大動脈起始部の嚢状動脈瘤が明らかとなったため, Cabrol 手術と弓部および近位下行大動脈置換術を施行した. しかしながら, グラフト遠位端の出血のコントロールができず, ここを結紮し, 上行大動脈から両側大腿動脈に extra-anatomical bypass を置くこととなった. さらに術後LOSのため, 止むをえず, この extra-anatomical bypass 内で balloon pumping を行った. その後は心機能も回復し, 感染も起こさず順調に経過することができた. 腹部大動脈瘤破裂で発症した Marfan 症候群は比較的まれであり, intra-graft balloon pumping を施行することにより術後LOSを脱したこととともに報告する.
  • 岡田 健次, 向原 伸彦, 小川 恭一, 麻田 達郎, 西脇 正美, 樋上 哲哉, 杉本 貴樹, 河村 剛史
    1994 年 23 巻 2 号 p. 122-124
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    バージャー病 (以下TAOと略す) による下肢血管閉塞性病変を有する患者には poor run-off 症例が多く治療に難渋する. そのため血行再建術を行う場合, その適応や吻合血管の決定, 血管へのアプローチ法, バイパス方法等は十分な検討を要する. TAOによる膝下部 poor run-off 症例2例に対し後脛骨, 腓骨動脈を内側アプローチにて露出し, 自己大伏在静脈を用いた血行再建術を行い症状の改善を認めた. 後脛骨, 腓骨動脈を下腿近位1/2までで露出する場合, 両血管の解剖学的走行上, 内側アプローチで手術が可能であった.
  • 高橋 章之, 佐藤 伸一, 平井 二郎, 中嶋 俊介, 北浦 一弘, 和田 行雄, 岡 隆宏
    1994 年 23 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    動静脈奇形 (AVM) は四肢や脳, 肺などに発症することが多く骨盤内のものは少ない. 今回われわれは, そのような骨盤内AVMの一例に対して根治せしめたので報告する. 症例は59歳女性で, 主訴は右下腹部腫瘤である. 骨盤部CTと血管造影で異常血管瘤を伴うAVMと診断した. 手術は術前より診断しえた feeding artery である右内腸骨動脈と右腰動脈および右尿管動脈を結紮し, 右腎動脈からのAVMと瘤を摘出した. 術後の血管造影では, 右内腸骨動脈末梢の正常血管は左側からの側副血行路により造影されたが, AVMは完全に消失していた. 近年AVMに対する治療法としてカテーテルによる塞栓術が頻用されているが, 本症例のように流出系に異常血管瘤を伴う場合には, 塞栓術は危険を伴い, 不確実である. このような症例には feeding artery を結紮し瘤を切除することが, より確実で安全であり, 今回のような外科的摘出術が第一選択になると思われる.
  • 椎谷 紀彦, 安田 慶秀, 大場 淳一, 深山 雅寿, 今村 道明, 田辺 達三
    1994 年 23 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    “Elephant trunk”法は Borst らにより提唱された広範囲大動脈瘤に対する分割手術術式である. 嗄声を主訴とし, 上行・弓部・下行・上腹部大動脈瘤を有する59歳, 男性患者に“elephant trunk”法を用い, 分割手術で上行・弓部大動脈置換術, 下行・上腹部大動脈置換術を施行した. 初回手術では胸骨正中切開, 脳分離体外循環法を, 二期手術ではF-Fバイパス法を用いた. 本症例は頸動脈狭窄, 閉塞性動脈硬化症による左大腿切断, 脳梗塞後遺症, 腹部大動脈瘤グラフト置換術後など, 多くの術前リスクファクターを有する症例であったが, 術後経過はきわめて良好であった. 広範囲に及ぶ大動脈瘤でも分割して手術を行うことによって手術侵襲を軽減できる“elephant trunk”法は有用な手術術式であった.
  • 泉谷 裕則, 九鬼 覚, 松村 龍一, 奥田 彰洋
    1994 年 23 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は56歳, 男性. 徐脈型心房細動にて永久ペースメーカー植込み術を施行され術後2年より, 顔面浮腫が出現した. 静脈造影像にて左無名静脈の狭窄, 左右無名静脈合流部付近上大静脈に高度の狭窄像を認め, 内頸静脈圧と上大静脈に20mmHgの圧較差を認めた. 保存的治療に抵抗性であったため手術を施行した. 胸骨正中切開後, ペースメーカーリードは Locking Stylet を用い抜去した. 上大静脈の狭窄部壁は硬く, 肥厚していた. 組織学的に静脈硬化像を認めた. 狭窄部位は自己心膜パッチで拡大術を施行し, 術後症状は軽快した. 本症は抗凝血薬療法が奏功することが多いとされるが, 保存的治療に抵抗性で静脈硬化を伴うものは病変部の不可逆的な閉塞あるいは狭窄を伴っている可能性があり外科的治療が有効であると考えられた.
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