高分子論文集
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50 巻, 11 号
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  • 川村 佐良
    1993 年 50 巻 11 号 p. 801-807
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    再利用化は一般に新規のものに比べてかえってコストがかかり, 引き合わない場合が多くて安易に廃棄されてしまっている. ゲル化まで至っていない十分分散を保つている1%以下の低濃度廃高分子ラテックスも. これまで凝集分離して埋立て処分したり, 焼却処分されていた. これらの合成樹脂や合成ゴム成分を有効利用するために, 効率的なエネルギーの利用法として中空系型膜分離およびポリ塩化アルミニウムー水酸化ナトリウム系による凝集沈降で濃縮する方法を検討した. 次にこれらの濃縮物の特性を生かしてそれぞれ静電植毛用バインダー, パルプモウルド紙力増強用バインダー, 農業用発芽促進保護膜に活用した. その他紛炭や鉄鉱石のような野積み紛体の飛散防止剤などへの利用についても言及した.
  • 川端 成彬
    1993 年 50 巻 11 号 p. 809-820
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    飲料水などの微生物汚染を防除する手段として広く用いられている塩素消毒法には, トリハロメタンなどの有害物質を副生することおよびウイルスが強く抵抗するという問題点がある. 本研究では微生物やウイルスを捕捉する高分子の機能を活用して, 飲料水などの微生物汚染を防除する新しい効果的な手法の開発を試みた. ピリジニウム型高分子が水中に懸濁する微生物細胞を捕捉することが見いだされた. ピリジニウム基の中ではベンジルピリジニウムクロリドおよびブロミドが特に効果的であった. しかし, 高分子マトリックスの親水性も重要で, 疎水性成分を共重合させたり橋かけ度を高めると微生物捕捉機能は低下した. ピリジニウム型高分子の細胞捕捉作用は強力で, 捕捉した細胞を剥がすことが極あて困難であった. 繰り返し利用が困難であると思われたので, 少量のピリジニウム型高分子でレーヨン不織布の表面をコーティングしたフィルターを開発した. このフィルターを用いて微生物懸濁液をろ過すると, 微生物が効果的に除去された. ピリジニウム型高分子は水中に懸濁するウイルスに対しても強力な捕捉除去効果を示した. バクテリオファージだけではなく, さまざまな病原性の動物ウイルスも効果的に除去されることが見いだされた. 一方水溶性のピリジニウム型高分子は強力な殺菌作用, および微生物懸濁液に対する凝集作用を示すことも見いだされた.
  • 白浜 博幸, 水馬 潔志, 川口 佳秀, 塩見 直紀, 安田 源
    1993 年 50 巻 11 号 p. 821-835
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本研究では, 新規光学活性ラクトンの (R) -または (S) -3-メチル-4-オキサ-6-ヘキサノリド {MOHEL, 3-ヒドロキシ酪酸 (3HB) とエチレングリコールから成るラクトンに相当} と環状エステル {ε-カプロラクトン (CL), δ-バレロラクトン (VL), β-プロヒオラクトン (PL), L-ラクチド (LA) } とのコポリマー, 環状カーポネート {2, 2-ジメチルトリメチレンカーボネート (DTC) } とCLあるいはLAとのコポリマー, ならびにこれら各モノマーのホモポリマーを, AIEt3-H2Oなどの一般的触媒あるいは有機ランタナイド錯体触媒を用いて合成した. 続いて, これらポリマーの熱的特性などの物性を測定した上で, 各ポリマーの活性汚泥, 海水, および酵素による生分解性を検討した. 調べたポリマーのうち, いずれの条件下でも分解性が顕著に認められたのは, (R) -MOHEL/CLコポリマー (特にCLユニット50脚1%以上のもの) であった. ポリマーの生分解性は光学活性, 分子量, 融点, 結晶化度などポリマー自身の化学構造や物性のみならず, (菌体外) 酵素の基質特異性にも強く依存することが示された. また, (R) -MOHEL/CL (=15/85) コポリマーのエステラーゼ酵素による分解生成物を1H NMRや質量分析計などを用いて解析したところ, このポリマーはその大部分が最終的にはCLのオキシ酸 (6-ヒドロキシカプロン酸) モノマーにまで分解されることが判明した.
  • 村瀬 平八, 名西 靖
    1993 年 50 巻 11 号 p. 837-845
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 高分子不均質膜の表面特性と海洋生物の付着との関係を明らかにすることである. 分子中に親水性のエチレングリコール・セグメントをもつポリジメチルシロキサンおよびポリジメチルージフェニルシロキサンの2種のポリマーブレンド系からその成分比に応じた, 特有のラメラ型相分離構造膜が得られた. これらの高分子膜表面の特性値化のために, 表面自由エネルギーとモルホロジーが調べられ, ついでタンパク質の吸着性が評価された. 一方, 実際の海中浸漬実験により, それら材料表面への海洋生物 (フジツボ, アオノリ) の付着性試験を行った. この結果と表面特性との関係を論じ, 相分離構造膜表面が, 生物付着防止に効果のあることが実証された. またタンパク質 (γ-グロブリン, フィブリノーゲン) の吸着特性は生物付着性と関係があり, 各種成分比の中で最低値を持つことがわかり, 医用高分子材料における血栓形成防止の機構との類似性が見られた.
  • 薛 曙昌, 賀 飛峰, 尾本 充, 比田井 隆雄, 今井 嘉夫
    1993 年 50 巻 11 号 p. 847-853
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    グリコールを主とする化学的処理方法によって廃棄硬質ポリウレタンフォームが分解された. IRとGPCの分析により, 分解生成物は多量の反応性ポリウレタンオリゴマーを含むことが認められた. アミン/グリコール比・反応時間の増加, 反応温度の上昇は, 反応生成物の水酸基価・アミン価の増加と粘度の低下をもたらす. この分解生成物を直接エポキシ系接着剤の硬化剤として利用するため, キュア条件, 分解生成物/エポキシ樹脂比, 通常のエポキシ接着剤系で使用されているアミン硬化剤・添加物との併用などが検討された. その結果, 廃棄硬質ポリウレタンフォームの分解生成物はエポキシ系接着剤の接着強度を高めることが認められ, その有用性が明らかとなった. しかもこの方法は複雑な後処理を必要としないため経済性が高い.
  • 佐々木 圭太, 富田 敬
    1993 年 50 巻 11 号 p. 855-862
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    液晶性ポリエステル (LCP) と他の熱可塑性ポリマーとのブレンドにおいて, 一般的な二軸混練機を用いた調製方法によりLCPがミクロフィブリル状の分散相となり他方の連続相ポリマーを補強する, リサイクルが容易で高強度なコンポジットが得られた. コンポジットの調製条件のうち融液のダイでのせん断速度および押出物に与えた延伸がLCPミクロフィブリル形成に与える影響が著しかった. 射出成形実験により, 連続相ポリマー種ごとに固有のLCP配合量の窓があることが分かった. LCP/ポリプロピレン (PP) コンポジットを実験的に10回繰り返しリサイクルしたものはバージン材と同等の強度を示し, LCP/PPコンポジットをフィルムに押出したものを予熱後プレス成形して得た平板は, LCPの補強効果を失っておらず, 配向方向で252MPaの引張強度を示した.
  • 林 治助, 井上 正伸, 清水 祐一, 高井 光男
    1993 年 50 巻 11 号 p. 863-871
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    紙は安価で, 生物分解性に富んだ材料であるが, 強度特に湿強度が不十分である. 合成高分子による含浸, 架橋などの補強がなされた時, 生物分解性が著しく阻害されることがある. 含浸補強が行われた構造レべル, 程度と強度増加ならびに生物分解性との関係を検討した. エポキシ樹脂をメチルアルコールで希釈して紙に含浸させることにより. 強度を増加できるが, 低濃度では逆に強度は低下し, 生物分解性も著しく低下する. 希釈せずに含浸させた場合は85%もの重量増があるにもかかわらず, パルプ繊維の生物分解性は阻害されなかった. 低濃度では付与された樹脂量は少ないが, 繊維内部まで侵入していると考えられ, したがって生物分解性は繊維内部に樹脂が浸透したか否かに支配される. 生物分解性を持っ微生物生産ポリエステルを含浸させた場合は, このポリエステルのフィルムより, 含浸紙全体の方が速やかに分解され, 空隙の多い構造が分解を促進したと考えられる.
  • 塩野 毅, 永 直文, 曽我 和雄
    1993 年 50 巻 11 号 p. 873-880
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    三塩化ネオジム・テトラヒドロフラン錯体とトリエチルアルミニウムからなる触媒系を用いて得られた高シス1, 4-ポリブタジエンをウィルキンソン触媒を用いて部分水素化し, 主鎖に二重結合を有するポリエチレン類似体を合成した. このポリマーを大過剰のエチレン存在下で六塩化タングステン/テトラメチルスズ/n-プロピルアセテート系触媒を用いてメタセシス分解し, α, ω-ジビニルポリエチレン類似オリゴマーを得た. 水素化ポリブタジェンとその分解オリゴマーを1H NMR, 13C NMR, DSC, GPCなどにより詳細に解析した. 得られた結果をもとに, 部分水素化およびメタセシス分解の機構について検討した.
  • 中村 邦雄, 西村 優子
    1993 年 50 巻 11 号 p. 881-886
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    資源有効利用の見地から, 廃油を用いてポリウレタン (PU) フォームの調製を試みた. 廃油は老化の進行とともに酸価が増加し, 遊離脂肪酸の量が増加すること, および二重結合の開裂による高分子量化が生じることが明らかとなった. したがって老化の進行した廃油ほどPUのポリオールとして適するようになり, PUフォームはポリプロピレングリコール (PPG, Mw=400) およびジフェニルメタンジイソシアナート (MDI) を用いて容易に調製できることがわかった. 調製したPUフxォームの強度は廃油の酸価およびMDI量の増加とともに増加することがわかった. またガラス転移温度 (Tg) は廃油量酸価及びMDI量の増加とともに増加することがわかった. これらのことから廃油がPU中で三次元化を促進すること, また高分子化による絡み合いの効果を増加することが明らかとなった.
  • 上道 芳夫, 上林 英文, 杉岡 正敏, 金塚 高次
    1993 年 50 巻 11 号 p. 887-892
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    シリカーアルミナ (SA) およびプロトン型のモルデナイト (HM), Yゼオライト (HY), ZSM-5ゼオライト (HZSM-5) を触媒として, 固定床流通系でポリスチレン (PS) の分解反応を行った. 300℃以上の高温ではPSの主鎖切断による分解低分子化過程はおもに熱的に進行し, 触媒は低分子化フラグメントの逐次反応過程を促進するものと推測された. 顕著な促進効果を示したのはSAとHZSM-5触媒であった. 酸量, 酸強度ともに低いSAが高い触媒活性を示すのは, この触媒の細孔径が大きく分解フラグメントの拡散が容易なことによるものと考えられる. SAではベンゼン, エチルベンゼン, およびインダン類が, 一方HZSM-5では, ベンゼン, トルエン, ナフタレン類が主に生成し, 両触媒上での反応機構は異なることが示唆された. いずれの触媒もコーク析出によって失活した. ポリエチレンの分解では極めて高い活性持続性を示したHZSM-5触媒でも著しい活性低下が見られた.
  • 長谷川 洋, 高木 克己, 日下部 健治, 武田 省二
    1993 年 50 巻 11 号 p. 893-897
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    電子部品製造に際して排出される表面離型処理ポリエチレンテレフタレート (PET) フィルムの再利用方法として, PBT樹脂への混入を検討した. フィルムの再生方法としては, 半溶融状態でフレーク化する方法と, 溶融してペレット化する方法の2種類を検討し, 熱分析, 機械強度の測定によって使用の可否を検討した. この結果, フレーク状で再生した場合は20%の混入までは通常のPBT成形条件で成形しても問題のないことが分かったが, 溶融ベレット化した場合は分子量の低下による機械的性質の低下が生じた, 離型のためのシリコーン樹脂層の再生ペレット中での存在状態は不明であるが, 電子部品に悪影響を及ぼすシリコーンオリゴマは検出されなかった.
  • とくにドイツにおけるフィードストック・リサイクルについて
    Herbert WANJEK, Thomas MUHLENBERND
    1993 年 50 巻 11 号 p. 899-904
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    埋立地の不足や新たな焼却施設の建設に対する社会的反対などにより, 欧州, 特にドイッではプラスチック廃棄物のリサイクルが推し進められている. 機械的リサイクルに適したものは限られており再生のたびに劣化するので市場可能性が限られている. 一般包装材のようなプラスチック廃棄物はより有効な方法で回収しなければならない. すなわち, 重合物を基礎原料 (油など) に戻すブイードストック・リサイクルである. このうち, 適用可能なプロセスについて概説し, 実際の経験から水素化プロセスが最も好ましいことを示している. いくつかのプロセスの経済性について, ドイッでの都市固形廃棄物の焼却費用と関連づけて論じた. フィードストック・リサイクル設備の新設は現行および将来のリサイクル法の要件を果たすために必要であるが, それでもなお効率的回収方法のないもの (電子部品用廃棄物など) はエネルギー回収が不可欠である. プラスチック廃棄物は, 環境と経済性の観点からその回収方法を決定しなければならない.
  • 瀧口 康博, 岸 良一, 一條 久夫, 平佐 興彦
    1993 年 50 巻 11 号 p. 905-908
    発行日: 1993/11/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    代表的な感熱性高分子の一つであるポリビニルメチルエーテル (PVME) の水溶液は, γ線を照射することにより容易に架橋しゲル化する. 架橋したゲルは, 水溶液同様に感熱性を有し, 38℃付近に転移温度を持つ. PVMEゲルは, 転移温度より低温側では膨潤し, 高温側では収縮する. このとき, ゲルの親疎水性バランスが変化し, 有機物質との相互作用も変化する. この性質を利用して, 水中に含まれる有機物質の分離除去を試みた. 有機物質として非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル (NP-10) を用いたとき, ゲルへの吸着は, 温度の上昇および溶液濃度の増加に伴い, 増加した. NP-10の平衡溶液濃度と平衡吸着量の対数をプロットすると, 測定温度範囲内で直線性を示し, Freundlich 型の吸着等温線が得られた. また, 転移温度を境にして吸着温度を変化させることにより吸脱着が可逆的に行われることも確かめられた.
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