ショ糖脂肪酸エステルとピロリン酸カリウムを主成分とする洗浄剤によるトマトからのボルドー液除去効果におよぼすボルドー液散布後の風乾条件およびボルドー液の付着状態の影響について検討し, 以下の結果を得た。
1) ボルドー液散布の際に展着剤を加用したほうが, ボルドー液はごくわずかに除去されやすくなることが認められた。この理由として, 展着剤の拡散効果によりボルドー液がトマトの表面に均一に, しかも広面積に付着するために除去されやすくなることが考えられる。
2) ボルドー液が4-2式から4-8式へと移行するにつれてボルドー液の組成のカルシウム量が増加し, それに比例して洗浄剤中のピロリン酸カリウムの消費量が増加するために, 洗浄剤の必要濃度が増加した。
3) 4-4式から4-8式までのボルドー液のトマトに対する付着量を20ppm (Cu) まで増加させても, 除去率はわずかに増加した。一方, 付着量の増加にともなって, 残存量は増加し, 真の除去効率の低下が認められ, 4-4式ではごくわずかであるが, 4-8式ではかなり低下した。このことから, 洗浄効果の比較にあたっては, 除去率だけでなく, 残存量もあわせて検討する必要がある。
4) 未洗浄の生食用トマト中の銅量は0.3~0.4ppmと少なく, 加工用トマトでも平均1.84ppmであり, この程度の付着量であれば, 洗浄剤濃度が0.2%で効力が十分に発揮される。
5) ボルドー液の散布後, 5日以上経過すると, 洗浄剤によるボルドー液除去性はかなり低下した。また, ボルドー液散布後, 日乾することにより, ボルドー液の除去性は低下する。これらの理由として, ボルドー液の乾燥固化および化学的組成の変化が促進されたことが考えられる。
6) ボルドー液の散布時に, トマトの表面に細毛が密生しているほうが親水性のためにボルドー液が均一にうすく付着しやすく, 細毛のないトマトにくらべて, ボルドー液の除去性が良好であった。すなわち, 実験室での散布では, トマト表面の細毛はほとんど脱離しているために, ボルドー液は斑点状に付着して除去されにくいが, 野外栽培中に散布されたトマトは表面の細毛が脱離していない状態であり, ボルドー液は均一に付着しているために除去されやすい。
7) 5) および6) から, ボルドー液の散布後, 日数が経過することと日光の照射をうけることは, 洗浄剤の除去効果に対してマイナスの因子として働くが, 一方, ボルドー液に展着剤を加用していることと圃場での散布段階でトマトの表面に無数の細毛が存在していることはブラスの因子として働くことが考えられる。両者のどちらがより強く洗浄効果に影響するかを見きわめる必要があると思われる。
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