高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
69 巻, 11 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 佐藤 尚弘
    2012 年 69 巻 11 号 p. 613-622
    発行日: 2012/11/25
    公開日: 2012/11/23
    ジャーナル フリー
    高分子溶液の粘度は,高分子の分子量や濃度,および鎖の剛直性に強く依存することが知られている.本報では,5種類の剛直性の異なる高分子溶液に対する広い分子量・濃度範囲にわたるゼロずり粘度を,みみず鎖円筒およびファジー円筒モデルに基づいて定式化された粘度式と比較した.この粘度式には,ファジー円筒の縦方向の並進拡散を支配する臨界空孔サイズを特徴づけるパラメータと分子間流体力学的相互作用の強さを表すパラメータが分子論的に決められない調節パラメータとして含まれている.前者については高分子溶液の種類や分子量によらない一定値を,また後者には溶液の種類と高分子の分子量ごとに適当な値を代入すると,粘度式は調べた5種類の高分子溶液系とも広い分子量・濃度範囲にわたって実験結果とよく一致した.
一般論文
  • 和田 理征, 清水 秀信, 岡部 勝
    2012 年 69 巻 11 号 p. 623-630
    発行日: 2012/11/25
    公開日: 2012/11/23
    ジャーナル フリー
    高重合度(N)およびシンジオタクチシティー(S-diad)の異なるポリ(ビニルアルコール) (PVA)を合成して物理ゲルを作り,NやS-diadがゲルの架橋長やヤング率に及ぼす影響を実験的に調べた.架橋長は田中-Stockmayerの式から推算した.ゲルの力学物性は,引張試験および圧縮試験よりS-Sカーブを作成し,ヤング率Eを求めて評価した.その結果,ゲルの架橋長ζは,重合度N<104では単調に増大したが,N>104になるとほぼ一定の値を示した.また,S-diadが高い試料ほどζは大きくなった.さらに,ゲルのヤング率Eも架橋長ζが増大すると増大する傾向を示した.このことから,架橋長ζの大きさが力学物性に影響を与えていることが示唆された.
  • 中島 江梨香, 伊藤 雅俊, 上野 智永, 市野 良一, 武田 邦彦
    2012 年 69 巻 11 号 p. 631-638
    発行日: 2012/11/25
    公開日: 2012/11/23
    ジャーナル フリー
    高分子材料はこれまで本来的に可燃性であるとされてきた為,5%から60%程度添加剤を加え難燃性をもたせてきた.本報では,ポリエチレン(PE)の高分子のマトリックス構造の変化における燃焼性を解析した.重量平均分子量76,000以上のPEは一次的な分解で溶融し,下に落下していく間に二次的な分解が起こり燃焼していると考えられる.一方,重量平均分子量35,000のPEは着火することなく溶融し,下に落下し続けた.したがって,本実験方法において重量平均分子量が35,000のPEは着火もせず燃焼が継続しないことが明らかになった.しかし,分子量の違いによる重量減少挙動に違いは見られず,また,TGによって同様に熱履歴を与えた後の試料の分子量分布は,同熱分解率では同分子量にピークが計測された.分子量が異なる場合でも,PEはランダムに分解し,分解生成物の構造は類似のものであると推定された.
  • 齊藤 誠二, 石黒 啓太, 高橋 聖司, 河野 昭彦, 関口 淳, 谷口 克人, 田中 初幸, 堀邊 英夫
    2012 年 69 巻 11 号 p. 639-645
    発行日: 2012/11/25
    公開日: 2012/11/23
    ジャーナル フリー
    ノボラック系ポジ型レジストにおける現像温度(17.3℃~40.0℃)とレジスト特性との関係を検討した.レジストの初期膜厚とレジストの感度(Eth)との関係をSwing Curveにより評価し,レジスト特性に対する多重干渉波効果(Swing Curveの振幅)とバルク効果(Swing Curveの傾き)の影響を検討した.また,レジストの解像度の評価をシミュレーションにより行った.多重干渉効果とバルク効果は,現像温度に依存しなかった.一方,解像度は,現像温度の上昇とともに向上した.これは,露光部では酸・塩基中和反応が促進され溶解速度が速くなり,未露光部では感光剤のアゾカップリング反応が促進され溶解速度が遅くなるためである.現像温度が22.5℃の時,レジストは最も高感度であった.現像温度が低いと露光部の酸・塩基中和反応が進まずレジストが溶解しにくく,現像温度が高いと露光部に残存する感光剤のアゾカップリング反応が進行しレジストが溶解しにくいためである.現像温度が高くなるほどレジストの解像度は向上するが,現像温度が22.5℃以上ではレジストは低感度となる.感度と解像度の両観点から現像温度が22.5℃のときレジスト特性が最適であると結論づけた.
  • 松井 栄樹, 坂本 丞, 藤田 佳菜子, ビンティー ルスリー ノールファラヒン
    2012 年 69 巻 11 号 p. 646-650
    発行日: 2012/11/25
    公開日: 2012/11/23
    ジャーナル フリー
    本研究では水溶性セルロースとして硫酸セルロースナトリウム(CSNa)を合成し,ポリウレタン樹脂の基材としてのセルロース成分の導入を目指した.硫酸セルロースナトリウム水溶液を2-ジメチルアミノエタノール,イソシアネートとしてミリオネートMR-100を用いて反応させることでポリウレタン樹脂の合成を行い,樹脂の形成についてATR-IR,固体NMRの測定により確認を行った.また,N,N-ジメチルエチレンジアミンを加えた場合にはウレア樹脂の形成が同様に確認された.さらに,DMAEの量を変化させて樹脂形成を行うことで,CSNaと相互作用するDMAEの適切な量が存在し,CSNaを基材としたポリウレタン形成に大きく関与していることが明らかとなった.
feedback
Top