栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
34 巻, 4 号
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  • 藤田 修三, 高谷 友久, 不破 英次
    1981 年 34 巻 4 号 p. 287-294
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    ジャガイモ澱粉粒を成熟期および成長期のラットに与えて, 各種消化酵素の変動を検討し, 以下の結果を得た。
    1) 成熟ラットにおいては, 膵臓α-アミラ粒摂取と同時にその活性が下がり, 4週間後に至っても回復しなかった。プロテアーゼ活性は, 逆に摂取開始時に, その活性が高まり, 以後回復する傾た。小腸粘膜中のマルターゼ活性は, 期間中を通して澱粉粒にあまり影響されなかった。
    2) 成長期のラットにおいては, 膵臓α-アミラーゼ活性は, 澱粉粒し, 12週間後では, 糊化澱粉摂取のラットとほぼ同じ活性力に至った。プロテアーゼ活性は, 摂取と同時に急激に高まったが, 飼育期間の経過とともに回復するった。しかし, 小腸粘膜中のマルターゼ, イソマルターゼ活性は, 澱粉粒にあまり影響されなかった。また難消化性澱粉粒の摂取の場合, たん白質をカロリー源して利用しており, たん白質効率を低下させていた。
    3) 澱粉粒とセルロースのベアードフィーディングによる比較実験から, 膵臓α-アミラーゼ活性は, セロース摂取で明らかに上昇した。しかし, 澱粉粒摂取の場合は, 上記1), 2) の結果とは異なり, 糊化澱粉摂取の場合と同様の活性を示した。プロテアーゼ活性は粒およびセルロース摂取により, その活性が高められた。小腸粘膜中のマルターゼ, イソマルターゼ活性は, 各投与食にあまり影響されなかった。
    4) 糊化摂取ラットの小腸粘膜中に含まれている糖は, グルコースがほとんどであるが, 澱粉粒摂取では, オリゴ糖がかなり含まれており, 効率のよい膜消化が続けられいることが認められた。
  • ヨード強化卵の栄養的効果に関する研究 (第1報)
    片峯 伸一郎, 星野 信行, 戸塚 耕二, 鈴木 正成
    1981 年 34 巻 4 号 p. 295-302
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    通常の鶏卵に比べ多くのヨウ素を含む鶏卵 (ヨード強化卵) について, 成長期ラットの運動時および摂食時の血中脂質代謝への影響を検討した。 普通卵粉添加料 (0.369ppm I) を対照として, ヨード強化卵粉添加飼料 (8.163ppm I) を約7週齢のラットにmeal feeding (08~09, 21~22時) により10週間投与し, その間, 自発運あるいは週1回の強制遊泳運動をさせた。 10週間後に, 遊泳運動あるいは摂食 (21~22時) の前後で屠殺し, 血中脂質代謝の応答をみた。 増体重, 摂食量および屠時の臓器と脂肪組織の重量には飼料の影響は認められなかった。 遊泳時間と自発運動量にも統計的に差は認められなかった。 血清T-chol. およびHDL-chol. 濃は, 両食餌群に差は認められなかった。 血清FFA濃度, 副睾丸脂肪組織と骨格筋のLPL活性, および肝臓と骨格筋のグリコーゲン濃度は, 遊泳運動あるいは摂食ので, それぞれ特徴的な動きを示した。 ヨード強化卵粉食群で, 遊泳運動前後あるいは摂食前後を通じて, LPL活性およびグリコーゲン濃度が高い傾向を示すことかヨード強化卵が血中脂質代謝に影響することが示唆された。本研究の概要は, 第34回日本栄養食糧学会総会 (札幌, 1980) にて発表した。
  • 草類たん白質の栄養価に関する研究 (第26報)
    保井 忠彦, 吉沢 裕子
    1981 年 34 巻 4 号 p. 303-307
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    緑葉から栄養価の高いたん白質を, 容易に, かつ高収量で分離する方法を検討し, 次の結果を得た。
    1) ホウレンソウほか5種の緑葉を-20℃冷アセトン処して, クロロフィルを除いた供試試料 (ただし, スギの葉はさらに水抽出処理した供試試料) から0.5%SDSと0.5% 2-ME含有0.2% NaOH溶液を用いて, それらの純た白質はスギナ, スギの葉以外は80%以上抽出された。NaOH溶液濃度を1%に上昇させると, スギナ, スギの葉の純たん白質は75%抽出された。0.5% 2-MEの代わりに, 元剤として0.5% Na2S2O4も同程度のたん白質抽出効果があった。
    2) 界面活性剤として, SDSの代わりに0.5%脂肪酸ナトリウム混合物 (牛脂より調製) を用いことにより, ホウレンソウとキャベツでは同程度のたん白質抽出効果があった。食飼料たん白質の分離, 調製に使用しうる可能性が示された。
    3) 界面活性として用いた, 0.1%脂肪酸ナトリウム混合物, コール酸, デオキシコール酸, 各種のしょ糖脂肪酸エステルおよびレシチンはたん白質抽出のための補足効果はほ。
    本報告の概要は第33回日本栄養・食糧学会大会 (昭和54年5月) において講演した。
  • 2-ビロリドン-5-カルボン酸の食品化学的研究 (第3報)
    後藤 英子, 前川 昭男, 鈴木 隆雄
    1981 年 34 巻 4 号 p. 309-313
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    PCAおよびGlu, Glnさらにクエン酸を単独に添加したモデル缶詰ならびにトマトジュースモデル缶詰を試製し, 37℃で60日間貯蔵した場合のGlu, GlnからのPCへの転換ならびにスズ溶出量との関連性について検討した。
    1) モデル缶詰ならびにトマトジュースモデル缶詰中のPCA量の増加はGlnからの転換によるのが多く, その転換は加熱の影響によると推察された。
    2) スズの溶出量はGlu缶詰, Gln缶詰はPCA缶詰に比べ少なく, とくにGln缶詰はスズの溶出がほとんどみられなかった。さらにトマトジュースモデル缶詰ではGlu添加およびGln添加によりスズの溶出が抑制される傾向を示した。
    3) PCA添加によるスズの出量はモデル缶詰, トマトジュースモデル缶詰のいずれにおいてもクエン酸添加の場合と同程度であった。
    本研究の大要は昭和55年8月, 北海道で行なわれた栄養・食糧学会で報告した。
  • 吉岡 慶子
    1981 年 34 巻 4 号 p. 315-323
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    -5℃ 28日間および-20℃ 3日間凍結貯蔵した2種のコイ肉に関して, 空気解凍およびマイクロ波解凍法が, その品質に及ぼす影響について実験を行ない, 適切な解凍条件を検討した。その品質判定規準としては, 化学的にはK値を, 物性値については, 力学的な測定値として破断応力および見かけの弾性率, ならびtexture特性としてtexturometerによる測定値を用いた。またFig. 10. Effect of defrosting temperature on profile of texturometer curve of carp muscles stored at -5℃ for 28 days or at -20℃ for 3 days. 解凍コイ肉の組織学的観察も行なった。
    まず, コイ肉を即殺時から1週間5℃に冷蔵し, 化学的および物理的測定値の変化を調べた。その結果, K値が品質をよく表わし, その他の物性値も時間の経過とともに低下して, ほとんどの測定値が有意の相関を示すことがわかったので, 物性値による品質判定限界値を定めた。
    -5℃ 28日間凍結貯蔵したコイ肉の解凍条件は, K値で判断すると, 5℃解凍が最もよいことを示していた。しかし, 物性値は品質判定限界値以下であった。
    -20℃ 3日間凍結貯蔵したコイ肉では, K値は5℃解凍で最もよい値を示した。50℃解凍およびマイクロ波解凍で物性値が高い値を示したのは, 魚肉組織が熱収縮したことによるものと推定した。このことは, 魚肉組織の顕微鏡観察からも裏づけられた。
  • 坂本 元子, 小林 幸子, 石井 荘子, 加藤 かおる, 島薗 順雄
    1981 年 34 巻 4 号 p. 325-334
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    1) 実験的につくられたVc欠乏およびVc過剰3群のモルモットについて, それらの栄養状態を血液学的所見, 血清の生化学的所見で, Vc欠乏状態を臨床症状, 血清中のVc量で確認した。
    2) Vc欠乏および過剰状態における免疫系について, 細胞性免疫系の指標としてツ反応を, 液性免疫系の指標として補体溶血活性をとり, 免疫監視機構における相互の関係を検討した。さらにVc欠乏, 過剰時における補体各成分についても検討を加えた。
    3) Vc欠乏状態では, ツ反応は完全に消失するにもかかわらず, 補体系は正常範囲を維持し, 細胞性免疫能の低下に対し, 補体系は免疫能を維持し, これを補償していることが推測された。
    4) Vc過剰投与の場合, C3はわずかな過剰量でも有意に高い値を示し, 生体の抵抗性に関与するVcの作用のうち, 補体系に影響を及ぼすところはC3の部分にあることが推測された。
    5) Vc過剰投与の抵抗性の増強に関することは, 補体溶血活性値に影響する量は大量投与にのみその影響が観察された。
    6) Vc過剰投モルモットにS. aureusを感染させた場合, 抗体産生に先立つ補体の応答がみられたが, そのろちC3はこの時期に右意に高い値を示しており, 宿主の外部侵略に対する補体系のなかで, C3が最も早く防御態勢を整える役割を果たしていることが推察された。本実験の一部はビタミンC研究協議会の研究費により実施されました。
  • 鈴木 正成, 岡野 五郎, 下村 吉治
    1981 年 34 巻 4 号 p. 335-340
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    高糖質食または高脂肪食で飼育したラットの副睾丸脂肪組織の脂肪酸放出能について, PTUを投与する方法で甲状腺機能との関連を比較検討した。
    1) 対照動物の甲状腺重量と腓腹筋ホモジネエトの酸素消費量は, いずれも高脂肪食群が高糖質食群よりも大きかった。PTU投与により両食餌群の甲状腺重量は増大したが, その肥大度には差がなかった。腓腹筋ホモジネエトの酸素消費量はPTU投与により高脂肪食群で著明に低下した。
    2) 副睾丸脂肪組織のIn vitro脂肪酸放出能は, ノルエピネフリン無添加条件では両食餌群間に差がなかったが, ノルエピネフリン刺激性脂肪酸放出能は高糖質食群に比べて高脂肪食群で著明に高かった。
    3) PTU投与により, ノルエピネフリン無添加条件での脂肪組織脂肪酸放出能は高脂肪食群で著明に低下した。ノルエピネフリン添加条件では, 両食餌群においてそれぞれの対照動物に比べ著しく低下し, 対照動物でみられた両食餌群間の差は軽減された。
    4) 対照動物の絶食時血清遊離脂肪酸量は両食餌群間に差をみなかったが, PTU投与により高脂肪食群において著しく低下した。
    5) 以上のことから, 高脂肪食によるラット副睾丸脂肪組織のノルエピネフリン刺激性脂肪分解能の増大は, 甲状腺機能の亢進が原因の一つであると示唆された。
  • 長弘 美智子
    1981 年 34 巻 4 号 p. 341-347
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    インゲン豆, その他豆科植物種子中のアミラーゼ・インヒビターの分布の検索のため, ディスク電気泳動法による特異活性染色法を考案し, 約10ngのアミラーゼ Fig. 6. Sensitivity of the staining for amylase inhibitor activity in the presencc and absence of Ca2+. インヒビターを明瞭な活性バンドとして検出した。
    1) インゲン豆に属するすべての種子からアミラーゼ・インヒビターを検出した。すなわち, 白花豆から2種その他のインゲン豆からそれぞれ1種のアミラーゼ・インヒビター画分を検出した。
    2) これらアミラーゼ・インヒビターの泳動速度は, 豆類によって異なる。白花豆の2本のアミラーゼ・インヒビター (Ai-I, Ai-II) が最も速く, 白インゲン (大福) と金時のアミラーゼ・インヒビター (Ai-III) がやや遅れ, その他のインゲン豆類のアミラーゼ・インヒビター (Ai-IV) はさらにやや遅れた位置に泳動した。これらインゲン豆の違いによって検出される泳動速度の異なるアミラーゼ・インヒビター, さらに白花豆に見られる2種のインヒビターが, イソ・インヒビターとよびうるものかあるいは, グリコプロティンであるインヒビターの糖部分の差異によるものか, 阻害活性に違いがあるかどうかは今後検討を要する。
    3) インゲン豆以外の豆科植物種子: ソラマメ, ダイズ, アズキ, ラッカセイ, グリンピース, きぬさやエンドウ, エビスグサ種子からは, アミラーゼ・インヒビター活性を検出しなかった。
    4) アミラーゼ・インヒビターの活性染色法に対するEDTAの影響から, インゲン豆アミラーゼ・インヒビターは, カルシウムを結合した活性型のα-アミラーゼに強く結合し, カルシウムを除去した低活性のα-アミラーゼに対して合力が弱いことを示唆した。
    5) インゲン豆のアミラーゼ・インヒビターは種子中にのみ存在し, しかも種子の発育のごく初期においてすでに種子中に生成されると考えられる。
    本論文の要旨は, 第52回山口大学医学会 (昭和54年7月, 宇部), 第30回電気泳動学会春季大会 (昭和55年6月, 東京) において報告した
  • 梶本 五郎, 吉田 弘美, 芝原 章, 山庄司 志朗
    1981 年 34 巻 4 号 p. 349-353
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    油脂の自動酸化に対する安定性試験法とTocの変化について検討した。
    1) AOM試験ではSO, COともにPOV 10程度まではほとんどTocの分解は認められなかったが, それ以後POVの急増に伴いTocの分解率は高まり, POVとTocの分解率との間には比較的よい相関関係がみられた。 各Tocの分解速度はδ-<γ-<α-Tocの順で, Fig. 3. Correlation between rancid point (flavor score is 3) and peroxide values at the time of oven test of refined soybean oil. 油脂安定性の判定基準であるPOV 100meq/kgのところでは, SOとCOのα-, γ-およびδ-Tocの分解率はそれぞれ85, 20および4, 70, 29および11%であった。
    2) 官能検査で油脂の安定性の判定基準である点数3はPOVの急激な立ち上り点と一致し, またこの時点からTocの分解が始まった。
    3) 重量法試験でSOとCOの重量増加が始まりかけた時点ではすでにα-Tocの分解はそれぞれ70および80%で, 安定性判定の基準である0.5%重量増加点では各Tocはほとんど完全に分解消滅していた。 以上のことから, 官能検査で油脂の安定性判定の基準Fig. 4. Relationship between the weight gain and decomposition of tocopherol inrefined soybean and corn oil by weighing method. である点数3はTocの分解が始まりかけたいわゆる酸化初期の評価で, これに反し, 重量法試験の油脂の安定性判の基準である0.5%重量増加点はTocがほとんど完全に分解したいわゆる油脂の酸化が非常に進んだときを評価しており, AOM試験のPOV 100は上記2試験法の間で, 中位程度の酸化度を安定性判定の基準にしていることになる。
  • 古武 弥三, 池田 小夜子, 柴田 満里子
    1981 年 34 巻 4 号 p. 355-365
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    亜鉛は多くの酵素の成分として重要な作用を果たしている。年少者に亜鉛欠乏があると成長発育の停止, 性機能不全症などが起こることがアラブ連合共和国, イランなどで明らかにされているが, 遺伝性の乳児疾患である腸性先端皮膚炎 (Acrodermatitis enteropathica) では亜鉛の欠乏によって四肢, 顔などに水胞性, 膿胞性の湿疹様皮膚炎, 脱毛, 下痢などを起こさせることが知られている。同様な症状は中心静脈カテーテル挿入法によって長期間にわたって高カロリー輸液を送り込む非経口的栄養において, 微量栄養素として亜鉛の添加が行なわれない場合にも起こることが明らかにされている。したがって亜鉛の所要量の決定はきわめて重要であって可及的早期に行なわれる必要性のあることを述べ, われわれの実験成績から次のような点を結論としてあげたい。
    1) 日本人はたん白源を魚に求める人達が多いが, 魚たん白は獣鳥肉に比べると概して亜鉛含量が多くないので, 成人1日の亜鉛摂取量はそれほど高くならない。神戸市在住者の代表的な献立10例を選んで, 成人1日の亜鉛量を調べたところ, その平均値±標準偏差は8.9±2.5mgであった。この値はアメリカ, イタリア, デンマーク等の推奨所要量15mgに比べるとかなり低い値であるが, チェッコスロバキアの推奨所要量8mgには十分達している。
    2) 人工栄養児の哺乳に使用されるわが国の特調製粉乳の亜鉛含量はいずれも100g中0.7~0.9mgであって, これらの粉乳は13~14%の濃度で使用されるので, たとえば生後4~6か月児に1回180mlの哺乳がなされたとしても, 約0.2mgの亜鉛含量にしかならない。その結果1日量としては2mgに達しない。アメリカ, イタリア, デンマーク等の推奨所要量では亜鉛は生後6か月までは3mg, 7か月から12か月までは5mgとされており, チェッコスロバキアでは生後6か月までは4mg, 7か月から12か月までは5mgとされている。人工栄養児の亜鉛摂取量をこれらの国々の推奨所要量に比べると少ないので, 特殊調製粉乳中の粉乳含量を増加させ亜鉛含量を多くする必要があろう。3) 離乳期の幼児の毛髪中の亜鉛量を測定したところ, 毛髪中の亜鉛量の平均値±標準偏差は10.2±2.5mg/100gと低く, 成人の毛髪中の亜鉛量平均値±標準偏差30.2±5.8mg/100gに比べると危険率0.001以内の有意差を持って離乳期の幼児の毛髪中の亜鉛含量の少ないことが明らかとなった。このことから亜鉛の体内保有量は生後しだいに増加するものと考えられる。
  • 山下 典子, 篠原 和毅, ジャハン・ ナズマ, 鳥飼 芳秀, 土井良 宏, 大村 浩久
    1981 年 34 巻 4 号 p. 367-371
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    蚕の卵色突然変異 (赤卵) 系統を用いて, レダクトン類の突然変異誘起能と, MCとの併用投与による効果の検定を行なった。
    1) TR注射では1頭 (体重1.2g) あたり50~100μgの投与で突然変異誘発頻度は4~6×10-4程度で最高値であり, 投与量を1, 000μgまで増しても頻度は高くならず, またCu2+共存下でも変化はみられない。
    2) AsA, ScAともにTRと同様 10-4レベルの誘発頻度でCu2+によっても高くならない。
    3) MCを注射した蛹にAsA, TR, ScAおのおのを続けて注射すると, 突然変異誘発頻度に変化はないが, 変異卵中の全体変異の比率が減少した。すなわち, TR, AsA, ScAの3種のレダクトンおのおのの卵色突然変異誘起能は非常に低く, むしろMCによる突然変異誘起をある程度抑制する可能性が認められた。
  • 四十九院 成子, 吉田 恵子, 福場 博保
    1981 年 34 巻 4 号 p. 373-378
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    1) もやし原料豆である黒緑豆種子のプロテアーゼの検索を行ない, APase, BAPAase, LNAase, CPaseの4種のプロテアーゼ活性の存在することを明らかにした。
    2) 発芽による各酵素活性の変動を求めると, APase, LNAaseは発芽2日目に, CPaseは6日目にそれぞれ最大値を示した。一方BAPAaseは実質的な変化は示さなかた。
    3) 粗酵素液を調製し各酵素活性の諸性質を求めた。至適pHは, APaseが4, BAPAaseが8~9, CPaseが6, LNAaseは7であった。またAPaseはペプスタチン, BAPAaseはDFP, PMSF, CPaseはDFP, PCMBによって阻害された。LNAaseには効果的な阻害剤は認められなかった。その他安定pH, 至適温度, 熱安定性についても検討した。
    4) 黒緑豆の耐熱性プロテアーゼインヒビターは, 検出した4酵素活性のうちとくにBAPAaseをよく阻害した。
  • 兼松 弘, 丸山 武紀, 新谷 勳, 神谷 典清, 新保 國弘
    1981 年 34 巻 4 号 p. 379-382
    発行日: 1981/08/10
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    乾燥クロレラ中のプロビタミンAをTLC, CPCで分画し, 可視部吸収スベクトルおよびHPLC分析により検索, 同定した。 ついでHPLCを用いるこれらの分別定量法について検討した。
    1) TLCによりクロレラカロチノイドは9画分に分離したが, そのうちRfの高い3画分を標準カロチノイドと比較して, 順にα-, β-カロチンおよびluteinと同定した。 またCPCでもクロレラカロチノイドから吸着能の低い順にα-, β-カロチンおよびluteinが分離することを確認した。 なおそのうちluteinはクロレラカロチノイドの主成分であった。
    2) HPLCを用いるプロビタミンAの分別定量法を確立したが, この方法はけん化, 抽出およびHPLC操作から成っている。 なお本法により乾燥クロレラからさらに微量のクリブトキサンチンを検出した。
    3) 本法によるβ-カロチンの回収率は96.9%であり, 乾燥クロレラ試料を用いて行なった5回のくり返し実験によるα-, β-カロチンおよびクリプトキサンチンの平均値は9.89, 24.66および0.41mg/100gであり, 測定値の変動係数は2.30, 0.81および8.60%であった。なお本法による定量限界は4.01mg/100gであった。
    4) 37℃, 6か月間蛍光灯照射した乾燥クロレラ試料のα-, β-カロチンおよびクリブトキサンチン量は0.78~0.43, 1,58~1.09および0.02~0.01mg/100gであった。
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