加熱劣化大豆油脂肪酸をカラムクロマトグラフィーでモノマー部, ダイマー部, 二次生成物部にそれぞれ分別し, その分別物各部の特数, 尿素付加, 非付加率およびカゼインとの付加率, さらにそれぞれ各部エステル物の赤外線吸収スペクトルと各部エステル物を大豆油に混合しその保存性を調べた。
その結果
1. モノマー部, ダイマー部, 二次生成物部の特数値は, 水酸基, カルボニル基, エポキシ基などの各値ともモノマー部よりもダイマー部, さらに二次生成物部の方が高い。
2. 尿素付加量の多いものは, モノマー部, ダイマー部で, 二次生成物部ではわずかに付加するのみである。
尿素非付加量では, 二次生成物部が最も多く, ダイマー部, モノマー部はその半量程度である。
したがって, モノマー部, ダイマー部は直鎖構造の脂肪酸が多く, 二次生成物部では環状構造および側鎖物が多い。
3. モノマー部, ダイマー部, 二次生成物部および各部尿素非付加エステル物の赤外線吸収スペクトルから, モノマー部, ダイマー部, 二次生成物部は同じ種類の官能基をもつ物質であることがわかる。
3,600cm
-1 (2.8μ) から3,500cm
-1 (2.87μ) に至る水酸基の吸収は, モノマー部にはほとんど存在しないが, ダイマー部, 二次生成物部には極めて強い吸収がある。
710cm
-1 (14.0μ) の吸収は, 二次生成物部ほど弱くなっている。二重結合の消失と考えられる。
660cm
-1 (15.2μ) にモノマー部に二次生成物部に新たな吸収がみられる。したがって環状単量体の存在を意味する。
1,650cm
-1 (6.1μ) における吸収は, モノマー部, ダイマー部, 二次生成物部にわずかに認められ, 環状化合物の存在を意味する。
4. 各部のエステルを大豆油に10%添加混合し, 放置日数 (25℃放置) と油脂の過酸化物価, 酸価, カルボニル価との関係を調べると, 各値とも二次生成物部エステル混合油が最も高く, ついでモノマー部エステル混合油で, ダイマー部エステル混合油では, わずかに増加したのみである。
したがって, 二次生成物は油脂の酸敗を促進させる。
カゼイン付加物の混合油では, むしろモノマー部カゼイン付加混合油が過酸化物価, カルボニル価の増加が最も多く, 逆に二次生成物カゼイン付加混合油では低い。
したがってカゼイン付加有無により, 各部の酸敗に対する挙動は異なるようである。
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