油脂の脂肪酸配列および分子量分布とCa含量の違いが油脂, 各脂肪酸, Ca, Mg, P, たん白質の消化吸収性に及ぼす影響を知るために, 油脂として人乳脂肪, 牛乳脂肪, 豚脂分別油, 同エステル交換油, ヤシ油を選び, Ca含量として2水準 (前報
1) での高, 中水準) をとり, さらに無脂肪食群を加え白ネズミによる消化吸収実験を行なった。
油脂の消化吸収率はCa水準により大きく影響され, 一般に消化吸収性の良いといわれる人乳脂肪, ヤシ油においても例外ではなく, 高Ca水準で低かった。油脂の中では, ヤシ油の消化吸収率が高かった。またCa水準が同じであれば, 人乳脂肪と牛乳脂肪の消化吸収率に大差はなかった。
パルミチン酸, ステアリン酸の消化吸収率は, 高Ca水準の場合にはそれぞれの脂肪酸のグリセリンの2位への結合比の高いほど高かったが, 中Ca水準になるとこの関係はかなりくずれた。ラウリン酸, ミリスチン酸, オレイン酸の消化吸収率は97%以上と高く, 油脂による差はなかった。
無脂肪食群の脂質の排泄量は個体差が大であったが, Ca水準による影響はなかった。
Caの消化吸収率は中Ca水準のほうが高く, また無脂肪食群で高かった。Caの吸収量そのものは高Ca水準で多かった。油脂の種類による影響は高Ca水準で顕著で, 牛乳脂肪, エステル交換豚脂分別油群で劣っていた。
Mg, P, たん白質の消化吸収率もCa水準により影響され, いずれも高Ca水準で低かった。
糞便中に排泄されたCa, Mgとけん化脂肪酸, Pの量的関係から, 糞便中のPは高Ca水準では大部分HPO
42-の形で存在するが, 中Ca水準ではH
2PO
4-の形で存在するものもかなり多いと推定された。
成長に伴う消化吸収率の変化はCaにおいて顕著であり, パルミチン酸, ステアリン酸にも変化が見られた。
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