栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
26 巻, 4 号
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  • 中館 興一, 高橋 ミツ子
    1973 年 26 巻 4 号 p. 217-225
    発行日: 1973/12/29
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    体重約120gの雄ラットにコレステロール・コール酸を含む高脂肪 (40%) 食を与えて16週間飼育し, 飼料のカゼイン含量および食塩水の投与が血清および肝コレステロール濃度におよぼす影響を検討し, さらにバター脂と植物性硬化油の比較を行ない次の結果を得た。
    1) ラットの肝はいずれも著しく腫大して白色調を呈し, 脂肪肝になっていた。体重100gあたりの肝重量は低カゼイン群 (11%) のものでおよそ15g, 高カゼイン群 (31%) で8gであった。
    2) 飼料中のカゼインを11%から31%に増加させると, 肝総脂質濃度, 肝および血清コレステロール濃度が著しく低下した。この実験では, ラットの肝コレステロールは総脂質の約半分を占めていた。
    3) 脂肪を硬化油からバター脂に替えると, 飼料摂取量が著明に増大し, 血清および肝コレステロール濃度はわずかに増加した。
    4) 硬化油を与えると腎, 副腎, 甲状腺が著しく腫大したが, カゼイン含量を増すと腫大は軽減した。
    5) 飲料水として1%食塩水を与えると, 血清および肝コレステロール濃度はわずかであるが明らかに増加した。
    6) 肝リボフラビン濃度は, 低カゼインの場合に著しく低く, また硬化油をバター脂に替えても明らかに低下し, コレステロール濃度の場合とは逆の関係を示した。
  • 岸部 公子, 久次米 哲子, 沖中 靖
    1973 年 26 巻 4 号 p. 227-231
    発行日: 1973/12/29
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    Sprague Dawley系雄ラットを3群に分け, おのおのにチアミン欠乏飼料を与え対照群にはチアミン-塩酸塩を1日当り40μg, 多量投与群には500μgおよび欠乏群には滅菌水を腹腔内投与して15日間飼育し, それらの肝臓中のチアミンおよびピルビン酸含量およびpyruvate dehydrogenase complex活性, pyruvate carboxylase活性およびL-lactate dehydrogenase活性を測定し, それらの変化について検討を行なった。その結果, 欠乏群の肝臓中のチアミン含量は対照群より低い値を示し, またPD活性が低下し, ピルビン酸の蓄積が認められた。一方PCおよびLD活性は対照群よりも高い値が示された。多量投与群においてPD活性は, 対照群より低い値を示したが, PCおよびLD活性はともに対照群より高い値を示し, ピルビン酸の蓄積は認められなかった。
  • 星野 三恵子
    1973 年 26 巻 4 号 p. 233-238
    発行日: 1973/12/29
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    1) 冷凍食品中の低温細菌にはPseudomonas属が多い。
    2) 低温細菌を0℃付近で培養する際, そのたん白分解酵素の活性は, ペプトン含有培養液中では比較的すみやかに失われるのに対して, 合成培養液中では長期間安定に存在している。
    3) 菌体内酵素と菌体外酵素の性状を比較すると, 耐熱性, 至適pH, 反応温度による影響では同一の傾向を示すが, 金属イオンによる阻害作用に対してはわずかにくいちがうところがあった。
    4) 菌体の細胞膜にもなお, たん白分解酵素が結合して存在するらしい。
    5) 溶菌以後, 酵素作用が急に上昇するのは菌体内, 細胞膜, 菌体外に存在する酵素が相加作用を起こすものと考えられる。
  • 草野 毅徳, 宮下 晴世
    1973 年 26 巻 4 号 p. 239-243
    発行日: 1973/12/29
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    1) ソバ粉を製粉段階において4区分し, 各区分の栄養成分組成を調べた。
    2) たん白質, 脂質, 灰分およびリンは, 他の穀類の場合と同様に, 胚乳内部 (SF区分) よりもむしろ胚乳周辺部 (2Fおよび3F区分) に多く存在しているが, 糖質の分布はその逆で, 胚乳内部ほど多い。
    3) たん白質成分について検討した結果, ソバ粉4区分のいずれの場合も塩可溶性たん白質が全体の過半を占め, ついでアルカリ可溶性のグルテリンたん白質が30%内外存在し, アルコール可溶性のプロラミンたん白質が最も少なく数%にすぎない。
    4) ソバ粉のアミノ酸組成は各区分ともそれぞれ異なった様相を呈し, なかでも1Fが最も特異的であった。2Fのアミノ酸組成はソバ粉全体の組成に比較的近いものであった。
    5) 必須アミノ酸パターンからみたソバ粉のたん白質栄養価は比較的高く, とくに1Fおよび2F区分が優良であった。
  • 名武 昌人, 団野 源一
    1973 年 26 巻 4 号 p. 245-250
    発行日: 1973/12/29
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    メチオニンの抗酸化機構を明らかにする目的で, LAを含む自動酸化系および酸化リノール酸から分離したLAHPOあるいはLASPを含む系において, それぞれメチオニンとこれらの化合物との相互作用を検討し, 次の結果をえた。
    1) メチオニンはLA系のPOVの上昇をおさえ, LAHPO系のPOVを著しく低下させた。
    2) LAHPO系においてメチオニン量は反応の進行とともに減少し, この減少はPOVの低下と完全にパラレルであった。そしてこの反応の結果メチオニンは, メチオニンスルフォキシドに酸化された。
    3) LAHPO系におけるメチオニンの存在は系の酸度を上昇させたが, ヒドロキシル基の含量には差が認められなかった。
    4) LA系およびLAHPO系におけるメチオニンの存在は系の酸素吸収を何等上昇させなかった。
    5) 以上の結果および前報14)の結果を総合して, ROO・がメチオニンのメチルメルカプト基の-S-を介して電荷移動型化合物を形成したのち, 電子をうばって-O-O-結合を開裂せしめてメチオニンスルフォキシドを与え, みずからは不活性安定化合物になることによって酸化の連鎖反応を停止させるとするメチオニンの抗酸化機構を提案した。
  • 名武 昌人, 団野 源一
    1973 年 26 巻 4 号 p. 251-256
    発行日: 1973/12/29
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    リノール酸の自動酸化におよぼすシステインの酸化促進能を見いだし, この作用機構を明らかにするために, LA系, LAHPO系およびLASP系におけるシステインの効果を検討し, 次の結果を得た。
    1) システインは酸性下 (とくにpH 4~5) においてLA系のPOV, TBA値および酸素吸収を著しく上昇させた。酸素の吸収は誘導期が認められぬほどすみやかであった。
    2) システインはLAHPO系の酸素吸収をいくらか上昇させたが, LASP系のそれには影響をおよぼさなかった。システインを含むLAHPO系における酸素吸収の上昇は, 系にわずかに混在しているLAによるものであろうと推論した。
    3) LASP系およびLAHPO系において, システインはPOVの低下を妨げるという証拠が得られた。
    4) LA系およびLAHPO系におけるシステインの変化をTLCで追究し, システインは反応に関与した結果シスチンになることを明らかにした。
    5) 以上の結果から, システインはリノール酸の自動酸化過程において酸素の吸収を伴う初発反応に積極的に関与してフリーラジカルの生成を促進すると同時に, 酸素吸収に伴って生じたROO・とも反応してヒドロパーオキシドの生成をも助長し, みずからはシステインラジカル (RS・) を経てシスチンになるとする酸化促進機構を提案した。
  • 堀米 隆男
    1973 年 26 巻 4 号 p. 257-262
    発行日: 1973/12/29
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
    カゼインを無水酢酸および0.1N NaOHで処理して得たN-アセチルカゼインを用いて実験を行ない, 次の結果を得た。
    1) N-アセチルカゼインのアセチル基, ε-アミノ基遊離リジンおよびDNP化N-アセチルカゼインのアミノ酸組成の測定から, リジンの∈-アミノ基はほぼ完全にアセチル化されていることが認められた。
    2) 白ネズミを用いた実験結果から, N-アセチルカゼインの消化率は対照カゼインに比較して差異はなかったが, たん白効率, 生物価は低下することが認められた。また, アミノ酸の添加実験から, N-アセチルカゼインの栄養価の低下はリジンおよびスレオニンの栄養効果の低下のためであることが認められた。
    3) オルソジフェノールオキシダーゼの存在でN-アセチルカゼインにコーヒー酸を作用させると赤褐色に着色したN-アセチルカゼインが得られ, アセチル化によりカゼインの着色を防ぐことができなかった。また, 着色したN-アセチルカゼインの生物価はN-アセチルカゼインのそれよりもわずかであるが有意に低下した。したがってカゼインの着色, 栄養価の低下は, リジンなどのアミノ酸の損失を伴う反応のみによるものではないことが推察された。
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